Quantcast
Channel: 藤原洋のコラム
Viewing all 103 articles
Browse latest View live

ブロードバンドタワー初の関西セミナーを開催しました

$
0
0

『AIが拓(ひら)く新時代の関西』

~5Gイノベーションの衝撃~

 

 当社は、去る7月25日(火) 15:00 開始 (懇親会 17:30〜) とする初めての関西セミナーを開催しました。
 関西地域の人口は約2,166万人 (2016年1月1日現在)、GDPは8,460億ドル (2013年度)で、これはオランダとほぼ同じであり、関西地域は先進国一国に匹敵する人口・経済規模を持っています。また、多くの優良企業や、今回特別講演をいただいた大阪大学発の創薬ベンチャー企業であるインタープロテインのように、関西地域には優れた人材と企業が集積しています。
 そこで、このたび、当社は、高い潜在的経済成長力を有する関西地域にて日頃よりご支援いただいているお客様、お取引先様への感謝の意を込めて、「BBTower 関西セミナー」を開催させて頂きました。
 このセミナーは、基調講演、特別講演、パートナー企業様講演、パネルディスカッションの順で進行し、その後、懇親会となりました。
 

 松田 卓也氏の基調講演では、イスラエルの学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による認知革命(約7万年前)でホモ・サピエンスが生き残ったことを紹介し、農業革命(約1万年前)、産業革命(17~19世紀)、シンギュラリティ(2029~2045年)へと歴史が進むこと。強いAI、すなわち、意志を持つAIが登場。人類は、不死となるが、多くの人は仕事がなくなり、政治的・経済的に無価値な不要階級(Useless Class)へ転落。ヒューマニズムからデータイズムへ移行すること。シンギュラリティを境に先進国と後進国に分かれると主張。超知能作りに必要なものとして、ハードウェア、脳コンピュータインタフェース、ソフトウェア(マスターアルゴリズム)を挙げました。
 

 特別講演で、インタープロテイン社の細田 雅人社長は、AI創薬への期待は、R&Dコストを劇的に削減する破壊的なイノベーションであり、ブロードバンドタワーグループのAIスクエア社との共同研究開発の意義を強調。あるべき姿として、完璧な活性予測、完璧なデザイン、創薬プロセスの激変、R&D生産性の劇的な向上を挙げました。
 

 パートナー企業様講演で、NTTスマートコネクトの原 幸之助氏は、日本のインターネット拠点が、東京・大手町と大阪・堂島であることを明確化し、インターネット・トラフィックが1.5倍のペースで増加していること、背景に海底ケーブルの陸揚げが外房と志摩であること、大阪-東京間専用線価格競争の激化、信頼性・品質・コストにおいて大阪に存在する価値の向上、トラフィックのほとんどを大阪で交換できるようになってきたこと、西日本エリアのクラウド利用品質の向上があることを挙げました。
 

 パネルディスカッションでは、関西電力の有吉 猛氏から、電力に続くガス小売り完全自由化において、IoT、ビッグデータ、AIを活用した付加価値サービス提供への取り組みについて、具体的には、エネルギー使用量と様々なコンテンツ提供を行うWebサービス「はっぴeみる電」や、電力使用量を見守る「はっぴeまもるくん」等が紹介されました。
 また、AIスクエアの石田 正樹氏からは、AIによる自然言語処理による3つの取り組みとして、要約エンジン、キーワード抽出エンジン、QAエンジンについての紹介とAIコールセンター等の構築ツールであるRPA(Robotic Process Automation)についての説明がありました。
 私から関西からの第4次産業革命へのコメントを求めたところ、松田氏からは、京都にシンギュラリティ研究の場所にセンターを創ること、細田氏からは、AI創薬を成功させること、石田氏からは関西の様々な企業と組んでAI技術を提供すること、また、有吉氏からは、ライフラインとしての電力サービスから快適でハッピーな生活環境を実現したいとのコメントがありました。
 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
                 『BBTower 関西セミナー』   開催概要
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
日時 :    2017年7月25日(火) 15:00~19:00 (開場14:30)
                 ( 講演会 15:00~17:30 懇親会 17:30~19:00 )
於 :      インターコンチネンタルホテル大阪 2階「HINOKI」
           〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町3-60
           グランフロント大阪北館タワーC (06-6374-5700)
----------------------------------------------------------------------
                            プログラム
----------------------------------------------------------------------

[ 第一部  講演会 15:00~17:30 (開場 14:30 ) ]

○【基調講演】 『迫りくるシンギュラリティと人類の未来』
         神戸大学名誉教授
         AI2オープンイノベーション研究所 所長
         松田 卓也 氏

○【特別講演】 『試行錯誤を繰り返す創薬の革新にAIで挑む』
         インタープロテイン株式会社 代表取締役社長
         細田 雅人 氏

○【パートナー企業様講演】 『インターネットの現状 ~高まる大阪の重要性~』
         NTTスマートコネクト株式会社 IDCビジネス部
         原 幸之助 氏

○【パネルディスカッション】 『関西発第4次産業革命の可能性』
 モデレータ : ブロードバンドタワー 藤原 洋
 パネリスト : 神戸大学 名誉教授 松田 卓也 氏
          インタープロテイン 細田 雅人 氏
          関西電力 お客様本部 有吉 猛 氏
          エーアイスクエア 代表取締役   石田 正樹 氏
 

[ 第二部  懇親会 17:30~19:00 ]
 

 第二部では、大阪大学 小川 哲生副学長から産学連携の重要性について冒頭のご挨拶を頂き、次に、関西電力 彌園 豊一常務から関西発からしか第4次産業革命は起こらないというご挨拶を頂き懇親会が開始されました。続いて、三菱電機インフォメーションネットワークの鈴木 壽明常務からデータセンターで共同事業をしているご紹介とNTTスマートコネクト 白波瀬 章社長から今後の共同事業の可能性を追求したいとの来賓ご挨拶を頂きました。
 

【おわりに】
 初めての関西セミナーでしたが、とても盛況であり、講演会とパネルディスカッション共に、アンケート結果からも満足度の高さが窺えました。また、懇親会では、大阪大学の小川副学長、関西電力の彌園常務、MINDの鈴木常務、NTTスマートコネクトの白波瀬社長、京都大学思修館の櫻井教授等の皆さんと関西発第4次産業革命を進める当たっての有意義な意見交換ができました。
 

 

 

 

 

 

 

 

平成29年7月28日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

 


第4次産業革命を担う5Gデータセンターを拠点とする事業提携と新成長ビジョン

$
0
0

~自動車産業に強いイード、金融都市構想を担う一橋大学、ブロックチェーンのKeychain社と~

 

 来年(2018年)8月に、ブロードバンドタワー(以下「当社」)の5Gデータセンター(新大手町データセンター)のサービスインへ向けて、本年8月に3つの提携を発表させて頂きました。今回は、これら3つの提携の背景と当社の新たな5Gデータセンターを拠点とする成長ビジョンについて述べさせて頂きます。

(1)イードとの5Gデータセンターを拠点としたコネクテッドカーサービスに関する事業提携
 8月17日当社と株式会社イード(本社:東京都新宿区、代表取締役:宮川 洋、以下「イード」、証券コード6038東証マザーズ)は、当社が開設予定の5Gデータセンターにおいて共同事業の開始を発表しました。当社は、都市型インターネット・データセンター事業者として2000年の創業以来、このたび新たに、初めての完全自己開発の第5世代(5G)データセンターとして、大手町地区に拠点を確保し、2018年8月に「千代田区新データセンター(仮称)」を開設する予定です。5Gデータセンターは、5Gモバイル通信などIoTに対応したデータセンターで、超高速(10Gbps)・超低遅延(1msec)・超多地点同時接続(100万点/km2)仕様に対応し、日本の情報通信産業の発展を加速するものと期待されています。一方、イードは、日本最大級の自動車情報サイト「レスポンス」や、日産自動車の戦略子会社を源流とするリサーチ事業を擁し、自動車業界と深い繋がりを持ってきました。また、通信キャリアを表彰する「ブロードバンドアワード」やユーザーの通信速度をビッグデータとして提供する「RBB SPEED TEST(アールビービースピードテスト)」を長年提供し、通信業界とも深い繋がりを持ってきました。そこで、自動車業界における自動運転や電気自動車(EV)、通信業界における5Gモバイル通信はいずれも2020年前後に実用化され産業を大きく変革すると予想され、それを後押しするアクセラレーターとしての「iid 5G Mobility」を新たな戦略として掲げています。そこで、当社とイード(以下「両社」)は、自動車産業の3つの進化の方向性としての「コネクテッド・カー」「電動化」と「自動化」に着目し、情報と仕組みを両社で提案していくこととしました。具体的には、両社では「産業を支える情報通信インフラ」と「自動車業界、情報通信業界におけるネットワーク」を活かして、2020年の自動運転技術、電気自動車(EV)、5Gモバイル通信などの実用化を見据えた、自動車特化型アクセラレーター「iid 5G Mobility」の5Gデータセンター上での展開を共同で推進する予定です。

(2)一橋大学大学院国際企業戦略研究科とのFinTechデータセンターに関する共同研究
 去る8月22日に、当社は東京都の国際金融都市構想の中枢を担う学術研究機関として、多くの金融界への人材を輩出してきた一橋大学とFinTech分野での共同研究を実施すると発表しました。具体的には、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の金融戦略・経営財務コースを助成し、研究やセミナーに共同で取り組んでまいります。同共同研究により、FinTech分野におけるブロードバンドタワーの企業ブランディングとその事業化の足掛かりとする寄附講座「FinTechとイノベーション」を通じて、野間幹晴准教授、藤田勉客員教授、および私が同研究科の客員教授となり、FinTech分野の研究に加わります。また、共同の取り組みとして、同研究科OBのSBI大学院大学金融研究所藤田勉所長等の協力のもと、様々な企業とビジネスマッチングをはかるため、一橋講堂でFinTech/IoTをテーマにしたカンファレンスを開催するなど、当社の新大手町データセンターを5G時代のFinTechのサービス拠点と位置付ける活動を行ってまいります。

(3)ブロックチェーンの最先端技術のKeychain社と5Gデータセンターを拠点とする事業提携
 また、去る8月24日には、当社はブロックチェーンの最先端技術を有するKeychain社とフィンテック、 IoT分野における包括的な戦略提携で合意したことを発表しました。同社は、合同会社Keychain(本社:東京都中央区、代表社員キーチェーン・ピーティーイー・リミテッド 職務執行者&Co-founder CEOホープ ジョナサン、COO三島 一祥)で、「Keychain社」として急成長を始めた企業です。具体的には、以下の3つの事業展開を計画しています。

①当社の3大IX(インターネット・エクスチェンジ)直結型データセンターサービスおよびハイブリッド・クラウド+ストレージサービスと、Keychainのブロックチェーン技術に基づくPaas(Platform as a service)プロダクトの提供を行います。
②フィンテック企業と既存金融機関の双方が利用できるセキュリティ・認証・監査証跡機能、データ保存サービスなどの提供
・Keychain Cloud
・Keychain Secure Financial Network
・Keychain Digital Identity Authentication
・Keychain Consolidated Audit Trial

 第一弾として、Keychain Cloud(モバイルやIoTデバイスのEnd to End 暗号化データ通信、クラウドへの暗号化したデータ保存)サービスを、当社のデータセンター上で稼働させたベータプロダクトの提供を計画しています。
 以上に述べたように、これら3つの提携の背景には、日本政府が推進する「Society5.0」と東京都が推進する「国際金融都市・東京」構想に則った民間プロジェクトがあります。Society5.0に規定された5大プロジェクトの1つがFinTechであり、東京都の構想では、「アジアの金融ハブ(国内の個人金融資産から、日本を含むアジアに成長資金を供給)」、「人材、資金、情報、技術の集積(金融分野に留まらず、新たな産業やビジネスを創出)」、「資産運用業・フィンテックに焦点(内外の関連事業者を重点的に誘致・育成)」、「社会課題の解決に貢献(投資家・顧客本位、ESG〔環境・社会・ガバナンス〕投資を東京に取り込む)」となっています。このため、金融機関拠点の大手町~証券取引拠点の日本橋を結ぶ「日本版ウォールストリート構想」を実現すべく、大手町データセンターを拠点とした『大手町フィンテックコンソーシアム』の立ち上げを共同で行ってまいります。
 さらに、Keychainの技術は、無数のモバイル・IoTデバイスの認証をおこない、暗号化したデータ通信が可能となります。また、Keychainの分散認証プラットフォームのコンセプトでは、いままで一部の機関が集中的におこなっていた認証機能を、複数の企業で分散してブロックチェーン上で運営できることになります。
 当社は、今後も、こうした産業構造の変化に戦略的に対応し、ICT業界だけでなく、幅広い産業界とのパートナーシップを推進し、第4次産業革命の中心を担う5Gデータセンター(新大手町データセンター)をコアとし、新たな成長フェーズに入ってまいりますので、ご期待頂ければと存じます。
 

平成29年8月30日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

ジャパンケーブルキャストの子会社化の意義について

$
0
0

 当社は、2017年9月29日に、ケーブルテレビ事業者向け映像配信プラットフォーム事業者であるジャパンケーブルキャスト株式会社(以下、JCC)の発行済株式を従前の当社が保有していた出資比率6.3%から、このたび、JCCの一部株主からの譲り受けにより50.4%に引き上げました。これにより、JCCは、当社グループの連結子会社となり、当社のIoTおよび映像配信サービスを担う情報通信基盤を提供する役割を担うこととなりました。

 

