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Channel: 藤原洋のコラム
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名古屋大学のGaNに関する研究成果と今後の当社の5Gプロジェクトについて

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  2019年5月22日、名古屋大学に試作ラインが完成し、パワー半導体の開発に大きく前進するという成果発表がありました。ここに謹んでお慶び申し上げます。

  さて、今回発表のあった試作ラインの完成は、天野浩教授を中心とする日本の半導体分野の中でも、特にGaN(窒化ガリウム)という素材に関する高い研究力と技術力を世界に向けて示したことに大きな意義があります。すなわち、青色発光ダイオードに始まる優れた材料特性をパワー半導体分野の実用性において示しました。ここで、更なる実用性向上の意味で、学術研究セクターとして名古屋大学が、産業セクターとして株式会社ブロードバンドタワー(当社)が研究とりまとめをしておりますGaN(窒化ガリウム)を用いた5Gデバイスの研究チームにとっても大きく前進させる成果だということであります。当社チームは、その特性を応用して5G基地局の低消費電力化・小型化を実現するミリ波帯基地局構成技術を確立することを目指しております。
(*産業セクターは、ブロードバンドタワー(当社)、日本電信電話、パナソニックセミコンダクター、学術研究セクター:名古屋大学、東京工業大学、名古屋工業大学、東京大学、情報通信研究機構で構成)(https://www.bbtower.co.jp/ir/pr/2018/0713_001437/
  天野浩教授を中心とするノーベル賞研究において青色発光ダイオードとして開発されたGaNには、「高速性」と「低消費電力性」という2つの特徴がありますが、これを製品レベルにもっていくためには、半導体材料の試作ラインの完成が不可欠です。今回のパワー半導体の実用化のために完成した試作ラインは、当社をはじめとする5Gデバイスの共同研究チームで取得する共有知的財産の創出に大きく前進するものでもあります。そして、今回の成果を活用することで、当5Gデバイスの共同研究チームから創出される知的財産を、参加メンバーが中心となって新たな産業を創出する役割を担っていくことになると思われます。

(中日新聞掲載ページ)
https://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/tokai-news/CK2019052302000099.html

 

2019年5月23日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 


当社の新大手町データセンター(以下、新大手町データセンター)の現状について

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 去る2019年6月10~11日に、日本経済新聞社と総務省が主催する世界デジタルサミット2019が開催されました。そこで、私は、『AI+CASE時代の5Gデータセンター』と題して講演をさせて頂きました。ここでは、データセンターを取り巻くトレンドとしての①AI時代とは?②CASE時代とは?③BBTowerの5Gデータセンターとは?の3つについてお話させて頂きました。以下にその概要について述べることとします。

 

①AI時代とは?

今日のディープラーニング革命により高速演算への要求が高まっており、大量のトレーニングデータの利用を可能とするためにGPU(Graphics Processing Unit、リアルタイム画像処理に特化した演算装置)が、並列処理に向くためディープラーニング演算に極めて有効であることが確認されたということです。また、GPU サーバーでAI処理を実行するとサーバー・ワット数あたりの性能が大幅に向上するため、今回の新大手町データセンターでは、電力容量/ラックを最大で当社初のデータセンターである第1サイトの最大6倍の12KVAの電力容量を誇ります。この結果、日本のAI技術をリードするベンチャー企業の株式会社Preferred Networks(プリファード ネットワークス)が新大手町データセンターの顧客となって頂くことが決定しました。

 

②CASE時代とは?

 C=「Connected:コネクティッド化」、A=「Autonomous:自動運転化」、S=「Shared/Service:シェア/サービス化」、E=「Electric:電動化」の頭文字を取った造語で、現在の自動車業界の変化を的確に表わす言葉として最近急速にクローズアップされてきています。元来、CASEは、2016年パリモーターショーで独ダイムラーのディーター・ツェッチェCEOが発表した中長期戦略を起源とします。新大手町データセンターは、正にCASE関係顧客が集積する見通しとなってきました。というのは、CASE時代を先導する代表的企業であるソフトバンク株式会社が新データセンターの大口顧客となることが決定したからです。同社は、新大手町データセンターを中心に自動車業界にイノベーションを起こす先導的役割を果たすことでしょう。

 

③当社の5Gデータセンターとは?

情報通信インフラのイノベーションを主導してきたのは、インターネット技術のモバイル通信技術の2つがあります。特に、最近の大きな変化は、固定ブロードバンドは2008年にADSL(Asynchronous Digital Subscriber Line、電話線を利用した非対称デジタル加入者線)よりもFTTH(Fiber To The Home、光ファイバ加入者線)への本格的シフトが起こり、超高速通信環境が固定ブロードバンドとして普及が始まりました。また、モバイル通信では、2010年から4Gへの本格的シフトが起こり、スマートフォンによる高速通信環境がモバイル・ブロードバンドとして普及が始まりました。そして、2020年からは、10年毎の世代交代に当たる5Gへの本格的シフトの年となる見通しです。図1に情報通信インフラの進化、図2にモバイル通信システムの進化、図3に5Gとは?、図4に4Gと5Gとの性能比較図を示します。

 

図1 情報通信インフラはインターネット(光ファイバとモバイルインターネット)

 

図2 モバイル通信システムの進化

 

図3 5G(第5世代モバイル通信システム)とは?

 

図4 5G(第5世代モバイル通信システム)とは?

 

 次に、情報通信インフラの世代交代と同期して起こっているのが情報発信源としてのデータセンターの世代交代です。インターネット接続環境とモバイル通信環境の進化に合わせて多くの情報提供事業者が、データセンター上にそのサービス基盤を構築してきました。このたび開設した新大手町データセンターは、正にAI時代とCASE時代に対応した5Gデータセンターであると言えます。図5に、当社の進める5Gデータセンターの時代背景について、図6に、5Gデータセンターの強力な顧客基盤とパートナー基盤について示します。図7に、当社のCASE時代の5Gデータセンターでの新たな取り組みとしての「次世代サプライチェーンの構築」プロジェクトについて示します。

 

図5 ブロードバンドタワーの進める5Gデータセンター

 

図6 5Gデータセンターの強力な顧客基盤とパートナー基盤

 

図7 5Gデータセンターでの新たな取り組み「次世代サプライチェーンの構築」

 

 以上に述べたように、新大手町データセンターは、AI時代とCASE時代に対応した5Gデータセンターとして、キャリアニュートラルなデータセンターの特徴を活かしてソフトバンク株式会社を始めとするほぼ全ての通信キャリアをはじめ、ヤフー株式会社、株式会社Preferred Networksはじめ多くの先端的企業によって顧客基盤が整備され、顧客の拡張性を考慮して、段階的に顧客獲得を進め現在約70%の利用が決まっています。・・・また、広域での事業展開をしている株式会社アット東京(セコムグループ)と新大手町データセンターと両社の広域データセンター利用顧客への利便性を図る共同事業を開始し致しました。AI+CASE時代の5Gデータセンターを全産業デジタル化時代の拠点として皆様と共にイノベーションを起こしていきたいと考えております。

 

2019年6月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

 

 

 

 

 

5G/IoT通信展特別公演『5Gにおける新たなビジネスチャンス』を終えて

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~5G/IoT普及に必須!最先端の無線通信技術展~

 

 私は、去る7月19日に、第2回目を迎えた「5G/IoT通信展」(主催:リードエグジビションジャパン株式会社、以下、「リードエグジビジョンジャパン」)での特別公演を依頼されました。事前登録制で約1,000人の方々に聴講して頂きましたので、その様子をお伝えします。

 

●5G/IoT通信展とは?

 本展示会は、5G/IoTに関わる具体的な商談を目的にしたものであり、主催者によると、その趣旨、出展、来場対象については、以下のようなものです。

 「IoTが普及すると、スマートフォンやタブレットなどの情報端末だけでなく、家電、自動車、看板など、あらゆるものがネットワークにつながり、今までとは比較にならないほど、通信データ量が膨大になります。 この課題を解決するために5GやLPWAなどの次世代モバイル通信の整備が期待されています。 本展はIoT社会の実現に不可欠な見本市として、盛大に開催します。」(主催:リードエグジビションジャパン)

【出展対象】

無線通信システム、アンテナ、電源、部品、計測機器などモバイル通信技術を扱う企業

【来場対象】

通信事業者、データセンター事業者、ネットワークエンジニアなどの技術者など

 

●私の講演の概要

 以下の目次に沿ってお話しさせて頂きました。

〇目次

1.5Gに対する私の立場

2.従来の情報通信インフラとの相違点

3.5Gを取り巻く社会の変化(2020年代とは?)

4.5Gを取り巻く技術の変化(ライフ/ビジネススタイル)

5.各産業分野別の5Gを活用したビジネスチャンスとは?

 

〇内容

1.5Gに対する私の立場

 私の立場として、1980年から10年ごとに世代交代する第5世代モバイル通信システムに関して、3つの総務省における有識者会議に参加し政策立案に参加してきたことです。

 

①「電波政策ビジョン懇談会」

 2014 年1月から、総務副大臣及び総務大臣政務官の主催により計14 回の会合を開催、16名のメンバーの1人として参加し、6年後の2020年に増やすべき電波帯域の確保と新電波産業の創生についての結論を出しました(610MHz〔当時〕を2000MHzに増加、2030年の電波直接産業34.5兆円と電波利用産業49.5兆円)。

 このことは極めて重要で、4Gと異なり、5Gでは、通信キャリア市場よりもそれを活用する電波利用産業の市場規模が大きくなることを意味しています。このことが、今日の5Gに特化した5Gデータセンターの構想につながりました。

 

②「電波政策2020 懇談会」

 2016年1月から、総務副大臣及び総務大臣政務官の主催により計4 回の会合を開催、10名のメンバーの1人として、またサービスワーキンググループで計12回の会合に参加し、5G時代に適合する電波利用料制度(約700億円/年)の在り方について議論しました。私の意見として、電波帯域の利用について放送事業者と移動通信事業の電波利用料負担の公平性に対して、移動通信事業の電波利用料の引き下げを提案させて頂きそれが答申に盛り込まれたことをお話させて頂きました。

 

③ 新世代モバイル通信システム委員会

 2017年1月から、総務副大臣及び総務大臣政務官の主催により計13回の会合を開催、21名のメンバーの1人として参加しました。またローカル5Gワーキンググループでは、当社スタッフ1名が参加し、具体的な免許付与のために、5Gの基本コンセプト、ネットワーク構成、4Gから5Gへの移行、5G用の周波数、5Gの技術的条件等について議論しました。この結果、2019年4月に全国免許が4社に付与されました。また、今年度中にローカル5G免許が付与される見通しとなっています。

 

2.従来の情報通信インフラとの相違点

 5Gは、4Gまでと異なり、ビーム多重とミリ波帯利用の技術を導入したことで、4Gと比較して、速度10倍、遅延時間1/10、多地点同時接続密度10倍、消費電力1/3、伝送容量1000倍(ユーザー数×伝送速度)、モビリティ500㎞/hの特徴があること。用途がスマートフォンだけではなく、自動車、産業機器、ホームセキュリティ、スマートメーター、その他IoT分野に及ぶこと。また、ローカル5Gは、これまでにない地域限定の通信キャリア免許で、CATV局、工場、ビルオーナー、スタジアムなどの保有者、運営者に与えられ新産業を創出する起爆剤になることをお話ししました。

 

3.5Gを取り巻く社会の変化(2020年代とは?)

 1994年のインターネットの商用化以来、日本のGDPだけが伸びが止まっていること、日本の企業から新たな技術革新が生まれていないこと。人口減少をGDP減少の理由に挙げる向きがあるが、それは、間違いで、イノベーションを起こすことしか経済発展の道はない、むしろ人口減少を逆手にとって、IoTやAIを一気に導入するチャンスが日本に来ていること。実際、5G時代を迎えて日本のIoT市場は、世界でも大きく年15%の成長市場であることについて指摘させて頂きました。

 

4.5Gを取り巻く技術の変化(ライフ/ビジネススタイル)

 5Gと相互作用する技術は、IoT、ビッグデータ、AI、ロボティックス技術であり、第4次産業革命は、あらゆる産業のデジタル化=デジタルトランスフォーメーションをもたらすこと。その結果、ヘルスケア、移動、サプライチェーン、街づくり、フィンテック分野に革命が起こるというお話をさせて頂きました。

 

5.各産業分野別の5Gを活用したビジネスチャンスとは?

 2018年頃からの働き方改革、2020年頃からの生産性改革、2025年頃からのヒトの補完、2028年頃からの完全自動化、2030年頃からのAI/ロボットの生活への浸透という新たなトレンドが起こること。特に5Gによって、スポーツの楽しみ方、救急医療、買い物、防災・減災、地方での暮らし、街歩き、仕事のやり方、クルマのナビ、クルマの役割、空港/駅が大きく変わること。そのような時代の変化に向けて、当社が総務省予算で、名古屋大学・東京工業大学・東京大学・名古屋工業大学・NTT研究所・パナソニックセミコンダクター・情報通信研究機構と共に、「窒化ガリウムを用いた5Gデバイスの研究開発プロジェクト」の取りまとめ役を担っていること。5Gを活用した全産業デジタル化のビジネス拠点として5Gデータセンター=新大手町データセンターを開設し、いよいよ運用が始まることについてお話させて頂きました。

 

●おわりに

 約1,000人の方々は、メモを取られながら大変熱心に聴講され、終了後、多くの方々と名刺交換をさせて頂きました。特に、5G時代の特徴の1つになると思われるのが、製造業の方が5Gデバイス、機器を作るだけではなく、モノづくりにどう5Gを使うのか?出荷後のモノを5Gでどうつなぎどうメンテナンスするのか?ということに対するご質問を多く頂きました。限られた時間でしたので、あまり多くお答えする時間はありませんでしたが、具体的なビジネスの話題でその続きを・・・ということで、講演会を終了しました。

 

 

 

 

 

2019年7月30日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

 

徳島発ブロードバンドタワーの新事業創生について

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~あの伝説のITベンチャー=ジャストシステム発祥の地~

 

 私は、福岡県生まれの京都育ちですが、皆様にとってもそれぞれに大切な故郷がおありかと思います。故郷の話題に触れた理由は、日本経済の最重要課題の1つが「地方創生戦略」にあるからです。ブロードバンドタワー(以下、当社)も、日本の大半の上場企業と同様に、本社を東京においていますが、日本経済にとって重要な企業であり続けるために「地方創生戦略」への関わりを重視したいと考えております。

 そこで、今回は、徳島が、当社にとって重要な地域の1つだというお話をさせて頂きたいと思います。

 

●徳島県とは?
 徳島県は、四国の東部に位置する県で、県庁所在地及び最大の都市は徳島市。総務省時代に有識者会議の担当をされていたことから懇意にさせて頂いている飯泉嘉門さんが知事を務められ、人口約73万人(44位)、面積4147㎞2(36位)、人口密度177.6人/7㎞2(35位)、県内GDP 2兆8,389億円(43位)、人口千人当たりGDP 36.14億円(20位)となっています。全国平均と比べて突出した統計数値をあげると人口当たりの病院総数3位、歯科医師数2位、薬剤師数2位、医師数1位、世帯当たりの有価証券現在高2位などがあります。
 図1に示すように、農業が盛んな県ですが、他にも次のような1位の項目があります。LEDの生産量1位(世界1位)、ワカメ全国生産量1位、吉野川2年連続全国清流ナンバーワン (2012,13年度)、鳴門の渦は世界レベルで世界三大渦潮の一つ、すだちの収穫量圧倒的1位(7,296.4トン)などです。
 

徳島県の地域別農業生産物

 

●私と徳島県の人々との関わりについて
 ずいぶん昔から親しくさせて頂いていて、ニッポンのジョン・ドーアと私が認識しているベンチャーキャピタリストの村口和孝氏との出逢いから始まります。村口さんは、現在、当社の社外取締役です。ところで、ジョン・ドーアは、アメリカの伝説のベンチャーキャピタリストで、クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ〔KPCB〕パートナーで、Google・Amazon・Twitter・Uber・コンパック・ネットスケープ・サン・マイクロシステムズなどの投資実績を誇ります。
 村口さんは、1984年に大学卒新入社員として、野村證券系VCジャフコに入社し、アインファーマシーズ、ジャパンケアサービス、共成レンテム、福原、松本建工、PALTEK、ブロッコリー (企業)などの上場に関わられました。その後、独立され、1998年に日本初となる個人型NTVPi-1号投資事業有限責任組合を立ち上げられました。NTVPの投資成功例として、ディー・エヌ・エー(DeNA、2005年2月東証マザーズ上場、現在東証一部)、インフォテリア(2007年6月東証マザーズ上場)、エイケア・システムズ(2010年1月エクスペリアン社に売却)、ウォーターダイレクト(現・プレミアムウォーターホールディングス。2013年3月東証マザーズ上場、現在東証二部)、アイ・ピー・エス(2018年6月東証マザーズ上場)などがあります。
 当社は、村口さんがリードインベスターを務めて会社の成長に尽力してこられた2社を連結子会社化しています。その1社が、株式会社ティエスエスリンク(以下TSSリンク)です。もう1社は、ジャパンケーブルキャスト株式会社です。また、戦略的に資本業務提携を行っている株式会社電脳交通(以下電脳交通)があります。

 

●TSSリンクと当社について
 2019年から当社の100%子会社となったTSSリンクは、1999年11月1日創業のサイバーセキュリティ技術の会社で、情報漏洩対策ソフト「コプリガード」/「トランセーファー」/「パイレーツバスター」/「セキュアプライム」など情報セキュリティ製品を開発/販売、「セキュリティバックアップサービス」など情報セキュリティサービスの提供を行っています。本社は、徳島県徳島市沖浜東3丁目にあります。
https://www.tsslk.jp/company/
 では何故、TSSリンクが、徳島に設立されたかというと、TSSリンクのメンバーが、あの一世を風靡したジャストシステムの出身者が中心となっているからなのです。
 ジャストシステムは、私も懇意にさせて頂いてきた、浮川和宣・初子夫妻が1979年に、初子さんの実家の徳島で創業したことに始まります。1983年にNECのPC-100でアスキーが仲介して「JS-WORD」が採用されたのを契機に、本格的なワープロ開発に乗り出し、1985年(昭和60年)に同社の看板製品となる「一太郎」を発売したのでした。その頃、私は、アスキーがマイクロソフトの独占代理店としてマイクロソフトF本部の仕事をしていたのでよく覚えています。一太郎は、マイクロソフトOS(DOS)の最高のアプリケーションとして、バージョンアップを重ねるごとに人気を高め、一太郎はDOS版日本語ワープロの代名詞的存在になったのでした。
 ジャストシステムは、また、コンピュータ上の日本語処理について熱心に研究しており、同社のかな漢字変換ソフトウェア「ATOK」は高い変換精度を有し圧倒的な支持を得ていました。また、インターネット時代に入ると、ウェブXML関連技術の研究開発にも積極的でGoogle、マイクロソフト、アップル、IBM、サン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカードらとUnicodeコンソーシアムに参加していた日本で唯一の企業でした。その後、2009年に株式会社キーエンスの傘下となり、今日に至っています。このように徳島に40年間にわたって日本を代表するオリジナル・ソフトウェア開発を行ってきた歴史が、ソフトウェア大県=徳島を創生したのでした。
 このようにTSSリンクは、ジャストシステムを源流とする日本産オリジナル・ソフトウェア発祥の地=徳島に立地している企業なのです。今後は、私の名前の付いたイスラエルのテクニオン(イスラエル国立工科大学)にあるHiroshi Fujiwara Cyber Security Research Center(准教授以上60名、総勢250名)と連携し、新たなサイバーセキュリティ技術の開発に挑戦したいと考えております。

https://cyber.technion.ac.il/home/

https://wirelesswire.jp/2018/02/63471/

http://www.cs.technion.ac.il/people/staff/#2a

 

