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2021年の抱負『DataセンターからDXセンターへの進化』

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~ポストコロナ社会へ向けてのデジタル変革の担い手として~

 

 世界的なパンデミックの状況の中で、社会経済情勢は、昨年と比べると、景色は全く異なりますが、通常の自然現象(太陽を回る楕円軌道による地球の公転)によって、新しい年を迎えました。そこで、今回は、今年の抱負について述べさせて頂きます。

 私自身のイノベーションを主導する企業の経営方針として、経営資源の配分として「今日の仕事に70%」「明日の仕事に20%」「明後日の仕事に10%」が適切ではないかと考えております。新年を迎えて「今日」「明日」「明後日」のために何をするかという視点から述べてみたいと思います。

 「今日の仕事」を明確化するために、当社の歴史を振り返ってみます。当社は、日本初の専業インターネット・データセンター企業として区切り良く2000年に創業しました。各種ポータルサイトやEコマース等インターネットを利用した無数のドットコム企業が生まれた頃でした。多くのドットコム企業が消滅する中で、当社の顧客は、ヤフー株式会社を始めとする勝ち組企業であったため、昨年(2020年)創業20周年を迎えることができ、昨年2月10日に記念パーティを開催し、当社と関係の深い通信キャリアや学識経験者の皆さんに祝辞を頂きました(20周年記念特別サイト「登壇者様のご発言ご参照:https://www.bbtower.co.jp/special/20th/party/」)。これまでの20年は、Dataセンターカンパニーとしての20年でした。

 データセンターとは、企業ユーザーが保有するコンピュータ資源を預かり(コロケーション、あるいはオンプレミスと呼称)、インターネットに接続するというビジネスモデルです。換言すれば、ISP(Internet Service Provider、インターネット接続事業者)の変形として生まれた加入者を持たないISP事業モデルです。その後、2006年に当時米国グーグル社のCEOだったエリック・シュミットが「クラウド」という言葉を提案し、企業ユーザーはコンピュータ資源を保有せずにサービス事業者のコンピュータ資源を利用するようになり、今日のクラウドサービス全盛時代へと発展しました。当社も20年の間に自社データセンターサービスと共に、自社クラウド(c9)サービスに加えて、AWS、Azureなどのメガクラウドサービスの代理店サービスを提供するようになり、クラウド事業の成長が続いております。このような歴史的経緯から、当社にとっての「今日の仕事」は、データセンターサービス、クラウドサービス、およびこれを支援するストレージソリューション(データを記録、保存する)です。

 では、次に「明日の仕事」について、考えるために、今起こっている社会の変化について考えてみたいと思います。20周年を迎えた当社にとって(当社だけではなく社会全体)の大きな変化は、新型コロナウイルス感染症の拡大という大災害でした。このコロナショックは、リーマンショックのような一過性の経済不況ではなく、不況とは質的に異なる根本的な社会の構造変化をもたらすものと思われます。昨年11月12日に開催した当社主催の企業ユーザー向けのオンライン・シンポジウム「BBTower Business Exchange Meeting 2020 ONLINE」(URL:https://youtube.com/playlist?list=PLrXxIsP7iZ9kCxfUUklWDVtgQKkaVRkr4)にて私から「ポストコロナ社会におけるデジタルイノベーション」というタイトルで講演させていただきました(下図参照)。本図に示すように、コロナは、リアルワールドでの感染リスク回避のためにデジタル変革(DX)を加速しつつあります。社会のデジタル化は、金融革命、経済の地域分散、中小企業DXをもたらすと考えております。

 

 

 これからの20年が始まる2021年を迎えてのキーワードは、『DataセンターからDXセンターへの進化』だと考えております。当社の企業ユーザーは、これまで、基本的に情報システム部門が強力な大企業中心でした。しかしながら、これまで情報システム部門を持たなかった中小企業がデジタル変革に取り組むようになる時代が始まろうとしております。このような、新たな企業ユーザー・ニーズに応えるために、「明日の仕事」として、当社ならではのDXセンター・サービスを準備していきたいと考えております。

 最後に「明後日の仕事」について、述べてみたいと思います。「明後日」とは、ここでは、「未来」という意味で使っています。「未来を先導する企業」であるためには、日本の国際競争力を考えたオールジャパン・プロジェクトにおける先導的役割を果たすことが求められると考えております。そこで、私が、選任され昨年1月末に始動した総務省のBeyond5G推進戦略懇談会での議論が、出発点となっています。これは、5Gの継承として2030年にサービスインする予定の6G(第6世代モバイル通信システム)に関する国家戦略を議論するもので、懇談会メンバーが発起人となり、昨年12月18日にBeyond5G推進コンソーシアムが発足し、5Gでの遅れを6Gでは取り戻すべく、オールジャパンの体制が出来ました(以下写真参照)。当社もその中心的役割を担いたいと考えております。2030年には、データセンタービジネスというよりもDXセンタービジネスとしてBeyond5G時代を先導する企業へと成長したいと考えております。

 

 

 

 

 

 

 以上に述べたように、「今日」「明日」「明後日」についての展望を述べることで、2021年の抱負とさせて頂きます。

 

 

2021年1月27日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 


凸版印刷株式会社と当社グループとのオープンイノベーションによる新事業創出

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『日本初4Kスローテレビチャンネル全国CATV局向け試験放送』

~「協調力」による「企業競争力」向上の取り組みを始動~

 

 今回は、当社グループが新たに取り組み始めた「オープンイノベーション」と「協調力」による具体的展開について述べさせて頂きます。

 

 私は、企業経営の実践を通じて経営学の基本を学ぶ実践的ビジネススクール(SBI大学院大学、学長:北尾吉孝氏)の副学長・教授を務めております。当ビジネススクール(経営大学院)において、私が強調しているのが、「バリューチェーンからオープンイノベーションへの転化」です。「バリューチェーン」は、ハーバードビジネススクールを代表するマイケル・ポーター教授の著書『競争優位の戦略』(1985年)で提示され、インターネット以前の企業経営の基本となりました。一方、「オープンイノベーション」は、ハーバードからカルフォルニア大学バークレー校に転じたヘンリー・チェスブロー教授の著書『オープンイノベーション』(2003年)で提示されたインターネット以後の企業経営の基本となるべき概念です。私は、昨年11月、中国深圳政府主催のオンラインシンポジウムでチェスブロー教授と共に招待講演をさせて頂きました(写真参照)。「オープンイノベーション」は、企業が単独で事業領域(バリューチェーン)を作るのではなく、複数の企業や学術研究機関等が連携して連鎖的事業領域(サービス・バリューウェブ)を作るというものです。

 

 

 

 オープンイノベーションの時代を迎える中で、当社は、まず最初に、他社と共に、グループ企業間の連携に着手する方針を立てました。その第1号が、今回の凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)、株式会社ブロードバンドタワー(以下、当社)、およびジャパンケーブルキャスト株式会社(以下、ジャパンケーブルキャスト)の3社の連携による、日本初4Kケーブルテレビ放送スローテレビチャンネル「ナチュラルウィンドウチャンネル」(写真参照)の全国試験放送の開始です。

 

 

 スローテレビチャンネル「ナチュラルウィンドウチャンネル」とは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う在宅勤務の普及や、おうち時間が増えている状況において、快適な生活環境の実現に向けて北欧を中心に世界中でトレンドになっている「スローテレビ」の新番組として、凸版印刷が手掛ける超高品質4K映像を、ケーブルテレビの「新放送方式」により全国CATV局へ配信する試みです。試験放送後は、一般家庭での利用や、診療施設・店舗の待合スペース、オフィスの休憩スペースでの活用を見込んでいます。ここで、「スローテレビ」とは、アメリカ、イギリスなどで始まった、焚火動画(睡眠不足解消効果があるとされる)やカメラワークのほとんどない風景や情景映像をひたすら上映する内容の映像コンテンツで、特に北欧ノルウェーでは人気があるとされています。また、「新放送方式」とはACAS(Advanced Conditional Access System)を利用した放送方式のことで、4K・8K放送時代に即したコンテンツ保護管理やセキュリティ要件に対応する規格です。次に3社の役割について述べさせて頂きます。

 

 凸版印刷は、従来の映像コンテンツとは異なる、印刷テクノロジーを活用した「データの真正性」を重視した「オリジナル高品質4K映像」を提供します。ここで、「データの真正性」とは、エンターテイメントや各種映像作品は制作者による演出を含む様々な加工や映像・画像処理がなされているのが一般的ですが、同社は、印刷テクノロジーの中核的な理念でもある「正しい情報を正しく伝える」ポリシーから、画像・映像などのデジタル視覚データの正しさについても追求を行っており、この知見を活かした遠隔診療などへの技術応用開発等を実施しています。「ナチュラルウィンドウチャンネル」においても演出を極力抑え、まるでそこにいるかのような臨場感の環境空間の再現性を目指して制作を行っています。以下のURLをご参照下さい。

 

 当社は、5G に対応した新大手町データセンターを核とする「IX」接続技術など幅広いIT技術や「ダークファイバー回線」を活用した映像配信ノウハウを提供します。ここで、「IX」とは、インターネット・エクスチェンジの略で、インターネットトラフィックの交換拠点を指しています。新大手町データセンターには、当社の特長である、通信キャリアとの中立性を活かし、NTT系のJP/NAP、KDDI系のJPIX、ソフトバンク系のBBIXという3大IXが集結しています。また、「ダークファイバー回線」とは、電気通信事業者などが敷設した光ファイバーのうち使用されていない心線を意味し、多くは専用線となり契約企業だけが利用できる回線で、通常のインターネット接続に比べ通信速度が速く、新しいインフラの活用が模索され、オフィス空間などへ大容量となる「ナチュラルウィンドウチャンネル」の導入効果が期待されます。

 

 ジャパンケーブルキャルトのルーツは、私が現在社外取締役をさせて頂いている株式会社スカパーJSATホールディングスのスピンオフ企業で、従来は、通信衛星回線を用いて映像コンテンツを全国のCATV局に対して一斉配信をしていました。その後、光ファイバー網の普及と低コスト化が進んだために、現在では、当初から培ってきた全国のCATV局顧客に対して、同社が通信キャリアと提携して構築した全国規模の情報配信ネットワークを保有しています。この日本全国のケーブルテレビ局へのリーチ力によって、超高精細・高品質4K映像を各家庭の4K対応テレビへ届ける役割を担っています。

 

 最後に、凸版印刷、当社、およびジャパンケーブルキャストの3社連携によるプロジェクトの意義について述べさせて頂きます。ポストコロナ社会は、これまでのワークスタイルとライフスタイルを一気に変革する社会になると思われます。換言すれば、これまで、デジタル化が遅れていた日本を大きく変える「デジタル変革」(DX)の潮流が生まれています。テレワークの本格化に伴い、東京都の人口は、昨年夏から継続し、東京以外への人口分散が起こっています。このような潮流の中で、当社は、「DataセンターからDXセンター企業」への転換を目指していきたいと考えております。また、当社グループ企業のジャパンケーブルキャストにおいても、全国へのリーチ力を活かした「CATV番組配信企業から地域DX創生企業」への転換を目指していきたいと考えております。このようなDXの時代に当社グループ自身を変革する必要があり、また変革には、イノベーションを起こすことが極めて重要であると認識しております。そのためには、冒頭述べさせて頂いた「オープンイノベーション」の取り組みが有効であると判断し、今回の凸版印刷との共同事業を行うことと致しました。

 皆様には、今後とも当社のオープンイノベーション戦略へのご協力・ご支援をお願いしたいと考えております。

 

 

2021年2月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

SBI大学院大学の学長就任について

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 2021年4月から、SBI大学院大学の学長に就任することとなりました。同大学院は、2008年創立で、MBA(経営学修士)の学位取得を目的とした、ポストコロナ社会を先取りした完全オンライン型大学院で、多忙なビジネスパーソンを対象にした経営者養成のためのビジネススクールです。私自身の企業経営スタイルとして「産学連携」を最重要視しているため、今回のデジタル変革時代における金融界の巨匠=北尾吉孝氏(SBIグループ代表、同大学院大学現学長)からの後継者指名に応え謹んで引き受けさせて頂くことと致しました。
 https://www.sbi-u.ac.jp/

 

 私は、創立以来、北尾現学長の「人間学」を基本とした教育理念に賛同し、自分自身の企業経営の経験を活かし、また同大学院での教育研究経験を企業経営に活かす意味でも、副学長・研究科長・教授として活動してきました。

 最初に、このSBI大学院で学ぶことの意義について述べてみたいと思います。業務系にしても技術系にしてもこれからの企業人に求められるのは、「経営視点」だと思います。では、当大学院では、如何にしてこれを習得するかというと、当大学院ならではの、ユニークな4つの特長を有しています。それは、修了生は、4つの経験・体験(エクスペリエンス)をすることです。具体的に4つのエクスペリエンスとは、「人間学」「eラーニング」「アントレプレナーシップ」「インターネット前提社会のビジネスモデル」を指しています。次に4つのエクスペリエンスを通して、何を習得するのかについては、以下のように要約できると思っています。

 ①「人間学」では、リーダーは、誰のために存在するのか? を常に意識することを学びます。
 ②「eラーニング」では、オンライン・コミュニケーション能力のスキルアップを学びます。
 ③「アントレプレナーシップ」では、前例のないことにチャレンジすること、すなわち、リスクをヘッジするのではなく、マネージすることを学びます。
 ④「インターネット前提社会のビジネスモデル」では、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)のエキスパートになることを学びます。

 