●ジャパンケーブルキャスト(株)とは?
 JCCは、私が当社の筆頭株主である株式会社インターネット総合研究所を創業した1996年以来、番組審議委員を務めているスカパーJSAT社からのスピンオフカンパニーで、全国各地域のケーブルテレビ加入者に対して、有料多チャンネル放送(CS放送)を始めとした様々なサービス提供を行っています。特に、質の高い放送サービスを安定的かつ効率的にケーブルテレビ事業者へ配信するサービス(『JC-HITS』)や、 地域情報など付加価値の高いコンテンツを提供するデータ放送サービス(『JC-data』等)、次世代を見据えた端末系サービス(『cottio』)などを通じ、地域社会ならびに全国のケーブルテレビ事業者の発展を後押しする事業を展開しています。最近では、株式会社NTTぷらら(同社の17%を保有する第2位株主)からの出資を受け光TVサービスのケーブル業界向けサービスを展開しています。さらに、ケーブル業界向け高精細放送の総務省指定試験サービス事業者2社の1社となっています。また、JCCは前年度の年間売上約40億円、10%以上の営業利益率を確保しております。

 

●ジャパンケーブルキャストのグループ入りの目的とその意義 

 ケーブルテレビ市場は、多チャンネルサービスから、ここ数年毎年7%以上の伸びを示すインターネットサービスへと移っています。また、2020年に向けた4K・8Kの高精細なテレビ放送サービスの展開等、次世代放送や動画サービスの動きが活発化し、大きな変革期を迎えています。この変革期を好機と捉え、日本全国のケーブルブルテレビ業界に顧客基盤を有する同社を通じて、BBタワーの有する5G時代を先取りしたIoTおよび映像配信サービスを提供することで、両社の事業拡大をその目的としています。
また、情報通信業界は、第4次産業革命の到来と共に、デジタルトランスフォーメーション時代を迎えようとしています。すなわち、5G時代の到来と共に、従来の放送業界、ケーブルテレビ業界、固定通信業界、移動通信業界の垣根を超えた次世代インターネットサービスが始まろうとしています。当社とJCCは、全国のケーブルテレビ事業者向けの各種プラットフォームサービスと、株式会社NTTぷららの光TVインフラを第4次産業革命を推進する次世代インフラとして位置付け、当社の新たなサービスを創出してまいります。
 さらに、当社では、業界に先駆けて、2018年8月に千代田区(大手町地区)に5G時代を見据えた新データセンターの開設を計画しております。当社の新データセンター顧客の保有するコンテンツをJCCのインフラを通じて全国に配信することで、当社グループは、新たな成長フェーズに入ってまいります。

 

平成29年9月29日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

 

 

 

 

 

 

BBTower Business Exchange Meeting 2017『5Gの胎動』開催

$
0
0

~東大江崎浩教授、ヤフー吉永伸司部長によるデータセンターの進化と革新 ~
~マイクロソフト田丸健三郎氏、ソラコム玉川憲社長、サイバーセキュリティクラウド大野暉社長とパネル~

 2017年11月15日に株式会社ブロードバンドタワーのユーザー企業を主な対象とするシンポジウム“BBTower Business Exchange Meeting 2017『5Gの胎動』”を開催しました。本シンポジウムは、当社の顧客満足度向上のために最新のビジネス動向と技術動向を参加者の皆さんと共有し、当社および参加者の企業の事業成長を目的としたものです。以下にその概要を示します。

●藤原洋からの挨拶として、
 産業界は、AI、IoT、ロボットに代表される第4次産業革命により、あらゆる産業分野においてビジネスモデルの変革が求められています。データセンター事業もその例外ではなく、人と人とをつなぐ場から、人とモノや、モノとモノとの情報が交差する場へと変貌しつつあります。
 このような状況の中、2018年8月、当社は、日本のインターネット・インフラの集積拠点としての大手町地区に第5世代(5G)に対応したデータセンターを開設いたします。
 この度、私の会社BBタワーでは、日頃よりご支援いただいているお客様、お取引先様への感謝の意を込め、また、皆様と当社だけでなく、皆様同士のビジネス上の御交誼をより深めるために、「BBTower Business Exchange Meeting 2017」を開催させていただきました。今回は、東京大学大学院教授で、日本データセンター協会理事の江﨑 浩先生をお招きし、5G時代のデータセンター・クラウドの活用策について、皆様と語りあう場にしました。

●基調講演 江﨑 浩氏「覚醒するデジタル・フォースとサイバーファースト革命」
東京大学 大学院 情報理工学系研究科 教授
- Development of After Internet Infrastructure -
 本講演を要約すると、サイバー空間に閉じていたインターネットは、実空間に染み出し(IoT1.0) 、実空間と融合し(IoT2.0) 、さらに、実空間を定義する(IoT3.0) 段階へと進化しようとしている。また、これまでの疑似的なデジタル化は、ネイティブ化し、デジタルの本当の力(Force) を覚醒しつつある。これによって、我々の社会・産業インフラは、実空間主導のアーキテクチャから、サイバー空間主導の新しいアーキテクチャへ進化しようとしている。最後に、この新しいインフラを実現するに資するデータセンターの姿について詳しく解説されました。

●ユーザ様講演 ヤフー株式会社 システム統括本部 サイトオペレーション本部 インフラ技術2部 部長 吉永 伸司氏
 
 日本最大のWEBサービス企業のヤフーの内幕としてのデータセンターについてご披露頂きました。BBタワーのデータセンターだけは、最も長く16年以上使っているとのお話がありました。

●パネルディスカッション
 「データセンター/ クラウドの最新動向とAI、IoT 時代での活用の可能性」
~ 第4次産業革命の潮流の中で ~
モデレータ: 株式会社ブロードバンドタワー 藤原 洋
パネリスト:
東京大学 大学院 情報理工学系研究科 教授 江﨑 浩 氏
株式会社ソラコム 代表取締役社長 兼 共同創業者 玉川 憲 氏
日本マイクロソフト株式会社 技術統括室 業務執行役員 田丸 健三郎 氏
株式会社サイバーセキュリティクラウド 代表取締役 大野 暉 氏

 以下のようなことが議論されました。
○利用者側からみて欲しいデータセンターは、あらゆるパブリッククラウドと接続できるデータセンターである。
○欲しいクラウドとは、コストと信頼性に加えてAIなど最新のサービスを内包したクラウドである。
○日本がやるべきことは、米国のジャイアントがやらない、やれないことでイノベーションを起こすことであり、例えば、IoT、サイバーセキュリティ、高品質なサービスなどがある。

●おわりに
 今回は、素晴らしい講演者とパネリストに恵まれ極めて参加者満足度の高い会だったと思いました。来年もより充実した会にしていきたいと考えております。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成29年11月29日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

日比谷公園前の新築ビルに出現したBBTowerの異次元空間オフィス

$
0
0

~旧オフィスでの1年半にわたる行動分析からデザインした新オフィス~
~今週2017年12月10日発行の日経ヴェリタスに写真付きで掲載されました~

 

 当社は、去る12月11日から、新オフィスでの営業が始まりました。ブロードバンドタワーの働き方改革は、『5G WORKPLACE PROJECT』と名付け全員参加型プロジェクトでこの新オフィスを実現しました。米国のCBRE社とコクヨ(株)の黒田社長直々のご尽力のお蔭で構成されたスーパー・デザインチームの皆さんから多大なご支援を頂き、新たなオフィス空間とワークスタイルの創造を行うことができました。
 これまでも東急不動産の内幸町東急ビルにいたのですが、当社の成長に伴い手狭になったことに対して、新築ビル(日比谷パークフロント)の紹介を受けました。そこで、1年半にわたる行動分析を行って、これをもとにレイアウトや座席や会議室の大きさや配置を行いました。多くのデータが、集まったため、これを活かすデザインということで、デザイナーのクリエイティビティに託したのでした。新たな東急不動産の日比谷パークフロントビルをここまで活用した大胆な働き方改革を実践したオフィスは、ユニークだということで、日経ヴェリタス(12月10~16日号)に掲載されました。

●1年半にわたる『5G WORKPLACE PROJECT』を振り返る
 実際の活動を振り返ると、次のような8つの活動を行いました。①ワークプレイス調査(スペース使用率観察調査、全社員アンケート調査、リーダーシップアンケート調査、リーダーシップインタビュー、ワークショップ、役員ディスカッション)、②チェンジマネジメント活動(プロジェクトサブリーダーの活動)、③全社会合のタウンホールセッション、④ニュースレターの発行、⑤プロジェクトポータルサイト運営、⑥チェンジチャンピオンセッション(7回)、⑦マネージャーセッション(3回)、⑧パージパーティ(3回、インセンティブ付のペーパーストックレス活動)です。

●「5Gオフィス」というコンセプト
 ここで、5Gは、第5世代モバイル通信網である5Gが、いよいよ2020年から開始されることに起因しています。当社の2018年8月に稼働予定の新データセンターも業界初の『5G(第5世代)データセンター』と位置付けています。さて、トップメッセージとしての5Gは、新しいオフィス(ABW=Activity Based Workplace)で、どう Work するのか?に対して、Grow(成長)、Glad(喜んで)、Get together(集まって)、Global(地球規模で)、Glorious(栄光ある)仕事をしよう!という5つのGを指針としました。そして、職位ではなく、各職場に実質的なプロジェクトサブリーダーをアサインし、現場と経営のシームレス接続を役割として、良い事も悪い事も情報共有を行うチーム組成を行いました。この組成は、外部ステークホルダーの株主、顧客、パートナー企業の満足度を高めるための内部組織の強化を意味しています。

●チーム組成
 チーム組成における大切なことは、全体のとりまとめを行うプロジェクトリーダーの役割です。今回は、人事・総務を分掌とする及川茂常務取締役にこの役割を担ってもらい、以下のような2つの方針でリーダーシップを発揮してもらいました。第1に、約1年半の全員参加によるプロジェクトとしたこと。このことによって、新しい職場、新しい環境が徐々にイメージが出来あがり、そして、ついに、このたび、社員一丸となって共創したオフィスが出来上がりました。第2は、移転がゴールではなく「BBTowerとしての働き方改革のスタート」であると位置付けたこと。本オフィスは、斬新なフリーアドレスオフィスであるため、移転後は、環境も変わり物理的に部下との距離は遠くなるケースも多々あり、そのため業務における今まで以上の意思疎通が必要となるためです。そこで、再度初心に戻り「報・連・相」を確実に実行しようというものです。そして、ゴールとして、集団を「チーム」に変える個々の意識変革を標榜することとしました。

●デザイナーの想いを活かす!
 経営視点のデザインとはデザイナーのこだわりを理解することが重要です。デザインとは何か」を語ることは困難で、あまりに多くの意味を含みます。“Design”という言葉の意味を調べてみると、意匠、図案、設計、企画、模様、計画、企画、陰謀、意図、目的、美術作品、仕組み、構造”などの意味がありますが、私の考えるデザインとは?以下の4つの点が重要であると考えています。①デザインとは、創造②デザインとは、目的の追求③デザインとは、美の追求④デザインとは、自然法則への追随。
 そして、当社のプロジェクトを担当したデザイナーの創ったコンセプトは、インターネットの基本概念である「自律・分散・協調」をエントランスデザインの基本とし、未来へつづく『トランジット・トンネル』です。ビルの性格上、細長い形を活かした考え方で、オフィストンネル、ファンクショントンネル、カフェトンネルの3つが平行に設けられています。
 

 

 

 

 

●新オフィスでのICTサポート革命
 最先端のICTサポートオフィスとするために、uniConnect(iPhoneで部門の03番号を着信する。保留する。転送する等。)、Google ハングアウト(チャットツールの基本的な利用方法、iPhoneカメラで撮影したデータの取り出し方法。)、9F無人受付システム「ACALL」(無人受付からの通知方法)の3つを準備しました。また、コミュニケーション手段として、最先端のGoogle ハングアウトミート(Chromeブラウザを利用したビデオ会議の開催方法、画面共有方法。iPhoneアプリの利用方法。)、Cisco WebEX(ブラウザを利用したビデオ会議開催方法、利用申請方法。PCリモートコントロール方法。)連絡とれるくん(名刺登録方法と登録後の管理方法。SnapScanを利用した登録。)、どこでもMyFAX(FAXの送受信方法)の4つを整備しました。

●新オフィスにおけるIoT利活用
 新オフィスはフリーアドレス、広い、オシャレであるという特徴を活かすべく完全IoTオフィスとして設計しました。具体的には、各種センサー・ネットワークを配備し、温湿度マップ、CO2濃度マップ、騒音マップ、在席マップ、位置マップを生成できるようにデザインされています。

●新オフィスでのコミュニケーションから生まれる価値創造
 固定席ではなく、色々準備されたタイプから好きな座席を選ぶために、毎日座席が変わります。実に多彩なミーティングスペースを確保しました。そこには、これまで、縦割りだった組織の壁を超えて、多様な社内にコミュニケーションが生まれ始めています。
 そして、特に重要なのがカフェ=HASH#COFFEE®の存在です。これもコクヨ(株)のデザイナーのこだわりの力作で、気分転換の場としてだけではなく、各分野の専門家たちが互いに最先端の場で起こっていることを紹介し合う場として機能し始めています。
 以上のように、働き方改革の最も重要なことは、オフィスの快適さと共に、人と人とのコミュニケーションから生まれる価値創造なのだと考えています。

 

平成29年12月20日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

新データセンターを開設する年=2018年の抱負

$
0
0

~コンピュータプラットフォーム事業・IoT/AIソリューション事業・メディアソリューション事業へ~

 

 2018年は、日本において「第4次産業革命が始動する年」と位置付けられます。すなわち、あらゆる産業が、IoT/AI技術を適用し、ビジネスモデルの転換に着手する年と言えます。当社は、第4次産業革命を先導するテクノロジー・カンパニーとしての役割を果たすために、このような時代の到来に合わせて事業セグメントの入れ替えの準備を行ってきました。
 今回は、2018年の年初に当たり、以下に示す3つの新たな当社事業のセグメントにおける抱負について述べたいと思います。