●電脳交通と当社について
 株式会社電脳交通は、徳島県徳島市川内町平石若宮に本社を構え、2015年12月に近藤 洋祐氏が、実家のタクシー会社を継いだ後、新たに創業したベンチャー企業です。
 近藤洋祐社長は、高校時代からメジャーリーグを目指して野球に熱中していたそうです。そして、米アイオワ州オタムワにあるインディアンヒルズ・コミュニティカレッジ(IHCC)に留学し、野球漬けの毎日を過ごし、日本のプロ野球を経由せずに、直接メジャーリーガーを目指していたとのこと。あいにく、メジャーへの夢はかなわなかったようですが、2010年に日本で祖父のタクシー会社(吉野川タクシー)を引き継ぎ、新たな人生を歩み始めました。そして、ついに、2015年に電脳交通を創業し、斜陽産業のタクシー業界でひと際目立つ経営革新を行っている人なのです。
 吉野川タクシーの特徴は、徳島県で唯一、外国語通訳サービスを採用している(30ヶ国語以上)ことで、外国人観光客に喜ばれています。また、妊産婦送迎サービス「マタニティータクシー」は、妊産婦に優しい設計の専用車両で、運転手はヘルパーの有資格者です。こうして、徳島で大人気のタクシー会社となっています。  
 タクシー会社の経営経験を経て創業したのが電脳交通です。その特徴は、クラウド型コールセンター(24時間365日)の運営です。タクシー会社とタクシーの間に電脳交通のコールセンターを経由することで、最短、最速、最安を実現するのです。これまでの配車の流れは、乗客→タクシー会社→タクシーでしたが、クラウド型コールセンターでは、乗客→タクシー会社→コールセンター→タクシーとなります。タクシーにタブレット端末を設置し、そこにコールセンターから最適な情報が送られてくることで、効率的な配車が可能になると共に、広告ビジネスとの連動が可能です。電脳交通には、当社の他にJapan Taxi(日本交通グループ)、NTTドコモ、JR西日本と資本業務提携をしています。当社は、データセンター、クラウド、AI分野などに関して、協業することとしました。そして、同社を、クルマを売り切るのではなく、「移動」機能を提供するMaaS(Mobility as a Service、運営主体を問わず、モバイル・インターネットを活用することにより自家用車以外の全ての交通手段による移動を1つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ新たな『移動』の概念)分野における戦略的パートナー企業として位置付けております。
http://www.cybertransporters.com/about/
 

写真:左から電脳交通近藤洋祐社長、私、当社の樋山洋介取締役と。電脳交通本社にて。

 

●おわりに

 今回は、「徳島」と当社のビジネスとの関係についてのお話をさせて頂きました。今回ご紹介した徳島発の当社のサイバーセキュリティビジネスとMaaS関連ビジネスの成長にご期待頂きたいと思います。

 

 

 

 

『北欧デジタルトランスフォーメーション(DX)事情調査団』20名の団長として

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~ストックホルム(スウェーデン)・ヘルシンキ(フィンランド)・タリン(エストニア)~

 当社は、情報通信業界を主導する立場にあること(私は一般財団法人インターネット協会の理事長を務めております)、また、情報通信のユーザー業界からの要望が強いため、業界横断的な海外視察調査団の組成を行っております。これまで、世界のイノベーション拠点イスラエルとアジアのシリコンバレー深センを訪れました。
 今回は、海外調査のコラボレート研究所と連携して5G利活用先進地域の北欧にフォーカスした調査を行いました。私自身が団長を務め、関連業界の皆さん(通信キャリア、総合電機、不動産、監査法人、SIer等)に呼びかけ、5G、スマートシティ、MaaS、電子政府など情報通信とその利用において、特に今回の北欧の3か国が世界をリードするDXに関する技術・ビジネス動向の調査に出かけてきましたのでその概要についてお伝えしたいと思います。
https://www.collaborate.co.jp/cken-tour/345-tour431.html

1. 調査団の概要
■今回の調査目的
(1)デジタルトランスフォーメーション時代を先取りしたビジネスモデルの動向調査
(2) IoT/AI関連スタートアップ企業の動向
(3)5Gを利用したサービス開発の動向調査
(4)次世代モビリティ・プロジェクト(MaaS)取り組み動向
(5)キャッシュレス社会を支えるFintech企業の動向調査

■調査団スケジュール
9月5日(木)成田発 ストックホルム着 【ストックホルム泊】
9月6日(金) 
~スウェーデンにおけるIoT/AI関連スタートアップ/フィンテック動向~
・Epicenter(スウェーデン最大のアクセラレーター)①
・スカンジナビスカ・エンスキルダ銀行② 
~スウェーデンの5G利用サービスの動向~
・Telia社(通信キャリア) の進める5Gプロジェクト調査 ③【ストックホルム泊】
9月7日(土) ストックホルム発 タリン着 【タリン泊】
9月8日(日) Planetway社訪問④【タリン泊】~エストニアにおける電子政府~
9月9日(月)~エストニアにおけるIoT/AI/フィンテック関連スタートアップ~
・Bolt(旧Taxify社、ライドシェア事業を世界27カ国で展開)⑤ 
・Wallester社、VISAカード向けFintechプラットフォーマ)⑥
・Lift99 (政府系スタートアップ支援組織)⑦
・タリン工科大学のMEKTORY(Modern Estnian Knowledge Transfer Organization for You)⑧
タリン発 ヘルシンキ着【ヘルシンキ泊】
9月10日(火)ヘルシンキ周辺 
~フィンランドにおける5G利用サービスの動向~
・Elisa社(通信キャリア)⑨
~フィンランドにおける5G、IoT/AI関連ビジネスモデル動向~
・Sensible4自動運転電気自動車バス試乗⑩
・Roboride社「ファーストマイルとラストマイル」における自動運転ソリューションスタートアップ⑪
~次世代モビリティ・プロジェクト(MaaS)取り組み動向~
・MaaS Global社 
MaaS(Mobility as a Service)を世界初都市交通でMaaSを実現した企業の「Whim」体験⑫
【ヘルシンキ泊】
9月11日(水) 
・Forum Virium Helsinki社訪問⑬
 ヘルシンキ市の保有する非営利企業でスマートシティプロジェクト推進企業
空路帰国の途へ 【機中泊】
9月12日(木)東京(成田)着 解散

2.訪問先の調査結果の概要(以下の13か所)
(1)スウェーデン
●Epicenter①~スウェーデン最大のイノベーション・アクセラレーター~
 ここは、コワーキングスペースと似ていますが、コンセプトが異なり、極めてユニークなイノベーション拠点となっています。オランダとフィンランドにも進出しています。
 すなわち、以下の3つの拠点の役割を果たしているのです。
1)スタートアップの起業 2)大企業のイノベーション 3)企業間連携
以下のような対象企業が入居しています。
〇主なスタートアップのフィールド:フィンテック、ヘルスケア、メディア、IoT、フードテックなど。
〇外部の大企業と入居するスタートアップとの交流環境作り
⇒Spotify、Klarna などの注目企業がEpicenter メンバー企業と連携を拡大中。
 

 

●スカンジナビスカ・エンスキルダ銀行②~キャッシュレス+支店廃止でデジタル化に成功~
 160年の最古の歴史を持つスウェーデン初の民間銀行SEB(スカンジナビア・エンスキルダ銀行)は、スウェーデンのキャッシュレス化とスマートフォンによるデジタルサービスで一気に時代の最先端を走っています。
21世紀の銀行の最先端モデルとして走るSEB銀行から3つの説明がありました。第1に現金流通量の世界のトレンド、次にSEB銀行が実現した2つのことです。1つが、Mobile Bank IDとQRコード決済アプリSwishです。
世界の先進国で現金流通量の対GDP比は、日本がダントツ(?)20%、EURO地域10%、アメリカ8%、韓国6%、イギリス・オーストラリア・カナダ・ブラジル5%ですが、キャシュレス化のトップを走るスウェーデンは、なんと1%です。デジタルスウェーデンとアナログ日本では、銀行の役割が全く異なるのです。
 


●Telia社(通信キャリア)③ ~5Gサービスで最先端を走る北欧のNTT~
 Telia社は、エリクソン社のスウェーデンとノキア社のフィンランドの旧国営企業が合併した企業です。5G本部長のAndreas Dehiqvist氏から話を聴くことができました。以下に示す重要なメッセージが届けられました。
 〇スウェーデンにおける5Gの5つの位置づけ
1)産業界の44%が5Gに取り組む、 2)23%が1年以内に65%が2年以内に5Gに取り組む
3)産業界の2番目のニーズがクラウドコンピューティングで7番目がAI/機械学習
4)2つの重要な5Gの要素がサイバーセキュリティと運用効率化
5)5Gへの期待の1位QoS(Quality of Service)・2位サイバーセキュリティ強化・3位低遅延
〇Teliaが考える5Gのメリットは以下の6点にあるとのことです。
1)高速性:最大20Gbps、2)大容量性:10Mbps/sqm、3)リアルタイム性:1~10ms
4)信頼性:99.999%、5)エネルギー効率:最大100倍、6)セキュリティ向上:スライシング
〇Teliaが行う5G導入のステップ
1)2018年技術検証、2)2019年パートナープログラム、3)2010年商用サービス
〇Teliaが行う2つのユーザー企業との5Gパートナープログラム
1)オープンイノベーション環境整備、 2)カスタマードリブンの環境整備
 この2つが商用実験には、産業界から8社(Volvo社、Boliden社など)、公共関係2団体、大学3大学が参加しています。この中で、Volvoは、5Gを用いた建設機械の自動運転に応用し、イノベーションでは、AR(拡張現実)プロジェクトが成果を上げており、一般商用サービスは2020年から開始されます。




(2)エストニア
●Planetway社訪問④【タリン泊】
 日曜日でしたが、無理を言ってエストニア電子政府開発を担当したラウル・アリキヴィ氏(現在は、コンサルティングのPlanetway社を創設)とエストニア電子政府はなぜ成功したか?日本は、何をすべきか?について語り合いました。以下にその概略をまとめます。
〇エストニア電子政府の成功要因とは? 
1)ソ連時代の遺産を活用
 バルト3国のなかでは、エストニアがIT関連を担っており、ラトビアは自動車や造船、リトアニアは電子産業を分担。そのため、同国には人工知能などを研究していた最先端技術の研究所(サイバネティクス研究所)があった。
2)領土を必要としない国家の構想
 現在も「いつか再び国土が支配されるかもしれない」という危機感が強い。たとえ国が侵略されて物理的に「領土」がなくなったとしても、国民の「データ」さえあれば国家は再生できるというのが政府の考え。エストニアは、国のあらゆるデータを国外の大使館にて保管する「データ大使館」という構想を進め2018年にはルクセンブルグに最初の拠点が開設。
3)低い人口密度での行政の効率化にIT
 人口密度は1キロ平方メートルあたり30人と低く、領土内には島も多く全国民行政や銀行のようなサービスを提供するには非常にコストがかかる。役所やATMなどを設置するよりインターネットを活用して各サービスを電子化 。
〇エストニアの電子政府進捗率
1)所得税申告オンライン96%、 2)電子的政府企業間コミュニケーション80%+
3)学校・政府機関のブロードバンド率100%、 4)無料WiFiスポット1100+、
5)インターネット人口普及率88%、6)企業のインターネット/コンピュータ使用率96%+
 


●Bolt社(世界27カ国で展開)⑤ ~Uber、Lyftと異なるエストニア流のモビリティサービス~
 創業者が語った以下のモチベーション。
〇現在2500万人、90以上の都市、30か国以上。
〇ユニコーン(時価総額1000億円以上の未上場)の仲間入りをしている
〇世界の交通機関の売上は12兆ドル以上(1300兆円)
〇交通機関は世界の30%の二酸化炭素を排出
〇ヨーロッパの人々は38分かけてクルマで通勤
〇人口1000人当たりエストニア534台クルマ保有/アメリカ910台保有
  ⇒乗っているのは5%時間だけで、95%は駐車場に停車⇒あなたは車は必要?
  ⇒世界のある町ではクルマの8倍の駐車場
〇オンデマンド・カー: 2018年4%→2019年28%
〇成功要因は?⇒勤勉で優秀なエストニアで事業をタイミングよく始めたから。
〇UberやLyftは、事業拡大で赤字が続いているが、Boltは?
  ⇒赤字と黒字の地域があり、特にうまくいっているのは、南アフリカ
〇私からのコメント:Boltの強みは、正にエストニアのIT分野の技術力の高さとシリコンバレーと比較して負けるとも劣らない研究開発エンジニアの優秀さと勤勉さにあると感じました。Boltは、今後世界のライドシェア市場で目を離せない存在となることでしょう。
 


●Wallester社⑥ ~発行コスト1/30 VISAカード向けFintechプラットフォーマ~
 同社は、エストニアにおけるVISA発行コストを大幅に低減させました。今後北欧他国へ展開。
〇従来のVISAカード発行会社の位置づけ
 1)3つ以上のパートナーが必要
 2)12か月以上の期間が必要・新サービス追加に3か月以上必要
 3)100万ユーロ(1.2億円)+50~75%メンテナンスコストかかる
〇Wallesterの位置づけ “Simple, Fast, Afffordable”
 1)パートナー1社だけ(Wallester)で済む
 2)3か月でカード発行・新サービス追加に1~2週間で済む
 3)30000ユーロ(360万円)で済む
〇私からのコメント: フィンテックにもこのようなアプローチがあるのだという不思議な新鮮さを感じました。「クレジットカードは、もう古い?」ではなく、今の決済基盤となっているクレジットカードの抱える課題を見つけ地道にコツコツと古くて新しいFintechによって解決していく姿、これぞ1つのエストニアの持つ側面だと感じました。
 


●Lift99 (政府系スタートアップ支援組織)⑦~ここから4社のユニコーンが育成された!~
 エストニアでの次なるテーマは、エストニア発のベンチャー企業の育成のエコシステムを確立しつつある同国の秘密を探ることでした。私たちを出迎えてくれたのは、経済通信省が支援するLIFT99のマーリカ・トゥルウ女史(Maarika Truu)で、世界的なスタートアップ先進国に躍り出ようとしているエストニアの原動力がここにあります。
〇エストニアのスタートアップ概況  
650件で、そのうち130人にスタートアップVisaが発行。
スタートアップのうちで外国人18%、女性15%。
スタートアップで新たな4900人の雇用(うち外国人女性46%、外国人20%)
スタートアップで2019年前半で32.7M?(約35億円)雇用税:2018年通年の72%
直近12年間で1.1B?(1300億円)資金調達(外国からの投資90%)
6社のユニコーン(時価総額1000億円以上未上場企業)が誕生
⇒Skype、Playtech、TransferWise、Bolt、monese、piperdrive
〇私からのコメント
 LIFT99は政府系起業支援組織で、活動費の出どころを聞いたところ、1.5M?(1.7億円)/年x5年間の予算(合計7.5M?=8.5億円)とのこと。旧ソビエト連邦時代の工場跡地をカラフルな先進的なデザインで生まれ変わったLIFT99は、エストニアならではの経済発展の原動力になっています。
 


●タリン工科大学のMEKTORY(Modern Estnian Knowledge Transfer Organization for You)⑧
 エストニアに到着での次なるテーマは、アカデミアがどのように産業創出に取り組んでいるかを探ることです。そこで、エストニアの最高学府タリン工科大学TATECのイノベーション組織MEKTORYを訪問し、以下のことが分かりました。
〇本組織内を見学しました。6年前にここに引っ越し実にユニークな場所でした。(写真参照)。
〇企業や各国の大使館が支援しており、設備・環境がとても充実しています。
〇Ericssonは、大学キャンパスに5Gネットワークを敷設。
〇三菱自動車は、電気自動車を500台提供。
〇Samsungは30台タブレットを提供し電子政府プロジェクトを支援。
〇子供教育には、10?/人親から費用徴収。
〇北欧らしいサウナ付きのミーティングスペースなどもありました。
〇学生が4年かけて衛星を完成:
1号機2019年夏ロシアのロケットで打上げ/2号機は2019年秋米国ロケットで打上げ予定
〇エストニアは教育先進国
1)PISAテストでヨーロッパ1位
2)OECD科学スキルで世界3位
3)OECD数学スキルで世界9位
4)エストニアeスクール導入率85%
〇エストニアのデジタルビジネス環境の良さ
1)98%企業がオンライン
2)99%ネットバンキング
3)95%ネット納税申告
4)e-Residensyでグローバル企業にとっての活躍の場を提供
〇私からのコメント
 タリン工科大学(Tallinn University of Technology )は、高度なエンジニアリング、技術研究とイノベーション関連分野に重点をおいています。1918年創立で約100年の歴史です。学生数でエストニアで二番目に大きい大学、首都で最古で最大の国立大学です。また、エストニアで最も国際的な組織でもあり、これまで国際的な認定プログラムによる留学生を最も多く集めています。 ここが、エストニアのIT立国を支えているアカデミアの総本山なのです。
 