 次に、私自身の講義内容ですが、戦略・マーケティングカテゴリーでは『インターネットの発展と産業構造の変化』と『IoT・BigData・AIの概要と事業化』の2科目を担当しています。また、経営数理・問題解決カテゴリーでは『テクノロジマネジメント』の1科目を担当しています。これら3科目は、私自身の研究技術者時代の経験と企業経営の経験を踏まえた内容となっております。しかしながら、当分野の技術革新は、急速であるため、3~4年に1度の内容更新を行っています。また、ブロードバンドタワーの若手社員の教育にも活用しております。

 

 さて、今日特に、企業人に「経営視点」が、求められるようになったのは、新型コロナウイルス感染症拡大とそのインパクトとしての社会の変化があると思います。ここで言うインパクトは、「経済」の基本が、「健康」にあることが再認識されたことです。特に、「健康」が「先進国では既に克服された課題である」という認識は、誤謬であることも、再認識されました。あの偉大なヘブライ大学の歴史学者である、ユヴァル・ハラリ教授でさえ、『ホモ・デウス』の中で、人類は、20世紀に感染症を克服し、21世紀には、生活習慣病をも克服し、神になると述べていますが、これは、誤りでした。

 

 当大学院で学ぶことは、四つのエクスペリエンスにあると述べましたが、私は、「経営学」は、究極的には、「人間学」に帰結すると考えております。何故なら、「人間学」で学ぶものは、「学力」を超えた「人間力」だからです。企業人にとって必要な素養は、経営学や業界における「知識」だけではなく、「知恵」です。経営環境の変化が起こった時の「対応力」こそが「人間力」だと思います。松下幸之助氏の「好況よし不況なおよし・・・正しい経営が行われている限り、不況こそ好機なのだ。そして不況は人がつくったものだから、人に不況が解決できないはずはない。」という言葉がありますが、これは、正に「経営力」の真髄は、「人間力」であることを述べているのだと思われます。

 

 ポストコロナ社会を迎えて、人工知能の発展と共に、多くの専門的な「知識」は、コンピュータによって代替されていくでしょう。しかし、人々の賛同を集め組織の指針を示すのは、「知識」ではなく「知恵」であると思われます。人々を導くことができるのは、AIではなく、どんなことが起こっても動じることなく、「人間力」でもってあらゆることに対処できる人間だと思います。
これまで、当大学院の修了生は、多くの大企業のリーダーと共に、多くの起業家を輩出してきました。学長就任に際して、これからも多くの「人間力」を備えた企業人が育ち、日本経済の発展とグローバル社会の発展に貢献してくれることを祈念して、当大学院大学を私の経営する企業と共に発展させたいと強く思っております。皆様も是非、設立当初からオンラインのSBI大学院大学で実践的な経営学をご一緒に学ばせて頂ければ幸いです。

 

2021年3月15日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋
 

初めてのジャパンケーブルキャスト(株)主催のウェビナーを開催して

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~凸版印刷×JCC 4Kスローテレビ ナチュラルウィンドウチャンネル~

 

 私が、当社子会社のジャパンケーブルキャスト(株)〔JCC〕の代表取締役会長兼社長CEOを兼任して以来初めて、去る4月21日に、凸版印刷様とのDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル変革)に関わる共同事業を開始したことを記念して、コロナ禍の中でZoomを用いたウェビナーを開催しました。この手法は、ポストコロナ社会におけるデジタルマーケティングの典型例であると位置づけており、本イベントは、4月から当社のマーケティンググループがハンドリングすることで、グループ事業シナジーを狙った第一弾企画です。以下のようなプログラムで進行しました。ターゲット顧客は、全国のCATV局で全視聴者数は、95名に達しました。では、以下のプログラムの進行状況について、その概要を示します。

 

●名 称:凸版印刷×JCC 4Kスローテレビ ナチュラルウィンドウチャンネル

開催日:2021年4月21日(水)

時 間:15:00~16:00

場 所:Zoomウェビナー

参加費:無料(事前登録制)

 

■プログラム■

15:00 - 15:03    開会・操作説明

15:03 - 15:08    開会のご挨拶

                    ジャパンケーブルキャスト株式会社 代表取締役会長兼社長CEO

                    藤原 洋

 

⇒私は、『ポストコロナ社会を加速するDXとCATV業界の役割』と題した5分間のご挨拶ということで簡単なプレゼンテーションをさせて頂きました。ここでは、ポストコロナ社会での4つの変化、これに対応して起こるCATV業界の地域DXの担い手としての役割についてお話させて頂きました。最後にJCCは、凸版印刷様と共に、今回の新たな4Kテレビへの対応など、地域DXの技術支援を行いますというメッセージを出させて頂きました。

 

 

15:08 - 15:38    「テレビ(デバイス)の新活用、日本初4Kスローテレビチャンネル」

                   凸版印刷株式会社

                   情報コミュニケーション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部

                   先端表現技術開発本部 感性コミュニケーション開発部 部長

                   高橋 隼人様

 

⇒凸版印刷・高橋隼人氏より、超高品質デジタル写真技術に始まり、超解像度デジタル映像技術に至る第一人者としての同技術の背景・目的・サービス内容に関する、デジタル画像の巨匠としての素晴らしいプレゼンテーションが行われました。

 

15:38 - 15:48    「ナチュラルウィンドウチャンネルのご紹介」

                   ジャパンケーブルキャスト株式会社

                   営業本部 ケーブルテレビ営業部 第2課 課長 岸房 隆平

 

⇒JCCのエースの1人で、ケーブルテレビ業界ニーズを知るエクスパートの岸房 隆平より実際の4Kナチュラルウィンドウチャンネルの番組提供概要について説明させて頂きました。

 

15:48 - 15:58    質疑応答

 

⇒多くのご質問を頂きましたが、私への質問とその回答概要についてお伝えさせて頂きます。

 

【質問】当社とその子会社のJCCとのビジネス面でのシナジー(相乗効果)は?

 

【回答】は、全国規模の情報発信インフラを提供し、JCCは、これまで地域への情報配信インフラを全国120のCATV局向けに提供してきました。今後は、地域DXの時代に向けて、当社の情報発信インフラを全国・全地域において整備し、その全国規模のDX情報配信インフラを担うのがJCCであります。

 

●おわりに

 今回は、私が代表を兼務するJCCと当社のマーケティンググループとの共同作業によって、社会におけるDXの最先端を担っておられる凸版印刷(株)との共同事業開始を記念しての初めてのウェビナーでした。初めての試みでしたので、期待よりも大きな不安で実施しました。果たして、視聴者の皆様からの反応は、大変勇気づけられるものでした。これからも当社グループのシナジー効果をフルに発揮して、DataセンターカンパニーからDXセンターカンパニーへと、自らのDXを推進していきたいと考えております。

 

2021年4月28日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

BRP(ビジネスレジリエンスDXプラットフォーム構築戦略会議)が始動

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~災害起点の平常時サプライチェーン強靭化を目指して~

 

 今月の話題は、私が座長を仰せつかっているBRP(ビジネスレジリエンスDXプラットフォーム構築戦略会議)の活動についてお話させて頂きます。

 同戦略会議は、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会の中に設けられた産学官連携による新たなプラットフォームの構築を目指しております。

 関係する政令や法整備の準備のために去る4月5日には、首相官邸へ緊急提言を持って行ってきました。そして、和泉洋人内閣総理大臣補佐官を訪ねてレジリエンスジャパン推進協議会の中に設置されたBRP構築戦略会議座長として緊急提言を和泉補佐官と菅総理宛てに提出してきました。

 

 

 同プラットフォームは、「災害大国ニッポン」に適合したDX(デジタルトランスフォーメーション)の仕組みを早急に作り、災害が起こるたびに寸断されるサプライチェーン(供給網)の強靭化(レジリエンス)のための完全分散型DXネットワークを標準化・構築するものです。首相官邸を訪問した大きな理由は、業界横断・省庁横断のために首相官邸からのトップダウンアプローチを取ることとなったためです。以下に同活動による最初の成果としての提言概要と提言の背景と目的について説明させて頂きます。

 

●提言の概要

 後述のとおり、これまでDX構築を目指すデジタル・ガバメントの仕組みは議論されてきましたが、地場・中小企業等の強靱化に資するDX化については言及されていませんでした。こうした背景を踏まえて、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会では、「『ビジネスレジリエンス』DXプラットフォーム構築戦略会議」(座長:藤原洋インターネット協会理事長)を本年2月に設立し議論を行ってきましたが、政府のDX政策が進行する中で、平時のみではなく有事の視点も加えて、中小企業等とそのサプライチェーンの持続可能性と強靱性に資すること、さらには、平時にも効率化だけではなく地場産業や地域を超えた産業クラスターの活性化などにも資すること、といった新たな、かつ不可欠な要素を盛り込んだ、政府及び官民連携のDX戦略の構築と確立を目指し、以下の提言を行ったものです。

 

 

 

 

●戦略会議のメンバー

 また、この提言書をまとめ、実行に移すために、私から、副座長として、青木孝文氏(東北大学副学長)、大竹尚登氏(東京工業大学前副学長、科学技術創成研究院教授)、西岡靖之氏(Industrial Value Chain Initiative 理事長、法政大学デザイン工学部教授)の3名の方に、また、顧問として、竹中平蔵氏(東洋大学教授、日本経済再生本部産業競争力会議 民間議員、国家戦略特別区域諮問会議 有識者議員)、村井純氏(慶應義塾大学教授、JPNIC理事、内閣官房参与〔デジタル政策担当〕)に直接お願いしました。

 実行部隊としては、以下に示す各分野の専門家の皆さんにお願いすることとしました。

 

 

●提言の背景と目的

大災害時、パンデミック時にも、自助・共助・公助により、地場・中小企業等及びそのサプライチェーンの強靱性を確保できるようにするために必要なプラットフォームとは?という視点で提言書をまとめることとしました。

新型コロナウイルス感染症拡大は、多くの地場・中小企業等に大きな打撃をもたらしました。また、災害大国日本において、頻発する大災害に対してもこれまで、多くの地場・中小企業等がその影響から立ち直るのが困難な状況まで追い込まれているとされています。

 こうした状況において、政府としては、給付金等の様々な支援やBCPの推進など中小企業強靱化へ向けた政策を推進してきましたが、それに加えて自助、共助によってもより一層の地場・中小企業等の強靱化を図るべきという視点で、昨年一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会において「地場・中小企業等における感染症等災害リスクファイナンス戦略会議」(座長:佐藤主光一橋大学教授)を設立し、11月には、感染症等大災害時にすみやかに地場・中小企業等が資金を確保できる新たなクライシスファイナンス共済の仕組みと、それを支える、中小企業のリスクファイナンスデータのプラットフォーム構築の重要性の提言を行ってきました。【参考資料1】

 

 

 一方で、政府の最重要施策の一つとして、昨年12月に「デジタル・ガバメント実行計画」「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が閣議決定されるなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進が実施されてきています。しかしながら、地場・中小企業等の経営支援に資するDX政策も推進されてはきていますが、これらのほとんどは、平時の利便性や効率性を起点としたもので、大災害やパンデミックなどの有事を起点とした地場・中小企業等の強靱化に資するという視点が充分ではないのも現状であります。加えて、地場・中小企業等の自助、共助に資するDXプラットフォームという視点もまだ充分に検討されていないのも実情であります。

 また、政府の国土強靱化施策として、昨年12月に「防災・減災、国土強強靱化のための5か年加速化対策」が閣議決定され、その3つの柱の一つにDXが位置づけられていますが、その中には、地場・中小企業等の強靱化に資するDX化については言及されていないのが実情です。

 そこで、こうした背景を踏まえて、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会では、「『ビジネスレジリエンス』DXプラットフォーム構築戦略会議」を本年2月に設立し、私が、座長を務め、参考資料2に示すイメージ図をもとに議論を行ってきたのでした。

 

 

●一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会について

 一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会は、 国土強靭化担当大臣私的諮問機関「ナショナル・レジリエンス懇談会」の結果を踏まえ、 「国土強靭化基本計画」が円滑に達成されるよう、産、学、官、民のオールジャパンでその叡智を結集し 、非常時のみならず平時での戦略的活用の方策を創造することにより、公共投資、民間投資が最大限に相乗効果を発揮し、 レジリエンス立国を構築していくことを目的として設立されました。国民の生命と財産を守り抜き、さらには日本の産業競争力を高め、事前防災・減災の考えに基づき 「強くてしなやかな国」をつくるための「国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)」に関する総合的な施策づくりや、その推進に寄与するとともに、できるだけ多くの国民の方に向け、国土強靭化の理解を促進し、行動を誘発していくことをミッションとしています。

 

 

 

●おわりに

 本戦略会議は、国家課題としてのDX(デジタル変革、Digital Transformation)があること、また、当社も「DataセンターカンパニーからDXセンターカンパニー」へのビジネスモデル転換を図っていることもあり、社会課題解決と共に、当社にとっても大きなビジネスチャンスであると捉えております。

 

2021年5月26日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

ジャパンケーブルキャスト初のウェビナーを終えて

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~ケーブルテレビ業界DX(デジタルトランスフォーメーション)推進企業として始動~

 

 2021年7月21日、株式会社ブロードバンドタワー(以下、BBTower)の連結子会社であり、私が代表を務めるジャパンケーブルキャスト株式会社(以下、JCC)は、顧客向けセミナーを初めてWebで開催しました。この日は、同社にとって、また、日本のケーブルテレビ業界にとっても記念すべき日となりました。

 