1.当社のコンピュータプラットフォーム事業について 
 当社の創業以来の事業で、顧客のビジネスを担うWebサーバを預かるデータセンター(コロケーション)サービスを中心に行ってきました。今年の同事業の最大のトピックスは、東京都区内3か所と、大阪1か所の都市型データセンターに加えて、日本のインターネット・インフラにとって最重要拠点である大手町に新データセンターを8月にオープンします。このデータセンターを以って、大手町地区には今後10年以内に新たなセンターの建設予定はないといわれており、新データセンターの希少価値は、益々高まってくるものと思われます。
 コンピュータプラットフォーム事業に関する今年の抱負は、本データセンターに、3大キャリアの全てのIX(インターネット・エクスチェンジ、インターネットトラフィックの交換拠点)、および2つのメガクラウド(AWS〔Amazon Web Services〕とMicrosoft Azure)との直接接続拠点を誘致することです。これが実現すれば、日本のインターネット・データセンターの中で、最も接続環境に優れたデータセンターとなります。正にIoT/AI時代に相応しい5Gデータセンターとしての新たな時代を創る拠点になると思われます。
 また、この新データセンターの開設に伴い、クラウドユーザーにとっても多くの利便性を提供する環境を整備しようと考えています。すなわち、顧客専用のWebサーバ、多くの汎用アプリケーションの利用が可能なメガクラウド、顧客のアプリケーションを作り込むためのプライベートクラウドとを組み合わせて利用する柔軟なサービス提供が可能となります。
 さらに、新データセンターでのビッグデータを蓄積することによって、年々進化するDell EMC 社のスケールアウトNAS「Isilon(アイシロン)」、およびメガクラウド互換のユーザーインタフェースを備えるScality 社のSoftware Defined Storage(SDS)「Scality RING」のさらなる利用が拡大するものと予想されます。

2.当社のIoT/AI ソリューション事業について 
 当社は、来たるべきAI時代に備えて約2年前の2015年12月に人工知能(AI) 技術サービスを提供する(株)エーアイスクエアを設立しました。同社では、特に社会に不可欠な人工知能(AI)の領域で、人のコミュニケーションの根幹である自然言語処理に軸を置いた研究開発を進め、ソリューション事業へと展開してきました。具体的には、AIによる自動要約、キーワード抽出、Q&A構築を基幹ソリューションと位置づけ、お客様のコールセンターや書籍の要約ビジネスに応用してきました。AI技術サービスに関する今年の抱負は、2年前にゼロから始めた同社の事業を年内に黒字転換することです。
 一方、IoTソリューションとは、IoTによって送受信されるビッグデータを瞬時に分析し、サイバー空間での知識への変換によって、現実世界に新たな価値を創造することです。当社は、ここ数年、同分野の事業化の準備を行ってきました。その集大成が、昨年10月に分社化した(株)IoTスクエアの設立です。同社の社外取締役には、元NTTドコモ社長・元JAXA理事長を歴任された立川敬二博士をお招きし、IoTソリューションサービスの創出、多くの企業とのアライアンス戦略に関するアドバイスを頂いているところです。このIoTソリューションに関する今年の抱負は、分社化したスマートエネルギー運用サービスに加えて、このIoTスクエア社独自の事業の柱を立てるべく、第2のサービスイン、および次年度の第3のサービスインの準備を完了することです。これら3つのサービスインによって、IoTソリューションの収益基盤の整備が完了することが期待されます。

3.当社のメディアソリューション事業について
 映像提供は、従来は、放送事業者とレンタルビデオ事業者が担っていました。しかし、昨今のインターネット・インフラのブロードバンド化の進展とスマートフォンの普及によって、インターネットによる映像配信の時代が到来しようとしています。
当社は、このような時代の到来に備えて、映画制作からプロモーションまで、独自性の高い映像メディアサービス提供を行っております。また、昨年10月には、日本全国のケーブルテレビ局向けのデジタル映像配信プラットフォーム提供を行うジャパンケーブルキャスト株式会社(JCC)を子会社化しました。
 そのため、メディアプラットフォーム事業における今年の抱負は、当社の新データセンターに誘致予定の3つのIX(インターネットエクスチェンジ)と全国のケーブルテレビ局とをJCC網を通じて直結する「ケーブルコネクト・サービス」を開始することです。「ケーブルコネクト・サービス」が普及すれば、全国のケーブルテレビ局は、高速のインターネットサービスを介した4K、8Kの超高解像度映像配信などの新サービスの提供が可能となり、同社の売上と営業利益の増加に貢献すると考えています。

 

 

平成30年1月31日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

毎日みらい創造ラボの起業支援4チームの成果報告会と審査会を開催

$
0
0

~全員有望な起業家集団の中で信州大発ベンチャーがグランプリ~

 

  毎日新聞社、メディアドゥ、ブロードバンドタワーの3社は、新たなメディアやコミュニケーションビジネス分野の起業支援の共同事業化を行うために、昨年(2017年)7月に合弁会社「毎日みらい創造ラボ」を設立しました。合弁会社では、若いベンチャー起業家や学生から事業アイデアを募り、起業プロセスを支援する「シードアクセラレータープログラム」を実施してきましたが、本年(2018年)3月7日、第1期の同プログラムに選定された4社の成果報告のプレゼンテーションとその審査会(デモデー)を開催しました。

 

 審査会には、毎日新聞の丸山昌宏社長、メディアドゥの藤田恭嗣社長も参加され、信州大学発ベンチャーでナス由来成分を活用したヘルスケア事業に取り組むウェルナス社(小山正浩社長)がグランプリに選ばれました。惜しくもグランプリを逃したものの、どのチームも有望で、東大発ベンチャーのブロックチェーン技術を使ったスポーツチーム支援(ヴェンタス社)▽ベンチャー企業向けマーケティング支援アプリ(ガウディ社)▽インバウンド対象、高付加価値の旅行企画による地域創生(エイティデイズ社)が、昨秋から3カ月間、国内外の投資家や起業家ら約20人から毎日みらい創造ラボの支援を受けてアイデアを磨いてきたのでした。

 

 同プログラムでは、3月26日から4月23日までの間、第2期の参加者を募集しております。第1期の4チームは、素晴らしい起業家集団でした。第2期も楽しみです。

 

https://mirailab.tech/%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%A6%82%E8%A6%81/

 

 

 

 

 

 

平成30年3月28日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

「中国製造2025訪日調査団」との意見交換会を終えて

$
0
0

~中国版インダストリー4.0専門家集団との熱い議論~

 

 先週のことですが、中国製造2025訪日調査団が、当社を訪問されました。訪日調査団は、他には、東京大学と日本政府機関を訪問されたそうです。

 

 ドイツ政府が、2011年から推進するIndustrie4.0(IoTによる製造業革命)が、米国(Industrial Internet Consortium)、日本(経済産業省・総務省のインターネット推進フォーラム、一般財団法人インターネット協会・IoT推進委員会)、そして中国(中国製造2025)へと波及しています。

 

 このたび、私が、インターネット協会理事長と同協会IoT推進委員会委員長を務めていることなどから、「中国製造2025訪日調査団」が、当社を訪問し、私のプレゼンテーションの後、質疑応答を通じて、熱い議論を行いました。

 

 今回の訪日調査団は、産学の有識者から構成されており、その目的の「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」は、ドイツの「インダストリー4.0」や、米国の「インダストリアル・インターネット」と並ぶ、中国政府(国務院)主導のプロジェクトです。2049年の中華人民共和国建国100周年までに「世界の製造大国」の地位を築くことを目標としています。

 

 「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」とは、2015年5月に中国政府が発表した、中国における今後10年間の製造業発展のロードマップで、 「5つの基本方針」と「4つの基本原則」に基づき、2049年までの3段階に分けられています。第1段階として、2025年までに「世界の製造強国入り」を果たし、第2段階として2035年までに中国の製造業レベルを、世界の製造強国陣営の中位に位置させ、第3段階として、2045年には「製造強国のトップ」になるという計画です。
 5つの基本方針には、イノベーション駆動/品質優先/環境保全型発展/構造の最適化/人材本位が掲げられています。

 今回の訪日調査団との議論を通じて感じたことは、これまで中国は『世界の工場』と呼ばれ、世界第一位の製造規模を誇っていますが、製造業のプロセス管理/オペレーションの最適化では、ドイツや日本から遅れているという認識があるように思えました。というのは、これまでの中国の競争力をさせていたのは、豊富な労働力と低賃金による労働集約型の製造業であるということだと思われます。しかし、今後は労働構造の転換を図り、ITやロボット、AI(人工知能)を活用した知能集約型産業への転換が必要とされているように思いました。

 今回の訪日調査団から、現在の中国は、労働集約型の製造業から脱却できていないが、デジタルトランスフォーメーションによる、(製造)プロセスの変革を指向する企業が多くあると感じました。中国政府は、中国製造2025の中で「製造業のイノベーション能力の向上」を戦略的に重視しており、官民学が一体となって「製造業イノベーション体制」の構築を推進しようとしているようです。実際、2025年までに40カ所の「製造業イノベーションセンター」を設立し、3Dプリンティングやバイオ産業などの基盤技術開発と人材育成に注力するとのことです。

 実際、シーメンス、日立、富士通などが、中国製造2025をビジネスチャンスとして捉えています。 

 一方、今回の訪日調査団が「中国製造2025を成功させるための課題」として挙げたことが、人材育成とシミュレーションでした。特に、化学工業などの製造プロセスの改善シミュレーションにIoTは、どう役立つか?というものでした。
 最近、急に政権が代わって、環境問題への取り組み姿勢が、米国と中国で、逆転したように思えます。そこで、「中国製造2025」の5つの基本方針には、『環境保全型発展』が、重視されているように感じました。さらに人材育成については、「言うのは簡単だが実行は難しい」というものでした。

 

 最後に私のプレゼンテーションの概要と質疑応答についてお伝えしたいと思います。私のプレゼンを要約すると、ドイツのインダストリー4.0の本質は、「日本のKaizen(トヨタ式生産方式)のIoT化にある」という視点でお話しました。そして、それを実現するツールが、IoTだけではなくて、ビッグデータを根拠としたAIだというお話、さらに最後には、5G(移動通信網)と次世代ITS(高度交通システム)だという話で締めくくりました。もし、日本から、役に立ちそうなことがあれば、いつでもコンタクトして下さい・・・。知的財産を正当な評価いただければ貿易しますよ、と結びました。

 

【Q&A】

Q1:日本の製造業でAIが、進展すると、失業者が増えることが考えられるが、どう対処するのか?

A1:日本は、人口が減るので人手不足なので、心配ない(笑)。それは、冗談だが、それは、企業経営理念と制度設計の問題である。人間を優先するのか?機械を優先するのか?これは、極めて重要な課題である。古典的資本主義は、5万人の従業員のうち1万人をレイオフして、500億円の利益を出すと、経営者が100億円のボーナスをもらう仕組みだが、日本は、そうはなっていない。恐らく中国の企業経営者も古典的資本主義とは異なる仕組みで経営されていると思う。

 

【Q2】IoTは、機械工業などには、役立つだろうが、化学工業にも役立つのか?

【A2】2つある。1つは、生産設備、計測設備、検査装置にセンサーをつけて安定運用をデータ化すること、もう一つは、化学プラントの品質管理に応用する。センサーをつけてその計測データと最終製品の歩留まりと品質の相関関係を発見すること。

 

【Q3】最近、トランプ政権が、保護貿易主義によるアメリカの製造業の復活を宣言しているが、どう思うか?

【A3】時代遅れである(笑)。

【中国の皆さんの反応】こんなに明確に回答した日本人は、初めて。東大教授も日本政府の人も、何を回答しているのか分からない回答だった。

 

*その他、色々質問がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

平成30年4月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 


「第16回 アジア太平洋地域ITSフォーラム2018福岡」について

$
0
0

~22年ぶりの自動運転など自動車情報システムの国際会議が日本で開催~

 

 去る5月8日から10日までの3日間、福岡で「第16回アジア太平洋地域ITSフォーラム」が、開催されました。私は、本フォーラムの日本誘致委員会から参加し、このたび実行にこぎ着けられたことに感慨深いものがありました。私の立場は、実行委員会副委員長として参画(委員長:中尾元西鉄副社長、副委員長:二橋トヨタ九州会長、安浦九州大学副学長、私の3名)し、プログラムの作成、講演者への依頼、イベント運営など全般に亘ってお手伝いさせて頂きました。


 初日は、中尾委員長のご挨拶、高島福岡市長のご挨拶(写真参照)、坂井総務副大臣のご挨拶、小川福岡県知事のご挨拶、天野ITSジャパン専務理事のご挨拶とアジアITS各国代表の登壇がありました(写真参照)。基調講演として小川知事、山本トヨタ自動車常務(写真参照)、米Ygomi社のRessel Shield会長(写真参照)、中国Huawei Technologies, LTE-product Line PresidentのVeni Shone氏、インドネシアのBlue Bird Goup Holding社長のNoni Purnomo氏(写真参照)が登壇されました。


 2日目は、世界の高度交通情報システムの各国の展開例が紹介されました。台北、シンガポール、オーストラリア・クイーンズランド州政府、アジア開発銀行などから先進的な取り組みについての発表が印象的でした。