(3)フィンランド
●Elisa社(通信キャリア)⑨~5Gで世界を先導するフィンランドの通信キャリア~
通信強国フィンランドのElisaは既に商用5Gサービスを始動、1Gbps5Gサービスは月額5000円!~
 Elisa社は、フィンランドとエストニアをサービス地域とするモバイル通信キャリアで、5Gで最も先行する企業です。同社は、2018年8月に他社に先駆けて5G対応サービスネットワークの提供を開始したと発表し、世界を驚かせました。実際に、Elisaの5Gネットワークを使って同国のAnne Berner運輸通信大臣がビデオ電話をかけました。この5Gネットワークが使えるのは、フィンランド第二の都市タンペレと、エストニアの首都タリンで、Berner大臣が電話をかけた相手はエストニアのKadri Simson経済インフラ大臣でした。国境を超えての5Gビデオ通話となったとのこと。あの衝撃的な発表から1年が経過しました。以下に同社の概要を示します。
〇1882年フィンランド初・世界初の電話サービス
〇1929年ヘルシンキで電話サービスを自動化
〇1991年GSM携帯電話サービス開始
〇2007年3Gモバイルサービス開始
〇2010年4Gモバイルサービス開始
〇2015年IoTサービス開始
〇2019年商用5Gサービス開始
〇Elisaの基本指標
 売上:1.83?(2000億円:2018年)〔前年1.79〕
 1株当たり利益:1.95?〔前年1.86〕
 移動通信加入者数:4.66M〔前年4.68〕
 固定ブロードバンド加入者数:696500〔前年692300〕
 顧客数:2.8M(フィンランド+エストニア)
 顧客満足度(NPS、2018年):25.4〔前年21.1〕
株主数:185000
 従業員:4800〔前年4700〕
 市場順位:フィンランド1位、エストニア2位
〇Elisaは5Gの先駆者(forerunner)である。
 ⇒2016年8月フィンランド初の5Gデモ/ 12月大規模IoTテスト
 ⇒2017年1月新アーキテクチャ5Gテスト/ 4月世界初3.5GHzで5G技術テスト
 ⇒2017年8月Tampereにて初の5G準備/ 北欧初の固定無線ブロードバンド
 ⇒2018年2月世界初の3.5GHzプリ商用化5Gデバイスを結合したテスト
 ⇒2018年3月5G TurkuにてReady
 ⇒2018年4月フィンランド初の全国大規模IoTネットワークがReady
 ⇒2018年5月Jyvaskylaにて5G Ready
 ⇒2018年6月世界初の商用5GサービスをTampereで開始
 ⇒2018年11月Tampere、Turku、Jyvaskylaに高速ネットワーク構築
 ⇒2019年1月5G商用化
〇私からのコメント
 1882年創業のフィンランドの通信キャリアであるElisa社は、想像以上に5Gサービスについて深く考え、いち早く実行に移していました。その背景には、データサイエンス、AI、アジャイル開発手法など最新技術を取り入れると共に、検証を着実に行っているように感じました。その意味で、前にご紹介した北欧を代表する政府が株主のTelia社とは、また違った魅力的な通信キャリアだといえます。「量より質」という観点から、ある面においては、Telia社よりも進んでいるという印象を受けました。
 


●Sensible4自動運転電気自動車バス試乗⑩~公道の自動運転時代は、もう始まっている!~
 フィンランドが、MaaS(Moblity as a Service)発祥の地*だということは、あまり知られていないように思えます。*MaaS は、MaaS Global社CEOのSampo Hietanen氏が提唱した概念。

*MaaS(Mobility as a Service):インターネットとモバイル通信を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ 新たな「移動」の概念であるといえます。
当調査団は、この公道を走るシャトルバスに試乗しました。
〇無印良品を展開する良品計画は2018年11月1日、フィンランドにおいて2020年の実用化を目指す自動運転バス「Gacha(ガチャ)シャトルバス(仮称)」に車体デザインを提供したことを発表。
〇Gachaシャトルバスは、自動運転技術の研究開発を行なうフィンランドの企業「Sensible 4」が、ヘルシンキ周辺の3都市「エスポー」「ヴァンター」「ハメーンリンナ」のサポートを受け開発を進めている、あらゆる気象条件下でも機能する世界初の自動運転バスです。
〇世界でも、大雨や霧、雪の気象条件下での自動運転車両の実用化には至っていないのが現状。
〇「すべての自動運転車は、実用化の前にあらゆる気象条件での走行が可能であることを証明する必要があることは明白である」として、Sensible 4は北極圏のラップランドにおいて技術テストと検証中とのこと。
〇私からのコメント
 初めて公道を走る自動運転車に乗りました。なかなかスグレモノだと感じました。前方の交通状況に応じて、おとなしく運転している安全自動運転車です。Sensible4社は、フィンランドの会社らしく、社会福祉的な観点からではなく、収益事業として挑戦していることに感心しました。新しいテクノロジーの持っている本質を、「勝負」ではなく、あらゆる企業と連携して目的を達成する「意義」の中に見出そうとする人々なのだと感じました。
 


●Roboride社「ファーストマイルとラストマイル」自動運転ソリューションスタートアップ⑪
電気自動車 自動運転オペレータのRoboride社とMaaSプラットフォーマのKyyti(クーティ)社との会合を持ちました。
〇Roboride社のサービス
 ラスト1マイルの輸送サービスで、都市化と気候変動が続く中で、化石燃料ではなく電動化が求められています。そこで、当社は、顧客に対して1stとラストマイルの電気自動車自動運転のターンキーソリューションを展開しています。以下の適用分野を対象としています。
1)大学キャンパス⇒インドの大学の話を進めているところ
2)工場⇒Pori市の銅製造所で商用パイロット実証実験を始動。世界初の自動運転サービス。
3)ホリデーリゾート⇒中国の2022年北京冬季オリンピック会場の近くのHaituo Valleyのホリデーリゾートで車体数10(Fleet size 10pods)でプロジェクトを開始⇒本プロジェクトだけでサービスエリア=18㎞
4)大病院
〇Kyyti Group(クーティグループ)の事業概要
⇒オンデマンドのライドシェアリングサービスプラットフォームを提供
⇒ビジネス領域:欧州、米カリフォルニア州、日本市場進出に強い意欲。
⇒なぜMaaSか?
 フィンランドでも人口密度の低い地方では路線バスのような公共交通が整備されておらず、通学、通院、介護施設への往復など、生活維持のために必要となる移動については国や地方政府の負担で必要最低限の移動サービスが提供。しかし、多くの車両が乗客1名という非効率で、国や地方政府の財政負担が重く、MaaS(Mobility as a Service)などを活用した新しい社会システムによる課題解決が求められている。
⇒Kyyti社のプラットフォームの概要(4つから構成):Roboride社は本プラットフォームを利用
・Kyyti Core:ワンストップ・シームレス決済、ID管理
・Kyyti Ride:オンデマンドライドシェア
・Kyyti Route :トラベルチェーンに基づくモーダル内のルーティング
・Kyyti Share:ライドシェア用の統合プラットフォーム
〇私からのコメント
 MaaS プラットフォームの位置づけが2社の調査から明確化されました。すなわち、MaaSには、路線検索機能、サービスの統合、決済の機能がありますが、現在は、世界各国で交通システムの見直しが必要となっています。その方向性の1つが、公共交通とタクシーの間を埋めるオンデマンドシェアライドシステムです。そこには、情報収集とデータ分析が必須となることでしょう。日本では、自動車のことは自動車会社の仕事だと思われがちですが、MaaS概念では、クルマを作ることとクルマを使うことは全くの別物だということが明確化されたのでした。
 

 

●MaaS Global社のWHIM体験 :MaaS(Mobility as a Service)を世界初都市交通で実現⑫ 
 iPhoneアプリWhimをダウンロードして路面電車代を支払うと電車にも乗れて目的地までの交通手段を徒歩も含めて所要時間と時刻表も併せて教えてくれます。そして目的地の何ともモダンなヘルシンキ市立図書館を訪ねてWhimのアドバイス通りに次は、7番の路面電車に乗って帰ってきました。
 Whimは、私たちの生活を根本から変えてしまう自家用車をなくしてしまう世界初の先進的なMaaS(Mobility as a Service)で、ベンチャー企業「MaaS Global」がサービスを提供しています。
 Whimは、2016年にヘルシンキにて実証実験を行った後、正式にサービスを開始しました。毎月定額もしくはその都度お金を払ってポイントに換え、ポイントを利用することで、いくつかの交通手段から最適な移動ルートを自動検索し、私たちを目的地まで運んでくれます。予約から決済まで一括して行え、利用できる交通手段は、電車やバスのほか、タクシー、バイクシェアなど。ユーザーがスマホアプリを提示するだけで、交通手段を利用できるようになっています。
  


●Forum Virium Helsinki社訪問⑬~ヘルシンキ市の先進的なスマートシティ・プロジェクト~
 ヤン・ヴァパーヴオリ市長(Jan Vapaavuori)が2019年5月に東京都を訪問し、同プロジェクトを小池知事に説明し、東京都も大きく動き出したとされています。世界が驚く同プロジェクトを主導するのが通常の市役所所職員とは異なり、45名のデジタル専門家集団です。
〇フォーラムヴィリウム・ヘルシンキ(Forum Virium Helsinki)とは?
・2005年に未来都市を開発するオープンイノベーションを担う組織として発足
・その後スマートシティ、スマートモビリティ、オープンデータ、IoTを包含することとなった
・ヘルシンキ市が完全保有する非営利団体
・45人の専門家集団(一般市役所職員はいない)
・資金はEUとヘルシンキ市で5M?(約6億円)/年
〇フォーラムヴィリウム・ヘルシンキ(Forum Virium Helsinki)の具体的活動内容
・ヘルシンキ市とEUに関わるスマートシティプロジェクトを30実行中
・企業/サイエンスコミュニティ/市民と連携している
・ヘルシンキ市のデジタル化を担っている
・これまでの実績
 ⇒ヘルシンキ市のデータを公開
 ⇒カラサタマ(Kalasatama)地域をスマートシティに変貌させた
〇2019~2021年の戦略目標
・ヘルシンキ市の新技術利用とデジタル化力を強化する
・企業がヘルシンキ市を発展のためのプラットフォームとして活用することを助ける
・いつも新しく素早い専門家集団であり続ける
〇都市の未来を共創する仕組みとは?
 FVH(フォーラムヴィリウム・ヘルシンキ)が、以下の4つのパートナー、5つのセクション、3つのプラットフォーム、6つの事象をコーディネートすることが重要。
・パートナー:市民―企業―パブリックセクター大学/研究機関
・セクション:ニーズ/新技術―実験/実証―開発者間接続―プロジェクト組成―大規模化
・プラットフォーム:スマートKalasatamaーJatkasaariスマートモビリティ―HelsinkiオープンIoT
・事象:プラットフォーム/シェアリングエコノミー―API環境―AI/BigData―MyData―IoT―ロボティックス
〇注力しているゴミ自動収集システム
⇒地下にゴミの搬送パイプ網を作り真空にして自動的に収集する仕組み
⇒ゴミの自動搬送システム:IMU(バキューム)、Inlet(ゴミ投入口)180か所:7~10年で完成
⇒集合住宅など住宅産業がつないで欲しいというニーズに応えるインフラ整備
⇒ディベロッパーと共同で進める
〇私からのコメント
 ヘルシンキ市は、今回訪れた3つの都市の中心に位置し、西のストックホルムまでは400㎞、南のタリンまでは、85㎞にあります。面積と人口は、各々158.4平方キロメートル・65万人。同規模の市としては、最先端のスマートシティ・プロジェクトが、実行されていると感じました。その大きな理由は、従来の市役所職員ではなく、全く新たに雇用した45名の専門家集団がプロジェクトの実行主体となっていることだと思いました。
 


 

2019年9月26日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

日本工学アカデミーの終身会員に認定されました

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~EAJ:The Engineering Academy of Japan~

 

 最近少し嬉しいことがあったのでご報告させて頂きます。今年の春に、30年来のご縁がある総合電機メーカーの副社長、科学技術系の独立行政法人の理事長等を歴任された方から私を日本工学アカデミーの終身会員に推薦したいという申し出があり、これから審査に入るので受けて欲しいというものでした。

 

 私の企業経営の原点は、3つのルールにcomply with(従う、適応する)ということにあります。第1のルールは、法治国家、国際社会のルールである法律、国際法です。第2のルールは、企業活動の財務諸表等に関する会計基準です。そして、第3の重要なルールは、自然法則です。

 

 テクノロジーカンパニーにとって、最先端技術への挑戦は、極めて重要なテーマで、企業の未来を決定づけます。激しい企業間競争を生き抜くには、タイムリーなテーマを選択し、適切な資金を投入する必要がありますが、その基本は、自然法則に適合した研究開発方針とこれを決断する経営方針にあると考えております。何が適切なテーマで、これを実現するのに必要な資金は、どれくらいかかるのか?企業経営は、その最適化問題の解の探求につきると思われます。

 

 私自身、企業経営に従事する以前は、科学技術、特に業界横断的な工学研究者として活動してきました。そして企業経営に関わるようになった後は、科学技術を基盤とした企業経営を心掛けてきました。その結果、私自身が到達した、企業経営の理念は、前述の3つのルールを遵守するというものです。

 

 このたび、その自然法則というルールに関する活動が、認定されたという報告を受けました。790名の会員の仲間に入れて頂いたのですが、厳格な審査が行われパスしたとのことで、大変嬉しく思っております。

 

 以下にその日本工学アカデミーについて、基本理念と基本方針を、お伝えさせて頂きます。

 

●日本工学アカデミーの基本理念、使命及び基本方針

日本工学アカデミーは、21世紀において持続可能な発展をする社会の実現に向けた貢献をするため、その役割と活動に関する基本理念、使命、そして基本方針を以下の通り定める。

 

(1) 基本理念
日本工学アカデミーは、「未来社会を工学する」(Engineer the Future)というスローガンを設定し、人類の安寧とより良き生存に貢献する姿勢を内外に示してきた。この姿勢は、未来社会をデザインし、科学と技術開発の成果を社会に実装し、その結果を評価して、次のデザインにつなげるという循環モデルを内包する。これは、2016年に国際工学アカデミー連合(CAETS)が、“Engineering a Better World” をスローガンと決めたことや、SDGsにおける中心テーマである “STI(科学技術イノベーション)for SDGs” と軌を一にする。ここでは、視座を経済利益の優先から人間を中心に据え直す点で共通している。このような点を踏まえ、「人類の安寧とより良き生存のために、未来社会を工学する」という従来の考えを、基本理念として再確認する。

 

(2) 使命
公益社団法人日本工学アカデミーは、広く大学、産業界及び国の機関等において、工学及び科学技術、並びにこれらと密接に関連する分野に関し顕著な貢献をなし、広範な識見を有する指導的人材によって構成し、人類の安寧とより良き生存に向けて、工学及び科学技術全般の進歩及びこれらと人間及び社会との関係の維持向上を図り、我が国ひいては世界の持続的発展に資することを使命とする。

 

(3) 基本方針

  1. 専門家集団としての政策提言活動を積極的に推進する。
  2. 海外関係機関との連携・交流活動を強める。
  3. 次世代の指導的人材を育成する。
  4. 人びとの科学技術活用能力の向上を支援する。
  5. 以上のために、あらゆる壁を越えた共創を拡大する。

 「これからの日本工学アカデミーの役割」全文はこちら

https://www.eaj.or.jp/app-def/S-102/eaj/wp-content/uploads/2017/12/korekaranoEAJ_v3.pdf

 

●正会員

https://www.eaj.or.jp/app-def/S-102/eaj/wp-content/uploads/2019/07/20190515-member1.pdf

 

●活動内容

https://www.eaj.or.jp/

 

●おわりに

 添付写真のように、EAJ終身会員証と胸章が届けられたことは、新大手町データセンターにこれまでの企業の皆様に加えて、新たな企業の皆様に入って頂くことになったことに続いて、嬉しかったことの1つでした。というのは、私の経営企業にとって、科学技術の方向性をより正確に把握し、より多くの企業と連携するために、日本工学アカデミーの活動に参画できることが大きなチャンスになると考えているからです。

 

 

 

2019年10月30日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

BBTower Business Exchange Meeting(BBEM)2019を終えて

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~ブロードバンドタワーのユーザー企業様の会~

~今年のテーマ『5Gの実現と社会へのインパクト』~

 

 当社の恒例行事となりましたBBEM(Broadband Tower Business Exchange Meeting)にお集まり頂きました約200名の取引先等の招待客の皆様には、大変満足を頂きましたことに御礼申し上げます。昨年は、外部の方の基調講演をトヨタ自動車にお願いしましたが、今年は、ソフトバンクの小宮山陽夫 先端技術戦略部長に『5Gで創るモビリティの未来』についてお話頂きました。また、日本のインターネットの父で、当社の社外取締役でもある慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏には、『5Gの実現と社会へのインパクト』について、インターネット研究の立場から5Gについてお話頂きました。

 私は、新大手町データセンターの新たな主要顧客のトレンドから見た、今後の発展が見込まれるAIと自動車業界を展望して『AI+CASE時代の5Gデータセンター』と題して、冒頭に基調講演をさせて頂きました。

 そして、最後に、長らく情報通信業界の産業ジャーナリズムをリードして来られた日本経済新聞社元論説委員、前編集委員で現在MM総研所長の関口和一氏をモデレータにお願いして、3人の基調講演者に加えて、前総務省総務審議官で5G政策をリードされてきた渡辺克也氏(現 株式会社インターネット総合研究所 顧問)に参加して頂き、『全産業デジタル化が進む5G時代のビジネスチャンス』をテーマにパネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッションの議論では、関口氏からパネリストの皆さんへ以下のような質問がありました。

 

Q1:アフター5Gとビフォア5Gの違いをどのようにお考えですか?村井先生からお答えください。

【村井氏】4Gとは、異なるサブSix(3.6GHz帯)とミリ波(28GHz帯)という2つの新たな電波を使うが、サブSixは、4Gは高速化するという流れとなり、ミリ波では、全く異なる用途の領域となるでしょう。

【藤原】村井先生の指摘された技術の面に加えてローカル5Gという日本独自の政策によって、新たな新規参入と新たな用途が生まれてくれるでしょう。当社グループとしてもこのローカル5Gに関する多くのビジネスの可能性を考えています。

【渡辺氏】4Gは、結果としてスマートフォンになった、インフラ出来ないと用途が見えませんでしたが、5Gでは、米国では、光ファイバの代替の10kmメッシュネットワークなどが検討されています。日本では、全国5Gとローカル5Gとが同時進行する予定ですが、特にローカル5Gは、フリーに様々な用途開発が期待されます。

【小宮山氏】私は、技術開発が担当なので、そちらの観点からお話しますが、スマートフォン以外の応用全てが5Gに集約されるとみています。現在のテーマは、ミッションクリティカルな用途をどれだけ5Gが担えるかというものです。実績を積み上げながら、汎用基盤へ進み、5Gの広帯域化と仮想化が、進むことを期待しています。ミリ波については、一瞬にして伝送が終わるような用途ではないかと考えています。

 

Q2:5G時代には、IP(インターネット・プロトコル)が、IPv4からIPv6に変わることが予想されますが、途中で退席される予定の村井先生は、どんなことが可能になるとお考えですか?

【村井氏】先ほど、渡辺さんから18歳と81歳の違いと、81歳の課題解決にICTが貢献するという話がありましたが、正に課題解決の手段として、いくつかのことがあると思います。最近の言葉では、Trustの解決でしょうか。

 

Q3:インターネット以後は、日本は大負けだった、再び日本が輝くには、どうすればいいとお考えですか?

【村井氏】それについては、私もひと言、言わせて下さい。インターネットが生まれて、日米を比較すると、インターネットを創ってきた仲間のエンジニアが技術に注力しました。一方、アメリカでは、ビジネスに注力しました。日本は、ビジネスにあまり力を入れて来なかったように思えます。2000年からIT戦略本部を政府が作って私も参加してきましたが、ビジネスで遅れている間にGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が成長し、我々の指導した学生たちは、GAFAに就職するという状況が続いてきました。しかし、最近、少し変化は見られます。医療とか農業に関わる人々がインターネットに強い関心を寄せてくれるようになっています。

【藤原】私のところでも、医療、農業に加えて、最近思わぬ人々から相談を受けます。例えば、金融業界、あるいは、伝統工芸業界などで、ベンチャー企業の活動が活発で、デジタル技術を使った、全く新しい世界を指向しているのです。私たちの5Gデータセンターが、役立つ時がきたと考えています。後、私が、最も強い関心を持っていることのつが、今年のG20の総務省担当分の有識者会議でも話題になりましたが、「個人データは誰のものか?」という課題です。米国や中国と異なる、解決策が見い出せれば、日本にとっても大きなビジネスチャンスになると思われます。

【小宮山氏】AIにチャンスがあると見ています。爆発的に新技術が成長する時は、自由な発想がわく環境が重要だと思います。AIに関しても身近なところにブレークスルーがあると見ています。

 

Q4:5Gで、日本は、遅れていて、特に通信機メーカーの力が発揮されていないように見えますが、渡辺さんにお聞きしたいのですが、どうすれば日本のメーカーにビジネスチャンスが広がるのでしょうか?