 というのは、日本ケーブルテレビ連盟が、今後のケーブルテレビ業界の2030年を展望した「2030ケーブルビジョン」を去る6月30日に発表したことに起因します。本ビジョンは、同連盟理事長の渡辺克也氏(元総務審議官)による強力なリーダーシップの下、ケーブルテレビ業界の経営者を代表するメンバーを中心に、三菱総合研究所、それに私も含めて10名の有識者支援メンバー(内閣官房デジタル庁担当、千葉市、会津若松市、NHK、KDDI、電通、DeNA、ケーブルラボ、インフォシティ、BBTowerの代表)が支援して作成されたものです。

 既存事業としての放送事業を守りつつも、成長を続けるインターネット関連事業、ローカル5Gなどの無線通信事業、さらには地域DX事業などを伸長させて、2020年時点で約1.3兆円のケーブルテレビ業界(放送、通信、その他事業)市場を2030年に1.7兆円市場に成長させるというビジョンです。

https://www.catv-jcta.jp/jcta_news/detail/2005

 

 7月21日のプログラムは、以下のメンバーによって、1時間という凝縮した時間で実行されました。

13:00~13:30 JCC代表取締役会長兼社長CEO 藤原洋

         講演タイトル『2030ケーブルビジョン実現へ向けてのJCCの役割』

13:30~13:35  JCC取締役 営業本部長 樋山洋介

13:35~13:40 JCC執行役員 営業本部 イノベーションセンター 今井厚

13:40~13:45 JCC取締役 技術本部長 加藤典彦

13:45~13:50 JCC取締役 COO 大熊茂隆

13:50~14:00 質疑応答 登壇者

 

 以下に、私の講演概要と質疑応答の概要についてご説明したいと思います。

 

●藤原洋『2030ケーブルビジョン実現へ向けてのJCCの役割』の講演概要

1.ケーブルビジョン策定にあたって
 本2030ケーブルビジョンの出発点は、背景に「危機感」がありました。それは、株主資本主義が徹底している米国は「革新の国」らしく、Netflix、Amazon Prime等のOTT(Over The Top、インターネットを介した動画配信、音声通話、SNS等を提供するサービス)が台頭したことによるケーブルテレビ放送事業の価値低下が起こっていることに起因しています。日本は、「伝統の国」らしく、テレビを観る生活習慣や放送業界規制などに守られて、放送業界の地盤沈下は、現在までのところ、米国ほどの状況には至っていません。しかしながら、まず最初に、何もせずに放置しておくと、最悪シナリオとして、既存事業は40%減少するという仮説を立ててみました。この10年後の最悪の事態を回避し成長シナリオを描いたのが、ケーブルテレビ業界総力を結集した世界に誇る「伝統と革新の国」日本としての「2030ケーブルビジョン」であると位置づけられます。
 
〇「我が国が直面している状況」に対するJCC/BBTowerの役割
 いくつか提示された社会課題の中で、当社グループは、グローバル経済における日本の地位の低下、テレワーク・ワーケーションなど新しい働き方の普及、政府におけるデジタル化に向けた取組の本格化という3つの課題解決のために、「地方でのスーパーテレワーク産業と地域DX産業創出」に取り組むということを表明しました。

2.「2030年の社会」に対するJCC/BBTowerの役割
 いくつか提示された課題の中で、暮らしの変化、東京一極集中緩和の2点について、解決のために「地方でのスーパーテレワーク産業と地域DX産業創出」に取り組むことを再確認しました。

〇「2030年生活が変わる」に対するJCC/BBTowerの役割
 いくつか提示された課題の中で、行政手続きのデジタル化、医療のデジタル化、教育のデジタル化の3つについて、「地域DX産業創出」のための「地域DXセンター構築支援事業」を行うことを表明しました。

〇「2030年テクノロジーが変わる」に対するJCC/BBTowerの役割
 いくつか提示された変化の中で、Beyond5G/6G、DX、高齢者向けイノベーションの3つに着眼し、当社グループは、CATV局が運営する新世代無線基地局に隣接するエッジデータセンターをCATV局舎内等に設置し、これまで培った北海道の自治体向けIP告知サービス等(図1参照)を展開し、地域DX産業創出に貢献したいと述べました。
 

図1.北海道で始動したJCCのIP告知サービス – 約8千世帯 1万台(導入済み5町村)

 

3.今後のトレンド
〇放送ビジネス
 いくつかのほぼ確実に起こることの中から、OTT配信事業の拡大、ケーブル事業における「放送ビジネス」の相対的な価値低下の2つに着目しました。また、いくつかの想定シナリオの中から、県域放送、地域メディアの再定義、主要各地で様々な形態の共通配信PFが登場、安価なデバイス(ドングルなど)の提供、地上放送の⾼度化(4K化)対応の4つに着眼しました。これらを実現するために、ケーブル業界の新放送市場地域メディア再定義支援を行う、地域メディアセンター構築支援事業を行うことを表明しました。

〇通信ビジネス
 いくつかのほぼ確実に起こることの中から、有線・無線市場の融合、地域BWAの5G NR化の進展、有線・無線の通信トラヒックの激増、ウェアラブル端末やIoTの本格的な普及の4つに着目しました。また、いくつかの想定シナリオの中から、ローカル5Gのエリア免許制、地域IX・MECの整備、ケーブルテレビネットワークの仮想化・スライシング化の3つに着眼しました。これらを実現するために、ケーブル業界の新通信システム(ローカル5G)の構築支援事業を行うことを表明しました。

〇地域コンテンツ
  いくつかのほぼ確実に起こることの中から、コロナ禍でモバイルネット利用はいっそう進展、メディアを含むあらゆる企業が最適な顧客接点を模索、地方との関わり方が多様化の3つに着眼しました。また、いくつかの想定シナリオの中から、⾼齢者や障がい者対応としてコミch(コミュニティチャンネル)も含む ローカル放送の字幕化要請の強化、XR等オンライン空間でのコンテンツ利用の拡大、個人バイタルデータ等のコンテンツ化・メディア化の3つに着目しました。これらを実現するために、ケーブル業界の地域コンテンツ制作・配信支援事業を行うことを表明しました。

〇新たな事業(地域ビジネス)
 いくつかのほぼ確実に起こることの中から、地域力向上・魅力創造など地域間競争の激化、地域のマーケットをいかに維持するかが至上命題へ、地域DXが一気に進む、IT人材のさらなる不足の4つに着目しました。また、いくつかの想定シナリオの中から、マイナンバー等を活用したコスト効率の高い官民一体型ビジネスが進展、スマートシティの普及拡大、分野横断型スーパーシティの実現の3つに着眼しました。これらを実現するために、ケーブル業界の地域DXサービス構築支援事業を行うことを表明しました(図2参照)。
 

図2.JCC/BBTowerが共同で進める地域DXセンター事業

 

〇テクノロジーロードマップ
 いくつかの構成要素から、クラウド、エッジ、コアネットワーク、アクセスネットワーク、デジタルツインの4つに着目し、当社グループは、ケーブル業界の新通信システム(ローカル5G)の構築支援と地域IX(インターネット・エクスチェンジ、異なるISP間の相互接続拠点)、MEC(モバイル・エッジコンピューティング)センターの構築支援を行うことを表明しました。

4.2030年に向けた事業環境の見通し
 何もしなければ、放送サービスは 10年で4割強減(米国事例並み)ということに対して、当社グループは、地域DX産業(地域DXセンター)創出支援事業を行うことで、業界の成長に貢献したいと述べました。

5.2030年のケーブルテレビが担うべきミッションと目指すべき姿
 『地域DXで地域を豊かに、人々を笑顔に』をミッションとし、目指すべき姿として、6つのアプローチ(放送、コンテンツ、ネットワーク、ワイヤレス、ID、サービス・ビジネス)において、各々以下の6つのアプローチを標榜していますが、JCC/BBTowerは、以下の面で技術支援をすることを表明しました。

〇放送が変わる⇒地域における情報メディア・プラットフォームになる
 本アプローチについては、図3.にJCCが考えるケーブルテレビ業界の新放送サービスインフラについて示します。

 

図3.JCCが提供するケーブルテレビ業界の新放送サービスインフラ

 

〇コンテンツが変わる⇒地域の魅力を創出するコンテンツプロデューサーになる

 本アプローチについては、当社グループが、これまでの地域コンテンツ制作の実績と地域メディア配信センターの構築によって技術支援すると述べました。

〇ネットワークが変わる⇒安全で信頼性の高い地域NO.1ネットワークを構築する 

 本アプローチについては、CATV局舎有効活用、サイバーセキュリティ強化の面で技術支援すると述べました。

〇ワイヤレスが変わる⇒地域MNOとして第5のモバイルキャリアを目指す

 本アプローチについては、ローカル5Gシステムやエッジデータセンターの構築に関して技術支援すると述べました。

〇IDが変わる⇒ケーブルIDで地域経済圏を構築する

 本アプローチについては、ケーブルIDの2030年1000万ID発行へ向けてEコマースインフラ構築などについて技術支援すると述べました。

〇サービス・ビジネスが変わる⇒地域DXの担い手になる

 本アプローチについては、CATV局に対して、地域DXセンター構築に関して、技術支援すると述べました。

6. 2030年に向けたアクションプラン

7. 2030ケーブルビジョンの実現に向けて業界が変わる!

8.2030年への飛翔

 これら第6~8章のテーマについて、当社グループは、第1から5章について、具体的に述べたように、放送技術のJCCとインターネット技術のBBTowerとの連携によって、全力で2030ケーブルビジョンに記された1.3兆円市場から1.7兆円市場への成長へ向け、当社グループの総力をあげて取り組みたいと述べさせて頂きました。

●おわりに
 初めての試みであったJCCウェビナーには、約150社、約180名の視聴者に聴いて頂き、大変有意義であったというアンケート結果を頂くことができました。BBTower/JCCは、一体となって業界発展のために貢献したいと考えております。

 

2021年7月28日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

SBI大学院大学『DXの本質~インターネットによる全産業デジタル化~』収録佳境に

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~新科目が2021年秋学期からスタートします!是非受講下さい!~
~8月2日に第11章・12章ビデオ収録、7月5日第1章公開ビデオ収録~

 

 SBI大学院大学は、当社の社員教育にも活用している、技術の本質の分かる経営者、経営の分かる技術者を育成する経営大学院、MBA(経営学修士)取得のための経営大学院です。当大学院は、2008年に eラーニングを基本とする学校法人として開校し、財務、会計、組織論、国際金融などの経営学科目に加えて、「人間学」と「デジタル」の習得をその特徴としています。4月1日から北尾吉孝理事長・前学長から新学長を拝命したことを記念し、新科目『DXの本質~インターネットによる全産業デジタル化~』の授業を秋学期から開始することとなりました。

 今回は、7月5日から開始したビデオ収録が15回に及び、8月に佳境を迎えたSBI大学院大学内のビデオ収録用スタジオでの収録の様子と公開講義の様子をお伝えします。

 

 

●シラバス(講義計画)は、以下の概要となっています。

授業科目名:DXの本質 ~インターネットによる全産業デジタル化~
科目区分:戦略・マーケティング(応用
必修・選択の別:選択
配当年次:2年次
単位数:2単位(学習期間1学期)
担当教員:藤原 洋

 

1.授業の概要

 DX(デジタルトランスフォーメーション)は、「デジタル変革」と呼ばれ、「デジタル化」と「変革」の2つの要素から構成される。「デジタル化」とは、手段としてのデジタル・テクノロジーを駆使することであり、「変革」とはビジネスモデルを変換することである。本講義では、ビジネスのデジタル化に必要な「デジタル・テクノロジーの本質」とこれによってもたらされる「各産業分野にけるビジネスモデルの変革の本質」について学ぶ。インターネットの本格的普及から30年を経過した今日、産業構造は大きく変化した。本講義では、インターネットの発展経緯とこれによって起こった社会、特にビジネス環境の変化について述べた後、今起こっている技術革新の本質としてのDXについて展望する。

 

2.学習目標

 社会を変えるのはテクノロジーであるという歴史観に基づく価値判断が重要であり、そこで、次の時代を読むには、技術革新の本質を理解することが求められる。本講義では、技術革新がもたらす産業構造の変化のメカニズムを解明すると共に、現在社会にとって大きな影響を与えたインターネットをはじめとするデジタル・テクノロジーによるビジネスモデルの変革の本質を把握し、今後の社会発展の展望を描けるようになることを学習目標とする。

 

3.授業計画

第1章

・産業革命史における第4次産業革命(DX革命)の位置づけ

 産業革命史を理解するために、科学技術の本質と産業革命とは?動力革命とその推進原理、重化学工業革命とその推進原理、デジタル情報革命とその推進原理、今日の日本と世界の置かれている状況、第4の産業革命(DX革命)の必然性について述べる。その後に、経産省の提言するDXによる「2025年の崖」、DXによる持続可能な環境とエネルギー問題におけるビジネスチャンスを概観する。

 

第2章

・情報通信における技術革新と市場の変化

 DXを支える情報通信技術の革新による市場の変化を理解するために、情報通信分野における課題、ネットワークそのものの進化、こちら側に登場したWebとモバイル通信の仕組み、あちら側の変化をもたらすポータル、SNS、P2P、IoTについて述べた後、情報通信産業で進行するDXについて述べる。

 

第3章

・インターネットによるビジネス環境の変化

 DXに向うビジネス環境の変化を理解するために、インターネット・ビジネスを変えたベストエフォートの考え方、インターネットによって登場したビジネスモデルの考え方、およびインターネット・ビジネスの成長の法則について触れる。

 

第4章

・DXレポート『2025年の崖』について

 あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネスモデルを展開する動きが起きつつある。しかしながら、PoC(Proof of Concept)で終わる企業も多い。そこで、ITシステムが今後DXを実行していく上での大きな課題であることから、DXを実現していく上でのITシステムに関する現状の課題やその対応策の概要について述べる。

 

第5章

・ビジネスインフラとなったインターネットとWebとは?