 3日目は、私が登壇し(写真参照)、パネルディスカッションのモデレータを務めました。ここでは、以下のような内容について議論しました。シェアリング、コネクティッド、EV(Electric Vehicle、電気自動車)の3つの潮流がこれまでの自動車産業を急速に変化させようとしています。2021年には新車のうち80%以上がコネクティッドカーになるという予測もあります。またインターネット技術発展の恩恵を受け、バスや電車など公共交通もコネクティッドカー化していきます。本セッションでは、IoT、AIを駆使したV2X(車車間通信、車路間通信技術)ビジネスを先導するAuto Talks社とニューヨークなどライドシェアなどのOSを提供するVia社に6つずつ質問しました。インターネットの視点から、次世代のITSに対する展望について議論しました。(モデレータ: 藤原 洋, 株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長 CEO/スピーカー: Ram Shallom, Vice President, Business Development and Marketing APAC Autotalks, Israel/スピーカー: Yuta Iguchi, Partner - Million Steps, Via Representative in Japan)。

 今回のフォーラムを通じて、いよいよ、ITS (Intelligent Transportation System)が、自動車交通をより便利に、より安全に、より環境と調和するものにしていくために必須のものとなってきた印象を受けました。私、イスラエルを代表し米国で活躍している自動運転技術とライドシェア企業のAutoTalks社、Via社のパネルディスカッションは有意義なものでした。特に、V2X(車車間・車道路間・車歩行者間・車信号機間通信)に関する技術・市場動向、ライドシェアに関する技術・市場動向は、自動車に関する世界の最先端サービスに関わるもので白熱した議論を交わすことができました。


 最後に、本フォーラムを総括すると、参加者は、前年の香港大会の400人に対して、今回の福岡大会は、3500人を超えました。実行副委員長として大変嬉しく思いました。また、今回の参画を通じて、当社グループの事業もいよいよコネクテッドカー等自動車産業のデジタル化に関わる仕事が増えて来そうな気配を感じました。

 

http://www.itsap-fukuoka.jp/japan/

 

 

平成30年5月28日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

ブロードバンドタワーの『電脳交通』資本業務提携合意の背景と意義

$
0
0

~『クラウド型タクシーコールセンター』サービスでJapan Taxi、NTTドコモと協業~

 

 株式会社ブロードバンドタワーは、このたび、株式会社電脳交通(本社:徳島県徳島市、代表取締役:近藤 洋祐氏、以下電脳交通)との資本業務提携について、その背景とその意義を述べさせて頂ければと思います。

 

●自動車業界を大きく変えつつある第4次産業革命のインパクト

 当社は、あらゆる産業における第4次産業革命の担い手として、2018年8月に新たにオープンする新大手町データセンターを、様々な産業分野のイノベーション拠点として位置付けています。当社にとってもその重点分野が自動車産業です。

 さて、自動車業界を大きく変えつつある状況は、いわゆるCASE(コネクテッド:connected、自動運転:autonomous、シェアード:shared、電動化:electric)と呼ばれる自動車業界トレンドです。その背景は、言うまでもなく技術革新にあります。

「C」コネクテッド(connected)とは、多くの自動車で発生する情報をクラウドに集めて、Big Data分析を行い、AI(人工知能)による機械学習と相関関係の抽出を行おうとするものです。

「A」自動運転(autonomous)とは、カメラやレーダーによって収集される情報をもとに自動運転をいくつかのレベルに分けて実装していくもので、遅くとも2030年に完全自動運転車が実現するものとされています。

「S」シェアード(shared)とは、ウーバー(2009年から専用アプリを通じてハイヤーを予約・利用できるスマートフォン向けサービスを提供する米国企業。スマートフォンの位置情報に基づいて利用者の所在が確認され、クレジットカードで決済される。米国では、自動車の所有者はウーバー社ではなくドライバー所有であることが一般的。日本では、現時点で白タクとして不認可。)に代表される自動車を資産として見た場合のシェアードエコノミー型のサービスへの流れです。

「E」電動化(electric)とは、SDGs (Sustainable Development Goals、国連が2015年総会で全会一致で合意した世界が2016年から2030年までに達成すべき17の環境や開発に関する国際目標。「持続可能な開発目標」)に代表される世界的な地球環境保護の潮流の中で、ガソリン車、ディーゼル車から電気自動車への移行のことです。

 当社は、以上の4つのトレンドを大きなビジネスチャンスとして捉えており、今回の電脳交通との資本業務提携は、同時期に資本参加されたJapan Taxi株式会社(日本交通グループ)、株式会社NTTドコモとの共同事業として位置付けております。

 

●本提携の目的

 我が国の地方では、人口減少に伴い、各鉄道会社のローカル線の廃業が進み、地方部の公共交通におけるタクシーの重要性はこれまでにも増して高まっています。しかしながら、地方のタクシー会社の約99%が従業員300人以下の中小の事業者で、輸送人員の減少による効率低下や従業員の高齢化などの課題に直面しています。特に主として個人を対象とするタクシー事業では、夜間・深夜・早朝の配車業務はコストや労務管理の面から大きな負担となっています。電脳交通は、このような社会課題解決を目的として、徳島県のタクシー事業者である吉野川タクシー有限会社を母体として2015年に設立されました。同社は、地域交通を支えるタクシー事業者向けに、IT技術を活用したタクシーの配車システムを開発し、配車業務を代行する『クラウド型タクシーコールセンター』サービスを提供しています。

 ブロードバンドタワー・グループは、基幹事業であるデータセンターサービス・クラウド・ストレージサービスに加えて、IoT/AIソリューションを提供しております。当社は、今回の資本業務提携を通じて、徳島発サービスを全国サービスへと拡大を行うことで、電脳交通と他の出資者と連携して第4次産業革命に対応した新事業機会創出をその目的としています。具体的には、電脳交通が提供する『クラウド型タクシーコールセンター』サービスの全国展開の支援、配車データ・顧客行動情報等の業務上の収集データのビッグデータ解析、コールセンター業務への人工知能(AI)技術の活用などを行ってまいります。

 

電脳交通の近藤洋祐社長(左)と日本交通の川鍋一朗会長(右)と。

 

電脳交通の近藤洋祐社長、樋山洋介ブロードバンドタワー取締役と徳島の電脳交通本社にて。

 

 

平成30年6月28日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

 

総務省研究プロジェクト採択手交式、当社開催の3大IXとの5Gデータセンター始動の記者会見について

$
0
0

~天野浩名大教授、JPIX山添社長、BBIX福智専務、JPNAP外山副社長が参加~

 

 今月は、、色々なトピックスがありましたが、去る7月13日には、特に大きなイベントがありました。朝一番に、総務省から5Gデバイスの研究開発プロジェクトの代表企業として、手交式に出席いたしました。私が代表で、名古屋大学の天野浩教授(2014年ノーベル物理学賞)を中心とする学術研究機関とNTT研究所、パナソニックセミコンダクターが参列し、3年間の研究プロジェクトの採択のセレモニーでした。

 私は、代表として、以下のコメントを述べさせて頂きました。 「謹んで電波利用料から拠出される研究開発で世界をリードするGaN(青色LEDでノーベル賞に輝く日本の強いデバイス材料の窒化ガリウム)を用いた5Gデバイスを3年かけて開発させて頂きます。特に、今後、世界の情報通信業界において激しい競争が始まる5G(第5世代移動通信システム)において、日本が世界をリードするGaNを材料とした基地局デバイスから、5G情報通信インフラ、そして私たちの提供する5Gデーターシステムまで、一気通貫のエコシステムを構築したいと考えております。」  

 

 続いて、ブロードバンドタワーの新オフィスにて、5Gデバイス開発と5Gデータセンターについての記者会見を行いました。5Gデータセンターの会見の特徴は、3大IX(インターネットエクスチェンジ)の代表が参加されました。KDDI系JPIX社長の山添亮介氏、ソフトバンク系IXのBBIXの専務COOの福智道一氏、NTT系JPNAPのインターネットマルチフィード代表取締役副社長の外山勝保氏(ビデオ出演)に登壇して頂きました。

 

 この2つのプロジェクトが同期して動くことで、オールジャパンの体制を整え、デバイスからデータセンターまで、日本が世界をリードする5Gエコシステムの確立に貢献したいと考えております。

 

https://www.bbtower.co.jp/ir/pr/2018/0713_001437/

https://www.bbtower.co.jp/ir/pr/2018/0713_001436/

 

総務省での手交式

 

株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO 藤原洋

 

名古屋大学 教授 天野浩 氏

 

日本インターネットエクスチェンジ株式会社 代表取締役社長 山添亮介 氏

 

BBIX株式会社 専務取締役兼COO 福智道一  氏

 

 

 

平成30年7月25日

代表取締役会長兼社長CEO

藤原 洋

 

 

 

 

 

 

 

 

インターネット総合研究所のイスラエル上場*と今後のIRI/BBTowerグループの展開について

$
0
0

~5G時代に対応した新大手町データセンターのグローバル拠点化へ向けて~

 

 2018年8月6日に、株式会社ブロードバンドタワー(以下BBTower)の筆頭株主である株式会社インターネット総合研究所(以下IRI)は、アジア企業として初めて、イスラエルのテルアビブ証券取引所(以下TASE、取引シンボル:IRI)への株式上場が確定し、同月9日に上場(*実際には、IRIの株式を100%保有するイスラエル法人であるInternet Research Institute Ltd が上場)を果たしましたことをお伝えさせて頂きます。

 IRIは、1999年東証マザーズ第一号上場した後、2007年11月にオリックスの完全子会社となり未上場となっていました。その後、2011年3月10日に私個人でIRI株式の全てを買戻し、IRI/BBTower グループとして再出発し、BBTowerの企業価値向上を至上命題として経営資源を集中してまいりました。このような背景をもとに、このたび、5G時代を迎えて、IoT/Big Data/AIの技術革新に基づくデジタルトランスフォーメションによる第4次産業革命に対応する新大手町データセンターを来る8月27日にオープンすることとなりました。この一大事業に取り組むことができたのもひとえに株主、ユーザー、パートナー等ステークホルダーの皆様の御支援の賜物であります。ここに改めて御礼申し上げます。

 さて、IRIは、10年9カ月ぶりに海外での上場となりましたが、科学技術大国のイスラエルでの上場は、アジア初、日本初、経団連会員企業初の歴史の1ページを開くこととなりました。本件もBBTowerの株主の皆様の御支援によるものと御礼申し上げます。また、IRIの上場を祝して、IRIの新宿オフィスには、日本電信電話株式会社、KDDI株式会社はじめ多くの企業やIPO関係者からのお祝いの花輪、胡蝶蘭、花束をたくさん頂戴致し、取引先の企業や関係者の皆様にも改めて御礼申し上げます。
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180806/bsj1808060500001-n1.htm
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24954060S7A221C1XY0000/
https://www.globes.co.il/news/article.aspx?did=1001248959#utm_source=iglobes&utm_medium=referral&utm_campaign=iglobes

 このたびIRIがTASEに上場を果たしたことは、イスラエル経済界のインナーサークル・メンバーとなることを最大の意義として位置付けております。その結果、イスラエルの先進的なサイバーセキュリティに関わる企業、学術研究機関、政府機関との関係を強め、提携やM&A(企業の合併・買収)を通じて日本のサイバー防衛技術の向上に貢献したいと考えております。また、本年6月には、イスラエル最大の理工系大学(医学部含む)であるイスラエル国立工科大学(テクニオン)に私の冠名のついた“Hiroshi Fujiwara Cyber Security Research Center”(藤原洋サイバーセキュリティ研究センター)を開設したことで、同大学から名誉フェローの称号を頂きました。今年は、アメリカ2人、イスラエル2人、日本1人の合計5人ですが、1946年から始まったこの制度では、348人中ユダヤ系以外の授与者は、初めてとのことです。この名誉フェローの顕彰を契機に、今後、日本とイスラエルとの関係強化に尽力したいと強い使命感を覚えました。というのは、日本ではサイバー防衛人材が他国に比べて圧倒的に不足しており、イスラエル上場を契機に両国のサイバー産業界の「橋渡し役」を果たすことが求められていると感じたからです。


 また、IoT/Big Data/AIによるデジタルトランスフォーメションが、もたらす全産業のデジタル化について、最新の拙著『全産業デジタル化時代の日本創生戦略』(2018年8月PHP刊)において、次のようなことを述べさせて頂きました。


第1章 第4次産業革命は、日本創生の大チャンス――日本が再び世界をリードするとき
第2章 IoTがもたらす過去最大の成長――「製造業のサービス化」でつながるビジネス
第3章 企業にとってAIは脅威か――置き換えられない人材の条件
第4章 フィンテックと金融の未来――日本でも続々と育ち始めた企業・サービス
第5章 「世界のイスラエル」にチャンスあり――日本の「実装力」が活きる共創
 
 特に、本書の第5章では、これまで米国が行ってきたように日本がイスラエルと連携することで、研究力に優れるイスラエルと開発力に優れる日本との相乗効果によって多くの日本企業にイノベーションを起こすことができると確信しております。IRI/BBTowerグループは、現地のサイバーセキュリティの研究拠点を中心に、テクニオン発ベンチャー企業(70社以上がNASDAQに上場)との提携や買収によって次なる飛躍を目指したいと思います。


 最後に、イスラエルは国内総生産(GDP)あたりの起業家が米国よりも多い起業家大国です。0から1を創るのは上手な国であり、1から10に育てる日本にローカライズした製品、サービスを提供していきたいと考えております。繰り返しになりますが、IRI/BBTowerグループは、今回の上場を通じて、現地の情報収集や、株式市場を通じてのM&A(合併・買収)、セキュリティのほか、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」、レーダーや画像解析などの自動運転関連技術を発掘・事業化していく所存であります。

 

テルアビブ証券取引所にて

 

テルアビブ市内

 

 

IRIの上場御祝いにいただいた御花

 

平成30年8月24日

代表取締役会長兼社長CEO

藤原 洋


 

『全産業「デジタル化」時代の日本創生戦略』を著して

$
0
0

~AIxIoTx5Gで実現する2030年1000兆円シナリオ~

 