【渡辺氏】日本が5Gで遅れているというマスコミ報道については、政府予算という意味では追い風になるという面もあります(笑)。3Gまでは、それなりに日本の通信機メーカーの活動が活発だったのですが、4G以降は、違ったところへビジネスが移っていってしまったというのが現状です。しかし、最近、やはり思うのは、リアルデータは、日本にあるというということで、最近では、電波にあまり関係のなかった業界が5Gに強い関心を示してくれています。ここに日本発の何かが生まれてくる期待感があります。

 

〇関口氏から会場の参加者に質問がないかと呼びかけたところ以下の2つの質問がありました。

Q5:5Gの通信機メーカーは、元気がないが、もう少しライトなベンチャー的な通信機メーカーの活躍の場はありませんか?

【藤原】5Gの通信キャリアインフラを直接担うWAN(広域網)分野については、ベンチャー企業では難しいと思いますが、我々のデータセンター内に目を向けると、5Gに適合するLAN(構内網)の分野で新技術が必要となっているので、ベンチャー企業の活躍の場があると思います。

 

Q6:ローカル5Gのライセンスを取る新たな新規参入事業者と全国規模の従来の通信キャリアとは、競合になるのではないですか?

【藤原】私は、競合ではなく、補完だと考えています。アナロジーとしては、インターネットが発展したのは、イーサネットなどのLAN技術が大学や研究機関で発展し、それがWANによる相互接続が行われたことです。5G時代には、正にソフトバンクさんのようなWANキャリアとローカル5G事業者との補完関係となるでしょう。技術的には、5Gは、周波数が高いために、建物の中まで電波が届かないことから、ビル、スタジアム、工場内のローカル5Gは、LANであり、それを相互接続するのがWANになるのだと思います。

 

Q7:それでは、最後に今日は、データセンターのブロードバンドタワー主催のシンポジウムでもあるので、ひと言お願いできますか。

【渡辺氏】5G時代には、データセンターへの期待は、大都市から各県、各市、各町ごとへの分散化にあると思います。

【小宮山氏】今日のテーマの全産業デジタル化によって、データセンターには、全てがクラウドではなく、色んなデータが上がってくると思っています。

【藤原】渡辺さんがおっしゃったのですが、データセンターの分散化は、かねてからの重要なテーマでした。この度、5G時代になって、超高速、多地点同時接続、低遅延という3つの特徴を有するインフラが整備される中で、私たちの5Gデータセンターを、当社の顧客やパートナー企業と共に、MEC(モバイル・エッジ・コンピューティング)に注力していく予定です。その結果、データセンターの地方分散が進むものと考えています。

 

 パネルディスカッションの後にアンケート調査を実施しましたところ、アンケート結果では、97%の方から有意義だったということでした。また、基調講演も満足度の高い評価を頂きました。今年は、特にパネルディスカッションは、モデレータに元日経新聞の関口和一さんへご依頼したことや、産業界、官庁、学術界の論客に集まって頂いたために、これまででも最高の評価を頂きました。

 

●15:00 ~ 15:40 開会挨拶・ keynote1
「AI+CASE時代の5Gデータセンター」
株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO 藤原 洋

●15:40 ~ 16:20  keynote2
●「5Gの実現と社会へのインパクト」
慶應義塾大学環境情報学部 教授
株式会社ブロードバンドタワー 取締役 村井 純様

●16:20 ~ 17:00  keynote3

「5Gで描くモビリティの未来」
ソフトバンク株式会社 先端技術開発本部 先端技術戦略部 部長 小宮山 陽夫様

●17:15 ~ 18:05  パネルディルカッション

「全産業デジタル化が進む5G時代のビジネスチャンス」
モデレータ:株式会社MM総研 代表取締役所長/元日本経済新聞社 論説委員 関口 和一様
パネリスト:

ソフトバンク株式会社 先端技術開発本部 先端技術戦略部 部長 小宮山 陽夫様
前総務省総務審議官/株式会社インターネット総合研究所 顧問 渡辺 克也様

慶應義塾大学環境情報学部 教授 村井 純様

株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO 藤原 洋

 

●おわりに

 今回の企画は、当社のマーケティング部門が担当しましたが、ご出席の聴講者の皆様から極めて高い評価を得ることができました。来年もさらに充実した内容が楽しみです。

 

 

 

 

慶應義塾大学環境情報学部 教授 村井 純様

 

 

 

ソフトバンク株式会社 先端技術開発本部 先端技術戦略部 部長 小宮山 陽夫様

 

 

 

 

 

 

前総務省総務審議官/株式会社インターネット総合研究所 顧問 渡辺 克也様

 

 

 

 

 

株式会社MM総研代表取締役所長/元日本経済新聞社 論説委員 関口 和一様
 

 

2019年11月27日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

 

2019年を振り返って

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~2020年代へ向けての準備の年~

 

 間もなく2019年が終わろうとしています。今年の1年を振り返りますと、明確に「準備の年」でした。当社は、日本初の専業インターネット・データセンター企業として、また日米合弁企業として2000年2月に設立され、20周年を迎えます。思い起こせば、ソフトバンクグループ株式会社社長の孫正義氏は、まだ、通信キャリア事業に参入される前の米国のインターネット・ビジネスをヤフーをはじめいち早く日本に導入する先導役を果たされていました。

 

 私は、1996年に株式会社インターネット総合研究所を設立し、1999年12月に東証マザーズ第1号上場を果たした直後でしたが、目論見書にもインターネット・データセンター事業を合弁で立ち上げて、その運用を受託する企業として、役割を果たすというものでした。私が、想定していた合弁パートナー(エグゾダスコミュニケーションズ社)ではなく、孫正義氏の提案でグローバルセンター社の日本法人であるグローバルセンタージャパン社(2002年に「ブロードバンドタワー」に社名変更)を設立することとなりました。あれから約20年が経過しました。その20年目の2019年という1年を振り返ってみたいと思います。

 以下に主なプレスリリースに対する私自身の想いを「⇒」の後に、述べさせて頂きたいと思います。

 

2019年12月18日 [プレスリリースBBTower] ブロードバンドタワー、「データセンター構築・運用サービス」を開始

~「データセンター」を通じて企業のDX化を支援、構築と運用、最適化をワンストップでご提供~

 

⇒新大手町データセンターの完成は、当社創立以来の大事業でしたが、若手エンジニアなどにとっても非常用発電機の設計・調達など大きな経験となりました。これらの経験値を活かして始めたのが本事業で、大規模データセンターの構築と運用代行を行う新事業がスタートします。データセンター業界では、初の試みだと自負しております。

 

2019年12月17日 [お知らせ その他] 「実績・導入事例」に「株式会社EmbodyMe」様 (データセンターサービス)を追加いたしました。

 

2019年12月9日 [プレスリリース グループ] ティエスエスリンク、Webコンテンツ向け情報漏洩対策ソフト「パイレーツ・バスター AWP Ver.10.3」を12月9日から販売開始

 

2019年12月2日 [お知らせ グループ] 当社の連結子会社であるジャパンケーブルキャスト株式会社の子会社である沖縄ケーブルネットワーク株式会社から、 一般社団法人 沖縄オープンラボラトリへの加入が発表されました。

 

⇒当社グループ入りしたジャパンケーブルキャスト社と沖縄ケーブルネットワーク社を揃って当社が加盟する沖縄オープンラボに勧誘しました。ここでは、通信キャリア、通信機メーカー、および当社グループが連携して5Gなど新技術に挑戦するために沖縄でのテストベッド構築と新規共同事業の検討を行います。

 

2019年11月14日 [お知らせ メディア・出版] 本日11月14日、Forbes JAPAN WEBにて「銀行口座を持たない20億人を幸福にするテクノロジーとは──藤原洋氏に聞く」と題し、当社代表取締役会長兼社長CEO藤原洋のインタビューが掲載されました。

 

2019年11月12日 [プレスリリース BBTower] 当社社員に「令和元年度職業能力開発関係厚生労働大臣表彰」

 

⇒当社とインターネット・データセンター業界の至宝=佐伯尊子氏が、データセンター設備技術の国際資格試験の実施などに貢献し、厚生労働大臣表彰を受けました。

 

2019年11月11日 [プレスリリース グループ] エーアイスクエア、丸紅情報システムズとコールセンター向けAIソリューション販売の代理店契約を締結

 

2019年11月8日 [お知らせ] 11/13(水)~11/15(金) 開催の「Inter BEE 2019」にて、Dell EMCブースに協賛出展いたします。

 

2019年10月23日 [お知らせ 展示会・イベント] 10月23日(水)開催の「Dell Technologies Forum 2019 - Tokyo」(主催:デル株式会社、EMCジャパン株式会社)に、ゴールドスポンサーとして協賛出展をいたします。

 

⇒恒例化したマイケル・デル氏との個別ミーティングで、有意義な共同事業に関する意見交換ができました。

 

マイケル・デル デル会長と

 

2019年10月21日 [お知らせ その他] 「実績・導入事例」に「ソフトバンク株式会社」様 (Dell EMCアイシロン)を追加いたしました。

 

2019年10月16日 [お知らせ その他] 当社筆頭株主である株式会社インターネット総合研究所の顧問に、前総務審議官渡辺克也氏が、10月15日付で就任されました。

 

⇒5Gに関わる技術政策の先導的立場におられた同氏のグループ入りは、今後の当社グループの戦略決定に大きな示唆を与えて頂けるものと思います。

 

2019年10月8日 [お知らせ 展示会・イベント] 10月28日(月)17:30~20:30 当社イベントスペースにて、 日本進出に関心のある中・東欧諸国(ポーランド、チェコ、ハンガリー・リトアニア)のIT関連企業を招き、 セミナー及びネットワーキングを開催いたします。

 

2019年9月30日 [プレスリリース BBTower] ブロードバンドタワー、新大手町サイト第2期工事完了のお知らせ

 

⇒予定よりも早めに二期工事が完成したことは、来年のデータセンター充填率を早期に上げることにつながるものです。

 

2019年9月12日 [プレスリリース グループ] エーアイスクエア、Cloud PARK と AI 自動要約システム「QuickSummary」が連携~自治体向け AI 要約サービス」10月1日提供開始~

 

2019年9月10日 [プレスリリース グループ] ティエスエスリンク、情報漏洩対策ソフト「コプリガード Ver.5.3」を9月10日から発売

 

2019年8月30日 [プレスリリース グループ] ジャパンケーブルキャスト、2019年9月1日 砺波市総合防災訓練にて「ハイコネを活用した災害時の緊急情報配信」の実施について

 

2019年8月28日 [お知らせ その他] 当社ウェブサイトを更新いたしました。

 

⇒約10年ぶりの当社ウェブサイトの刷新ですが、「5G Innovations」を全面的に打ち出したものとなりました。

 

2019年7月29日 [お知らせ グループ] 当社子会社株式会社ティエスエスリンクは、Webコンテンツの情報漏洩対策ソフト 「パイレーツ・バスター AWP Ver.10.2」を販売開始いたしましたので、お知らせいたします。

 

2019年7月26日 [お知らせ その他] マクニカネットワークス株式会社から、当社『新大手町サイト』およびインターネットバックボーンでの同社取扱製品 (Finisar製光トランシーバー) の採用についてプレスリリースされました。

 

2019年7月23日 [プレスリリース BBTower] ブロードバンドタワーとアット東京の戦略的パートナーシップについて

 

⇒当社だけに閉じたインターネット・データセンター事業から、大規模で金融系などにも広い顧客基盤を有するアット東京様との共同事業の開始は、当社の次なる飛躍のきっかけとなるものと確信しております。

 

2019年7月11日 [お知らせ 講演] 7月19日(金) 10:00~ 「5G/IoT通信展」(主催: リード エグジビション ジャパン株式会社、於: 青海展示棟)にて、当社代表取締役会長兼社長CEOの藤原 洋が「5Gにおける新たなビジネスチャンス」と題して講演を行います。

 

⇒1000人以上の聴衆の方々の前で、当社の5G時代の事業戦略についてプレゼンテーションを行える貴重な機会となりました。

 

2019年7月10日 [お知らせ グループ] 当社子会社ジャパンケーブルキャスト株式会社は、7月中旬から9月上旬にかけて、各地のケーブルテレビ事業者が制作し、地元で生放送する全国17ヶ所のお祭り・花火大会計18番組を、全国93のケーブルテレビ事業者が採用しているケーブルテレビ専用総合編成チャンネル「チャンネル700」を通じて全国へ生中継いたします。

 

2019年6月25日 [お知らせ メディア・出版] 本日6月25日(火)の日本経済新聞朝刊(10面)に、当社「新大手町サイト」の広告が掲載されました。あわせて、6月11日(火)の「世界デジタルサミット2019」での弊社藤原の講演再録記事も同紙に掲載されております。この掲載に伴い、本内容につきまして、「藤原洋のコラム」を掲載いたしましたので、お知らせいたします。

 

⇒6月25日の日経新聞一面広告にて新大手町データセンターについて、ビッグユーザーのソフトバンク様からのコメントが掲載されました。

 

2019年6月5日 [お知らせ グループ] 当社子会社株式会社エーアイスクエアは、AI対話要約・分類ソリューション「QuickSummary」の正式発売を開始し、横浜銀行への本番導入が決定いたしました。また、本件につき本日記者発表会を行いましたのでお知らせいたします。

 

⇒本記者発表は、ブロードバンドタワーのイベントスペースで行いましたが、大変大きな反響を呼びました。自然言語処理系の人工知能技術の研究開発企業のトップランナーとしてエーアイスクエア社が始動するきっかけとなったと確信しております。

 

2019年6月4日 [お知らせ 展示会・イベント] 6/12(水)~6/14(金)開催の「Interop Tokyo 2019」に、株式会社エーアイスクエア、株式会社ティエスエスリンクと共同で出展をいたします。

また、会場内ネットワーク「ShowNet」の設計・構築・運用・支援を行うNOC(Network Operation Center)メンバー、STM(ShowNet Team Member)として、当社エンジニアが参加いたします。

 

2019年5月13日 [お知らせ 展示会・イベント] 6月11日(火)10:30~11:00「世界デジタルサミット2019」(主催:日本経済新聞社・総務省、会期:6/10~11)にて、当社代表取締役会長兼社長CEO藤原洋が「AI+CASE時代の5Gデータセンター」と題して講演を行います。

 

⇒今年の日本経済新聞社主催の世界デジタルサミットに日本から基調講演を行ったのは、5社の代表でしたが、NTT、KDDI、NEC、富士通、ブロードバンドタワーが、選ばれたことは、当社の歴史的転換点になるものと確信しました。

 

2019年4月23日 [お知らせ グループ] 当社子会社株式会社ティエスエスリンクは、ファイルの不正利用防止ソフト「トランセーファー BASIC Ver.3.1」「トランセーファー PRO Ver.1.3」を販売開始しましたので、お知らせいたします。 同製品は5/8~10に東京ビッグサイトで開催される「情報セキュリティEXPO」にて出展いたします。

 

2019年4月15日 [お知らせ グループ] 当社子会社株式会社エーアイスクエアの「QuickQA」が、パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社のチャットボットサービスに採用されましたので、お知らせいたします。また、両社は販売代理店契約を締結し、今後、全国規模での顧客開拓および事業拡大を目指します。

 

2019年3月14日 [お知らせ その他] 「実績・導入事例」に「マーザ・アニメーションプラネット株式会社」様 (Dell EMCアイシロン)を追加いたしました。

 

2019年3月11日[プレスリリース BBTower] 凸版印刷とブロードバンドタワーとジャパンケーブルキャスト、ヒーリングの効果が期待される4K映像を家庭に配信

 

2019年3月7日[お知らせ その他] 京都大学、東京大学などの教育機関と、当社、日本マイクロソフト、理化学研究所など14の企業・団体は6日、人工知能(AI)に必要な大量のデータの活用を円滑にするための団体「AIデータ活用コンソーシアム」の設立の参画しました。4月に本格的に活動を開始します。

 

⇒AI時代にデータは、誰のものか?を議論し、法制度化を提言し、ビジネス化する団体の理事会者として始動しました。当社の成長にとって大きなチャンスが来たものと位置付けております。

 

2019年2月1日 [プレスリリース BBTower] ブロードバンドタワーのデータセンター『新大手町サイト』が「Impress DX Awards 2018」IoTプラットフォーム部門の準グランプリを受賞

 

⇒IoT/AI/ビッグデータ時代を先導する新大手町データセンターの価値を、データセンターガイドなどを出版されている業界メディアリーダーのインプレス様から評価いただいての受賞を大変嬉しく思います。

 

2019年1月15日 [お知らせ グループ] 当社子会社株式会社エーアイスクエアは、サントリービジネスシステム株式会社と連携し、サントリーホールディングスの人事業務を、AI自動応答システム「QuickQA」を用いて効率化・高度化することとしましたので、お知らせいたします。


⇒今年は、エーアイスクエアのビッグユーザー獲得の朗報から始まりました。11月には、サントリーホールディングス新浪社長とお会いする機会があり、お礼を述べたところよくご存じでした。

 

●おわりに

 2019年は、色んな意味で準備の年でした。新大手町サイト二期工事の完成や資金調達など、当社にとっての大仕事を完遂した年として記憶に残る年になるものと思います。そして、来年以降は、記録に残る年にしたいと考えております。

 それでは、皆様にとって、2020年が実り多き年になりますことを祈念して「2019年を振り返って」を終わります。


総務省有識者会議「Beyond 5G推進戦略懇談会」参加によせて

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~6Gモバイルへ向けて日本の取るべき進路とは?~

 

 総務省は、2020年1月21日、第6世代モバイル通信システムを先導するために5Gの次の世代である「Beyond 5G」に関する総合戦略の策定に向けて、「Beyond 5G推進戦略懇談会」を開催すると発表し、第1回の懇談会(親会)が去る1月27日に開催されました。これは、5Gの産業化や知的財産の面で欧米や中国に対して、出遅れたことを反省し、先手を打とうという首相官邸からのニーズに応えたものであると言えます。

 親会の座長は、東京大学総長の五神真氏、座長代理は東京大学大学院工学系研究科教授の森川博之氏が務め、WG(作業グループ)の主査は、森川博之教授が、主査代理を、私が務めることとなりました。親会とWGの構成員を兼務するのは、森川東大教授と私の2人だけです。

 さて、6Gは、5Gをはるかに超える性能や機能を有する仕様になる可能性が強く、物理学上の地平を乗り越えるイノベーションが要求されるものと想定されます。そこで、五神東大総長とは、懇意にさせて頂いておりますが、物理学者であるため、この座長人事は、正に適任だと思われます。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000329.html

 