 DXの基本技術としてインターネット技術について理解するために、インターネットとは?IPとは?インターネットとIPの意義について学ぶ。 また、もう1つのDXの基本技術としてのWebの基本について学ぶために、WWWと「ネットワークのこちら側」のブラウザとは?WebブラウザのためのHTMLとは?HTTPとは?について学ぶ。

 

第6章

・通信キャリア/ISP/データセンター/オンプレミス/クラウドとは?

 DXの基本としてのインターネット・ビジネスの基本を理解するために、インターネット・ビジネスとは?通信キャリアとは?ISPとは?について述べる。データセンターとクラウドについては、DXの拠点としてWebサーバーを収容するiDC(インターネット・データセンター)ビジネスについて理解するために、インターネット・インフラ事業iDCとは?iDCの市場動向、新たなiDC事業の方向性とは?について述べる。

 

第7章

・検索エンジンと広告ビジネス

 DXを推進する上で、インターネットを通じた自社製品・自社サービスへの顧客の誘導が重要である。そこで、検索エンジンのビジネスを理解するために、情報検索、メタデータとデータベース、検索エンジンについて述べる。また、インターネットによる広告について理解するために、ネット広告の標準ツール、次世代ネット広告とは?ネット広告ビジネスの進化について述べる。

 

第8章

・「インターネットメディアと広告手法」

 DXの推進には、インターネットメディアの活用が不可欠である。そこで、インターネットによるメディアビジネスを理解するために、メディアの歴史と現状、メディアのビジネスモデル、ネット広告の種類について述べる。
 次に、DX推進の鍵となるネット広告の活用法、およびその効果測定、広告を超えた企業のデジタルマーケティング戦略について述べる。

 

第9章

・企業DXの具体化シナリオ

 センサーやIoTによって現実世界で発生するあらゆる事象がデータ化されるようになり、デジタル空間(サイバー世界)を流れる膨大なデータを取得し、活用することで、新たな価値を創出することが求められる。
 そこで、如何にしてこのデジタル空間を、利益を生む源泉へと変えられるか?について述べる。すなわち、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルについて述べる。
 企業にとって不可欠な販売、すなわち、流通のDXにとっては、Eコマース・ビジネスの理解が不可欠である。そこで、Eコマース/インターネットオークションとは?Eコマースの市場規模、インターネットオークションの現状と課題について述べる。

 

第10章

・自治体DXの具体化シナリオ

 政府において「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が決定され、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が示された。このビジョンの実現のための住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村が実行するDXの具体化施策について述べる。

 

第11章

・インフラDXの具体化シナリオ

 社会経済状況の激しい変化に対応し、インフラ分野において、データとデジタル技術を活用して、国民ニーズを基に社会資本や公共サービスを変革することが求められる。そのために業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し、インフラへの国民理解を促進すると共に、安全・安心で豊かな生活を実現する動きが始まっている。本章では、そのインフラDXについて述べる。

 

第12章

・教育DXの具体化シナリオ

 教育や科学技術イノベーション、文化芸術、スポーツの各分野において、高まる新たなニーズや期待に随時機動的に応えつつ、ポスト・コロナ期のニューノーマルに的確に対応していくために必要なDXに係る取組を早急かつ一体的に推進していかなければならない局面を迎えている。本章では、教育分野におけるデジタル化に向けた取組について述べる。

 

第13章

・農業DXの具体化シナリオ

 農業従事者の高齢化や労働力不足等の課題に対応するには、農業の成長産業化を進めるために、デジタル技術(ロボット・AI・IoTなど)の活用を強力に進め、データ駆動型の農業経営を実現し、消費者ニーズに的確に応えるために価値を提供していくことが不可欠である。本章では、これを実現する農業DXについて述べる。

 

第14章

・社会におけるDX推進リーダー養成の具体化シナリオ

 企業は、既存ビジネスの効率化や対応力向上のためだけでなく、ビジネスモデルの転換、新規ビジネスの創出にデジタル技術を活用する必要がある。そのためには、社会におけるDX推進リーダーを養成する必要がある。本章では、その具体化について述べる。

 

第15章

・DXレポート『DX加速化』について

 今般、デジタル変革に対する現状への危機感を持つ我が国企業は増加しているものの、その危機感を起点に「DXの取り組みを始めている企業」と「まだ何も取り組めていない企業」に二極化しつつある。日本において、デジタル化が急務となった今、DX推進のさらなる加速化を目的とし、DXを推進する上での課題を整理しそれらへの対応策を示す。

 

 

●7月5日に開催された第1回公開講座について

 『DXの本質』という今回の講義シリーズは、全15章構成ですが、第1章についてのビデオ収録を兼ねた公開講義を7月5日に行いました。今後、MBA取得を目指されている多くのビジネスパーソンに受講して頂きました。受講者は、金融、商社、通信キャリア、製造業、起業家の皆さんで、当社の顧客企業からも参加があり、日頃の恩返しが少しはできたと感じました。また、当社は、DataセンターカンパニーからDXセンターカンパニーへのビジネスモデルの転換と次なる成長を標榜していますので、受講者の皆さんと共に歩み未来を展望する良い機会になったと思いました。

 

 

 

●おわりに

 全15章の資料作成は、この夏の土日とお盆休みで行い、大変骨が折れましたが、経営学の実践を教える当大学院の教材づくりは、体系的にDXを整理する良い機会となりました。この有意義な「夏休み」の成果を、受講生の皆さんとの交流が始まるこの秋以降、大きなチャンスとして本業にフル活用したいと考えております。

 

2021年8月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

 

デジタル庁の発足と当社幹部の同庁採用について

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~日本社会のデジタル変革の展望と当社グループ戦略~

 

  2021年9月1日にデジタル庁が創設され、これまで、世界の中で遅れてきた我が国の行政と産業のデジタル化を推進するために、新たにデジタル改革(DX)政策が始動しました。当社からもCloud&SDN研究所所長の西野大氏が兼務でデジタル庁専門職員として勤務することとなりました。このようなデジタル政策の転換期に当たり、当社グループは、これまでのDataセンターカンパニー企業グループからDXセンターカンパニー企業グループへの転換を図り、社会のデジタル化を担う企業グループとして、さらなる成長を目指す所存であります。そこで、今回は、デジタル庁創設の経緯とその位置づけ、および日本の未来を担う日本社会のデジタル変革の展望と当社グループの戦略について述べさせて頂きます。

 

●デジタル庁の創設の経緯とその位置づけ

 政府は、新型コロナウイルスの感染症拡大の中で、デジタル及びサプライチェーンの見直し等、今後できることから前倒しで実施し、複数の省庁に分かれている関連政策を取りまとめ、強力に進める体制として、去る9月1日にデジタル庁が新設しました。以下にこれまでのデジタル改革の経緯と今回のデジタル改革行政の位置づけについて示します。

 

(1)デジタル改革の経緯

 我が国では、インターネットを中心とした情報通信技術(IT)の活用により世界的規模で生じていた急激かつ大幅な社会構造の変化(いわゆるIT革命)に適確に対応する観点から、2000年(平成12年)、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号。以下「IT基本法」という。)が制定されました。当社は、このインターネットを中心とした国造りに対応するために、日本初の専業インターネット・データセンター企業として誕生しました。

 IT基本法では、インターネット等の「高度情報通信ネットワーク」を整備し、国民が「容易にかつ主体的に利用する機会」を有することで、産業の国際競争力の強化、就業の機会の創出、国民の利便性の向上といった「あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展」がなされるとの考えの下、所要の施策を推進することとされました。

 その後、高度情報通信ネットワークの整備が相当程度進展した一方、インターネットを通じて流通するデータの多様化や大容量化の進展に伴い、IT基本法が重点を置いていたインターネット等の高度情報通信ネットワークの整備に加え、今日では、データを最大限に活用していくことが不可欠となっています。その間、政府は、「e-Japan戦略1」以降、主にインフラ整備とIT利活用を推進し、その後、「データ利活用」と「デジタル・ガバメント」を戦略の柱として推進してきました。

 こうした状況の中、多様・大量なデータ流通による負の側面も顕在化しており、デジタル技術の活用のみならず、個人情報の保護や必要なリテラシーを育むことの重要性が増加しています。また、新型コロナウイルス感染症への対応において、官民においてデジタル化を巡る様々な課題が明らかになりました。今後、大規模地震災害をはじめとする自然災害や感染症等の国民の生命・身体・財産に重大な被害が生じ、又は生ずるおそれがある事態に際しての強靱性(レジリエンス)の確保や、少子高齢化等の社会的な課題への対応のためにも、データの活用は緊要なものとなっています。

 こうした状況を踏まえ、政府は、行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行するための突破口としてデジタル庁を創設することを柱としたデジタル改革について検討を加え、昨年(2020年)12月25日、IT基本法の見直しの考え方やデジタル庁設置の考え方について政府の基本的な方針を盛り込んだ「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(「デジタル改革基本方針」)を閣議決定しました。

 その後、この方針等を踏まえ、デジタル改革関連法案3が、本年(2021年)2月9日に閣議決定され、国会審議を経て5月12日に成立しました。

 

(2)本計画の位置付け

 デジタル改革基本方針では、デジタル社会の目指すビジョンとして、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を掲げ、このような社会を目指すことは、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めることに繋がるとしています。

 また、デジタル社会を形成するための基本原則として、以下の10原則を掲げました。

 この10原則等を踏まえ、デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)第2条においてデジタル社会の形成に関する基本理念が規定され、また、これを踏まえ、同法第4章において施策の策定に係る基本方針が定められています。

 本計画は、デジタル社会形成基本法の施行(2021年(令和3年)9月1日)を見据え、同法第37条第1項に規定する「デジタル社会の形成に関する重点計画」に現時点において盛り込むべきと考えられる事項を示しつつ、

①IT基本法第36条第1項に規定する高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画

②官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)第8条第1項に規定する官民データ活用推進基本計画として策定するものです。

 すなわち、デジタル庁を司令塔として、デジタル社会の形成に向けた官民の施策や取組を迅速かつ重点的に推進する観点から策定するものであり、国、地方公共団体、民間をはじめとする社会全体のデジタル化について関係者が一丸となって推進すべき取組を示すことにより、デジタル社会の形成に向けた羅針盤とすることを目指すものであります。

 今後、本計画を踏まえつつ、デジタル庁の創設後速やかに、デジタル社会形成基本法第37条第1項に基づく「新重点計画」を策定することとされています。

 本計画に加え、デジタル・ガバメント推進の取組を加速するため、「デジタル・ガバメント実行計画」(2021年(令和2年)12月25日閣議決定。「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて(国・地方デジタル化指針)」及び「マイナンバーカードを活用した各種カード等のデジタル化等に向けた工程表」を含む。)に基づく取組を引き続き実施するとされています。

 デジタル化はあくまでも手段であり、その目的は我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現であります。こうしたデジタル改革が目指す究極の姿は「デジタルを意識しないデジタル社会」であり、徹底した国民目線で行政サービスを刷新すること等により、誰もがデジタルの恩恵を受けることのできる社会や、地域における魅力ある多様な就業機会の創出、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現、地域社会の持続可能性の確保等、地方においてもデジタルによる恩恵が受けられる社会に向け、さらには、自然災害や感染症等の事態に際しての強靱性の確保や、少子高齢化等の社会的な課題への対応のためにも、国、地方公共団体、民間事業者その他の関係者が一丸となって取り組むことが求められるとされています。特に、国及び地方公共団体においては、本計画に基づくデジタル化の取組を着実に実施することに加え、国民目線でサービス向上に資する取組をできるものから順次積極的に実践していくものとされています。

 図1に同法案で示された全体図を示します。

 

図1.デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針の概要

 

●日本社会のデジタル変革の展望と当社グループの戦略

 以上に述べたように、行政のDXに始まる、本格的なDX(デジタルトランスフォーメーション)時代を迎え、データの収集と利活用のためのプラットフォームを提供する役割が鮮明になってきました。また、「デジタル変革(DX)」と共に、首都圏一極集中の解消のための「地方創生」を重要な日本の社会課題として捉えた事業戦略を推進する所存であります。

 「地方創生」の担い手として重要な役割を果たす当社子会社であるジャパンケーブルキャスト株式会社(JCC)の顧客企業が加盟する一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟は、去る6月30日に「2030ケーブルビジョン」を発表しました。JCCは、当社と共に、地域DXの推進を行ってまいります。

 ここで、当社が考える社会のDXの全体像を図2に示します。本図にあるようにデジタル庁がリーダーシップをとって構築されるべき国家情報通信基盤があります。この情報通信基盤を活用して各分野のDXが実行されるべきであると考えます。これらのDXに関わる情報処理は、基本的にはデータセンター内で実行されることとなります。当社グループは、これらの情報通信基盤の中で、国家が構築するものと、民間企業が構築するものに分けられると想定されますが、民間企業が構築すべきデータセンターインフラを先導して取り組んでいく所存であります。そこで重要になってくるのがデータセンターのカーボンニュートラルへの取組です。当社は、新大手町データセンターにおける電力調達を再生可能エネルギーへの転換を図るなど積極的に取り組んでまいります。

 また、国家情報通信基盤と各分野のDXが協調する鍵となるのがAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)ですが、当社データセンター内にはこれらのAPI連携基盤を今後整備し、当社データセンターにおいては、各分野におけるDXの担い手となる、株式会社ヘリックスをはじめ多様性に富んだ多くのSaaS(Software as a Service)事業者との連携を強化してまいります。

 

図2.当社が考える社会のDXの全体像

 

 さて、このようなDXの潮流の中で、そこで、データの集約拠点を担う当社とデータの配信を担うJCCとの連携が益々重要になってきております。このため、当社における、当社グループ事業の全体像としての、3つの事業セグメント、すなわち、①コンピュータプラットフォームセグメント(データセンターサービス、クラウドサービス、ストレージソリューション、サイバーセキュリティ)、②IoT/AIソリューションセグメントエーアイスクエア、GiTV)、③メディアソリューションセグメント(JCC、沖縄ケーブルネットワーク(OCN))の連携を深める所存です。このことによって、これまでの首都圏企業のDXだけではなく、地域DXの担い手として当社グループの事業の方向性を強化したいと考えております。

 コロナ禍によって、テレワークが進行し、ワークスタイルとライフタイルが大きく変化し、物販ECの市場成長によって当社グループの市場拡大が期待されます。その結果、従来にも増して、3つのセグメントに共通して重要度が増しているのが、情報セキュリティです。同分野については、情報漏洩防止ソフトウェアなどで日本オリジナルの技術開発に実績のある当社子会社の株式会社ティーエスエスリンクの事業拡大に取り組んでまいります。

 最後に、今回のデジタル庁の新設を契機として、当社グループは、「行政DX」「企業DX」「地域DX」市場成長のニーズに対応すべく、この潮流を捉えて事業拡大に臨むと共に、尚一層の3つの事業セグメントに共通の情報セキュリティ体制の整備を行ってまいります。

 

2021年9月29日

代表取締役会長兼社長CEO

藤原 洋

 

 

 


ブロードバンドタワーと名古屋大学を中心に総務省NICTからBeyond5G向け研究受託!