 私は、起業する前の約10年間情報通信分野の国際標準化活動に関わる研究開発リーダーを務めていたことから、海外の10カ国以上の「産」「学」「官」の立場の人々と交流する機会がありました。そうした中で認識したのが、「インターネットの登場後、日本だけが負けている」ということでした。それを端的に表しているのがGDPです。日本だけが先進諸国の中でGDPが減っているのです。そこで、では、なぜ日本が一人負けしているのでしょうか。そこで、新たに、拙著『全産業「デジタル化」時代の日本創生戦略』を著すこととしました。

 

 本著書(以下、本書)で主張したいことを、できるだけ多くの産業界のリーダーに伝えたいという想いで20代で制御用コンピュータの開発エンジニアだった頃、職場が近かった中西宏明氏(経団連会長、日立製作所会長)に、このたび原稿を見てもらいました。そして、本書の主張に賛同するということで、推薦をして頂くことになりました。推薦を頂くに際して、原稿段階では、あまり触れていなかった日本政府の総合科学技術会議での中西氏らが中心となってまとめた未来投資戦略のゴールとしてのSociety5.0について触れさせて頂くこととしました。

 

 本書での主張は、生産者と消費者が直結する「インターネット型産業」に構造変化できず、多くの産業分野において、旧態依然とした「ピラミッド型多重下請構造」をさまざまな規制によって保護してきたからだというものです。その結果、多くの産業が衰退し、グローバル競争で苦戦をしています。

 

 これに危機感を持った日本政府は、岩盤規制の改革を打ち出しましたが、その岩盤は非常に分厚く、残念ながらいまだに規制改革がスピード感を持って進んでいるという状況にはありません。岩盤規制によって規制改革が進まない中で、外来種による日本市場の席巻が起こっています。その代表選手である、アマゾンのようなインターネットを駆使した新興企業を、「デジタル・ディスラプター(デジタルによる破壊者)」と揶揄する人がいますが、アマゾンはまさに、日本のいくつかの産業を破壊している最中といえるかもしれません。

 

 インターネットの本質は、「自律」「分散」「協調」であり、従属関係はどこにもありません。自律した個々の「ノード」が分散し、協調することで世界に唯一のインターネットを形成しています。だから、「an internet」ではなく「the internet」なのです。通信工学ではなく、経済学に置き換えると、「ノード」は、「消費者」と「生産者」に置き換わります。すべての経済活動の原点は、消費者による「消費」にあります。それでは、集中局がないインターネットの基本原理はどのようなものでしょうか。通信ネットワークや放送ネットワークをも呑み込んでしまうインターネットアーキテクチャの基本原理は次のようなものです(RFC1958 [Architectural Principles of the Internet] Brian Carpenter)。

 

●一カ所に障害が発生しても全体に障害が及ばない
●コネクションレス(電話のように加入回線間の接続手順はなく、いきなり送れる)
●ネットワーク内では必要最低限の状態情報しか維持しない
●End to End制御(中間のノードは制御に関与しない)
●ユーザーがアプリケーション、サービスの選択を制御できる(何に使うかは限定しない)

 

 このようなインターネットの基本原理は、情報ネットワークの構成だけでなく、組織のあり方や外部組織との関係のあり方にも大きく関係します。インターネットの本質は、「自律」「分散」「協調」の3つだと私は考えていますが、これらを情報システムの方法論にすぎないと限定的に考えてきたのが日本の組織であり企業なのです。ここに「日本が負けている理由」があります。

 

 情報通信産業は、1985年に日本電信電話公社を民営化したことで競争原理が導入されました。さらに、1994年のインターネットの商用化により、さらなる大きな変革が求められました。インターネットの本質は、「自律」「分散」「協調」であり、それらは情報通信産業だけではなく、あらゆる企業に大きな変化をもたらすものだったのです。

 

 日本社会は、この本質をとらえきれずに省庁や業界の縦割り構造と相まって、インターネットに適合した制度改革を怠ってしまいました。その結果、インターネットという技術革新の恩恵にあずかることができず、前述した通り、これまでの20年間、主要国のなかで日本のGDPだけが減少し、他国の後塵を拝したわけです。日本だけが、インターネットによる変化に十分に対応できなかったことこそが、「失われた20年」の原因の本質なのです。

 

 組織や取引形態そのものをインターネット時代に合致したものに変えていく、つまり、組織そのものを従来の「ピラミッド型組織」から「自律・分散・協調型組織」につくり変えることが、日本企業にとっては急務となります。

 

 その目的は、急激な変化への対応スピードのアップとスケーラブル(大規模化も小規模化も容易)であり、自律することで、各参加者(企業)が独立して活躍できるとともに、創造的かつ新しい挑戦ができることが大切です。

 

 自律・分散・協調型組織の運営においては、全体の基本的な共通戦略がまず重要で、その共通戦略を組織全体で共有するためのコミュニケーションを活性化させることも同時に必要になるでしょう。以上のような背景から、本書では、「デジタルトランスフォーメーションという大きなうねり」によって、情報通信、流通、農業、金融・保険、医療・福祉がどう変わるか、企業は何をすればいいかについて述べさせて頂きました。


 さらに、企業経営者、中央官庁の有識会議のメンバー、大学教授などの立場から、「2030年GDP1,000兆円」を実現するための「産」「官」「学」の連携の実例と可能性を提言しています。

【本書の目次】
第1章 第4次産業革命は、日本創生の大チャンス――日本が再び世界をリードするとき
第2章 IoTがもたらす過去最大の成長――「製造業のサービス化」でつながるビジネス
第3章 企業にとってAIは脅威か――置き換えられない人材の条件
第4章 フィンテックと金融の未来――日本でも続々と育ち始めた企業・サービス
第5章 「世界のイスラエル」にチャンスあり――日本の「実装力」が活きる共創

 

 

 

平成30年9月27日

代表取締役会長兼社長CEO

藤原 洋

 

世界のイノベーション拠点=深圳調査団長を務めて

$
0
0

~ファーウェイ、テンセント等のハイテク企業が集積するアジアのシリコンバレーへ~

 

 本年(2018年)9月に、一般社団法人日本深圳経貿文化促進会設立式典があり、私は、深圳市政府から当協会の最高顧問を仰せつかりました。そのため、去る10月22日~25日の間、深圳政府からの招待で深圳貿易調査団団長をしてまいりました。本会発足後初めての訪深となりました。

 

●日本深圳経貿文化促進会とは?

 本会の趣旨は、深圳政府からの協力の下、経済、貿易、科学技術、人材、文化、教育等の面における友好交流のプラットフォームを築き、深圳と日本企業の交流を促進し、革新的な起業家の創業の場づくりや深圳と日本の文化教育交流を促進することです。

 

●調査団のメンバーについて

 日本の産業界と学術界および経済産業省、総務省の外郭団体の20名で構成されています。具体的には、製造業、商社、IT企業家、証券会社、東京証券取引所、大学教授などの皆様です。

 

●スケジュールと調査結果の概要

○10月22日夜深圳市主催歓迎会

【呉歓(深圳市委統戦部 副部長)氏からの歓迎の挨拶】以下に示します。

 日本からの藤原団長はじめ調査団の皆様、このたびは、香港経由でこの深圳市にようこそおこし下さいました。心から歓迎致します。深圳というのは、元々、小さい漁村でした。日本にはない土ヘンに川とは、「小さい川」という意味です。その小さな漁村が、38年前の特別行政区指定以来目覚ましい発展を遂げて来ました。1979年のGDPは、2017年に百数十倍になりました。人口は、20万人から800万人、昼間の人口は2000万人になっています。人口年齢は、32歳でとても若い街です。4つの主要産業(科学技術、金融、製薬、物流)が発展し、ファーウェイ、テンセント等のハイテク企業が集積する大都市となりました。先日イギリスのエコノミスト誌が、深圳市の特集を行いましたが、4000ある特別行政区で最も成功した街だと報じました。交通面でも空港、鉄道駅、港全て揃っています。また、国際都市深圳市らしい広東料理を是非お楽しみ下さい。

 

【藤原洋調査団長からの挨拶】

 呉副部長さんはじめ、このたびは、深圳市の皆様から香港までバスによるお出迎えとこのような素晴らしい晩餐会を開催して頂き心より御礼申し上げます。私たちの調査団は、産業、学術、官庁関係団体、具体的には、大学研究者、事業会社の上場企業の社長、ベンチャー企業家、東京証券取引所、金融機関などから構成されています。

 日本は、現在、大きな岐路に立っています。20世紀、日本でモノづくりをして欧米に輸出することで経済発展を遂げてきましたが、インターネットの登場と共に、産業構造が大きく変わりました。今も日本にとってアメリカは、重要なパートナーですが、貿易額では、日米貿易が約23兆円であるのに対して、日中貿易は約30兆円になっており、中国も重要なパートナーとなりました。また、イノベーション拠点がシリコンバレーから分散化する傾向にあり、シリコンバレー一極集中から日本と深圳へと分散しつつあると思われます。今回の調査団による訪問を契機として日本と深圳の友好関係をさらに強化し両地域の経済発展に貢献したいと思います。改めて本日は、このような晩餐会を開催して頂きありがとうございました。

 

○10月23日

【午前】深圳市訪問深圳市龍華区訪問

 10月23日は、午前中に深圳市龍華区行政部門訪問と深圳市情報センター訪問を行い、以下のような政策を実施しているとのことです。

 龍華区は、中心部に位置し、人口160万人、面積175.6㎢、交通は最大駅龍華北駅から香港まで直通、GDP2360億元8.8%成長、工業1141億元9.7%成長、不動産668億元、ハイテク33億元8.7%成長。学校70(公立37、私立33)、衛生:医療機関580、住宅35000室準備(深圳市の1/5相当)。

〔重点的サポート〕

 重点的には、IT、バイオ、省エネ環境分野をサポートしている。具体的には、海洋開発、航空、生命科学、ロボット、製造業の同区内事業開始、研究所設立、技術者の起業、既にある技術の産業化、Fintechをサポートしている。

〔人材政策とくにハイレベル人材誘致政策〕

支援金、住宅、家族、教育、医療支援などがある。例を以下に示す。世界的な人材の獲得政策(現在高度外国人材:100万人)。

① 誘致資金提供 

Aランク人材:ノーベル賞級:320万~1200万元(5120万円~1.92億円)

Bランク人材:中国の省レベル:120万元(1920万円)

Cランク人材:龍華区選定:64万元(1024万円)

② 博士誘致:Max80万元(1280万円):博士研究スタート支援

③ 企業支援:重要な技術者に住宅・教育支援:8万元(128万円)・5万元(80万円)・3万元(48万円)(家庭によって)

④ 新誘致人材:博士・修士:3万(48万円)・2.5万元(40万円)/年

 

 

【午後】第2回深圳中日投資サミット出席(私は、基調講演とパネルディスカッションに登壇)

●14:30~14:40 来賓紹介 蒋豊氏あいさつ

 政府レベルでは、安倍首相が北京を訪問し習近平氏と対談する中、日中平和友好条約40周年であり、深圳市の特別行政区指定38周年の記念すべき時に第2回深圳日中投資サミットを開催することは実に意義深いことです。

 

●14:40~14:50 深圳市委統戦部 呉歓 副部長 あいさつ

 鄧小平当時国家主席による深圳市の特別行政区指定から38年が経過し、2017年の深圳市のGDPは、2.24兆元(35兆円)8.8%増加、900億元(1.44兆円)R&D(GDP比4.13 %)、国際特許2万件以上(中国の40%)14年連続都市順位第1位、輸出10.5%を占めるまでに発展しました。深圳市は、最も発展を続ける社会主義現代化エリアとしてグローバル化が進んでいます。今年は、日中平和友好条約40周年であり、10月25日に安倍首相の北京訪問があります。日本は、早い時期から深圳市に投資をしてくれた国です。879社が、合計17億$を投資しています。また、深圳市は、移民都市で100万人の外国からの人々が生活しています。また、最近日本深圳経貿文化促進会が設立されたとのこと。同会が窓口になって日本と深圳との交流が深まって、日本企業が楽しく活動し、利益を上げられることを祈念しています。

 

●14:50~15:10 深圳市側代表深圳投資推広署 徐小珠 宣介委員 講演『深圳の経営環境及び人材政策』

  深圳市のGDPは1979年12M$から2017年280.7B$となり年平均25%の経済発展を遂げました。そして、現在「オープン性」「イノベーション」「低炭素」の3つを掲げた政策を行っています。

  プロトタイピング期間は90日、シリコンバレーは240日というスピードが当市の特徴で、Apple、Google、AirBus、Microsoft、QualcommなどのFortune500企業のイノベーション拠点が集積しています。大規模なガーデン緑化都市で、1000の公園があり、電気自動車保有台数比率世界トップクラスの67000台です。

 

●15:10~15:30日本側代表 一般社団法人日本深圳経貿文化促進会 藤原 洋 最高顧問 講演『日中投資IT(IOT)業界における交流の重要性について』(【上場企業】株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO、「人民日報海外版日本月刊」理事長)

 

 私たちは誰なのか?今回の日本からの参加チームは、産業、学術、官庁関係団体、具体的には、大学研究者、事業会社の上場企業の社長、ベンチャー企業家、東京証券取引所、金融機関などから構成されています。

 私たちはどこにいるのか?今、私たち日本は、第4次産業革命のさなかにあり静かなる有事(少子高齢化、地域の衰退など)が起こっています。日本はインターネット登場後約20年間先進国で唯一GDPが減少した国で、その理由は、Before Internet時代にあると思います。世界史年号のBCのようなものです。2014年のMITテクノロジーレビューの世界のイノベーティブ企業ランキングで、米国・中国・ドイツ・韓国・英国・イスラエル企業は、ランクインしていますが、日本企業は1社も入っていません。日本に今一番必要なのは、企業業績はいいのですが、何よりもイノベーションです。日本は、100年で人口が3倍になりましたが、少子高齢化で減少傾向にあり100年後は1/3になるかもしれません。でもそれをチャンスとして捉えるべきで、IoTやAIを導入するチャンスであると思います。