〇懇談会(親会)の構成員

 「Beyond 5G推進戦略懇談会」 構成員 一覧

(敬称略、座長及び座長代理を除き五十音順)

 

(座長)     五神 真    東京大学総長

(座長代理)  森川 博之  東京大学大学院工学系研究科教授

飯泉 嘉門       徳島県知事

内永 ゆか子    NPO法人J-Win理事長

木村 たま代    主婦連合会事務局長            

篠﨑 彰彦       九州大学大学院経済学研究院教授

竹村 詠美       Peatix Inc. 共同創設者・アドバイザー

徳田 英幸       国立研究開発法人情報通信研究機構理事長

藤原 洋         株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO

根本 勝則      一般社団法人日本経済団体連合会常務理事

 

〇作業グループ(WG)の構成員

 「Beyond 5G推進戦略懇談会 検討ワーキンググループ」 構成員 一覧

(敬称略、主査及び主査代理を除き五十音順)

 

(主査)    森川 博之       東京大学大学院工学系研究科教授

(主査代理) 藤原 洋          株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO

足立 朋子   株式会社東芝研究開発センターワイヤレスシステムラボラトリー主任研究員

栄藤 稔          大阪大学先導的学際研究機構教授

岡 敦子          日本電信電話株式会社取締役技術企画部門長

加藤 雅浩      株式会社日経BP日経クロステック先端技術編集長

北 俊一         株式会社野村総合研究所コンサルティング事業本部パートナー

宍戸 常寿      東京大学大学院法学政治学研究科教授

砂田 薫          国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主幹研究員          

寳迫 巌          国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所長

 

 

〇懇談会で審議される内容について
 さて、Beyond 5Gとは、2030年頃の導入が見込まれる、いわゆる「6G」のことで、Beyond 5Gについての議論が諸外国でも開始されつつある中で、その国際標準策定プロセスに日本が深く関与するためにも、Beyond 5Gに向けた取り組みを早期に開始することが必要なことから懇談会を立ち上げることとなりました。主な検討事項は、以下の4点となりました。

 

(1)2030年代の社会において通信インフラに期待される事項

(2)Beyond 5Gによりこれを実現するために必要な技術

(3)我が国におけるBeyond 5Gの円滑な導入及び国際競争力の向上に向け望まれる環境

(4)これらを実現するための政策の方向性。

 第1回会合は、去る1月27日に開かれましたが、2020年夏をめどに取りまとめを行う予定です。私からは、第1回目の会合においてプレゼンテーションを行い、以下の5項目について述べさせて頂きました。

1.Beyond 5Gの最高性能で国際競争力向上を目指す

当社のデータセンタービジネスは、5Gをベースにしたものからどのように進化するか?無線通信技術は、どこまで、進化するか?6Gインフラにおけるアプリケーションは、どのようなものになるか?等について。

2.世界の6Gを巡る動き

国際標準化団体(ITU)、米国、フィンランド、中国、ファーウェイ、韓国LG電子、米マイクロソフトの動向等について。

3.Beyond 5G とデータ流通の進化

5G時代のパブリック5G+ローカル5Gの関係性が、6G時代には、どのようなパブリックBeyond 5G+ローカルBeyond 5Gへと進化するのか?コアDC(データセンター)とMEC-DC(モバイル・エッジ・コンピューティング)との関係はどう変化するか?等について。

4.地域産業創生

5G時代からさらにBeyond 5G時代には、DCの地域分散化が起こり、地方創生のトレンドと同期していくつかの地域産業の創生へ向けての動きが始動すること等について。

5. 政府に求められること

高能率変調方式等では善戦したものの半導体産業の衰退等の5G時代の反省点をふまえ、省庁の壁を超えた施策、異次元のユーザーエクスペリエンスの研究開発、スタート時点での国際間連携等について。

 

●おわりに

 5Gの時に、立案が具体化したのは、2020年のサービスインの6年前の2014年の総務省の電波政策ビジョン懇談会に選任された時でした。現在も後継委員会である、新モバイル通信システム委員会構成員としてフォローアップ会議に出席しています。現在ホットな話題は、5Gにおけるドローン利用の技術基準とNR(New Radio)と呼ぶ4G帯域を用いた5Gサービスの実装に関わる技術基準です。これらの委員会活動に貢献することで、業界を先導する立場に立ち、業界に先駆けて5Gデータセンターの方向性を示すことができることとなります。実際に、2020年の5Gサービスインに先立つ2018年にサービスインすることができたと総括しております。

 さて、今回は、2030年の6Gのサービスインに先立つこと10年ですが、昨今の世界的な傾向でもあるアジャイル型研究開発の進行をみるにつけ、予想以上にBeyond 5Gの施策は、前倒しになる可能性があると考えております。特に、当社のようなデータセンターなどデータ処理用インフラサービスは、6Gモバイル向けのデータ・サービスを5Gインフラの下でも先行投入できる可能性が高いと考えております。

 新年早々のビッグニュースとして伝わっている、日本が世界に先駆けて、始動する総務省「Beyond 5G推進戦略懇談会」に情報通信業界を代表して貢献し、その成果を今後の事業展開に活かしていきたいと考えております。 

 

2020年1月29日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

ブロードバンドタワー創立20周年を迎えて

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~ブロードバンド時代の情報発信拠点からDX拠点へ~

 

 今回は、創立20周年という節目を迎えましたので、ブロードバンドタワーの過去・現在・未来について、述べさせて頂きます。最初に、ブロードバンドタワーの20年を支えて頂いた株主の皆様、顧客の皆様、共同事業パートナーの皆様に感謝の意を表させて頂きます。

 

 当社は、日米合弁企業として2000年2月9日に設立され、日本初のインターネット・データセンター企業として、去る2月9日に創立20周年を迎えることができました。お蔭様で無事にひとつの節目を迎えることができましたことは、これまでの皆様のご支援の賜物と深く感謝しております。

 

【過去】

 私は、株式会社ブロードバンドタワー(当社)が創立される約3年前、株式会社インターネット総合研究所(IRI)を、電話ではなくインターネットの情報インフラを創る企業として1996年末に設立しました。私たちのミッションは、電話網やCATV網をブロードバンド・インターネットに作り替えることと、当時若手研究者のWIDEプロジェクト(村井純氏が代表)が運用していた学術IX(インターネット・エクスチェンジ、インターネット接続事業者のトラフィック交換拠点)=NSPIXPの商用化の2つがありました。そして日本初の商用IX=日本インターネット・エクスチェンジ株式会社(JPIX)が、1997年にKDD、IRI他16社の合弁企業として設立され、IRIが運用技術を担当しました(現在、JPIXの株式は当社が保有しています)。IXを発展させるミッションが、ポータルサービス事業者などの大量のトラフィックを発生する事業者向けに、IXに直結するインターネット・データセンター(iDC)を日本で最初に実現することでした。

 私は、当時全米最大のiDC企業=エクソダスコミュニケーションズ社との合弁事業を1998年から準備をしていましたが、ソフトバンクの孫正義社長から1999年に新提案がありました。当時全米2位のiDC企業=グローバルセンター社を傘下に持つ米グローバルクロッシング社、米マイクロソフト社、ソフトバンクの合弁企業=米アジアグローバルクロッシング(AGC)社との合弁事業を行おうというものでした。ヤフー株式会社(ヤフー)を傘下に抱える孫さんの提案は、魅力的でした。この提案に応じた結果、2000年2月にAGC89%、IRI11%で設立されたのが、当社の前身=グローバルセンタージャパン株式会社(GCJ)でした。私は、株主代表の取締役に就任し、同社の初代社長は、ダリル・グリーン氏、副社長にIRIを代表して大和田廣樹氏が就任しました。こうして、日本初のiDC企業の設立は、目途が立ちましたが、重要なのは、場所の確保でした。この時に尽力してもらったのが、私が研究者時代から親しくさせて頂いていたNTTの技術系の皆さんでした。中でも、当時、株式会社NTTデータの常務(後にNTT持株会社の副社長)の宇治則孝氏の取り計らいで、頑強なスペースを貸して頂きました。また、2代目社長にニフティ初代社長を務めた岡田智雄氏にお願いし順調なスタートができたかにみえました。

 2002年に、ドットコムバブルの崩壊で、米国のiDC企業、IPキャリア企業が軒並み倒産したのでした。まだ、立ち上げたばかりのGCJには、増資が必要でしたが、AGC社が倒産し、当時11%のIRIは、増資に応じるかどうか取締役会で大変な議論となりました。その時の決め手になったのが、当時ヤフー社長で、またIRI社外取締役でもあった故井上雅博氏の後押しと大和田氏のコミットでした。かくして、2002年4月IRIが増資に応じ、62%を保有するIRIの連結子会社として当社がスタートし、私は会長に、大和田氏が社長に就任しました。

 「ブロードバンドタワー」は、「ブロードバンドネットワーク上の情報発信拠点=東京タワー」を意味しています。文字通りヤフーを始めとする日本を代表するコンテンツ事業者のメインデータセンターとして機能しており、ネーミングに相応しい企業として再出発することができました。2003年度に黒字転換し、2004年11月、ヤフーを始めとする顧客の拡張需要に応えるために、第2サイトをオープンしました。その後も増収増益基調が続き、2005年8月に大証ヘラクレス(現東証ジャスダック)市場に上場することができました。

 

ブロードバンドタワーの上場セレモニー

 

 

 2005年9月に第3サイトの開設を、2006年3月には、特定顧客向けの専用データセンターでの運用受託事業を開始しました。また、起業家の田村淳氏を迎えファッションEコマースサイト運営の株式会社ビービーエフ(BBF)を設立しました。

 当社のiDC事業は、IX直結型のネットワーク型という特徴があり、大量のトラフィックを発生する事業者向けで、全国に設置面積を増やしていく設備投資型ビジネスではありません。そこで、次なる事業成長には、iDCとシナジー効果のある新規事業による多角化が必要となってきました。そこで、始めたのが、2007年1月のFlexホスティング事業(クラウド事業の前身)と2010年1月の米アイシロン社(現Dell EMC社)との提携による大容量ストレージ(記憶装置)・ソリューション事業でした。また、2011年7月には、IRIからJPIX保有株式が当社に譲渡され、同時にJPIX運用事業を本格化させました。このような運用受託事業はMSP(Managed Service Provider)事業として事業の柱に育ってきました。

 

【現在】

 当社は、2015年12月AI時代の到来に対応するために、株式会社)エーアイスクエア(エーアイスクエア)を設立しました。続けて2016年2月IoT時代の到来に対応するため世界のIoT関連分野へ特化して投資するグローバルIoTテクノロジーベンチャーズ株式会社(GiTV))を設立しました。

 2017年から2019年は、選択と集中を行いました。1つは、これまで、連結売上の成長に大きく貢献してきたBBF株式を2017年7月に、BBF事業にとってもより相乗効果のある株式会社ヒト・コミュニケーションズに譲渡させて頂きました。

 この、創業以来初めての大規模なキャピタルゲインについては、まず第1に、2017年8月9日開催の取締役会において、期末配当金を通常1円のところを、9円の増配とあわせて支払することを決議させて頂きました。次に、その売却資金等で、2018年8月5G時代を見据えた新大手町データセンターの第1期工事に着手し、開設に踏み切りました。

 また、同年10月にCATV局向けデジタルコンテンツ配信を行うジャパンケーブルキャスト株式会社を子会社化し、「情報発信インフラ事業」に加えて、「情報配信インフラ事業」を次なる事業の柱に成長させることを決断しました。さらに、未来のDX(デジタルトランスフォーメーション)時代には、益々重要度が急増するとみられるサイバーセキュリティ分野に足場を築くために、2019年1月日本発のサイバーセキュリティソフトウェア開発の株式会社ティエスエスリンクを完全子会社化しました。

 

【未来】

 当社の基幹事業であるインターネット・データセンター事業を取りまく環境は、大きく変化しています。モバイル通信は、5G時代となり、これまでの4G時代とは、本質的に異なる非連続的なイノベーションの時代に入りました。情報通信インフラの世代交代と同期してデータセンターも第5世代に突入しました。すなわち、第1世代(1980年代:メインフレーム型アウトソーシングセンター)、第2世代(1990年代:ISP・NOC型)、第3世代(2000年代:IX直結型)、第4世代(2010年代:SNS型)、第5世代(2020年代:DX型)です。

 当社の5Gデータセンターの特徴は、AIとCASE(自動車業界の変化を象徴する言葉、Connected、Autonomous、Shared/Service、Electric)時代に最適なデータセンターを標榜していることです。すなわち、全産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)拠点として位置付けられることです。AI処理をデータセンター内で行うことは、益々増えていくことでしょう。そのためには、高速演算が得意なGPUサーバーを収容できるような十分な電力供給システムが必要です。また、あらゆる自動車だけではなくあらゆる産業が「コネクテッド・インダストリー」へと進化する中で、強力なインターネット接続環境が必要となってきます。当社の5Gデータセンターには、三大キャリアのIX接続環境(NTT系のJP/NAP、KDDI系のJPIX、ソフトバンク系のBBIX)が同時に整備されているため、「コネクテッド・インダストリー」への進化を支援する環境を備えていると言えます。

 5Gデータセンターをコアとする当社の第1セグメントのコンピュータプラットフォーム事業は、従来のデータセンター、クラウド、データソリューション(ストレージ)に、新たにサイバーセキュリティ事業が加わりました。全産業のデジタル化に伴い、サイバーセキュリティの重要性は、益々増大します。これらの事業が一体となって、「コネクテッド・インダストリー」への進化を加速する役割を担っていきます。

 また、第2の事業セグメントであるIoT/AIソリューションは、GiTVの投資ポートフォリオの中から、イスラエルとシリコンバレー企業を中心に大きく成長する企業が出現することが期待されます。また、エーアイスクエアは、RPA(Robotic Process Automation)に有効な「QuickQA」とAIによる自動要約に有効な「QuickSummary」の商用化に成功し、顧客基盤を拡大中です。また、当社が、研究開発プロジェクトリーダーとなりGaN(窒化ガリウム)を材料とした5Gの通信デバイスの政府(総務省)プロジェクトを推進中です。同プロジェクトは、3年間で実施し、私がリーダーを務めさせて頂いている、当社、NTT、パナソニック・セミコンダクターによる産業界と、名古屋大学(GaNによる青色発光ダイオードの発明で2014年ノーベル物理学賞受賞の天野浩教授がリーダー)を中心とする大学連合(東京工業大学、名古屋工業大学、東京大学)、および総務省のNICT(情報通信研究開発機構)によって構成されています。

 日本初のインターネット・データセンター企業である当社は、情報通信インフラのブロードバンド時代に産声を上げた企業で、多くの企業のインターネット・サービスを支援させて頂いてきました。そして、このたび、ようやく20歳になりました。今後は、5G時代に多くの企業の皆様のDXという未来を支援する企業としてさらなる成長を続けて参りたいと存じます。2月10日には、ささやかながら、これまで、ご一緒に事業をさせて頂いてきた多くの皆さんにお集まり頂き、20周年の祝賀会を開催させて頂きました。そして、以下の皆様にご挨拶を頂きました。天野浩名古屋大学教授、川邉健太郎Zホールディングス(ヤフージャパン)社長、北尾吉孝SBIホールディングス社長、澤田純NTT社長、高橋誠KDDI社長、宮内謙ソフトバンク社長、宇宙飛行士山崎直子様、河野俊丈東京大学大学院数理科学研究科長、山極壽一京都大学総長、渡辺克也IRI顧問・前総務省総務審議官、村井純慶應義塾大学教授。ご挨拶を頂いた11名の皆様は、共にインターネット・インフラを創り、利活用し、発展させてきた産学官を越えたコミュニティの仲間であり、ブロードバンドタワーの過去と、現在と、未来を見つめて頂いている方々です。

 

 最後に、改めまして、当社の20年を支えて頂いた株主の皆様、顧客の皆様、共同事業パートナーの皆様に感謝の意を表させて頂きますと共に、次なる20年に向けて、未来を共有させて頂きますようお願い申し上げます。

 

私からの開会のご挨拶

 

名古屋大学教授 天野浩様のご挨拶

 

ヤフー社長 川邉健太郎様ご挨拶

 

SBIホールディングス社長 北尾吉孝様ご挨拶

 

 

NTT社長 澤田純様ご挨拶

 

KDDI社長 高橋誠様ご挨拶

 

ソフトバンク社長 宮内謙様ご挨拶

 

東京大学大学院数理科学研究科長 河野俊丈様ご挨拶

 

宇宙飛行士 山崎直子様ご挨拶

 

京都大学総長 山極壽一様ご挨拶

 

前総務省総務審議官・IRI顧問 渡辺克也様ご挨拶

 

慶應義塾大学教授・ブロードバンドタワー社外取締役 村井純様による閉会のご挨拶

 

 

 

2020年2月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

コロナショックに伴う当社の事業への影響とワークスタイル・イノベーションについて

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~社会の危機、顧客の危機、社員の危機、企業の危機の中での対応策について~

 

 新型コロナウイルスによる感染症の拡大が続く中で、第2創業期の集大成としての2020年3月19日に、当社の第21回定時株主総会が終了しました。本総会の運営におきましては、ご参加頂いた株主の皆様、取締役、従業員スタッフ全員に検温とマスク着用を運営方針とさせて頂きました。また、本総会では、下図に示すこれまでの業績の推移を示させて頂きました。

 

 

 今回は、当社の経営環境における企業としての危機管理と今回行ったワークスタイル・イノベーションについて述べさせて頂きます。

 

 企業経営の危機管理についての基本的な考え方とは、大きくは2つあると考えております。それは、危機管理の第1の基本は、「科学的であること」、第2の基本は、「最悪の事態を想定すること」であります。

 

●新型コロナウイルス(2019-nCoV*)による感染症の科学とは?
  *このたび、武漢市で発生したとされる肺炎は、2020年1月12日に世界保健機関によってコロナウイルス2019-nCoV と命名されました。
 当社の2000年創立以来、直ぐに発生したのが、2002年~03年にかけて中国を中心に感染が広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)でした。当時は、私も含め、海外出張の自粛を中心に対応しました。また、2012年以降に発生した中東呼吸器症候群(MERS)の原因もコロナウイルスですが、感染症の拡大が地域に限定的であったため動向を注視している中で収束しました。
 しかし、今回の新型コロナウイルスは、これらのコロナウイルスの後継の進化型ともいえるもので、ウイルスの特徴である、細胞宿主分類(寄生対象とする細胞)における動物・植物・バクテリア型では、動物型であり、遺伝子を伝達する核酸分類では、RNA(リボ核酸)型であり、生物化学的にも、細胞生物学的にも、遺伝子工学的にも未知のウイルスであると言えます。当然医療的にも決定的な対処法がないというのが、実状であると認識しております。このため、日本国内をはじめ、世界各国で、感染拡大が続いている状況にあります。
 感染方法については、確実なメカニズムは、解明されていませんが、新型コロナウイルスは、ウイルス表面に発現しているスパイク(S)蛋白質が、ヒト細胞内へ侵入することで、感染すると考えられています。風邪、SARS、MERSと同類、特にSARSとの類似度が高いことから、新型コロナウイルスは、主に感染者のせきやくしゃみなどによる飛沫を中⼼に感染し、潜伏期間は2日から12日程度で、無症候性キャリアからも感染を広げる可能性があると考えられています。このような状況の中で、現時点では、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の2つが考えられています。