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~産学連携としてブロードバンドタワー(代表提案者)、名大、名工大、三菱電機が共同研究スタート~

~GaN(窒化ガリウム)を用いた5Gに続く次世代モバイル通信)の基盤技術開発~

 

 このたび、総務省国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)から、Beyond 5G研究開発促進事業のうち、令和3年度新規委託研究の公募(第1回)における一般課題について、株式会社ブロードバンドタワー(以下、当社)が代表提案者となった『Beyond 5Gに資するワイドバンドギャップ半導体高出力デバイス技術/回路技術の研究開発』が、採択されました。提案者は、当社(代表提案者)、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学、国立大学法人名古屋工業大学、三菱電機株式会社の4者です。

https://www.nict.go.jp/info/topics/2021/10/04-3.html

 

 研究開発内容は、5Gで実用化されている窒化ガリウム素子の材料品質を向上させ、その物性を最大限引き出すことで、Beyond 5Gで求められる高速・大容量無線通信に必須の広帯域性・低歪性に加え、高出力かつ信頼性向上も期待される「ワイドバンドギャップ半導体高出力デバイス技術/回路技術」を開発することとなっています。

 

●共同提案に至った経緯について

 さて、今回の共同研究提案に至った経緯は、天野浩博士ら3人の日本人が2014年に青色発光ダイオードの発明でノーベル物理学賞を受賞されたことに始まります。私は、スウェーデンという国に着目していたので、スウェーデン政府や企業との交流があったことから、「ノーベル賞を授与する国としてのスウェーデン」の「ノーベル賞哲学=科学を人類の平和と発展に役立てる」に共感し、天野浩博士が徹底的に研究されたGaN(窒化ガリウム)を青色発光ダイオードだけではなく、次世代AIとインターネットの世界にも適用しましょうと持ちかけました。

 

 具体的には、総務省に予算申請をして、インターネットのための次世代高速情報通信基盤向けに共同研究をしようということになりました。天野博士は、その話をノーベル賞受賞記念講演で話をしてもいいですか?ということで、当然OKですということになり、青色発光ダイオードの次のビジョンを共有することができました。また、その話をストックホルムの授賞式で話されました。

 

 今回の総務省NICTからの共同研究の受託の背景には、そんな夢の共有がありました。Beyond5Gは、5Gに続く次世代の超高速モバイル通信システム(6G等)を目指すもので、シリコンと異なり、化合物半導体の代表格であるGaN(窒化ガリウム)では、日本が世界をリードするチャンスになると思っています。これから2年、5年、10年とロードマップを描きながら2030年を目指し、できれば大阪万博に中間成果を示したいと思っています。

 

 写真1は、天野博士と、GaNの次世代AIとインターネットへの適用について初めて語り合った、ノーベル物理学賞受賞決定記念祝賀会の様子です(2014年11月21日スウェーデン大使館にて)。

 

写真1:2014年11月21日スウェーデン大使館でのノーベル賞受賞決定祝賀会

 

●Beyond5G時代のブロードバンドタワーの目指すMECデータセンター

 Beyond5Gの時代には、図1に示すように、5Gをはるかに超える7つの特徴が、実現されることになっています。即ち、超高速・大容量、超低遅延、超多数同時接続、超低消費電力、超安全・信頼性、自律性、拡張性です。また、仮想化技術(サーバーなどのハードウエアリソース〔CPU、メモリ、ディスクなど〕を抽象化し、物理的な制限にとらわれず、ソフトウエア的に統合・分割できるようにする技術)に基づく、クラウドコンピューティングとエッジコンピューティング技術をBeyond5G情報通信基盤に取り込むトレンドが生まれることが想定されます。

 

図1. Beoynd5Gが拓く7つの特徴

 

 一方、GaNという日本が誇る化合物半導体デバイス技術を応用し、次世代のコンピューティング環境を実現するのが、当社の役割ですが、GaNは、高速スイッチング性能と低消費電力を特徴としています。また、通信用デバイスとしてだけではなく、パワーエレクトロニクスデバイスとしても優れた特性を有しています。そこで、当社としては、本研究成果を応用し、MEC(Multi-access Edge Computing)データセンター技術の確立を目指しています。その概要を示したのが図1です。当社は、日本初の専業インターネット・データセンター企業として、これまで、都心型データセンターの構築と運用を約20年以上に亘って行ってきました。今後は、5GそしてBeyond5Gの時代に適合する新たなエッジコンピューティング時代に対応したGaNによるデバイス技術を応用した、MECデータセンターを実現させたいと考えております。そして、各地域に展開することで、「データの地産地消」を実現したいと考えております。

 

図2. ブロードバンドタワーの目指すBeyond5G時代のMECデータセンター

 

【ご参考】

国立研究開発法人情報通信研究機構からのプレスリリース

https://www.nict.go.jp/info/topics/2021/10/04-3.html

 

2021年10月27日

代表取締役会長兼社長CEO

藤原 洋

 

11月恒例のブロードバンドタワー主催シンポジウムを今年は2日間にわたって開催

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■■11月22日/24日 BBTower Business Exchange Meeting 2021 ONLINE■■

テーマ:「DXセンター」への進化~Beyond 5G時代の未来型データセンターへ~

 

 当社では、毎年11月に、当社顧客企業とパートナー企業向けのシンポジウムを開催しておりますが、今年もコロナ禍の中での開催となったために、昨年に続いてオンライン形式で開催しました。特に今年は、新たな試みとして、2時間/日として2日間にわたる開催となりました。

 当社は、「DataセンターカンパニーからDXセンターカンパニーへ」というビジネスモデル転換を進めており、今回は、「DX」を取り上げ、初日の22日は、「地域DX」について、2日目の23日は、「デジタル庁をはじめとする中央DX」について、特別講演、基調講演、パネルディスカッションで構成しました。

 外部からは、渡辺克也氏(一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟理事長、元総務審議官)、青木孝文氏(東北大学理事・副学長)、江崎浩氏(デジタル庁チーフアーキテクト、東京大学教授)、中村伊知哉氏(iU学長)、北俊一氏(株式会社野村総合研究所パートナー)、村上圭子氏(NHK放送文化研究所研究主幹)、関口和一氏(MM総研代表取締役所長、元日経新聞論説委員)をお招きし、当社の幹部も議論に参加しました。

 

●11/22(月)のプログラムとその概要

 地域DXの課題とその実現に向けて当社グループは、何をするのか?というテーマで議論を進めました。

 

〇開会挨拶 株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO 藤原 洋

 コロナ禍の中で、今年もオンライン開催ということで開催させていただきますが、今回はコロナの影響で加速するDXを地域からのボトムアップ視点と、中央からのトップダウン視点で、外部から当分野のトップの専門家の方々をお招きし、社会課題を明確にした上で、当社グループの果たす役割について皆様と共に考えていきたいと思います。視聴される皆様にとって、有意義な2日間になることを祈念しております。

 

〇特別講演「2030ケーブルビジョン~CATVから地域DXの担い手へ~」

一般社団法人 日本ケーブルテレビ連盟 理事長 渡辺 克也 様

 2030へ向けて、ケーブルテレビ業界は、「CATVから地域DXへ」をキーワードとしている。そのため、「社会」「生活」「テクノロジー」が変わることへの対応について、業界として「放送」「コンテンツ」「ネットワーク」「ワイヤレス」「ID」「サービス・ビジネス」が、変わるという視点で具体策について述べられました。そして、これら6分野において、適切な施策を講ずることで、1.3兆円市場を1.7兆円市場へと拡大できる可能性があると強調されました。

 

〇Keynote1「DX3.0~デジタル時代における社会価値の創造~」株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 パートナー 北 俊一 様
 DXには、段階があり、DX1.0は効率化と生産性向上、DX2.0はビジネスモデルの変革と新たなビジネスの創造、DX3.0は社会課題の解決にあるとされ、世界幸福度ランキングで日本は56位に留まっていることに着目すべきと述べられました。「幸福度」を高めるには、精神的な豊かさを高める必要があり、NRIの試算では、所得よりDCI(Digital Capability Index:社会におけるデジタル化)と生活満足度との相関が高くなっていることを強調されました。
 

〇Keynote2「地域メディアの役割をどうアップデートしていくか?」
NHK放送文化研究所 メディア研究部 研究主幹 村上 圭子 様
 これまでの地域メディアの役割は、全国で共有すべき情報・コンテンツを、地域差なく全国に届けること等であったが、これからは、例えば、次の3つの役割を果たすことにあると述べられました。地域の誇りの維持・向上のためのコンテンツ・サービス、全国で共有すべき地域情報、地域の魅力あるコンテンツや産品の全国へ向けての発信、地域のハブ・プロデューサー・デザイナーになること。そのためには、既存の役割のアップデートなどが必要であると述べられました。

 

〇15:10-15:55 パネルディスカッション
「BBTowerグループ全体で取り組むDX推進」というテーマで以下のメンバーによるパネルディスカッションを行いました。
パネリスト:
日本ケーブルテレビ連盟 渡辺 克也 様、野村総合研究所 北 俊一 様、日本放送協会 村上 圭子 様、ブロードバンドタワー 樋山 洋介、ジャパンケーブルキャスト 大熊 茂隆、モデレーター:藤原 洋

〇 閉会挨拶 株式会社ブロードバンドタワー 取締役執行役員 樋山 洋介
 

●11/24(水)のプログラムとその概要
 中央からのDXの課題とその実現に向けて当社グループは、何をするのか?というテーマで議論を進めました。
 

〇開会挨拶・Keynote1 「BBTowerグループのDX戦略『DXセンター』への取り組み」
株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO 藤原 洋
 2021年9月のデジタル庁発足による中央官庁のDXの推進が決定され2025年には、行政のDXが完結する予定であり、これに見合った民間としてのDX戦略が必要であることを述べました。ブロードバンドタワーグループでは、グループ一体となって、DataセンターカンパニーからDXセンターカンパニーへの転換を図ることを宣言しました。具体的には、現在、東京と大阪を中心としたデータセンターを単なるオンプレミス型のデータセンターだけではなく、大規模化と地域分散化を図り、DX拠点として、ハイブリッドクラウド・コンピューティングとエッジコンピューティング拠点の構築を段階的に進めるという戦略についてお話させて頂きました。また、その後に、デジタル庁プロジェクトマネージャーに就任した、当社執行役員Cloud & SDN研究所長 西野大より、デジタル庁について意見交換させて頂きました。
 

〇Keynote2「デジタル化からオンラインファーストへ」
デジタル庁チーフアーキテクト、東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 江崎 浩 様
 これまでのアナログ情報のデジタル化で留まるのではなく、ディジタル・ネイティブ(Digital Native)な情報、すなわちオブジェクト指向の情報が重要であるとし、垂直統合型モデル(閉域システム)ではなく、⽔平統合型モデル(連携・協調プラットフォーム)へ進化させることが重要だと述べられました。Internet of Things (IoT)からInternet of Functions (IoF)への進化が必要であるとしCPS(Cyber Physical System)からCyber & On-line Firstが重要だと強調されました。デジタル庁については、ミッションは、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化であり、ビジョンは、Government as a Serviceであり、Government as a Startupであると述べられました。そしてその実現には、オンライン性、相互接続性・相互運用性、グローバル性、構造化データ、ユニークID、ハードウェアとソフトウェアのアンバンドル、ゼロ・トラスト、エンドユーザによる利用経験・体験、オープン・ソース、災害対応性(オンプレとクラウドの連携、分散クラウド)の10項目が重要だと指摘されました。
 

〇 Keynote3「変革のプラットフォームとしての大学~東北大学のDX、仙台市×東北大学スーパーシティ」 
東北大学理事・副学長 青木 孝文 様
 出発点として、震災から10年、今なぜ仙台が熱いのかについて触れられ、社会と科学の接点が拡大し共創が加速し新段階へ入ったと指摘されました。仙台の強みは社会起業家の層の厚さにあり、「仙台市×東北大学スーパーシティ構想」の提案へ至ったと述べられました。次に、東北大学コネクテッドユニバーシティ戦略として、教育・研究・社会共創・大学経営の全方位でDXを加速的に推進している具体例を示されました。一例として、サイエンスパーク型研究開発拠点整備、すなわち、SPring-8やX線レーザー施設SACLAで開発された最新の加速器技術を用いた、SPring-8の100倍の輝度を実現する次世代放射光源設置計画について述べられました。また他の例として、東北メディカル・メガバンク計画について紹介されました。
 