 私たちはどこへ行くのか?今後の方向性を明らかにするために、3つの革命論についてお話しします。第1に、約20万年前人類(ホモサピエンス)に淘汰されたことを出発点とする伊藤俊太郎のマクロレンジの『5段階革命論』です。これは、1985年に『比較文明』マクロレンジの『5段階革命論』で、「人類革命」(ホモサピエンスへの淘汰)、「農業革命」(約1万年以上前の栽培と飼育への転換による定住化)、「都市革命」(定住化の発展による都市の生成) 、「精神革命」(都市に人口が集中し、人間関係の複雑化に伴う「哲学」「倫理学」の創生)、「科学革命」(17世紀ヨーロッパに始まる世界の近代化)の5段階を経て発展したものとされるものです。現代は、科学革命が進行中です。第2は、アルビン・トフラー(Alvin Toffler)のミッドレンジの『3段階革命論』で、1980年の『第三の波』で「農業革命」、「工業革命」を経て、今日の「情報革命」を対象としたもので、現在も「情報革命」が進行中です。第3は、中国語にも翻訳された私の著書『第4の産業革命』で述べたミクロレンジの『4段階産業革命論』で、約300年前の産業革命から今日のIoT/AI革命までを対象としています。2011年に、ドイツが『インダストリー4.0』発表して世界へ波及しています。「第1次産業革命」(動力革命:紡績機械、蒸気機関、石炭製鉄)「第2次産業革命」(重化学工業革命:内燃機関、発送電)「第3次産業革命」(デジタル情報革命:通信、半導体、コンピュータ)、「第4次産業革命」(デジタルトランスフォーメーション革命:IoT、ビッグデータ、AI)で「第4次産業革命」は、現在進行形です。

 私たちが向う未来は、本年(2018年)9月発売 中西宏明氏(経団連会長・日立製作所会長)推薦の私の新著「全産業デジタル化時代の『日本創生戦略』」に著したように、IoT、AIの時代へ向います。日本は、世界でも最もIoT市場が成長している国で、いくつかの例をご紹介します。第1例は、コマツの建設機械IoT、第2例は、ファナックのロボットがロボットを作るスマート工場、第3例は、トヨタ自動車のコネクテッドカー、第4例は、ブロードバンドタワーグループのAI自動翻訳、AI創薬、AI文書自動要約です、第5例は、エブリセンス社によるデータ取引所の開設、第6例は、日本最大の鉄道会社JR東日本の新中期経営計画で鉄道会社の常識を打ちやぶる「駅-駅サービス」から「Door to Doorサービス」企業へと転身するというもの、第7例は、地下鉄の東京メトロの便利なアプリ、第8例は、富士通の女子バスケチーム「レッドウェーブ」で画像処理で選手とボールを自動追跡しプレイをデジタル化するモーショントラッキング技術の高精度化にAIを活用している例と日本体操協会と富士通が共同開発「技の完成度(出来栄え)」を数値で表現する例などがあります。

 私たちは、誰と共に未来へ向うのか?そこで、具体的に、深圳市と共に発展したい対象が日本のIoT市場で、年間15%の高度成長分野です。東京五輪に向けて、また、五輪後をにらんだ多くのプロジェクトが計画されています。2017年の日本のIoT市場規模は、上位から①組み立て製造、②プロセス製造、③官公庁、④公共/公益、⑤クロスインダストリーこれら5分野は、以前からIoTの活用が進んでおり、利用目的としては組み込み機器や社会インフラの運用効率の向上、機器/インフラ利用者の満足度向上が挙げられます。2021年と2022年には、住宅内の家電製品や空調(HVAC:Heating Ventilation and Air Conditioning)の利用効率を向上させる「スマートホーム」関連の市場が伸び、一般消費者に向けたIoT市場の急成長が見込まれています。その他の成長分野としては、農業フィールド監視、小売店舗リコメンデーション、院内クリニカルケア、遠隔健康監視、スマートメーター/スマートグリッド、テレマティクス保険、空港設備管理(乗客動線)、公共インフラ管理、公共安全システムが挙げられ、2017年から2022年までのCAGRが20%を超えると予測されています。

 日本は、モノづくりをして欧米に輸出することで経済発展を遂げて来ましたが、インターネットの登場と共に、産業構造が大きく変わりました。今も日本にとってアメリカは、重要なパートナーですが、貿易額では、日米貿易が約23兆円であるのに対して、日中貿易は約30兆円になっており、中国も重要なパートナーとなりました。また、イノベーション拠点がシリコンバレーから分散化する傾向にあり、シリコンバレー一極集中から日本と深圳へと分散しつつあると思われます。今回の調査団による訪問を契機として日本と深圳の友好関係をさらに強化し両地域の経済発展に貢献したいと思います。

 

●15:30~15:50 日本側代表 一般社団法人日本深圳経貿文化促進会 翁 道逵 副会長講演『実務から対日投資の現状とチャンスをみます』(深圳軽井沢投資コンサルティング有限公司代表取締役、ShineWing Japan有限責任監査法人パートナー、上海正策律師事務所パートナー、弁護士法人ベリーベスト法律事務所パートナー、日中投資促進機構〔JCIPO〕理事)

 日本への投資が何故お得かというと、①資産が割安、②日本の職人的技術、③日本人のまじめさ、④Made in Japanの信用。典型的な失敗事例は、外国資本への抵抗感に気づかない時。成功事例は、本間ゴルフ。黒字企業なのに承継問題のために廃業の危機にあるお宝企業が127万社あります。

 

●15:30~15:40 深圳市側代表 新華創資 張仁発 創立者兼CEO講演『中国投資の現状及び投資チャンス』(深圳市金色木綿資産管理有限公司元CEO、Huawei、マイクロソフト元管理者、投資及び株プロジェクト投資:北京旋極信息技術集団、威創股份、天潤デジタルエンターテイメント文化メディア股份有限公司、粤泰股份、蘇大維格、騰邦国際、優必選ロボット、東亜薬業、利元亨、美味不用等、開心麻花等)

 中国のGDPは、継続して増加傾向。70%が成長。投資有望分野は、国家が支援をしている医薬、新エネルギーが有望です。しかし、今年に入って経営環境が悪いとか商売が良くないとか言われています。産業分野別の構造的アンバランスが課題です。30%の業界は、OKだが、多くの伝統的な産業は難しい。良い産業は、やはり医薬と新エネルギー分野。日本は、EV(電気自動車)に対する考え方が中国と違うように思えますが、何年か前のソーラーエネルギーの様相を呈しています。リチウムイオン電池の会社、BYDなどが面白い。半導体は、中国は、まだ能力が低く、アパレルは、安物ではなく、1500元(24000円)クラスの高級指向になっています。伝統的産業は、電気機器などですが、輸出も難しくなってきています。

 

●16:10~16:50 座談会

【登壇者】

A:蒋 豊 一般社団法人日本深圳経貿文化促進会 会長

B:藤原 洋 株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役 会長兼社長 CEO

C:翁 道逵 深圳軽井沢投資コンサルティング有限公司 代表取締役

D:張 仁発 新華創資本 創立者兼CEO

E:湯 松榕 JD金融傘下ハイテク業務プラット「東家金服」首席執行官

F:野口 正一 東北大学名誉教授、公益財団法人 仙台応用情報学研究振興財団理事長

16:50~17:15 サミットまとめ一般社団法人日本深圳経貿文化促進会 会長 蒋豊氏

 

 

 

○10月24日企業訪問

〔テンセント社〕

 世界の5強に躍り出たインターネット総合情報サービス企業テンセント社(腾讯)を訪問しました。同社は、売上高5兆円、時価総額50兆円、AIエンジニア2000人の巨大企業です。

 同社は、1998年に馬 化騰(ま・かとう)氏が創業したテンセントQQ(騰訊QQ=インスタントメッセンジャー)、WeChat(微信、ウェイシン、英語: WeChat ウィーチャットインスタントメッセンジャーアプリ、「微信」とは、微少の文字数の手紙を意味する)、ゲームなどのインターネットによる総合情報サービス会社です。ツインタワービルの自社ビルには、9000人(全世界では32000人)が働いています。ここには、巨大な「Tencent Experience Center」が、あり、同社がどんなサービスを提供しているか?どのような社会的影響力があるのか?最先端のVR/AI研究の第一線、同社が丘陵地帯の地下に建設した巨大データセンターの模型と画像など、とても数時間では、体験しきれないデモコーナーが用意されています。

 今年で、40周年を迎えた日中平和友好関係ですが、一部の見方として巧妙に製鉄、家電などが、模倣されモノづくりの中日逆転劇とも言われますが、テンセント社は、中国を代表する世界的なインターネット情報サービス企業です。むしろ日本にこのようなインターネット企業はないと思います。同社から学ぶべきは、日本企業ではないかと思いました。

 

 

 

〔ファーウェイ社〕
 世界最大規模の通信機メーカーに成長したファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)社を訪問しました。同社は、世界最大の未上場企業で99%の株式を従業員が保有する企業で、従業員数18万人中8万人が研究開発人員の研究開発型企業で売上の15%を研究開発費に投入しているのが特徴です。主力のネットワーク機器(世界第1位)とスマートフォン(世界第3位)、売上10兆円、年間特許出願数世界1位~5位を誇ります。ビジョン・ミッションは、「あらゆる人、家庭、組織にデジタル化の価値を提供し、すべてがつながったインテリジェントな世界を実現する」というものです。
同社は、深圳市を代表する企業で、1987年に、任正非(じんせいひ、レン・ツェンフェイ)氏が、人民解放軍の元仲間6人と共に創業した中華人民共和国の世界最大の通信機器メーカーです。広大な敷地を自動車で移動しながら最初に案内されたのは、大きな池とそこに棲む黒鳥(Black Swan)でした。この黒鳥には、意味があるらしく創業者の任正非さんの「冬は必ずやってくる」というメッセージが込められているのだそうです。

 

 

 

〔プーアイ社〕
 最後の訪問先は、Zong Gjian Wei社長が2000年に創業し、自らが歓迎してくれたプーアイ(小普)社です。同社は、最初は、中国の清潔なトイレを実現するために創業した企業ですが、現在では、ウォシュレット型トイレ+ヘルケアサービスへと進化しています。モノづくりに強い深圳市らしく、日本のTOTO やLIXILに匹敵する品質のハードウェアを持ち、漢方薬や試薬を注入する仕組みと尿検査の仕組みを備え、さらにインターネットを通じたヘルケアサービスと連動した展開を行っています。現在、中国におけるウォシュレット型トイレの普及率は2%に留まりますが、同社のシェアは、90%であり、今後の成長が楽しみな深圳市を代表する企業に成長しています。Zong Gjian Wei社長は、本当にトイレを通じた健康社会の創生に情熱を持った人でした。国境を超えた起業家精神を共有できた気がしました。
 

 

●おわりに

 日中平和友好条約締結40周年の記念日(10月23日)に中国を訪れ中日投資サミットに参加しました。安倍首相が7年ぶりの訪中をされ、日中関係は、長い冬の時代を過ぎて、競争から協調の時代に入りました。このたび中国経済の驚異の成長を支えてきた世界のイノベーション拠点=深圳市の訪問は、同市政府からの招待で訪れたのですが、同市の科学技術を基盤とした産業振興政策や同市を代表し当社とも接点のあるテンセント社やファーウェイ社の成長戦略から多くのものを学ぶことができました。今回の調査団での成果を日中の新たな相互協力による経済発展と当社の企業価値向上に活かしていきたいと考えております。

 

BBTower Business Exchange Meeting 2018は大盛況でした

$
0
0

 2018年11月14日、恒例となったブロードバンドタワーの顧客企業とパートナー企業に向けた「BBTower Business Exchange Meeting 2018」と題した講演会と懇親会を開催し、各々約200人、関係者あわせて約300人が参加しました。本講演会は、以下のようなテーマとプログラムで実施されました。

 私の挨拶では、著書『全産業デジタル化時代の日本創生戦略』に沿って、IoT、ビッグデータ、AIによる第4次産業革命の本質について述べさせて頂きました。

 電気通信大学の坂本教授には、文理融合科学技術の視点から、AIと感性との関係で分かり易く、面白く、楽しく講演して頂きました。トヨタ自動車のIT子会社であるトヨタIT開発センター谷口取締役には、トヨタ自動車が新サービスとして開始した、オープンイノベーションに基づく奥深いコネクテッドカー・サービスの世界に導いて頂きました。電脳交通の近藤社長には、地方のタクシー業界の社会課題の解決にインターネットテクノロジーを役立てるという熱い想いを伝えて頂きました。

 また、パネルディスカッションでは、モデレータを当社の樋山洋介取締役が務め、IX(インターネット・エクスチェンジ:インターネットトラフィックの交換拠点)とデータセンターの役割について大変内容の濃い議論をいたしました。特に3大キャリアの3社の皆さんが同じテーブルについてのパネルは、とても意義深いインターネットの協調関係の証しとなりました。

 レセプションでは、当社李秀元取締役による冒頭挨拶に続いて、インターネットマルチフィード(NTT)外山副社長に業界リーダーとして素晴らしいご挨拶を頂きました。

 尚、本シンポジウムのアンケートでは、ほぼ100%の方から大変有意義、有意義という回答結果が得られました。

 

●テーマ: 『人工知能と第4次産業革命 〜5G時代の社会インフラの姿とは〜』

 

●プログラム:

1.ご挨拶: 『全産業デジタル化時代の日本創生戦略』 藤原 洋:BBTower代表取締役会長兼社長CEO

 