①飛沫感染 感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染します。
※感染の想定場面:屋内で、相互距離が十分に確保できない状況で一定時間を過ごす等
②接触感染 感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、自らの手で周りの物に触れると感染者のウイルスが付きます。未感染者がその部分に接触すると感染者のウイルスが未感染者の手に付着し、感染者に直接接触しなくても感染します。
※感染の想定場面:電車やバスのつり革、ドアノブ、エスカレーターの手すり、スイッチ等

 以上のような新型コロナウイルス(コロナウイルス2019-nCoV)による感染症拡大は、症状が顕在化している感染者、自覚症状のない感染者からの呼吸器を通じた感染を想定すべきだと考えられます。また、感染源のヒトが不在でも、生存時間3時間のエアロゾルや72時間のプラスチック等を通じた接触感染についても想定すべきだと考えられます。

●「最悪の事態を想定した」危機管理について

〇「社会の危機」への対応
 金融資産の貯蓄から投資へと向かう大きなトレンドの中で、その正体が解明されていない新型コロナウイルス(コロナウイルス2019-nCoV)による感染症拡大が続く中、世界各国で、社会活動に大きな制約が、起きています。私も今年の海外出張や調査団長等、全て中止致しました。
 特に、前述のように「科学」による決定的な解決策が提示されていないために、株式市場の変調が続いています。これは、一時的ではあるとは思われますが、しばらく継続する可能性もあり、株式資産や時価総額を前提にした企業経営の見直しが迫られていると思われます。
 このような「社会の危機」の中で、当社としては、投資から貯蓄への逆行するのではなく、キャッシュフローを産み出す投資を継続する「純資産経営」を前提に対応して行きたいと考えております。

〇「顧客の危機」への対応
 当社の企業活動は、ビジネスモデルとして、基本的には、「B2Bサービス」モデルを前提としております。従って、顧客ドメイン管理は、顧客の企業活動の持続可能性の分析において、危機管理上最も重要な要素であると言えます。
 まず、当社の顧客ドメインの分析ですが、当社においては、「リアルビジネス」と「ネットビジネス」という2つの分類を行っております。当社は、日本初のインターネット・データセンター専業企業として創業し、当初からインターネットを通じてサービスを行う「ネット企業」向けの事業を支援することを生業(なりわい)としております。また、最近、「リアル企業」のネット事業化支援事業に取り組んでおります。これは、まだ当社の顧客ドメインとしては、ごく僅かでしかありませんが、「リアル企業」が、「ネットビジネス」へのビジネスモデルの転換を意味しております。従って、当社の顧客ドメイン管理としては、「ネットビジネス」への集中をさらに強化していく方針であります。現在のところ、「ネットビジネス」は、人と人の対面が原則の「リアルビジネス」と異なり、新型コロナウイルス(コロナウイルス2019-nCoV)による感染症拡大の影響はほとんど受けていないのが現状であり、当社の業績にも影響が出ていないと言えます。
 現在の感染症拡大による企業経営上の危機は、「リアル前提」にあるように思われます。小売業、外食業などを例にとると、大勢の人々が集合することが前提となるビジネスは、大きな影響を受けるものと思われます。一方、当社の生業でもありますが、「ネットビジネス」は、感染症拡大時にも比較的耐性が強いため、当社の顧客ドメイン管理においても重視していく方針であります。従って、「リアルビジネス」を行っている顧客には、「ネットビジネス」への移行促進を支援していく方針であります。

〇「社員の危機」への対応
 新型コロナウイルス(コロナウイルス2019-nCoV)による感染症拡大は、「社員の危機」でもあります。先ほど述べさせて頂いた通り、社員にとっての感染の危機は、大きくは、「閉空間での呼吸器感染」と「ウイルス生存時間の接触感染」であることが想定されます。そこで、「不特定多数の人々が、閉空間で一定時間を過ごす公共交通機関利用の回避」を即座に実行することと致しました。
 具体的には、「ネットビジネス」を生業とすることから、サイバーセキュリティ管理のために、インターネットを用いた社内網としてのVPN(仮想プライベート網)のトラフィックテストを実施し、全員がリモートで分散して業務を行っても、実務上問題ないことを確認致しました。このVPN網を前提に、当面のテレワークを実行することと致しました。
 今回のコロナウイルス2019-nCoV 対応として新たに導入したVPNによるテレワークと、新オフィスで導入した完全フリーアドレスによるオフィス運営が、当社の新たなワークスタイル・イノベーションであると考えております。それは、どうしても必要なオフィスでの業務実行時にも、ある程度離れた場所での作業となるために、感染予防になると考えられるからであります。

〇「企業の危機」への対応
 企業にとっての最悪の事態を想定することは、企業の持続可能性の基本となる危機管理上最も重要なミッションであると考えております。
 本件については、私も苦い経験があります。かつて東証二部上場の「好決算有良企業」であった、(後で架空循環取引を行っていたことが判明した)IXI社の企業買収案件が日本最大の金融機関グループの1つから提案があり、入念なデュージェリジェンスの結果、企業買収を実行しました。最近、再び、架空循環取引が、行われていた事例が発覚し、コンプライアンス上の問題が浮上しており、大変残念に思います。架空循環取引が起こる背景には、行き過ぎた業績至上主義が産み出すコンプライアンス違反があり、これは、企業の危機管理にとって極めて重要だと考えております。企業にとって、黒字経営は、当然重要ですが、如何なる時も「企業の危機」への対応としてのコンプライアンス(法令順守〔遵守〕)は、さらに重要だと考えております。
 さて、IXI買収の件に戻りますが、その際、金融機関からの提案は、「好決算有良企業」の株担保融資による買収でした。私は、この件だけは、納得がいきませんでした。株価は、変動しますので、これを担保とする融資には、リスクが大きいと判断し、新株発行をして買収資金の調達を行いました。結果として、「好決算有良企業」IXI社は、破綻しました。もし、株担保融資による資金調達を行っていたら、私の経営する企業は、倒産に追い込まれていたかもしれません。純資産と必要な現金を保有していることは、「企業の危機」への対応としてコンプライアンスと同様に極めて重要であると考えております。
 また、今回のコロナウイルス2019-nCoV対策として、インターネット・データセンター事業の運用にとって重要なのは、持続可能性であると考えております。当社は、全体で5か所のデータセンターを運用しておりますが、データセンター運用チームを分離しております。もし仮に、あるデータセンター運用チームのオペレータに感染者が出た場合、当運用チーム全体の運用が中止(感染者の隔離とチームメンバーの自粛)する可能性が想定されます。そこで、他のチームが分離されていれば、当チームに代わって、運用を実施することができます。
 このようにして、「社会の危機」「顧客の危機」「社員の危機」に呼応した「企業の危機」への対応を行っていく所存であります。

 新型コロナウイルス2019-nCoVの感染症拡大の影響は、まだ続く可能性もありますので、皆様におかれましては、ご安全とご健康を祈念させて頂くと共にご自愛下さいますようお願い申し上げます。

 

2020年3月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

新型コロナウイルス感染症拡大の中でインターネット/ICTおよび当社の役割

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~「スーパーテレワーク社会」を先導する企業として~

 

 前回のコラムにおいて、3月末に、いち早くテレワークに移行するなど、新型コロナウイルス感染症拡大の中での当社としての対応について、述べさせて頂きました。その後、日本政府から4月8日発効となる戦後初の緊急事態宣言が発出されました。

 

 そこで、今回は、今年で27回目となる、私が主催者となっている日本最大のインターネットテクノロジー・イベントであるINTEROP TOKYO2020(オンライン開催、通例は幕張メッセで開催)のオープニング・セッションでの議論のエッセンスをお伝えすると共に、当社が、先導する「スーパーテレワーク社会」の未来像と当社が今後行っていく事業展望についてお話させて頂きます。

 

●INTEROP TOKYO2020オープニング・セッションについて

 4月13日のオープニング・セッションでは、私がモデレータを務め、日本のインターネットの父 村井純教授、ミスター5Gポリシー渡辺克也前総務省総務審議官(現㈱インターネット総合研究所顧問)と、『新型コロナウイルス感染拡大の中で・・・インターネットとICTに何が求められている?のか?』というテーマで鼎談形式にてお話させて頂きました(以下のURLから動画アーカイブ可能です)。

https://www.interop.jp/

 

 

 

 

*アマビエ:厚生労働省も感染拡大防止キャンペーンのモチーフに利用している日本に伝わる半人半魚の妖怪で光輝く姿で海中から現れ豊作や疫病などを予言し人々を守るとされています。

 

 ここでの議論を要約すると、コロナ対策において、特に感染拡大の防止による医療崩壊の防止と経済活動衰退の防止に対する、インターネットとICT(情報通信技術)の役割は、極めて大きなものがあるということであります。

 

 首相官邸から発出された緊急事態宣言に関する具体策として25ページの基本的対処方針が発令されており、具体的項目として24~25ページに記されています。ここで、重要な点は、データセンターを始め直接および間接的にインターネット/ICTが果たすべき使命が、明確化されています。

 

 

 

 

 そこで、インターネット/ICTの「ITインフラ整備」は、コロナ対策を実施する上で、何とか間に合ったという共通認識に達しました。問題は、21世紀のIT基本法ができた時から言われているが、ほとんど実現されていない「IT利活用」です。働き方、遠隔医療、遠隔教育、行政手続き、金融などへの適用は、ほとんど実施されていないのが実状です。

 このたびの新型コロナウイルス感染症拡大によって明らかになった社会課題は、「移動できない社会」がもたらした「移動しなくて済む社会」の実現にこそインターネット/ICTの果たすべき役割があるということだと思われます。

 

 

 

 

●「スーパーテレワーク社会」の未来像と当社が今後取り組む事業展望

 当社は専用型データセンター事業者として2000年2月に設立され、2018年9月には新たに、5G時代にふさわしい設備と環境、柔軟かつ利便性の高いサービス提供基盤を兼ね備えた都市型データセンター「新大手町サイト」を開設し、企業のデータセンター利用、既存データセンターの最適化を支援してきました。

 コロナショックという緊急な社会課題に直面する中で、5Gの本格的商用化を迎えた今、都心に「集まる孤立」から地域に「分散する連帯」を共通理念とし、遠隔地でのより効率的な作業が可能な「スーパーテレワーク・プラットフォーム」の提供を目指すことと致しました。そのために、インターネット/ICT業界が1つとなって連携し、その利活用産業分野の協働作業空間を多産業分野と連携して実現したいと考えております。そこで、このたび、多業種連携のコンソーシアムの設立を呼びかけることと致しました。

 この目的のために、当社が主として提供する機能としては、これまでの都心型データセンターに加えて、エッジデータセンター、クラウド、ネットワーク環境であります。当機能を提供することで、場所、距離、時間に制限があった環境から脱却することができ、あらゆる業界のエンジニアにとっても新たな可能性、新しい働き方へと導き、能力を最大限引き出せるものと考えております。

 この「スーパーテレワーク・プラットフォーム」の提供によって、働き方、医療、教育、行政、金融等、全産業分野にとって「移動しなくて済む社会」を実現することに注力することと致しました。

 現時点では、当社グループの事業領域は、「移動しなくて済む社会」を展望するものですので、コロナショックによる「移動できない社会」「集まることができない社会」となったダメージは受けておりませんが、ダメージを受けている他産業分野の「復興」を支援することも当社グループの使命として取り組んでいく所存であります。

 

2020年4月28日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

テレワークに取り組んでこれまでの3か月と今後の展望

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~ポストコロナ社会を見据えたワークスタイルについて~

 

 緊急事態宣言の解除と共に、「社会」は、「生命」と「経済」という重い課題を抱えながら、これまでとは異なる時代へ向って動き始めたように思えます。

 

 このたび、私も含めて当社のテレワークへの取り組みは、約3か月を経過しました。そこで、私自身が、感じたこと、気づいたこと、心がけていることについて述べさせて頂きたいと存じます。

 

●第2創業期に同期したテレワーク社会の到来

 当社の2020年の創業20周年を迎える第2創業期に向けて、2015年頃から準備してきたことは、次なる成長フェーズに入るための具体策でした。この新たな成長フェーズへの移行の意志を明確化するために、会社ロゴに「5G Innovations」を掲げ、新大手町5Gデータセンターへの開設と新5Gオフィスへの移転を実行しました。

 そこで、一貫して心がけてきたことは、5G時代の歴史的な情報通信インフラの進化に適合した、株主、顧客、従業員、協力企業のステークホルダー満足度の向上です。その中の1つが5G時代に相応しい「働き方改革」ですが、背景には、2020年4月は、「働き方改革関連法」が本格的に施行され、時間外労働規制の中小企業への拡大、ならびに大企業における同一労働同一賃金が適用されるタイミングであることがあげられます。しかし、新型コロナウイルスによる感染症拡大という誰も想定しなかった要因によって、「働き方改革」がかつてないスピードで進展し始めました。その中心をなすのが、 「テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)」の導入拡大です。

 テレワークは、古くからある概念ですが、ポストコロナ社会を見据えて、特筆されるべき今日の時代の変化を表す代表格であります。また、それと同時に、さまざまな事情や懸念から「働き方」を変えられずにいる人々が多いこともあります。何れにしてもポストコロナ社会の特徴の1つが、テレワーク社会であると言えます。

 テレワーク社会では、時間と場所をより有効に活用した就労・作業形態によって、企業にとっての競争力強化のみならず、新しいビジネスの創出や労働形態の改革、事業継続の向上をもたらすと共に、多様化する個々人のライフスタイルに応じた柔軟かつバランスのとれた働き方の実現に寄与することが期待される社会です。

 しかしながら、一方では、テレワークのための情報通信ネットワークの脆弱性によるサイバー攻撃による被害や情報漏洩などが、多発しています。従って、その対策としてのサイバーセキュリティの重要性が益々増大する社会であると切に感じる今日この頃です。

 

●テレワークとは?その効果とは?

 改めて、「テレワーク」(「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語)は、ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことで、結果的に、最も遅れていた日本社会の現在の働き方改革の中心に浮上しました。図らずも、労働人口の減少に伴い、従業員一人ひとりの生産性がより求められる中で、テレワークはその解決策の一つとして期待されています。
 今回、コロナショックによって、当社もテレワークを一気に導入したことで、以下のようなメリットがあることを痛感しました。

①災害や感染症の蔓延時にも通常と同じように業務を継続できる。

②通勤や移動の時間を有効活用し、大幅なコスト削減につながる。

 

●3か月間テレワークを使ってみて

 私自身、この3か月間、テレワークによって、色々なことを体感しました。

 最初に感じたことは、約5回/日のWeb会議を行ってきましたが、移動時間が、不要だということの価値です。その結果、これまで経験したことのない、会議出席が可能となりました。コンピュータのオペレーティングシステム(OS)に例えると、進化したマルチタスク、マルチスレッドOSが、実装され、同時に複数の仕事をこなせる環境が整ったと言えます。

 一方では、「管理職」と「非管理職」の各々の立場の人々が、「不安に感じていること・逆に機会と感じていること」に相違があることが分かりました。また、「テレワーク環境下でビジネスパーソンに必要なスキルと、それがすでに身に付けられているかどうか」についても把握することができました。

 また、企業経営の視点から、テレワークは、オフィス以外の場所を選択できる働き方ですが、実のところ、変化するのは働く場所だけではないことを実感しました。具体的には、オフィス空間が提供していたもの、例えば、意思疎通、人と繋がっていること、自律、セルフマネジメント、安定した日常等の実感が、どう変化したのかという点で、以下のようなことを感じた次第です。

〇テレワーク習熟速度は、技術系人材が圧倒的に速い。

〇多くの管理職が、「部下がさぼっていないか心配である」と感じている。

〇テレワーク未習熟の管理職層は、「業務指示とチームビルディング」に不安を感じている。

〇テレワークの導入で管理職層がより不安に感じていることに、「部下の心身の健康状態」が浮上している。

〇テレワーク導入で管理職層がよりメリットを感じているのが、「部下に自己管理習慣が身に着くこと」、「部下が無駄な業務を自発的に減らすこと」「部下の生産性向上」「部下のワーク・ライフ・バランスが改善すること」等である。

〇管理職と非管理理職の両方のやる気が向上すること。

〇テレワーク習熟者と非習熟者の2極化。

〇生産性の向上と共に、さびしさや不安が増え、つながりの希薄化が起こること。

〇テレワーク環境下で重要なスキルは「情報を伝えるための文章作成能力」「セルフマネジメント能力」。

 

●おわりに

 私自身は、情報通信産業の企業経営に関わっているから、ではなく、テレワークによって、効率が大幅に向上することを実感しております。しかし一方で、仕事上での人とのつながりが希薄になりがちだと考える人々もいることが分かりました。とはいうものの、これからも情報通信技術の高速化と高度化は、益々進むことは明白であるため、今回はくしくも感染症拡大の中でのテレワーク導入となりましたが、時代をより前へ進めるものであり、5G時代を迎え、人々の不安や孤独を払拭し、より創造的な活動につながるものであると確信しております。そして、テレワーク社会の進展は、当社の第2創業期の企業成長にとってプラスに働いていることを日々実感しております。

 

2020年5月27日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

NICT特別オープンシンポジウムに参加して

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~注目を集めたイスラエルのコロナテック企業群~

 

 去る6月12日、総務省所管の国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が主催する『NICT特別オープンシンポジウム"アフターコロナ社会のかたち"』がZoomを用いたオンラインで開催されました。本セッションでは、図1に示すように、新型コロナウイルスによる感染症拡大と収束のフェーズを区分し、私は、3つのセッション(Inコロナ、Postコロナ、Afterコロナ)のうち、セッション1(Inコロナ)にパネリストとして参加させて頂きました。

https://www2.nict.go.jp/publicity/open-symposium/

 

 セッション1では、私の他に医療機関から冨澤登志子氏(弘前大学大学院保健学研究科 看護学領域教授)、黒田知宏氏(京都大学医学部附属病院医療情報企画部教授)、井上大介氏(NICTサイバーセキュリティ研究所  サイバーセキュリティ研究室室長)、鳥澤健太郎氏(NICTデータ駆動知能システム研究センターセンター長)が参加され5名でパネルディスカッションを行いました。

 

図1.NICT特別オープンシンポジウムでの各セッションの検討範囲

 

 このセッションで私が主張したことは、ICT(情報通信技術)、特にインターネットを用いた「新型コロナウイルス院内感染防止システムの開発」の必要性です。その中で、私からは、必要となる様々な要素技術、システム技術、開発手法、国際連携の重要性について述べさせて頂きました。

 本シンポジウムの議論の詳細については、NICTから公開される予定ですので、ここでは、詳しく述べませんが、今回は、そこで注目を集めた「イスラエルのコロナテック企業群」について、ご紹介させて頂きたいと思います。

 

 私は、長年にわたって、イスラエルに注目し、連携を深めてきました。その理由は、私の信念である「科学技術立国」を標榜しているからです。イスラエルは、建国以来70年以上に及ぶその政策の結果、研究開発投資(対GDP比)、科学者・技術者の割合(人口比)、人口1人当たりの大学学位数、学術論文出版数は世界トップに位置するまでに発展しています。