〇Keynote4「デジタル庁 から 超デジタルへ」 
iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長 中村 伊知哉 様
 情報通信分野の行政官、大学教授での活動経験から、デジタル時代が始まって四半世紀、ようやくデジタルが国のトッププライオリティとなったが、私たちデジタル屋の悲願であったとし、時間がかかり過ぎたのは、デジタル屋に力がなかったからだと述べられました。コロナは、結果的に、抑えられているが、明らかになったのは、日本のデジタル敗戦で、オンラインできる国の手続きは7.5%しかなく、オンライン授業は5%しかできず、また、企業でも在宅勤務が可能な人の割合は、日本は主要国で最低水準だと指摘されました。また、OECD35カ国中、日本の平均賃金は24位で、平均より1万ドル低いのが現状で、30年前はアメリカに次いで2位だったがずっと横ばいだったと指摘されました。その原因は、医療教育行政と経営というのは、昭和の勝ち組であったことで、世界に冠たる日本の医療、世界に誇る日本の経営という、成功体験が、デジタルで根こそぎ変わることを拒んだとみると述べられました。システム障害が相次いだ金融機関の社長辞任ということが起こったが、金融は元来、情報事業・データ事業であり、AIとシステムさえあれば店舗も人も要らなくなることは20年前には見えていたのに、システムが経営の真ん中にいないという問題を指摘されました。デジタル化とDXは違うがデジタル化さえできていないというのが現状で、そこへ来たコロナで失ったものもあれば、得たものもあり、行政も民間もデジタル庁創設を契機に代わる必要があると述べられました。

〇パネルディスカッション
「デジタル庁の発足とBBTowerが果たすべき役割」として、以下のパネリストのメンバーで議論を展開しました。
パネリスト:デジタル庁/東京大学 江崎 浩 様、東北大学 青木 孝文 様/iU 中村 伊知哉 様/ブロードバンドタワー 樺澤 宏紀、モデレーター:株式会社MM総研代表取締役所長 関口 和一 様

〇閉会挨拶
株式会社ブロードバンドタワー 取締役執行役員 樋山 洋介

●まとめ
 2021年はデジタル庁発足という歴史的なDX元年ともいえる年となりました。当社グループにとって、11月の恒例となったBBEMですが、今年は、6人の外部からの有識者の方々を招聘し、有意義な議論ができたと思っております。以上にご紹介した議論の内容をしっかりと受け止め、当社グループは、DX時代における先導的な企業グループへと発展・成長させる使命感を強く持った次第であります。今後とも皆様のご指導・ご協力をお願いして、今月の社長コラムを終わらせて頂きます。

 

2021年11月30日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

 

 

 

ハイパースケール&エッジ・データセンター事業拡大へ向けての資本業務提携について

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~今後のデータセンター事業の大規模に伴う設備投資と運用事業の分離について~

 

 当社は、2021年12月21日開催の取締役会において、当社、Farallon Capital Management, L.L.C.及びその関係会社(以下「ファラロン」)が保有管理し、当社への出資及び当社との資本業務提携を行うことを目的として設立したFCJ 1 Co. Ltd.(以下「FCJ」)、株式会社キャピタリンク・パートナーズ(以下「CLP社」)及び株式会社インターネット総合研究所(以下IRI)の間での資本業務提携を行うこと、並びにFCJ、キャピタリンク2号有限責任事業組合(以下「CLLP」)及びIRIに対する第三者割当による新株式、並びにFCJ及びCLLPに対する第11回新株予約権の発行を決議しましたが、今回は、当社グループにとっての資本業務提携の背景、意義およびその目的について述べさせて頂きます。

 

1.背景

 当社は、2000年2月に日本初の専業インターネット・データセンターとして、私と孫正義氏との協議により、当時同分野で先行する米国企業アジアグローバルクロッシング社(米グローバルクロッシング社、米マイクロソフト社、ソフトバンク株式会社)89%とIRI11%との合弁企業であるグローバルセンター・ジャパン株式会社としてスタートしました。その後、ソフトバンクは、通信キャリア事業に注力されるとのことで、同事業は、IRIを筆頭株主として2002年に株式会社ブロードバンドタワー(以下BBTower)として再出発しヤフー株式会社のメインデータセンターとして成長し、2005年8月に株式を上場し、今日に至っております。

 その後、インターネット技術とモバイル通信技術の発展と共に、オンプレミス(コンピュータ資源の自社運用)からクラウドコンピューティング(コンピュータ資源のクラウドサービス事業者による運用)/エッジコンピューティング(利用者と物理的に近い場所に処理装置を分散配置しネットワークの端点でデータ処理を行うこと)への進化、PCからスマートフォンへの進化、4Gから5G/Beyond5Gへのモバイル通信インフラの進化に代表される「技術の変化」が起こりました。また、ESG/SDGsといった社会と企業の持続可能性を求める「社会の変化」が起こりました。

 当社は、インターネット・テクノロジーカンパニーとして、これらの「技術の変化」を先導する立場を維持するために新大手町データセンターを5Gデータセンターとして位置づけ、これまでのネット企業に加えて、AIや自動車関連企業との連携を行ってきました。また、持続可能性を求める「社会の変化」に対応するために新大手町データセンターの完全再生可能エネルギー利用への転換を行いました。

 この当社の事業規模としては大規模投資に当たる先行投資として約60億円の新規投資を行った新大手町データセンター・プロジェクトが軌道に乗り、昨年に引き続き当社グループの今期黒字決算の見通しをもって一つの節目を迎えた今こそが、次なる成長への一歩を踏み出すチャンスと捉えております。先の社長コラムでご報告させて頂いたように、去る11月22日と24日に開催した当社主催の当社顧客とパートナー企業向けシンポジウムのBBEM(BBTower Business Exchange Meeting、デジタル庁とDXに関わる社内外の専門家が登壇)で明らかになったように、遅れていた日本のデジタル化が2025年(デジタル庁の主導する行政システムのDXの完成)、2030年(今後の民間DX市場の4倍成長)へ向けて大きく動き始めました。この日本社会全体のDX市場の成長期を先導するために当社は、「DataセンターカンパニーからDXセンターカンパニーへの転換」を掲げることと致しました。

 市場環境としては、日本のDX市場でクラウドコンピューティング領域でさらにシェアを拡大するとみられる、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)向けのハイパースケールデータセンター*のニーズが益々高まっていくものと予想されます。また、エッジコンピューティング領域での地域DXセンターのニーズが新たに生まれることが予想されます。

 

*ハイパースケールデータセンター:サーバー室面積5000㎡以上かつ電力供給量が6kVA/ラック以上で、テナントがクラウドサービス事業者であるような事業者データセンターで、調査会社IDCによると、2020年~2025年の年間平均成長率は、延床面積ベースで28.8%になる見通しで、消費電力も増加するため、電力キャパシティベースでの年間平均成長率は面積ベースよりも高い37.2%になると予測されています。

 近年、世界的にハイパースケールデータセンターの開設は続いており、図1に示すように、2021年1月の調査会社Synergy Research Groupの発表によれば、2020年に全世界のハイパースケールデータセンターの総施設数は597に達し2015年における同水準の約2.3倍となっています。地域的分布としては、米国がその市場成長を牽引し2020年時点で全世界の39%を占めていますが、近年アジアにも波及し10%が中国、そして6%が日本となっています。

 

図1. 世界のハイパースケールデータセンター総数

 

2.意義
 今回の資本業務提携先のファラロン・キャピタル・マネジメント、L.L.Cは、アメリカの投資会社で、1986年に数多くの投資実績を誇り、慈善活動家であり環境保護指向のトム・ステイヤー氏によって設立されました。カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置き、世界8カ国で約230名のプロフェッショナルを雇用しています。同社を選択した理由は、主な出資者はイエール大学などの大学基金、財団であることから、投資姿勢として品格が高く、長期保有かつ社会課題解決型の投資方針を打ち出していることと、豊富な資金を保有していることにあります。
 次に、同社との資本業務提携の意義として以下の2つをあげることができます。
 第1に、同社の米国における過去の投資実績やそこで培われたテック系企業とのコネクション等から、今後日本において活性化するハイパースケールデータセンター市場で、米国企業の顧客獲得に優位性を期待できることです。
 第2に、同社の豊富な資金力や米国でのコネクションを核にして、データセンター投資に関心のある資本パートナーを数多く募り、多額の資金を調達してハイパースケールデータセンターを建設し、BBTowerが各データセンターの設計・構築・運用といった技術を提供することです。例えば、プロジェクト毎にSPC*を設立し、各プロジェクトに参加した資本パートナーと共にハイパースケールデータセンターを建設する等、多種多様なファイナンスストラクチャーとBBTowerが20年以上蓄積してきたデータセンターに関するノウハウを組み合わせて新たな事業を創出していきたいと考えています。このことで、大規模データセンターの建設を加速化させると共に、BBTowerにとっては、より一層アセットライトな事業モデル(資産保有を必要最小限にして減価償却費などの固定費を抑える)にシフトして、テクノロジー事業の収益性を追求することができるようになります。

*SPC: Special Purpose Company、「特別目的会社」、企業が不動産など特定の資産を企業内部から切り離し、その特定の資産やプロジェクトのためだけに作られる会社で、日本では1998年に成立したSPC法(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律)で、SPCを設立できるようになりました。
 

3.目的
  BBTowerは、冒頭に述べさせて頂いたように、インターネット・テクノロジーカンパニーとして、データセンター内にIX(インターネット・エクスチェンジ、インターネット接続事業者間のトラフィック交換拠点)を有するため、「ネットワークトラフィック」について、上位に位置するデータセンター運用を行っています。しかしながら、延床面積については、メインフレーム時代からの伝統を有するアウトソーシングセンターが上位に位置し、中堅クラスです。今回の資本業務提携の目的は、「ネットワークトラフィック」という「質」を強みとすると共に、本格的なDX時代の到来が間近に迫る中で、旧態依然とした情報システムのアウトソーシングセンターと世代交代の拠点となり、図2に示すように国内でも急成長する、ハイパースケールデータセンター市場において、「延床面積」という「量」の競争においても上位に立つことを第1の目的としております。調査会社のインプレス総合研究所は、日本市場においても、ラック数ベースで2024年には伸張著しいハイパースケールデータセンター型が成熟化するリテール型を累積ラック数で逆転すると予測しています。
 

(出典:IDC Japan)
図2.国内ハイパースケールデータセンター 延床面積予測:2019年~2025年

 

 次に、当社の属するデータセンター業界に対しては、デジタル化があらゆる方面で急速に進行する我が国においてもその基盤を担う役割として期待は高まっており、本年6月に発表された政府の「成長戦略実行計画」においても、データ保護や災害に対する強靭性を高め、指数関数的に増大するデータトラフィックを分散し、自動運転等Society 5.0で必要となる低遅延なシステムを実現するための「次世代データセンターの最適配置の推進」が盛り込まれております。当社でも、このような事業環境の変化を機会と捉え、既存の当社の主力事業である都市型データセンターやハイパースケールデータセンターだけではなく、顧客用途毎に要求されるデータ伝送時間を意味するRTT(Round-Trip Time)に応じて、分散型の地域データセンターやエッジ型データセンター、すなわち地域DXセンター、エッジDXセンターの構築・運用に新たに取り組むことを第2の目的としております。

 

2021年12月21日

代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

「APEV:国際学生“社会的EV”デザインコンテスト2022」が始動しました!