2.基調講演① 「人工知能の進化がもたらす実社会の革新」:電気通信大学大学院 坂本 真樹教授

 

3.基調講演② 「コネクティッドがもたらすスマートモビリティー社会の実現」:株式会社トヨタIT開発センター 取締役 谷口 真一 氏

 

4.ユーザー講演:

「電脳交通のブロードバンドタワーとの取り組みについて」 株式会社電脳交通 近藤 洋祐 様

 

5.パネルディスカッション:「IXとデータセンターの未来」

モデレータ: 樋山 洋介 :BBTower取締役

パネリスト:

日本インターネットエクスチェンジ社長(KDDI) 山添 亮介氏

インターネットマルチフィード担当課長(NTT) 橘 賢一氏

BBIX課長(ソフトバンク) 佐々木 秀幸氏

BBTower取締役 樺澤 宏紀

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年を振り返って ~第4次産業革命が始動する年~

$
0
0

 今年最後のコラムとなりますので、今年1年を振り返ってみたいと思います。年初に2018年は、日本において「第4次産業革命が始動する年」と位置付けられる年になると宣言し、当社もその目論見に沿って活動してきました。紛れもなく、第4次産業革命とは、「全産業のデジタル化」を意味していると考えています。これまで情報通信産業は、インターネットを基軸としたデジタル化の影響を受け、インターネットの登場後四半世紀で約40兆円市場が100兆円市場へと発展しました。しかし、日本全体のGDPは、この間に約500兆円からほとんど変化していないのが現状です。

 そこで、当社の役割は、あらゆる産業が、5Gインフラを活用しIoT/AI技術を適用し、ビジネスモデルの転換に着手するために、当社は、第4次産業革命を先導するテクノロジー環境を社会に対して示す年にすることでした。以下に今年行った具体的施策、ビジョンの提示、IR活動について述べることとします。

 

1.具体的施策

 具体的には、以下の3つのことを行いました。

(1)5Gデータセンターである新大手町データセンターの開設(写真1)

 3大キャリアのデータセンターとIXが集結する大手町地区において、業界で初めて、3大IX(インターネット・エクスチェンジ)拠点を誘致し、全てのIXに接続環境を準備することができました。また、当社のプライベートクラウドC9は、クラウドセキュリティ認証規格であるSTAR認証*ゴールドレベル取得を維持しました。さらに新大手町データセンターには、パブリッククラウドとして普及率の高いAWS(アマゾン)、マイクロソフトAzure、グーグルクラウドプラットフォームと当社サービスdc.connectの接続が可能な環境を整備しました。さらに、IoTプラットフォーム=ソラコムとの接続環境を整備しました。同センターは、最大12KVA/ラックの大容量電源を用意しており、AIプロセッサのGPUの利用などにも耐え得る最新鋭の利用環境を整備しています。

*STAR認証:米国CSA(Cloud Security Alliance)と英国BSI(British Standard Institute)の合同規格。

 

(2)AI/IoTテクノロジープラットフォームの提供

 AI/IoT環境については、新大手町データセンターでの大容量データ処理環境を準備すると共に、パブリッククラウドとの直接接続環境を整備したことから、各種クラウドの付加サービスとして進化を続けているAIツールを利用することができるようになっています。また、音声と自然言語処理のAIプラットフォームについては、子会社のエーアイスクエア社にて、既にRPA(Robotic Process Automation)プラットフォームと要約エンジンサービスを商用化し、今年から市場に提供を始めました。子会社のIoTスクエア社では、各種IoTプラットフォームを開発中ですが、商用化は、今後の課題となっています。

 さらには、IoTインフラとされる5Gモバイルの高速通信チップを名古屋大学特別教授の天野浩氏が青色発光ダイオード(2014年ノーベル物理学賞)用に発明したGaN(窒化ガリウム)を基本とした研究開発プロジェクトを新たに総務省へ提案しました。そして当プロジェクトは、今年、総務省の研究費(電波利用料)を獲得することができました。研究プロジェクト代表者:ブロードバンドタワー藤原洋、研究機関:名古屋大学、東京工業大学、名古屋工業大学、東京大学、研究企業:NTT、パナソニックセミコンダクターのチーム構成です(写真2)。本プロジェクトによって世界が激しく競争する5Gにおいて日本の強みを活かしたデバイスからデータセンターに至るまでの5Gエコシステムの構築を目指しています。

 

(3)動画像配信プラットフォームの提供

 昨年10月に子会社化したジャパンケーブルキャスト(JCC)社が、フル連結決算対象企業となり、JCCの顧客である全国のCATV局向けに当社のデータセンター事業のIX接続技術と組み合わせたケーブルコネクト・サービスの提供を開始する準備を行いました。今後は、さらに、このケーブルコネクト・サービスを通じて当社のAI/IoTプラットフォームを全国のCATV局向けに提供していく予定です。

 

2.社会に向けてのビジョンの提示

 当社のミッションである「全産業デジタル化時代の『日本創生戦略』」をPHP研究所刊として出版しました。同書は、中西宏明経団連会長からも推薦を頂き、多くの企業経営者、事業責任者の方々に読まれており、当社のビジョンを提示する大きな機会となりました。

 同書の第5章でも詳しく述べた日本のサイバーセキュリティを中心とするテクノロジー・パートナー国としてイスラエルとの連携の意義を強調しています。そこで、当社グループとイスラエルとの確固たる地位を築くために当社の筆頭株主である株式会社インターネット総合研究所(IRI)の持株会社であるInternet Research Institute Ltdをイスラエルに設立し、本年8月にアジア企業初のテルアビブ証券取引所への株式上場を果たしました(写真3 IRIの上場セレモニー)。

 

3.IR活動

 当社は、テクノロジーベースのいわゆるB2B(Business-to-Business、企業間取引)企業であるため、投資家の皆様に分かり易く当社のビジョン、ミッションと事業内容を説明する必要があります。今年は、半期に一度のアナリスト・機関投資家説明会と共に、2度の個人投資家説明会(名古屋、京都)とストックボイスTVへの出演を行いました。新大手町データセンターの稼働開始とIRIのテルアビブ証券取所への上場以降において、写真4に示すように出来高が増大したことで、IRの成果が表れ始めたと認識しております。今後ともIR活動に注力していきたいと考えております。

 

 

写真1

 

写真2

 

写真3

 

写真4

 

 

 それでは、皆様にとって2019年が実り多き年であることを祈念して年末のご挨拶とさせて頂きます。

 

平成30年12月19日

代表取締役会長兼社長CEO

藤原 洋

 

 

新データセンターを埋めて、サーバーセキュリティ事業を始動する年=2019年の抱負

$
0
0

~5G情報通信インフラ拠点へ向けての取り組みとティエスエスリンク社子会社化の意義~

 

●全産業デジタル化時代の5Gとは何か?

 2019年は、日本において「5G情報通信インフラを整備する年」と位置付けられます。すなわち、あらゆる産業が、4Gから5Gへと情報通信インフラへの切替の準備を開始します。取り分け、情報発信業界は、4Gと比較して非連続的な変化をもたらす5Gへの対応を2019年中に行う見通しとなってきました。

 情報通信業界において特に関心の高い新技術に、放送分野の「4K・8K放送」、自動車分野の「自動運転」、そして通信分野の「5G」の3つがあります。これら3つの中で、テレビ画像の高精細化である「4K・8K放送」と自動車が自律走行する「自動運転」は、イメージできますが、5Gは、モバイル通信システムの世代交代を意味する言葉なので、一般の方には、イメージしにくいように思えます。そこで、今回は、5G元年とも言える2019年の初めに当たって、「どんな価値を産み出そうとしているのか」、「そのためにはどんなネットワーク技術が必要になるのか」、「そこでのデータセンターに求められる技術」は、どのようなものなのかについてご説明させて頂きます。

 

●5Gで生まれる新たな価値

 情報通信インフラの役割、特に近年では、固定通信よりもモバイル通信システムが主要な役割を担っています。スマートフォンを主要な端末とする4Gには、インフラ提供事業者で言うと、3社でした。しかし、このたび、総務省は、さらなる競争環境の整備として、4社目の免許を楽天に付与しました。これまでの3社は、事業母体となった前身企業も含めて通信事業者を出発点としています。しかし、楽天は、インターネット・カンパニーです。消費者の視点からは、情報通信インフラを提供する供給者としての情報通信事業者でした。一方、楽天は、供給者というよりは、需要者側の論理構造を持った企業である言えます。楽天の参入は、これまで供給者側の論理で構成されていた情報通信インフラを需要者側の論理に構造転換を図ることに大きな意義があると考えられます。その意味で、単なる高速化(100Mbps→20Gbps)、超低遅延(10~数10ミリ秒→1ミリ秒)、超多地点同時接続(1万点→100万点)だけではなく、通信キャリア3社による競争から通信キャリアも構造転換をしながらインターネットキャリア4社による競争へと変化することが想定されます。

 また、私は、総務省の情報通信行政の有識者会議にパソコン通信の時代から参画させて頂いている経験上、新たな動きが起こりそうだと感じています。総務省の方針として、これまで、モバイル通信事業者への免許は、全国一気通貫免許で豊富な資金力と通信技術者を大量に抱える必要がありました。しかし、5Gでは、5Gのメリットを活かす免許制度を検討中です。具体的には、多地点同時接続機能を活かす事業には、スタジアムや劇場などの時間的な人口密集地域や、地方創生に貢献する事業者などには、経済効果を発揮する地域限定免許などが付与される可能性が高まっています。

 では、当社にとって、5Gは、どういう意味があるのかと言うお話をさせて頂きますと、このように4Gと5Gとは、価値創造という意味で質的な変化が起こります。当社が、お役に立ちたいと思っているのは、データセンター事業者の草分けとして、昨年新大手町データセンターを開設させて頂きました。それは、5G時代に適合した5Gデータセンターを業界で初めて構築することを狙っています。さらに超高速のインターネット接続環境を完備することが要求されるために、三大キャリア系列の三大IX(インターネット・エクスチェンジ)に来て頂いたことがその最大の特徴です。アクセスラインが高速化、高度化する5Gユーザーに向けての5Gデータセンターだからこそ大手町というインターネットトラフィックの最大拠点に立地しているのです。なお、先週新たな設備投資に関する発表をさせて頂きましたが、2019年後半からは、正に5G時代にふさわしい情報発信拠点としての稼働が始まる予定です。

 

●サイバーセキュリティ事業を始動する年

 昨年末、当社の完全子会社であったIoTスクエア社を譲渡し、新たにティエスエスリンク社を完全子会社することと致しました。これは、黒字化に長期間を要する子会社を手放し、黒字化している企業を子会社化するといった表面的なことではありません。

 当社の基幹事業は、専業インターネット・データセンター事業者の草分けとして、来年20周年を迎える、あくまでデータセンター事業です。このビジネスモデルは、サーバー設置スペースと、ネットワーク帯域を売るビジネスから始まりました。今後は、従来型ビジネスを基本としつつも、当社のデータセンター顧客に対する付加価値を提供するフェーズへと移行しつつあります。当社は、これまで、様々な付加価値事業者の方々と業務提携を行ってきました。当然、サイバーセキュリティサービスも一部入っております。しかしながら、当社顧客からの強い要望は、他社サービスの提供だけではなく、当社グループとして、より顧客ニーズを取り入れたサービス提供が望まれているということでした。

 そこで、当社グループとしては、当社の筆頭株主でもあり、より基礎的な研究開発を担う(株)インターネット総合研究所が、2017年に開設したテクニオン(イスラエル工科大学)Hiroshi Fujiwara Cyber Security Research Centerと連携し、サイバーセキュリティ事業を担う事業主体を創設することが当面のニーズであると考えてきました。今年は、その具体化を行う年として位置付けております。当社グループに加わるティエスエスリンク社は、サイバーセキュリティ事業の草分けとして高度なセキュリティサービス、商品を提供してきた企業です。同社の日本市場における豊富な実績とイスラエルの最先端技術との融合により、コンピュータプラットフォーム事業セグメントにおける成長市場分野としてサイバーセキュリティ事業を本格的に立ち上げたいと考えております。

 2019年が、皆様にとって実り多き年になりますよう祈念して2019年の抱負の言葉を終わらせて頂きます。

 

 

2019年1月30日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

世界最大規模のCybertech2019報告と当社のサイバーセキュリティ事業について

$
0
0

~2019年1月29日~30日のCybertech2019 Tel Avivを契機として~

 

 先月のコラムの続きとなりますが、今月のコラムにおいても、サイバーセキュリティの話題を提供させて頂きます。世界最大規模のサイバーセキュリティイベントであるCybertech2019に、私は日本から唯一スピーカーとして招待されました。そこで、当イベントの様子とこれを契機としたサイバーセキュリティ大国イスラエルと日本との連携の重要性、および当社グループのサイバーセキュリティ事業の今後について述べさせて頂きます。

 

 金属探知機を使った厳しいセキュリティチェックが行われた後、満員となった会場で、ラッキーなことに私は、日本から唯一のスピーカーとして招待されていたので最前列で聴くことができました。スピーカーは、合計で104人(ネタニヤフ首相、IBM、マイクロソフト、スプランク、チェックポイント、イスラエル電力公社、サイバージムなど主として米、欧の政府関係者、有力企業で、アジアからのスピーカーは、私とアリババのワン・カン氏の2人)で、来場者は、約16,000人でした。

 去る1月29日のオープニング・スピーチは、ネタニヤフ首相で、クロジーング・スピーチを私が務めました。

 

●ベンヤミン・ネタニヤフ首相のオープニング・スピーチの概要(写真資料参照)