 

 さて、世界各国に大変な災禍をもたらした新型コロナウイルスCOVID-19の対策においても、持ち前の科学技術力によって、早期に封じ込めに成功し、未知なるウイルスに対する重症患者の治療法、ワクチン開発、感染症拡大防止システムの開発などに大きな成果をあげています。図2に新型コロナウイルスCOVID-19の院内感染防止システムのイメージを示します。本図にあるように病院内での入院患者から医療従事者への感染を防止するためにコンタクトフリーを実現するEarlySense社の開発した入院患者のリアルタイム病状監視システムを紹介しました。また、病院外の感染者の病状監視と診療を行うTytoCare社の遠隔診療キットと遠隔診療システムを紹介しました。

 

図2.新型コロナウイルスCOVID-19の院内感染防止システムのイメージ

 

 また、当社の連結子会社であるグローバルIoTテクノロジーベンチャーズ)株式会社(GiTV社)のベンチャーキャピタルファンドが創業期から出資しているBinah(ビナー)社は、センシングとAI技術を用いた企業向けアプリの開発に成功しました。ビナーの技術によって、従業員のスマホから非接触かつリアルタイムに心拍数・メンタルストレス等のバイタルサインを確認することでビジネス上のリスクを抑えることが可能です。ビナーのスマートフォンアプリは、信号処理とAIを融合させる独自の数学的アルゴリズムと組み合わせた新しいテクノロジーを利用しており、内カメラで顔の頬上部のビデオデータを取得するか、あるいは外カメラに指を置く事によって得られるデータを使用し、2分以内に医療機器、医療機器レベルの精度でバイタルサインを確認することができます。こうして、ビナーの技術を用いることで、企業は、感染リスクを大幅に減らすことができるとされ、欧米での本格的な普及が始まっています。


 この他にも、BATM社は、30分以内に唾液サンプルからコロナウイルスを検出する診断キットを開発しました。Soapy社は、すでに多くの国で使用されている自動手洗い機に抗ウイルスハンドソープを組み込むことに成功しました。Sonovia社は、コロナウイルスを防御するだけでなく除去もでき、病院の布カバーや抗がん剤治療患者の衣服やフェイスマスクに使われる繊維の開発に成功しました。


 以上に紹介した新型コロナウイルスによる感染症に対するテクノロジー企業群は、70社以上にのぼり、図3に示すように「コロナテック・カンパニー」と呼ばれ世界からの熱い視線を集めています。当社グループとしてもInコロナからWithコロナ、そしてPostコロナ、Afterコロナ時代へ向けて、GiTV社からの投資事業を皮切りにイスラエル企業との連携を深めていきたいと考えております。
 

図3.イスラエルのコロナテック企業群

 

2020年6月24日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

『北海道ニュートピアデータセンター研究会』の創設と参加について

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~都市型データセンターと連携する地方創生型データセンターの普及を目指して~

 

 2020年7月14日(火)に北海道大学、東京大学、室蘭工業大学、慶応義塾大学の研究者とアルテリア・ネットワークス、さくらインターネット、三菱総合研究所、ブロードバンドタワー、Digital Edge、王子エンジニアリング、フラワーコミュニケーションズなどの企業が連携し、『北海道ニュートピアデータセンター研究会』を発足させました。

 

https://nutopia-hokkaido.org/2020/07/14/press-release/

 

 今回は、当社の経営視点から、北海道ニュートピアデータセンター研究会発足の背景と当社の参加目的について述べてみたいと思います。

 

 私自身、インターネット・インフラ整備に20世紀後半から関わってきましたが、最初に、同研究会発足の背景は、2つのことがあると考えております。

 

 背景の第1が、インターネット・トラフィックのグローバルな多様化と増大です。インターネットの商用化が米国から始まった1990年を起点に、インターネット・トラフィックは、日米海底ケーブルが大半を占めていました。その後、日米以外の先進国でのインターネットの普及、20世紀に入ると中国をはじめとするアジア諸国の経済発展に伴い、米国と欧州、そして、米国とアジア、欧州とアジアへとインターネット・トラフィック・パターンの変化が起こりました。

 

 そこで、近年、急速に注目を集めているのが、欧州とアジアを直結する「北極海ケーブル」です。フィンランドの国営企業で通信ケーブル事業を手がけるシニア(ヘルシンキ)社は、2018年に北極海を経由してアジアと欧州を結ぶ通信ケーブルの陸揚げ地に北海道を有力視していることを明らかにしました。特に、北海道の冷涼な気候やアジア諸国に近いという利点を強調し、日本の情報通信業界との連携を呼びかけていくとし、いよいよ今年に調査を開始します。

 

https://nutopia-hokkaido.org/2020/07/19/the-arctic-telecom-cable-project-set-to-launch-seabed-surveys/

 

 背景の第2は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う日本におけるワークスタイルの変化による首都圏一極集中から地域分散化です。感染症拡大に伴い、テレワークの普及によって、企業活動拠点に大きな変化が起こりつつあります。この変化に伴って、国内インターネット・トラフィック・パターンも変化し始めています。また、今年からサービスインした5Gネットワークは、4Gと異なり、1ミリ秒以下の超低遅延を特徴としており、地域におけるエッジ型データセンターのニーズを産み出しつつあります。当社は、これまで、専業インターネット・データセンター事業者の草分けとして、インターネット・エクスチェンジ(インターネット接続事業者間のトラフィック交換拠点)と直結した都市型インターネット・データセンターのパイオニアとして活動してまいりました。しかしながら、今後は、新型コロナによるワークスタイルの変化と5Gの普及に伴い、インターネット・データセンター・アーキテクチャの最適化を検討するフェーズに入ったと認識しております。

 

 以上に述べたような背景の下、当社は、業界初の5Gデータセンターである新大手町データセンターの先行投資が終了し、今年度から投資回収フェーズに入ります。そこで、中長期的な経営視点から、新たな成長戦略を立案するために、「エッジ型データセンターの地方展開の可能性」についての調査研究に、まずは着手することと致しました。本研究会の発足に参加した最大の目的は、この可能性についての調査研究になります。

 

 北海道は、北極海ケーブル陸揚げの可能性と共に、その冷涼な気候による冷却コストの低減が見込まれます。また、再生可能エネルギーを含むエネルギー手段の多様化や他のデータセンター事業者との連携による共通インフラ整備などが、進めばより大きな可能性があると考えられます。このたび、発起社の1社として、同研究会の目指す、Society 5.0 時代に向けてインターネットとデータセンターの産業構造を革新するシナリオを描くことに貢献できればと考えております。皆様にも同研究会の活動にご注目頂ければ幸いです。

 

2020年7月29日

代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 


『ポストコロナ社会へ向けてのSDGsによる地方創生』と当社の事業戦略

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 新型コロナウイルスとの人類の戦いを通じて、「経済」の基本が、「健康」にあることと「先進国では既に克服された課題である」という認識が誤謬であることが、再認識されました。18世紀半ばから始まった産業革命は、世界を大きく変え、それによってもたらされた巨万の富は、金融資本として膨れ上がると同時に地球規模の様々な格差と環境問題を産んでいます。今日のコロナという課題は、既に国境を越えSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)の重要性を改めて強調しているように思えます。その世界の課題解決の鍵を握るのが、デジタル技術です。

 

 このような状況の中で、今月のトピックスとして、去る8月7日にZoomを用いて開催された、JCI国際ハッカソン予選(本選は11月開催)への基調鼎談への参加がありました。これは、国際青年会議所(JCI)と野村総合研究所(NRI)が連携し、中小企業/スタートアップ企業と全国規模の金融機関/大企業等を連携させ、日本経済・ビジネスを活性化させるためのハブの実現を目指すものです。私は、登壇者として招待されましたので、その様子を紹介すると共にその背景にあるSDGsに関わる当社の事業戦略について述べさせて頂きます。鼎談のテーマは、『地域から分断を持続可能な連帯に~SDGs/ESGファイナンスとデジタルによる産官学民イノベーション~』で、登壇者は、私の他は、御友重希氏(野村総合研究所未来創発センター主席研究員、財務省から出向中)、澤田純平氏(日本青年会議所 IT部会長)です。

 

 今回、このテーマで社長コラムを書かせて頂く背景には、御友氏ら三人の編著で私も執筆陣に加わった『SDGsの本質』(2020年7月、中央経済社)の刊行がありました。本書の主旨は、「新型コロナウイルスによる社会・ビジネスへの打撃が世界で深刻化する中、「SDGs目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」の回復・実現が急務であり、そのためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を始め、新しいビジネスやファイナンスの仕組みを築く企業を如何に創出するかである」ということにあります。

 

 私は、本鼎談の中で主に、第1部として「インターネットを中心とするデジタル文明のインパクト」と第2部として「地銀・中小企業のフィンテック/デジタル化が開く新金融・新市場の未来」について述べさせて頂きました。第1部では、世界のデジタル文明は、インターネット/モバイル/ソーシャルで構成され、2018年、ついにインターネットユーザーが世界人口の過半を超え57%、モバイルが67%、ソーシャルが45%となったこと、そして、産業革命以後のテクノロジーでここまで急速に普及したものはないこと、今後は、デジタル文明は、100%カバレッジへ向けて世界中を覆いつくすものであることを述べさせて頂きました(図1参照)。

 

図1.SDGsを推進するうえで最もインパクトのあるデジタル文明の進展

 

 また、第2部の最初に、「失われた30年」をもたらしたものは、何か?たった1つのことをあげるなら、「一極集中」(首都圏と大企業への)であり、産業構造の変化(数十年で起こった第一次/第二次/第三次の就業人口比の激変、図2参照)に対応できていないこと、特にライフスタイル/ワークスタイルのデジタル化を実現できていないことについて述べさせて頂きました。

 

図2.日本の産業別就労人口の推移による産業構造の変化

 

 この日本の首都圏と大企業への一極集中という課題に対して、SDGs基本概念の「誰一人として取り残さない」を定着化させることの重要性を強調したいと思います。2014年以来、「地方創生」を政策目標として掲げていますが、進まない理由として、六つの分断①「官民の分断」、②「縦割り組織の分断」、③「現在と未来の分断」、④「地域間の分断」、⑤「世代の分断」、⑥「ジェンダーの分断」をあげたいと思います。そこで、この局面を打開する具体策として、「地銀のデジタル化」と「中小企業のデジタル化」を行うこと。そのためには、地域金融を担う地銀のフィンテック企業への転換と、中小企業のオープンイノベーションによる脱下請けのための独自技術の取得を強力に推進することを提言させて頂きました。

 

 私が、申し上げたいことを要約すると、次の3点となります。①地方創生は、日本経済にとっての最重要テーマであること、②地方に存在する多くの分断をSDGsによって克服すること、③地方創生を真に担うのは、産業のデジタル化に取り組む「地銀」と「中小企業」であること。

 

 そこで、今後のポストコロナ社会に向けての当社の事業戦略について述べさせて頂きたいと思います。これまで、日本経済における首都圏への一極集中に対応し、当社は、新大手町データセンターへの先行投資を行い、今期から投資回収フェーズに入ることができました。そこで、日本経済にとっても、当社にとっても、次なるチャレンジは、「地方と中小企業のデジタル化」です。くしくもコロナは、テレワークを加速し、首都圏のリアルなオフィス空間の価値の見直しを求めています。その意味で、コロナがもたらしたテレワーク社会とは、換言すれば、ワークスタイルの変化に伴う地方への人口分散の可能性を提示しました。これは、コンピュータプラットフォーム事業(データセンター、クラウド、データソリューション、サイバーセキュリティ)、AI/IoTソリューション、メディアソリューションを事業ドメインとする当社の事業戦略にとって、新たなビジネスチャンスであると考えております。業界団体を通じたコンソーシアムの創設と参画を契機として、「地方と中小企業のデジタル化」をSDGsの視点から捉えていきたいと考えております。

 

2020年8月26日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

TIRIクロスミーティング2020で基調講演をしました!

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『5Gのインパクトと中小企業にとってのビジネスチャンス』

~東京都立産業技術研究センターが、5Gで東京都の企業を技術支援~

 

 5Gは、今年からサービスインし2025年には、4Gを完全に置き換えると見られている新たなモバイル通信インフラです。当社は、“5G Innovations”をキャッチフレーズに、5G時代の情報発信インフラを担う5Gデータセンターとして新大手町データセンターを稼働させました。そして、これを皮切りに政府、自治体、様々な企業の皆様と協力して5GによるDX拠点の構築に着手したところです。

 

 さて、このたび、世界一の5Gシティを標榜する東京都の活動を支援するために、9月10日・11日は、TIRIクロスミーティング2020でのオープニング基調講演をさせて頂きました。このイベントは、東京都立産業技術研究センター(TIRI)本部において、リアルとサイバーのハイブリッド参加方式で開催されました。今回は、その様子をお伝えしたいと思います。

https://www.iri-tokyo.jp/site/tiri-cm/

 

●東京都立産業技術研究センターとは?

 スウェーデンクラスの政府と同等の一国規模の経済規模を有する東京都の研究機関であるため、年間80億円の予算規模で約300人の方々が従事されています。

 

●奥村次徳理事長の開会挨拶

 都立産業技術研究センター(TIRI)は、都内の中小企業を技術支援するサービスの質の向上を目指してTIRIクロスミーティングを開催しています。今年で5回目になります。クロスミーティングは、TIRIの研究シーズと中小企業の技術、製品とのマッチングを目的としています。

 現イギリス首相で前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が、ロンドン市長の時に私が、国際学会でロンドンを訪れた時に、ジョンソン市長(当時)が、おっしゃっていたのは、クロスには、交差点の意味があります。正にロンドンは、世界のクロスロードなのです。

 TIRIクロスミーティングには、この交差点の意味とTIRIの研究と皆さんとのX(掛け算)の意味があります。5年前から「ロボット」を3年前から「IoT」の研究会を皆さんと立ち上げました。そして、間もなく「5G」を立ち上げます。そこで、今回の基調講演には、「5G」をテーマにブロードバンドタワー代表の藤原洋先生にお話して頂きます。

 

●私の基調講演テーマ:『5Gのインパクトと中小企業にとってのビジネスチャンス』

 以下の目次に沿ってお話させて頂きました。

1.5Gに対する私の立場

2.従来の情報通信インフラとの相違点

3.5Gの現状

4.5Gを取り巻く技術の変化(ライフ/ビジネススタイル)

5.各産業分野別の5Gを活用したビジネスチャンスとは?

6.5G時代の中小企業にとってのビジネスチャンス

 

 お話させて頂いた概要は、5Gは、4Gと全く異なる非連続的なモバイル通信インフラで、スマートフォンやタブレットのインフラ(生活基盤)に加えて、あらゆる産業を支える社会基盤となるインフラであることを強調させて頂きました。これは当社のようなB to Bビジネス企業および今日お集まりの皆様の企業にとっても絶好のビジネスチャンスとなるB2Bインフラであることを意味しており、市場規模も4Gまでと比較して初めて、電波直接産業を電波利用産業が超えるインフラとなることです。また、日本独自のアドバンテージとして、東京都も申請されましたが、「ローカル5G免許」の意義について触れました。これは、従来の通信キャリアだけではなく、土地所有者、土地利用者が、エリア限定で電波利用免許が取得できるもので、私たちも検討していますが、皆様の企業でも是非ご検討頂きたいというお話をしました。

 お話をした後、5件の質問を頂きました。6件目以降は、残念ながら、時間切れで質疑応答は打ち切られました。主だった質問に対する質疑応答を要約します。ローカル5G基地局設備などコストは、どのように考えればよいか?という質問に対して、通信キャリア向けの設備は、グローバル市場を巡る激しい競争が繰り広げられており、ファーウェイ、エリクソン、ノキア、サムソンなどが先行し、日本企業は、後塵を拝しているのが現状だということ。しかし、ローカル5Gは、主として基地局が屋内設置となるため、我々も連携しているベンチャー企業に低コストのソリューションが有効であることを回答させて頂きました。また、ローカル5G免許を取得しても、将来、全国通信キャリアと競合関係にならないか?という質問があり、5Gの高周波数特性から4Gのようにビルや工場の中まで簡単に入ってこないので、ローカル5Gと広域5Gサービスは、相互接続することで補完関係になることを回答させて頂きました。

 

●おわりに

 リアルとオンラインのハイブリッド開催でしたが、5Gにチャンスを見出そうとする東京都内の中小企業の皆さんの熱心な取り組み姿勢が伝わってきました。ローカル5Gキャリア免許を申請した東京都の5Gプロジェクトが成功裏に進み、世界一の5Gシティになることを今後とも応援したいと考えております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年9月30日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

第3回[名古屋]ネプコン ジャパン セミナー2020にてプレゼンテーション

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 去る2020年10月22日9:30~11:00 『6G実現に向けて動き出す!見えてきた課題と新しい世界』をテーマに、ポートメッセ名古屋で、[名古屋]ネプコン ジャパン セミナー2020の特別講演として、私と株式会社NTTドコモの中村武宏氏(執行役員 ネットワークイノベーション研究所 所長)とで、プレゼンテーションを行いました。

 中村氏は、『5Gの高度化と6G』と題し、モバイル通信キャリアの立場から5Gおよび6Gについて、どのようにネットワークを作り、どのようにサービス提供をするのか?という立場でお話されました。

 一方、私は、『Beyond 5Gに向けた日本・世界の取り組み』と題し、5Gおよび6Gに関する総務省の電波政策に関する有識者会議の構成員として、5Gおよび6Gネットワークの最大ユーザーとしての、5Gおよび6G対応のインターネット・データセンターをいかに構築し、いかなる産業向けに新サービスを提供するのか?という立場でお話させて頂きました。

https://reed-speaker.jp/Conference/202010/nagoya/top/?id=INWN

 

[名古屋] ネプコン ジャパン とは?