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~電気自動車による新たなモビリティ社会デザインコンテストの審査委員長に就任~

 

 2022年1月24日に一般社団法人 電気自動車普及協会(APEV)(https://www.apev.jp/)主催の「国際学生“社会的EV”デザインコンテスト2022」の記者発表会を行いましたので、今回はその話題を提供させて頂きます。同協会は、来るべき低炭素社会を先導するために2010年6月29日に創立され、私は、当初から理事を務めさせて頂いております。当時は、EV(電気自動車)はまだまだ先の未来の話だと受け止められていましたが、その後、日本の自動車会社が加入し、今日に至っています。同協会の創立に関わったことで自動車業界とのパイプ作りができ、CASE時代における当社の事業拡大にも大きくにも役立っております。

 APEVは2013年から2019年まで計4回、東京モーターショーの開催時期に合わせ2年毎に「国際学生EVデザインコンテスト」を実施してきましたが、世界に蔓延しているCOVID-19への対応として、2021年は中止し、2022年に大幅にリニューアルした第5回を開催することとなり、このたび、その記者発表会が以下のようにオンラインで開催されました。私は、以下の審査委員メンバーで構成される「国際学生“社会的EV”デザインコンテスト2022」審査委員会の委員長を務めることになりましたので、記念講演をさせて頂きました。

 

■審査委員会メンバー

◎審査委員長:藤原洋:APEV 理事、株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO、株式会社インターネット総合研究所代表取締役

◎審査委員:(敬称略、50音順)

安藤忠雄:建築家、東京大学特別栄誉教授

井原慶子:Future株式会社CEO、カーレーサー、日産自動車株式会社 独立社外取締役

ジャン・ファン:広州自動車グループデザイン担当副社長

竹岡圭:モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会副会長

松本博子:女子美術大学理事副学長研究所長芸術学部デザイン・工芸学科教授

パトリック・ルケモン:デザイナー、元ルノーデザイン担当副社長

脇田玲:アーティスト、慶應義塾大学環境情報学部教授

田嶋伸博:APEV代表理事、株式会社タジマモーターコーポレーション代表取締役会長兼社長/CEO

 

 

★日時:2022年1月20日(木)14時~16時

★参加者:報道関係者、学校関係者、協賛社、APEV会員

★Microsoft Teamsによるオンライン会議

1)開会挨拶:鈴木正徳APEV会長(元経済産業省製造局長)

2)APEV及びデザインコンテスト2022の説明:

事務局長荒木恵理子APEV理事、実行委員長山下敏男APEV理事

3)講演「モビリティ×ITの観点から見た2040年の社会デザイン【創造】」

審査委員長藤原洋APEV理事

4)パネルディスカッション

「モビリティ×ITの観点から見た2040年の社会デザインと人材育成」

登壇者:協賛4社(MONET Technologies、Dell Technologies、日本IBM、日野自動車)+藤原洋(司会:山下敏男)

5)閉会挨拶:田嶋伸博APEV代表理事

 

■鈴木正徳会長挨拶抜粋

 昨年6月に会長に就任し、「未来の子供たちのために、美しい地球を残したい」という福武總一郎名誉会長の理念のもと、活動しています。2010年には経産省のEV担当としてクリーンエネルギー自動車の普及に関わりました。COP26で確認された合意に基づき、「1.5℃目標」達成に向けて、あらゆるステークホルダーの益々の努力が求められています。国際ルール面でも検討が進んでおり、今年プライム市場で求められるTCFDガイダンスでは、自動車会社について、Well-to-Wheel、燃料を製造し、車に搭載し、使用するところまでをCO2排出の情報開示として推奨しています。自動車業界も100年に一度の大変革期を迎えて、ビジネスモデルの革命が求められています。今回で第5回目を迎えるデザインコンテストは、大きく変わる自動車産業の方向性を鑑み、これまでのEVのデザインをメインとしたコンセプトを大幅に変え、「2040年の社会デザインをメインとした中でのEVの役割・デザイン・ユーザビリテイ」を考えるコンテストとしました。また、作品を集め、評価するだけではなく、ワークショップの開催を伴い、中長期的な視点で大きく変貌する時代を担う人材育成を行いたいと考えています。

 

■APEV及びデザインコンテスト2022の説明

 事務局長 荒木 恵理子及び実行委員長 山下 敏男が資料により下記項目を説明し、その後参加者との質疑応答を行いました。

 APEV紹介、社会的EVデザインとして融合型人材「アーキテクト」の素養と融合型人材「アーキテクト」の役割について説明があり、コンテストの内容と全体日程についての説明がありました。

 

■講演「モビリティ×ITの観点から見た2040年の社会デザイン【創造】」

 私は、首記テーマで、審査委員長として以下の講演を行いました。以下にプレゼンテーション資料からの抜粋を示します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■パネルディスカッション 「モビリティ×ITの観点から見た2040年の社会デザインと人材育成」

デル・テクノロジーズ株式会社クライアント・ソリューションズ統括本部 アウトサイドスペシャリスト部長 中島 章様・日本アイ・ビー・エム株式会社Business Transformation Consultant,IBM Client Engineering 中山 透様・日野自動車株式会社中長期商品戦略部 商品戦略G小野 翔吾様・MONET Technologies株式会社事業本部 事業企画部 担当部長 鈴木 彩子様、審査委員長 藤原 洋、司会:実行委員長 山下 敏男

以上の登壇者の方々が下記の内容でプレゼンテーションとコメントを述べ、最後に参加する学生さんへの期待を述べました。

1. 各協賛企業様による事業目的や取り組まれている課題及び協賛に向けての思い

2. 2040年の社会デザインに不可欠なものは?

3. 2040年をリードする人材・教育に関する期待・課題

 

■閉会挨拶:田嶋 伸博 APEV代表理事

 2010年にベネッセホールディングスの福武總一郎現名誉顧問と、地球温暖化防止にはEVの普及が必要という思いで当協会を立ち上げた。昨今は世界的にEVが本格的に普及し、当初の目的は達成されつつあります。 これからはCASEやMaaSに代表されるように社会とのつながりが重要になっています。そのような状況の中で今日は藤原理事からITを軸にした先進的なお話や協賛企業様から取り組みの発表がありました。今回コンテストを大幅リニューアルし「社会的EV」を提案してもらう事になった趣旨をご理解いただき、報道をお願いします。協賛企業様と学生さんの参加をお待ちしています。

 

【コンテスト概要】

■名称:国際学生“社会的EV”デザインコンテスト2022

【社会的EVとは】『EV即ちモビリティが社会との関わり方の中で、パブリック/パーソナル双方に対し進化・貢献すること』を本コンテストでは社会的EVと定義する。

■目的:社会デザインとEVの可能性の研究を通して、次世代を担う融合型人材を育成

当コンテストは融合型の人材をアーキテクトと呼び、このアーキテクトの育成こそが本コンテストの目玉である。アーキテクトは、クルマを取り巻く専門職に留まらず、デザインやエンジニアリングの範疇を超え、ビジョンと洞察力を有する人材を指す。

■課題:“社会デザインとEV”2040の提案

■応募要項:

1)2022年4月時点で18歳以上の学生(1名もしくはチームも可)

2)エントリー費:無料

3)学校をまたがるチーム編成も可(学校をまたがるチームを作りたい場合は主催者が相談に乗る)

4)参加者は主催者が指定するSNSに登録し、各種案内にタイムリーに回答できる

5)作品は英語を基本とする(母国語を併記することは可)

6)15歳〜17歳のオブザーバー参加も合わせて募集。尚、オブザーバーは「コンテストSNS、ワークショップ、最終審査&表彰式」に参加し関係者とコミュニケーションを行うことが出来る。

 

■審査基準:

1.オリジナリティ:独自の社会背景の考察が高いレベルであり、かつ提案されるアイデアやストーリーが独創的で魅力的であること

A)社会課題の考察が的確かつリアリティがある事

B)解決策のコンセプト・新しい技術やストーリーそしてビジョンが明快であること

2.デザイン:時代性・社会性を反映し魅力的であり、且つ実現の可能性を秘めていること

3.プレゼンテーション力:プレゼンテーションの表現力、説得力が高い

*応募者自身のオリジナル作品で、国内外で未発表であること

 

■体制:

◎主催:一般社団法人電気自動車普及協会(APEV)

◎後援:環境省、経済産業省、国土交通省、公益社団法人自動車技術会、東京大学大学院情報学環、東京都、一般社団法人日本自動車工業会(申請中50音順)

◎協賛:

・1次協賛:(50音順)  カーデザインアカデミー(ブランド名)  CCCマーケティング(株)  デル・テクノロジーズ(株)  日本アイ・ビー・エム(株)  日野自動車(株)  (株)ベネッセホールディングス  MONET Technologies(株)  (株)ワコム

・2次協賛:募集中(〆切7月末)

 

■授賞:

◎最優秀賞副賞20万円+賞状

◎経済産業大臣賞、国土交通大臣賞(副賞各10万円)+賞状

◎協賛団体賞:協賛団体から提供される物品等+賞状

 

■組織:

EVデザインコンテスト実行委員会

◎委員長:山下敏男APEV理事、INTERROBANG DESIGN株式会社代表、首都大学東京客員教授)

◎副委員長:有馬仁志APEV理事、有馬マネジメントデザイン株式会社代表取締役社長、横浜スマートコミュニティ代表

◎事務局:一般社団法人電気自動車普及協会(APEV)

 

■概略日程:

2022年1月20日:記者発表会@オンライン

2022年2月初旬:エントリー開始

2022年3月下旬:プレワークショップ開催

2022年5月上旬: エントリー締切

2022年6月上旬: 一次作品提出締切

2022年6月下旬: 一次審査結果発表

2022年7月上旬: ワークショップⅠ開催

2022年8月上旬: 二次作品提出締切

2022年8月下旬: 二次審査結果発表

2022年9月下旬: ワークショップⅡ開催

2022年10月下旬: 最終審査&表彰式及び APEV シンポジウム開催*

*東京モーターショー(2022年は開催せず)に代わりCEATEC2022と連携を行う

 

●おわりに

 今回、自動車業界のEV化、デジタル化が一気に進む気配が出てきました。2010年の創立から関わってきた電気自動車普及協会において、カーデザインではなく、社会システムデザインを、今回、私からメインスポンサーをお願いした、MONET Technologies社(ソフトバンクとトヨタ自動車の合弁企業としてスタートし、ほぼ日本の全自動車会社が参加)と連携して本プロジェクトを推進してまいります。今後、MaaS(Mobility as a service)、コネクテッドカー、自動運転などの分野でもビジネスチャンスを見つけていきたいと考えております。

 

2022年1月26日

代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

『一般社団法人デジタル田園都市国家構想応援団(デジ田応援団)』の設立について

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 2022年2月18日に、新たに一般社団法人デジタル田園都市国家構想応援団(デジ田応援団)が設立され、コロナ禍の中、リアル参加は45名までとし、オンラインで250名以上の方々が参加されました。このたび、私はこのデジ田応援団の代表幹事に選出され、以下に当日のプログラムと私が最初に行ったスピーチの内容を示します。

 

 最後に本社団法人の活動の中心となる「活動会員」の代表者である運営委員会理事の皆さんの決意表明が述べられましたが、皆さんは各々の立場で、地方創生に情熱をお持ちの皆さんです。これからも多くの企業経営者、研究者、自治体の皆さんが集い地方から日本経済に活力に満ちたムーブメントを起こしていきたいと考えております。

 

●設立総会&記念セミナープログラム

・期日  2022年2月18日(金) 16:30~19:00

・場所  衆議院第1議員会館 国際会議室 + オンライン

・次第 司会 同社団法人専務理事 岡田 大士郎 株式会社HLD Lab 代表取締役
 16時30分「一般社団法人デジタル田園都市国家構想応援団」設立にあたって
 同社団法人代表理事 藤原  洋 株式会社ブロードバンドタワー代表取締役
 16時45分  設立議事進行 常務理事(事務局長) 濱崎真一  東武トップツアーズ株式会社取締役

 17時00分 牧島かれん デジタル担当大臣ビデオメッセージ
 17時00分 応援団長挨拶 KONISHIKI(元大関・小錦)
 17時20分 基調講演 若宮健嗣 デジタル田園都市国家構想担当大臣

 17時30分 パネルディスカッション 

 パネリスト 内田幸雄 内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局審議官

 藤原 洋 代表理事 

 KONISHIKI 応援団長 

 モデレータ 岡田 大士郎 専務理事

 18時~19時:運営委員理事全員からの挨拶

 

●代表理事として、以下のような設立にあたってのスピーチを行いました。

 日本政府が進める『デジタル田園都市国家構想』とは、「地方の豊かさをそのままに、利便性と魅力を備えた新たな地方像、産官学民の連携の下、地方が抱える課題を、デジタル実装を通じて解決し、誰一人取り残さず全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らし、地域の個性を活かした地方活性化をはかり、地方から国全体へのボトムアップの成長や科学的エビデンスに基づく政策、経営等を実現する持続可能な経済社会を目指して、以下の4つのことを骨子としています。

(1)デジタル基盤の整備

(2)デジタル人材の育成・確保

(3)地方の課題を解決するためのデジタル実装

(4)誰一人取り残されないための取組を行う施策を進める

 

 今回設立される、「デジ田応援団」とは、この国家構想の実現を目指して、官民有志が集い、ポストコロナの全く新しい世界像を提示し、日々働き、学び、暮らす生活や地域からデジタルの実装を進め、利便性を高め、魅力を発信することで、地方と都市の格差を縮めていき、世界とつながる新たな変革の波を起こす具体的なアクションにむけて、産官学民各界の方々との意見交換や交流・共創をするために設立された、民間企業、非営利法人、自治体、個人の会員から成る、非営利の一般社団法人です。

 「デジ田応援団」は、当社団法人にパートナー参加し『デジタル田園都市国家構想』を実現しようとする自治体に対して、会員が「デジ田官民連携」活動によって支援します。

 「デジ田官民連携」活動とは、「デジ田応援団」の活動のことで、具体的には、以下の活動を行います。

1.会員向けに、「デジタル田園都市国家構想」への取り組み、活動状況、関連連絡先を、「デジ田応援団」ホームページとSNSによって発信します。

2.会員間の相互交流を推進します。

3.活動を担う主体は、国家構想を実現するという共通の目的の下に集まる「人間力」と「技術力」を持つ「活動会員」によって適宜構成される複数の「デジ田応援事業チーム」です。

4.「デジ田応援団」は、連携を取りつつ個々に活動する「デジ田応援事業チーム」の集合体で、若宮大臣の言葉を借りれば、各地・各社の「点」の事業を「面」にして、世界につながる持続可能な事業として経済社会に貢献するものです。

5.「デジ田応援事業チーム」は、「デジ田応援団」の一員として、地域課題やビジョンを共有する複数の自治体パートナー会員、あるいは住民である個人・法人会員の要望に対応するために、組成されます。そして、ある期間、ある地域のために、地域資源を活かし、デジタル技術を駆使し、地域における革新を生み、利便性に富み、福祉を向上させ、地域社会における自治体と自治体を構成する法人と個人による事業の持続可能性を確保するためのあらゆる活動を行います。

 

 以上のように、「デジ田応援団」は、地域おこしをする人(個人・法人)を応援するために、「人間力」、「技術力」をもつ「活動会員」が集う地域内外産官学民の共助コミュニティです。