 サイバーセキュリティの前は、ハイジャック事件や9.11事件が起こり、空港の「物理的なハイテックドア」を準備することから始まりました。しかし、今は、「バーチャルなハイテックドア」の時代なのです。それが、サイバーセキュリティです。今は、ビッグデータ、AI、コネクティビティの時代なのです。私は、小さな国にいますが、少年時代をアメリカで過ごし、大学もアメリカに戻って1972年から74年にボストン郊外のケンブリッジにあるMITで学んだことがあるので、アメリカというイスラエルの42倍の人口がいる大国のことも良く知っています。そこで、CIAやNSAなど国家的なインテリジェンスのあり方についても学びました。

 サイバーセキュリティについては、イスラエルがNo.1であると自負しています。図に示すように世界の時価総額ランキングTop10は、2007年と2017年に大きく変化しました。2007年のトップ10のうち4社でしたが、2017年のトップ10社は、全てイスラエルにR&D拠点を持っています。300社以上の多国籍企業がイスラエルにR&D拠点を構えています。人口1000人当たりのR&D人材は、ダントツでイスラエルが1位(日本15位)です。 

 また、イスラエルには、スマートモビリティのイノベーションが起こっており、同分野のスタートアップ企業が世界のIT企業に買収されたり、今でも500社があり、世界の自動車企業と連携しています。サイバーセキュリティ企業への投資は、年々増加し、2018年には10億ドルを超えました。サイバーセキュリティ分野でのイスラエルへの投資のグローバルシェアは、2007年の10%から20%へと倍増しています。グローバルなサイバーセキュリティ企業Top500の数では、イスラエルは、アメリカに次いで2位です。私は、イスラエルの産業として、サイバーセキュリティ産業、モビリティ産業、ヘルスケア・フード産業の3つが特に重要だと考えています。

 イスラエルのサイバーセキュリティ産業の輸出額は、2018年に50億ドルを超えました。投資は、10億ドルを超え前年比22%増加しました。社数は500社を超えています。その拠点となっているのが、ビエルシェバ・サイバーセキュリティ・コンプレックスです。企業が利益を得るには、国家は、税金を安くして、規制を緩和することが重要です。ここは、その象徴的な街ですので、訪問していない人がいたら是非一度訪問して下さい。世界の皆さんからの投資を待っています(笑)。また、イスラエルとの国交のある世界は、どんどん増えているのです。

 

●私のクロージング・スピーチ『Japan-Israel Cyber Security Coalition』について(写真資料参照)

 私は、主として図に示した10カ国と交流があります。しかし、日本は、唯一インターネットの商用化が始まった1994年以来、GDPが増加していません。イスラエルは、3.6倍に増加しています。日本は、インターネットの商用化で、情報通信産業だけがデジタル化に成功しましたが、他の産業のデジタル化が遅れています。そこで、図にあるようなSociety5.0を目指す未来投資戦略がようやく動き出しました。今後、東京五輪2020、大阪万国博覧会2025へと向って一気に日本社会は、デジタル化を推進します。

 そこで、重要になってくるのが、社会インフラを中心としたサイバーセキュリティの強化です。しかしながら、日本のサイバーセキュリティ技術者は、経済産業の試算で2020年時点で20万人が不足するとされています。このような状況を打開するために、日本は、サイバーセキュリティ大国イスラエルとの密な連携を図ることが重要です。

 このようなニーズに応えるために、インターネット総合研究所(以下、IRI)/BBTowerグループは、2018年9月に開設したBBTowerの新大手町データセンターを拠点としたイスラエルとの連携に基づくサイバーセキュリティ・サービスを展開すると共に、IRIとBBTowerが協力して、イスラエル電力公社グループのサイバージム社によるサイバー攻撃と防御演習に基づくセキュリティ技術者教育事業を推進してまいります。

 

●BBTowerの新たな事業の柱とするサイバーセキュリティ事業について

 これまで述べたように、日本における情報通信産業以外のデジタル化が今後急速に進むため、5G/AI時代に対応したデータセンターとサイバーセキュリティの強化が必要となっています。このため、当社グループは、サイバーセキュリティ事業を大きな事業の柱とするために、まずは、人材の確保を行いました。それが、年初に実施したTSSリンク社の完全子会社化です。この人材インフラを基本として、サイバージム社や当社のベンチャーキャピタル子会社(グローバルIoTテクノロジーベンチャーズ)が既に投資している8社のイスラエル企業や、テクニオンを中心とするイスラエルの産業界および学術界との連携を強力に推進し、最先端技術に基づくサイバーセキュリティ事業を強化していく所存であります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年2月27日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

5G時代に対応する凸版印刷とブロードバンドタワーの取り組みについて

$
0
0

~2020年代の本命4Kコンテンツと5Gモバイルとの連携へ向けて~

 

 2019年3月11日より、株式会社ブロードバンドタワー(以下、当社)は、凸版印刷株式会社(凸版印刷)と共同で、ジャパンケーブルキャスト株式会社(以下 ケーブルキャスト)のケーブルテレビ向け情報配信ネットワークを用いて、超高精細・高品質4K映像によるヒーリング効果や集中力の向上が期待できる、新たな映像配信サービスの提供に向けて、実証実験を開始しました。今回は、その背景と今後の展望について述べさせて頂きます。

 

 GDPの約10%を占め日本最大の産業に成長し、日本経済の成長を牽引する情報通信産業の次なる成長分野に注目が集まっています。それは、明らかに超高速インターネットのための5Gと4K(超高精細映像)コンテンツです。当社は、社名の由来の通り、「ブロードバンド・インターネット上の東京タワー」を目指し2000年2月、業界初のIX(インターネット・エクスチェンジ、当時唯一のIXだったJPIXを誘致)直結型インターネット・データセンターとして創業しました。創業当時は、ADSL(電話線を利用した非対称型デジタル加入者線)の普及と共に、PC常時接続M(メガ)ビット接続時代を拓くポータル・サービス事業者向けのインターネット・データセンターとして成長し、2005年8月に株式上場を果たしました。

 

 その後、2010年代に情報通信インフラは、ADSLから4Gモバイルへ、情報端末は、PCからスマートフォンへと進化してきました。そして、2020年代へと更なる進化を続けるのが、情報通信産業です。ブロードバンドタワーは、2020年代へ向けての進化の本質を5Gモバイルと4Kコンテンツであると位置付け、当社は、上場後初の創業当時の約3倍にのぼる大規模投資を行って、昨年(2018年)8月に5Gデータセンターとしての新大手町データセンターを開設しました。

 

 今回の実証実験の狙いは、本命となる4Kコンテンツにとっての情報配信インフラである5G環境が整備される前段階において、既に情報配信が可能となっているケーブルテレビ網を利用することにあります。4Kコンテンツを表示できる情報端末は、既に低価格化が始まった4Kテレビと、来年から登場する5Gスマートフォンです。地上波テレビ放送の4K対応計画は、当面ありませんので、4Kコンテンツ提供事業者にとっての配信インフラは、ケーブルテレビ網、衛星放送網、および超高速インターネット網の3つとなります。また、配信インフラ事業者の立場からは、次なる成長領域を4Kコンテンツにあると位置付けています。

 

 このような状況の中で、当社が、最も注力しているのが、5Gモバイルによる超高速インターネットです。そして、5G時代を先取りするために、新大手町データセンターには、JPIX(KDDI系)、JPNAP(NTT系)、BBIX(ソフトバンク系)の三大キャリア系IXの誘致を行いました。このような取り組みを高く評価して頂いたのが凸版印刷です。図1に、私も中心メンバーとして活動してきた5Gの技術基準、免許割当などについての有識者会合である総務省新世代モバイル通信システム委員会(図2参照、2017年当時)で作成した5Gモバイルの特徴を示します。図1に示すように、5Gモバイルの特徴は、4Gと異なり新たに加わる対象領域として、自動車分野、産業機器分野、ホームセキュリティ分野、スマートメータ分野、その他IoT分野とされています。凸版印刷は、これまでは、紙の印刷分野におけるトップ企業ですが、4Kディスプレイ技術と5Gモバイルの登場により、紙の解像度と共通領域が生まれ、高成長が期待される情報通信産業での提携先を模索されていました。当社は、凸版印刷がこれまで蓄積されてきた4Kコンテンツを、現時点で利用可能なケーブルテレビ網における実証実験を経て、本命とされる5Gモバイルへ向けて新大手町データセンターから配信したいと考えております。

 

 最後に、凸版印刷をはじめ、今後は、図1に示した5Gの新対象領域の産業分野を支えてきたトップ企業群の提携パートナーとして、5G時代を牽引する企業として新たな成長フェーズに入りたいと考えております。

 

図1 5Gモバイルの特徴

 

図2 情報通信審議会 情報通信技術分科会 新世代モバイル通信システム委員会

 

図3 4Kコンテンツ配信の仕組み



2019年3月26日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

新データセンター設備投資のためのエクイティファイナンスについて

$
0
0

~第三者割当と新株予約権及び無担保社債の背景と内容~

 

 当社が去る2019年4月5日に公表しました『第三者割当による新株式、行使価額修正条項付第10回新株予約権及び無担保社債(私募債)の発行』について、その背景と内容について、私なりに述べさせて頂きます。

 

●背景

 20世紀末、当時、日本初の専業インターネット・データセンター運営会社設立を模索していた私は、同サービスで先行する米国企業との合弁機会を探っていました。そこへ当時ソフトバンク株式会社の孫正義社長からの提案により、インターネット時代を先取りすべく、2000年2月に米アジアグローバルクロッシング社(米グローバルクロッシング社と米マイクロソフト社とソフトバンク株式会社〔以降ソフトバンク〕の合弁会社)と株式会社インターネット総合研究所(以降「IRI」)の合弁会社としてグローバルセンタージャパン株式会社が設立されました。その後、米国ドットコムバブルの崩壊で、当社は、米国資本ではなく、IRIを筆頭株主とし、ソフトバンクとの合弁会社として設立、2002年に株式会社ブロードバンドタワー(当社)へと社名変更し、ソフトバンクグループのヤフー株式会社(以降ヤフー)を主要顧客とするインターネット・データセンター事業を中心に成長してまいりました。2005年8月の株式上場後は、資本構成としてIRIを筆頭株主とし、ヤフーおよび主に個人投資家の方々からの構成となっております。

 21世紀に入って約20年が経過し、全産業のデジタル化、すなわち、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進行しています。これは、ヤフーをはじめとするインターネット企業ではなく、機械、建設、化学、エネルギー関連企業の業務でインターネットをフル利活用する新たな時代を迎えていることを意味しています。また、モバイル通信インフラは、20世紀末の1G(第1世代)、2G、そして21世紀に入って3G、4Gへと連続的進化を遂げてきました。しかしながら、間もなく開始される5Gは、人間が使うPC、携帯電話、スマートフォンだけではなく、コネクテッドカーをはじめとするIoT(モノのインターネット)のためのインフラとして期待されています。このような新たなデジタル変革時代の到来に対応すべく、当社は、業界では、いち早く2018年8月に東京都千代田区大手町に開設した『5Gデータセンター』である新大手町データセンター(以下、新大手町サイト)の構築と運用に乗り出しました(写真1参照)。

 また、IT関連メディア事業を展開する株式会社インプレス(東証一部上場)が、デジタルトランスフォーメーション(DX)の先駆的な取り組みや、その実現を支えるIoT、AIといった分野の製品/サービスを表彰する『Impress DX Awards 2018』の受賞企業を決定し、2019年1月31日に授賞式および表彰セレモニーの開催がなされました。ここに、当社が、IoT/AI時代を支える5Gデータセンターとして新設した新大手町サイトが、IoTプラットフォーム部門で、NEC、KDDI/日立製作所と共に表彰されました(写真2、写真3参照)。

 当社は、このような背景の下、デジタルトランスフォーメションを推進する企業に限定して中長期的視野に立った営業展開を行ってきました。しかしながら、三大キャリアのIX(インターネット・エクスチェンジ:インターネットトラフィックの交換拠点)が集積する大手町という立地条件の良さからデジタルトランスフォーメションの推進企業からの受注が、前倒しで集中しているのが現状です。

 このような状況に鑑み、後半部分の設備投資と工事を早急に完了するために、このたびの設備投資の資金は、コミットメントラインによる銀行融資ではなく、エクイティファイナンスによる資金調達を行うべきタイミングであると判断しました。

 

●エクイティファイナンスの内容

 当社は、2019年4月5日付で公表しましたとおり、マッコーリー・バンク・リミテッド(以下「マッコーリ―」)を割当先とする、総額約25億円の第三者割当による新株式、および新株予約権及び無担保社債(私募債)の発行を行うことを決議いたしました。複数の国内外の提案の中から、今回、マッコーリ―からの提案を基本とするエクイティファイナンスを急遽行うこととしました。

選定等、その5つの理由を、私なりに以下に要約します。

①マッコーリーは、オーストラリア資本であり、資源開発投資など長期的視点に立ったユニークな投資銀行であること。

②4月22日時点で約10億円の資金調達が完了すること。

③当社の売買代金は、高水準で推移しており、おそらく、新株予約権行使は、比較的短期間で終了するのではないかとみていること。

④決議前日の4月4日の終値335円を基準とした9%ディスカウントの304.85円の固定価格第三者割当増資で、3.5億円をコミットしていること。

⑤新株予約権については、株価下落局面時には、当社からの停止条項がついていること。

 

●おわりに

 以上に述べた背景とエクイティファイナンスは、5G時代をリードする新たなインターネット・データセンター企業として、当社の第二成長期を始動するための有利子負債と自己資本のバランスに基づく資金調達であることをお伝えしたいと思います。

 

写真1.ブロードバンドタワーの新大手町データセンターの概要

 

写真2.インプレス志度昌宏DIGITAL X編集長から表彰楯を授与されました

 

写真3.インプレスから受賞した表彰楯

 

2019年4月11日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

 

 

Viewing all 103 articles
Browse latest View live