 ものづくりの中心地 名古屋で開催されるエレクトロニクス開発・実装展で、エレクトロニクス機器の多機能化・高性能化を支える世界最先端の電子部品・材料や製造・実装・検査装置が出展。
 最新技術の導入・比較検討のため、エレクトロニクス、半導体・センサ、電子部品、自動車・電装品、航空・宇宙などのメーカーが来場します。また、[名古屋] オートモーティブ ワールド、[名古屋] スマート工場 EXPO、[名古屋] ロボデックス -ロボット開発・活用展、[名古屋]スマート物流 EXPOの3つの展示会が併設されており、ネプコン ジャパン セミナーには、合計4つの展示会の参加者が来場し、熱心に視聴されました。

  • [名古屋] オートモーティブ ワールドとは、自動車業界における先端テーマの最新技術が一堂に出展し、自動運転、クルマの電子化・電動化、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における先端テーマの最新技術が一堂に出展され、自動車メーカー・自動車部品メーカーとサプライヤーの方々が参加します。
  • [名古屋] スマート工場 EXPOとは、製造業IoT、AI、FA/ロボット による製造革新展で、スマート工場実現のための、IoT/AIによる遠隔監視/予兆保全/見える化ソリューション、デジタルツイン、FA/ロボット、生産管理システムなど最新技術が一堂に出展され、工場関係者・生産・製造部門の方々が参加します。
  • [名古屋] ロボデックス -ロボット開発・活用展-とは、ロボットユーザー、ロボットメーカーのためにある場で、産業用ロボット・アシストスーツをはじめ、センサシステム・グリッパなどの周辺設備、ロボットの開発技術やAIまでロボットに関する製品・技術が出展されます。

●私のプレゼンテーション概要

 5Gに続く6Gに向けた取り組みが始まったこと、超高速、超低遅延、超多地点同時接続性能が、どう向上し、どのような世界が拓けるのかについて述べさせて頂きました。次に、日本および先行する北欧、米国、中国など世界でどのような取り組みがなされているのかについて述べました。

 今年3月、いよいよ国内で5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスがスタートしたが、世界各国ではすでに昨年からサービスが開始しており、日本は、特許取得、基地局シェアで、大きく出遅れている。この遅れを取り戻し、さらに世界の先頭に立つために次世代の通信システム“6G”の国内開発を進めるべき時であることを強調させて頂きました。

 私自身は、5Gの電波政策にずっと関わってきましたが、5Gの次世代となる「Beyond 5G (6G)」の総合戦略を策定するために総務省が主催する「Beyond 5G推進戦略懇談会」の有識者会議において親委員会と作業部会のメンバーを務めており、どのような戦略を立案したかについてお話しました。

 一貫して、5GおよびBeyond5Gに基づくモバイル通信システムをいち早く導入することが重要であり、このことが、日本の社会と経済が国際的に勝ち残っていくための重要な基盤と位置づけ、社会と経済の発展に役立てていきたいという想いで、事業展開していることについてお話しました。最後に、今回は、Beyond 5Gの国内導入を推進し、首都圏中心の経済活動を地域分散させることによる「地方創生」がゴールであるという視点に立って、「5Gがもたらす未来社会」について述べさせて頂きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月28日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

BBTower Business Exchange Meeting 2020 ONLINE

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~『Withコロナ時代を生き抜くためのデジタルトランスフォーメーション(DX)』~

 

 新型コロナウイルスによる感染症拡大が、止まらない中で、去る11月12日、恒例の当社の顧客向けのシンポジウムBBTower Business Exchange Meeting (BBEM)を、今年は、オンラインで開催することといたしました。そのテーマについては、Withコロナ時代に一層求められるDXについての提言・展望、とする内容にいたしました。

 

 今回、講演者として、特に私と直接コンタクトがあり、今日の社会課題に取り組んでおられる研究者の皆さんをお招きしました。

 

 具体的には、「8割おじさん」こと、感染症対策の専門家で医師兼数理科学者の西浦博京大教授、菅政権のデジタル政策の指南役の村井純慶大教授、世界最速スパコン「富岳」責任者の理化学研究所の美濃導彦理事に基調講演をお願いしました。また、パネルディスカッションのパネリストとして、東大医学部から米国にわたりUCLA教授を歴任後、東大医学部教授、東海大医学部長、日本学術会議会長を2代務められ、現在、政府のコロナ対策有識者会議委員長の黒川清氏、同有識者会議委員で認知科学・AIの世界的権威で元慶應義塾長の安西祐一郎氏に加わって頂きました。当社からは、私と樺澤宏紀取締役がプレゼンテーションを行いました。

 

●プログラム:

14:00-14:05 開会挨拶 当社代表取締役会長兼社長CEO 藤原洋

 

14:05-14:30 keynote1 京都大学大学院教授 西浦博氏

「新型コロナウイルス感染症:数理モデル分析と流行動態」と題して、感染拡大に至る数理モデルの概要と緊急事態宣言の根拠となった厚生労働省のクラスター班での生々しい活動の様子や今後の展望についてお話頂きました。尚、西浦氏は、日本数学会と応用数理学会後援の2020年第9回藤原洋数理科学賞大賞(『理論疫学における数理科学の貢献とその社会実装』)を受賞されました。
 

14:30-14:55 keynote2 慶應義塾大学教授・当社社外取締役 村井純氏

「インターネットと我が国のデジタル政策2020」と題して、村井氏には、内閣官房参与(デジタル政策担当)として菅政権におけるデジタル政策の意義、首相の所信表明演説におけるデジタル政策の目指すところ、Withコロナ時代のライフスタイル、ワークスタイルにおけるインターネット技術の役割についてお話頂きました。
 

15:05-15:30 keynote3 理化学研究所理事 美濃導彦氏

「スパコン富岳とコロナ研究」

美濃氏とは、松本紘理化学研究所理事長の京大総長時代に京大教授を務められていた時から様々な産学連携活動でご一緒させて頂いていますが、現在は、理化学研究所に移られて世界最高速のスーパーコンピュータ富岳の担当理事として活躍されています。そこで、今回は、理化学研究所の概要、富岳の概要、富岳によるコロナ研究として、飛沫拡散シミュレーション研究、富岳を用いた治療薬やワクチン開発の現状についてお話頂きました。
 

15:30-15:55 keynote4 当社代表取締役会長兼社長CEO 藤原洋

「ポストコロナ社会におけるデジタルイノベーションとは?」

当社取締役執行役員 樺澤宏紀

「ポストコロナ社会におけるブロードバンドタワーの具体的アプローチ」

 私からは、ポストコロナ社会とは?、ポストコロナ社会に加速するデジタル文明、ポストコロナ社会のデジタル・イノベーションについてお話しました。特にデジタル・イノベーションに関して、①社会が完全デジタル化へ向うこと②デジタル金融革命が起こること③経済の地域分散が起こること④大企業と比較して遅れていた中小企業のDXが進行するという4つの変化とこれに対する当社の役割が大きいことについて強調させて頂きました。樺澤取締役からは、ポストコロナ社会における当社の取り組みについて、具体的にお話させて頂きました。内容としては、ローカル5G/Beyond5G とデータ流通の進化、地域データ利活用と地方産業創生、データセンター事業者間連携、大阪拠点等インターネットバックボーン強化、スーパーテレワークコンソーシアムでの活動、中小企業DXクラウド構想等について触れさせて頂きました。

 

15:55-16:40 パネルディスカッション

政策研究大学院大学名誉教授 黒川清氏・元日本学術会議会長・元東大医学部教授・元東海大医学部長・病院長・政府コロナ対策有識者会議座長

日本学術振興会顧問 安西祐一郎氏・元慶應義塾長・AI戦略会議座長

慶應義塾大学教授・当社取締役 村井純氏・内閣官房参与デジタル政策担当

モデレータ:藤原洋

当日のシンポジウムを締めくくるために、各専門家の皆さんからWithコロナ社会を生き抜くための重要な点についてお聞きしました。黒川氏からは、グローバル志向の若手人材の育成等について、安西氏からは、政府のAIに関する有識者会議座長からの視点でのAI人材育成の重要性等について、村井氏からは、インターネットの国際会議での最新のテーマとしてのethicsについて日本語訳の倫理とは少し異なる視点での重要性等についてご指摘を頂きました。

 

16:40-16:45 閉会挨拶 当社取締役執行役員 樋山洋介

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年11月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

2020年を振り返って

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~2030年へ向けての準備の年~

 

 間もなく2020年が終わろうとしています。今年の1年を振り返りますと、やはり「準備の年」だったと思います。「いつの準備か?」と言うと、2030年です。

 

 昨年2019年の年末には、このコラムで、「2019年は、2020年の準備の年だった」と書かせて頂きました。それは、「5Gデータセンター」と銘打って、約60億円の投資という創業以来の勝負に出た新大手町データセンターの完成と顧客獲得の目途をつける重要な年であったからです。顧客獲得については、当社の精鋭の営業部隊と行動を共にすることも多くありました。お蔭様で、新大手町データセンターについては、目途が立ったため、来年からは、新大手町データセンターのフル稼働化と、次なる成長へ向けての有効活用拠点とすること、および旧式化している一部の既存データセンターのリニューアルと一部整理を手がけることが始まります。

 

 ところで、「2020年は、何故2030年へ向けての準備の年だったか?」というと、2020年の年始と年末に全てが集約されていたからです。2019年の年末に総務省から大臣懇談会としての「Beyond5G推進戦略懇談会」の有識者会議メンバーとしての参加依頼があり、以下のメンバーで構成される、2020年1月27日に第1回会合が開かれました(第1回会合の座席表参照)。同懇談会の目的は、5Gを民間だけに任せたために、欧米・中国・韓国企業に後れを取ってしまったことから、2030年から開始される6Gで日本が世界をリードすることにあります。

 

〇懇談会(親会)の構成員

「Beyond 5G推進戦略懇談会」 構成員 (敬称略、座長及び座長代理を除き五十音順)

(座長)    五神 真 東京大学総長

(座長代理) 森川 博之 東京大学大学院工学系研究科教授(作業班主査)

飯泉 嘉門 徳島県知事

内永 ゆか子 NPO法人J-Win理事長

木村 たま代 主婦連合会事務局長

篠﨑 彰彦 九州大学大学院経済学研究院教授

竹村 詠美 Peatix Inc. 共同創設者・アドバイザー

徳田 英幸 国立研究開発法人情報通信研究機構理事長

藤原 洋 株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO(作業班主査代理)

根本 勝則 一般社団法人日本経済団体連合会常務理事

 

 

 第1回会合は、懇談会の議論を方向付けるため、極めて重要で、事務局の依頼により、3人の構成員によるプレゼンテーションが行われました。当懇談会の座長を務める五神真東京大学総長、総務省の研究機関である国立研究開発法人の徳田英幸理事長、そして株式会社ブロードバンドタワー代表としての私でした。五神総長は、日本の学術研究機関を代表して何をすべきか?について、徳田理事長は、情報通信とくに電波技術の世界の最先端研究機関として何をすべきか?についてお話されました。私は、6G時代のインターネットおよびインターネット・データセンター業界は、何をすべきか?についてお話させて頂きました(プレゼンテーション資料の一部〔次図〕を参照)。これは、当社の今後10年の事業展開ビジョンでもあります。どのような社会を想定し、どのような技術を基盤とし、どのようなサービスを展開していくのか?を述べさせて頂く機会でもありました。

 

 

 当社は、日本初の専業インターネット・データセンター企業として、また日米合弁企業として2000年2月に設立され、今年20周年を迎えました。新型コロナウイルス感染症拡大が始まる直前の2月10日に設立20周年記念パーティを帝国ホテルで開催させて頂きました。そこには、当社顧客であるヤフー(Zホールディングス)の川邉健太郎社長、SBIホールディングスの北尾吉孝社長、また、事業パートナーである通信キャリアのNTT澤田純社長、KDDI高橋誠社長、ソフトバンクの宮内謙社長、さらには、当社の事業展開にアドバイスを頂いている村井純慶大教授(当社社外取締役)、渡辺克也元総務審議官(現日本CATV連盟理事長)、そして学術研究分野で交流のある名古屋大学の天野浩教授(2014年ノーベル物理学賞)、京都大学の山極壽一総長、東京大学の河野俊丈数理科学研究科長、宇宙飛行士で航空宇宙工学研究の山崎直子氏 にご列席頂き、熱のこもったスピーチをして頂きました。また、総務省元事務次官で現在は民間企業で活躍中の方々をはじめ多くの産学界の皆さんが参加されました。このイベントに参加された多くの方々が、オールジャパンによる情報通信産業の協調領域の醸成の必要性を強く感じられたように思えました。当社にとって、インターネットという「競争と協調の両立」が求められる世界の日本のパイオニア企業の1社として使命感を感じたイベントとなりました。

 

 

 その後、3月に入ると、新型コロナウイルスの感染症拡大が始まり、リアルイベントの中止が相次ぎました。当社もテレワークに突入し、リアルの営業活動も停止する中で、In-コロナ、With-コロナ、Post-コロナ社会における事業展開について探る時期に入りました。そこで、コロナ前に期首での連結業績予想(単位:百万円)を

売上高 16,180

営業利益 80

経常利益 40

親会社株主に帰属する当期純利益 15

 In-コロナ予想として5月13日に以下の連結業績予想を下方修正させて頂きました。

売上高 16,250

営業利益 △125

経常利益 △170

親会社株主に帰属する当期純利益 △115

 しかしながら、In-コロナからWith-コロナへの移行に伴い、テレワークが拡大し、各業界のリアル事業からサイバー事業への移行が進み、当社の主力であるデータセンター、クラウド、ストレージ事業の落ち込みは想定以下となり、分野によっては、売上拡大が起こりました。そこで、11月6日にWith-コロナ予想として再度業績予想修正をさせて頂きました。

売上高 16,100

営業利益 150

経常利益 140

親会社株主に帰属する当期純利益 30

 このように、予期せぬコロナというパンデミック災害によって、当社の事業も大きく影響を受けました。

 このことを、当社にとって、災害によるダメージが予想を下回ったとするのではなく、歴史的に大災害は、「社会にダメージを与える」だけではなく、「社会を変える」という側面が強いと解釈すべきだと思っております。主として14世紀半ばの欧州を襲ったペストによって、パンデミック前の人口は約7500万人から、1347年から1351年までの間に激減して5000万人になったとされています。この結果、カトリック教会だけでは、人の命を救えないことが認識され、ルネッサンスが起こりました。文化の復興は、宗教だけではなく、数学や科学の発展へとつながることとなります。コロナは、「経済」一辺倒の価値観を(人間だけではなく自然環境の)「健康」との両立へと変えました。働き方も、「満員電車に揺られていつもオフィスに出勤する」から、「いつもテレワークで結果を出し、時々オフィスに出かける」というスタイルに変わってきています。

 このような状況の過程で、4月28日に4社、1自治体による「スーパーテレワーク・コンソーシアム」設立に向け基本合意というプレス発表を行い、ワークスタイルの変化に対応した活動を開始しました。

 コロナは、感染症拡大と、テレワークの普及と共に、首都圏への人口一極集中に変化をもたらし始めています。7月以降、東京都の人口流入と流出が逆転しています。このことは、2014年の基本法成立から叫ばれている地方創生を推進する動きをもたらし始めました。そこで、当社は、7月14日にデータセンターのあり方としても地方として北海道をケーススタディとした「北海道ニュートピアデータセンター研究会」の設立に参画しました。これまで、東京の大手町を中心にデータセンター事業を展開してきた当社としては、データセンターの地域分散化への取り組みの検討開始を意味しております。

 

 ここで、コロナに関する次なる流れとして、当社というよりも私個人が、積極的に関与している我が国の数理科学の発展への貢献について触れさせて頂きます。2012年より日本数学会と応用数理学会後援の「藤原洋数理科学賞」を創設し、数学の分野で純粋数学の基礎を踏まえながら社会に貢献した研究者を表彰してきた賞です。今年で第9回となりますが、10月17日に、今年の大賞を京都大学教授(前北海道大学教授)の西浦博氏が受賞されました。日本を代表する数学者と数理科学者によって構成される賞ですが(私は、審査員ではなく実行委員長)、ご自身も感染症の医師でありながら国際的にも活躍され感染症数理モデルによる理論疫学の道を拓かれた「8割おじさん」として著名です。経済一辺倒の政治家・官僚との葛藤を乗り越え「科学」の価値を再認識させて頂きました。ルネッサンス以降に確立された「科学」は、かつては、「宗教」と対峙し、現代では、「政治」と対峙する宿命にあります。今年は、米国大統領選挙の年でしたが、コロナを巡る「科学」と「政治」の関係が鍵になったように思われます。私自身は、自らのバックグランドでもありますが、企業経営においても、「科学を基盤にした経済活動」で、特徴を出していきたいと改めて思った年となりました。

 

 

 このような背景から、11月12日、恒例の当社の顧客向けのシンポジウムBBTower Business Exchange Meeting (BBEM)を、今年は、オンラインで開催しました。そのテーマについては、「Withコロナ時代に一層求められるDXについての提言・展望」とする内容としました。プログラムとして、感染症対策の専門家で医師兼数理科学者の西浦博京大教授、菅政権のデジタル政策の指南役の村井純慶大教授、世界最速スパコン「富岳」責任者の理化学研究所の美濃導彦理事に基調講演をお願いしました。また、私が、モデレータを務めるパネルディスカッションのパネリストとして、東大医学部から米国にわたりUCLA教授を歴任後、東大医学部教授、東海大医学部長、日本学術会議会長を2代務められ、現在、政府のコロナ対策有識者会議委員長の黒川清氏、同有識者会議委員で認知科学・AIの世界的権威で元慶應義塾長の安西祐一郎氏に加わって頂きました。当社からは、私と樺澤宏紀取締役がプレゼンテーションを行いました。

 

 以上のように、1年を振り返ると、新型コロナウイルス感染症拡大という大災害の年でしたが、当社にとって、2020年の最後を飾る最大イベントである、「Beyond 5G推進コンソーシアム設立総会」が、12月18日に帝国ホテルで開催されました。本コンソーシアムは、今年の初めから始まったBeyond 5G推進戦略懇談会(座長:五神真東大総長)での議論を元に設立が決まりました。とにかく5Gで世界に遅れをとった日本が、6Gで世界をリードするための戦略を練るもので、総務省も大変な力の入れようでした。これに応えるべく産学の構成員とワーキンググループの構成員は、一致団結して年初から審議に当たり、その結果、本コンソーシアムの設立につながったのでした。

 総会には、会長の東京大学の五神真総長のほか、武田良太総務大臣、長坂康正経済産業副大臣、経団連会長の代理で根本勝則専務理事、NICT徳田英幸理事長、第5世代モバイル推進フォーラム吉田進会長(京都大学名誉教授)、NTT澤田純社長、NTTドコモ井伊基之社長、KDDI髙橋 誠社長、ソフトバンク社長の代理で宮川潤一副社長CTO、楽天モバイル山田善久社長、戦略懇談会メンバーで発起人として私だけがリアルで、オンラインで森川博之東京大学教授、飯泉嘉門徳島県知事、内永ゆか子NPO 法人J-Win 理事長、篠﨑彰彦九州大学大学院経済学研究院教授、竹村詠美 Peatix Inc. 共同創設者・アドバイザー、コンソーシアムの国際委員長の中尾彰宏東京大学教授、他総務省、内閣府、文部科学省、経済産業省、外務省の代表が出席しました。
 年初から、総務省でのBeyond5G推進戦略懇談会のメンバーとワーキンググループの主査代理を仰せつかり、多くの時間を費やしてきました。親会とワークキングの両方に参加していたのは、私と森川教授だけでしたが、とにかく注力した結果、このようなオールジャパンの体制が世界に先駆けて整ったことは、大変大きな意義があると思われます。当社は、中心となって本コンソーシアムでの活動に取り組みたいと思いました。2030年に始まる6Gへ向けてBeyond5G推進コンソーシアムの活動を通じての当社の新たな事業展開にご注目頂ければと存じます。

 

●おわりに

2020年は、以上に述べさせて頂いたように、2030年へ向けての準備の年でした。新型コロナウイルスの流行は、まだまだ続くことが想定されますので、皆様方にあられましては、どうかご自愛頂きたいと存じます。

 それでは、皆様にとって、2021年が実り多き年になりますことを祈念して「2020年を振り返って」を終わります。

 

 

 

 

2020年12月23日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

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