 このような共助コミュニティとして、「民間企業、非営利法人、自治体、個人の会員」それぞれのメリットを引き出すために、広域法人会員を通じて、内閣官房・関係各省に働きかけることで、全国・世界から、点ではなく面の情報・人財、資金・設備等の資源(resource)を集めることで、「デジ田」実現による地方創生を通じて、SDGs/Society5.0に貢献したいと考えております。その実行過程において、以下のような成果が生まれることを確信しております。

 

・会員企業の皆さんを例に取ると、「顧客体験(CX)」と「従業員体験(EX)」の向上がもたらされ、企業が追求する「利潤」を超えた企業価値向上を実現できます。

・地場法人会員や地域・関係個人会員は、地域資源xデジタルで革新を生む多様な人・知・財と共に、暮らしと仕事・事業の持続可能性と地域課題解決によって、地域の魅力の向上を実現できます。

・地域・関係自治体等パートナー会員は、公募前に、地域の利便性、豊かさや魅力、福祉を向上させる事業を、官民共創できる多様な人・知・財を得ることで、政策決定できることとなります。

 

 これは、私の個人的な意見ですが、「活動会員」は、地域おこしに「情熱を燃やす人々」で、地域にとっては、「よそ者」であり「若者」であり、「ばか者(いい意味でのCrazy Guy)」であることが、功を奏することが多々あることと思っています。このような「デジ田応援団」にお集まり頂いた「情熱を燃やす人々」の力を合わせて、SDGsの精神に基づき、自治体の皆さんには便利で住みたい地域にして頂き、企業や個人事業主の皆さんは儲かる地域にして頂きたいと思います。

 

●おわりに

 失われた平成の30年間の日本において、首都圏一極集中とデジタル化の遅れが顕在化し、日本の国際競争力は大きく低下しました。令和の時代を迎え、2021年にはデジタル庁が新たに設置され、日本政府のデジタル変革の司令塔ができたことは歓迎すべきことだと思います。次なる日本の社会課題の解決は、首都圏一極集中の解消による日本全域における経済の活性化であると考えております。そのために、今回新たに創設された「一般社団法人デジタル田園都市国家構想応援団」(デジ田応援団)の活動を通じて、私の会社を含む、多くのビジョンを共有する皆さんと共に、地域からの日本経済の活性化に取り組んでいく所存であります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年2月24日

代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

電力需給の逼迫とデータセンター運営について

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 日本政府は、去る3月21日夜、東京電力管内の電力需給が翌日の22日に非常に厳しく逼迫するとして、「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」を初めて発出しました。これは、22日朝から節電に協力するよう企業や家庭に呼びかけるものでした。

●地震による火力発電所への影響
 そもそも、3月16日に福島県沖を震源とした地震によって、一部の火力発電所が停止したことに起因します。当地震は、昨年(2021年)2月13日の地震とほぼ同じ位置、規模で起きましたが、宮城県で震度6強・6弱を観測する所が多く、若干大きな津波も観測されました。気象庁や防災科学技術研究所が地震波を、また、国土地理院が地殻変動を解析した結果によると、昨年2月の震源断層は南側、今回は北側に広がっていました。断層が生じて滑り始めた地点は近くても、滑りが進む方向が反対だったため、今回は北方が強く揺れ、マグニチュード(M)も、昨年の7.3より少し大きく7.4と報告されました。
 当地震の仕組みは、図1に示すように、東北沖の日本海溝では陸側プレートの下に海側プレートが沈み込み続けていますが、摩擦のため、スムーズに動かず、固着している所があり、ひずみが蓄積されます。2011年の東日本大震災を引き起こしたM9地震は、プレート同士の境界が広い領域で面的に一気に滑って起きたものです。昨年と今回の福島県沖地震は、東日本大震災と異なり、頻発するもので、東日本大震災が発生した境界より深い所で、海側プレート内部で押す力が働き、上下にずれるように滑る「逆断層」が生じたものです。

 

図1.福島沖地震(2022年3月16日)の仕組み(気象庁)

 

 気象庁は、東日本大震災後、東北・関東の沿岸や沖合で続発した大きめの地震を余震と発表してきましたが、10年経過した際に余震と呼ぶのをやめました。日本海溝沿いでは震災前からM7以上の地震が時々発生してきた経緯があり、区別できないためです。しかし、M9の大震災時の地震のエネルギーは極めて大きく、影響は続いていると考えられています。
 昨年の福島県沖地震後は、昨年3月20日と5月1日に宮城県沖のプレート境界を震源とする最大震度5強の地震が相次いだと報告されており、政府の地震調査委員会レポートによると、「今後も強い揺れや津波に備えてほしい」とされています。このように東北・関東に代表されるプレート境界型地震は、日本全体で頻発するものと予想されるため、火力発電所をはじめとする発電所の停止は、かなりの頻度で発生するものと想定されます。

●「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」に関わる電力需給状態
 去る3月21日の「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」の発出は、気温の低下が重なり暖房需要の増加が見込まれるためでした。今回の警報制度は、東日本大震災後の2012年につくられたもので、震災後に実施した計画停電の手前の措置として位置づけられています。実際には、電力需要に対する供給余力が3%を下回る見通しになった際に発出することとされています。同警報の発出は、当時見込まれる電力需要に対し、他の電力会社から電力の融通を受けたとしても、必要な供給力を確保できない見通しだったためでした。当日の状況はさらに厳しくなり、節電要請は午前8時から午後11時までで、1都8県の企業や家庭を対象に電力需要の10%程度の節電を求めたものでした。
 供給力不足は、東京電力と中部電力が出資する発電会社「JERA」の広野火力発電所(福島県広野町)6号機など火力発電所6基が復旧していないことに起因しています。また、3月22日は悪天候が重なり、太陽光発電所の発電量も低下しました。
 3月21日夜、説明会を実施した経済産業省によると、11年の東日本大震災後に計画停電を実施したとき以来の厳しい状況に陥ったとのことで、電力の需要と供給のバランスが崩れると、大規模な停電を引き起こす可能性があると説明しました。
 東電は電力の使用量が多い工場設備などを保有する一部企業に対し、すでに個別に節電の要請を始めました。家庭に対しては不要な照明を消し、暖房温度を20度に設定するなどの対策を呼びかけました。


 まとめると、警報の発出は、火力発電所の停止に加え、気温が想定を超えて低下する見通しになったためで、東京電力によると、3月21日午後に最新の気象予測を加味して計算した結果、電力需給が想定以上に厳しくなると予想されためとのことでした。気象庁の発表によると、22日には関東の上空約1500メートルに零下3度以下の寒気が流れ込む影響で、東京の日中の最高気温は5度と予想され、一日中冷え込むこととなると共に、22日朝には関東の南東の海上で低気圧が発生し、東京都心でも降雪がありました。3月22日の実績を図2に示します。

 

図2.(2022年)3月22日時点での電力の需給状態(東京電力)

 

●データセンターの停電対策
 データセンターは、24時間365日稼働することが求められるために、電力会社からの給電が停止した(停電)時には、最初にUPS(Uninterruptible Power Supply、蓄電池で構成)が動作し、約30分のコンピュータ機器の稼働を保証します。UPSがないと、電圧低下・瞬時停電・電圧変動などのさまざまな電源障害が起こり、ハードウェア損傷、データ損失・ファイル破壊などを引き起こし、これらのシステム障害の復旧には膨大な時間と費用を要することとなってしまいます。また、データセンターは、LAN・インターネットなど様々な情報通信機器が導入されており、インターネットと接続されるネットワーク全体のアベイラビリティが重要です。電源異常により、ネットワークシステムが停止すると、物的損害だけでなく、ビジネス機会の損失や信用の失墜など、より大きな問題へと発展するリスクがあるため、UPSは欠かせないものであると言えます。


 次にUPSからの電力供給に続いて、非常用発電機が始動します。通常非常用発電機としては、ガスタービン発電機やディーゼル発電機を利用し、約72時間の連続稼働を保証し、それ以上の連続稼働には燃料の補給体制を確保することとします。また、燃料補給が途絶えるなど72時間以上の燃料補給体制をとることが困難な場合に対応するには、地理的に離れた場所でのDR(ディザスターリカバリー)用データセンターを確保し、常にデータの遠隔保管を準備する対策を行うことが必要となってきます。
 

図3.データセンターの停電対策(JDCC日本データセンター協会)

 

●おわりに
 去る3月21日から3月23日にかけて東京で「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」が、初めて発出されました。その理由は、災害大国の日本らしい3月16日の福島沖での地震による火力発電所6基の停止が原因でした。このような地震は、かなりの頻度で発生するものと想定されます。幸運なことに、当社データセンターへの電力供給の停止はなかったのですが、東京でも何か所かで停電が発生しました。今回の警報を契機に、当社のデータセンターでは停電時でも24時間365日にわたる連続稼働の達成体制の確認を行いました。また、今後は、DR用データセンターの検討を行っていきたいと考えております。


2022年3月31日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 

ジャパンケーブルキャスト(JCC)と沖縄ケーブルネットワーク(OCN)のデモへ若宮大臣が来訪

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~地域DXの担い手となることを目指して~


 若宮健嗣 デジタル田園都市国家構想担当大臣・内閣府視察団のご一行が、ブロードバンドタワーグループ(当社グループ)の浦添市のローカル5G実証実験場であるHOTEL HAABESU OKINAWAを訪問され、当社グループのJCCとその子会社のOCNの両社のデモを見学され、プレゼンテーションを視聴されました。
 以下、写真の中央右が、若宮大臣、左が私、右が大熊OCN社長/JCC取締役、左端が浦添市の複数の公園のコミュニティ創生計画を担っている廣常株式会社新産業創出研究所代表です。


 

 樺澤 当社取締役/OCN取締役の総合司会の下、プレゼンターションを行いました。私からは、以下の資料に基づき、デジタル田園都市国家構想の実現へ向けて本日の取り組みの総括を行いました。■浦添市ローカル5Gを活用した災害時におけるテレビ放送の応急復旧■浦添市公園まちづくり(パークマネジメント)の取組みについて今回プレゼンテーションを行うこと、今後の展開として、①大阪・関西万博へ向けての地域/グローバルメタバース、②Digi田甲子園(デジタル田園都市国家構想を盛り上げること、について述べさせて頂きました。

 

 

 OCN大熊社長からは、以下の写真にあるように、総務省からの受託により、ローカル5Gの実証実験デモを行いました。これは、台風被害の多い沖縄の特殊事情を想定し、ケーブルテレビの引き込み線などが動作不能になった時に、ローカル5Gのワイヤレスアクセス網を経由してバックアップする仕組みを提供しました。

 

 

 今井JCC執行役員と徳永JCCイノベーション推進室長からは、北海道におけるハイブリッドキャストを用いたIP告知システムによる情報提供の仕組みについてプレゼンテーションとデモを行いました。

 

 

 特に、若宮大臣は、以下の写真に示すように、ケーブルテレビ+ローカル5Gを通じたテレビリモコンによるテレビEコマースを実体験され、テレビリモコンによる操作は、特に高齢者の皆さんなどには素晴らしい操作性だと絶賛されました。

 

 

●おわりに

 今回の沖縄出張は、去る4月16日の若宮大臣と内閣府の皆さんの視察団の対応が主目的でしたが、岸田政権の成長戦略の最重要な役割を担うデジタル田園都市国家構想実現へ向けて大きな一歩を踏み出せたと思いました。その他にも沖縄県以外の自治体の皆さんに来て頂くなど多くの方々と触れ合う機会があり、実り多き久々の沖縄出張でした。


2022年4月27日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

 


東北電力女川原子力発電所を訪ねて

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~エネルギー危機の中で13mの津波が襲っても安全に停止した女川発電所の存在意義~

 

 当社は、これまで、主として、インターネット上でのポータルサイトを運用するインターネット・コンテンツ提供事業者向けに東京と大阪の都心型データセンターを運用してきました。今後は、社会のDX(デジタル変革)の進行に沿って、大規模化(ハイパースケールデータセンター)、地域分散(地域DXセンター)の開設を検討しているところです。

 

 このような状況の中で、東北大学x仙台市のスーパーシティ・プロジェクトのアーキテクトを拝命したことから、東北大学参与、仙台市CDO補佐官への就任を依頼され、当社の将来展望を見据えて東北地域をケーススタディとして調査検討を進めるために引き受けさせて頂きました。この度、仙台市のプロジェクトでご一緒させて頂いている東北電力の皆さんとの間で、信頼性、安全性の面で共通点の多いデータセンターと電力供給というそれぞれの立場から、情報交換を始めたところです。

 

 そこで、地政学上の激しい変化と共にエネルギー危機に直面しつつある中で、私の知る限り、卓越した災害への対応体制を確立され、規模的には、電力会社の中で、全国最大のサービス地域(東北全県と新潟県)を担われている東北電力が、東日本では初めて、2024年の再稼動を計画されている女川原子力発電所を見学させて頂きました。今回は、そのことについて述べてみたいと思います。

 

 

 2011年3月11日14:46に東日本大震災が日本を襲いました。その後、遅れてやってきた大津波の影響で東京電力福島第一原子力発電所の周辺は未だに復興と程遠い状況にあります。でも東北電力女川原子力発電所は安全に停止し、現在も安全に再稼動を待っている状況にあります。

 

 早期の復興を遂げた理由は、東北電力と東京電力の津波に対する備えの違いがありました。個人的な体験で恐縮ですが、私は、20代の後半に原子力発電所の通信制御装置(制御棒制御装置、制御棒位置指示装置、計測制御信号の多重伝送装置)の設計と構内情報通信システム(LAN)の設計を行っていましたので、福島と女川の何処が違うのかに大変興味を持っていました。

 

 今回、大変詳しく、プレゼンテーションをして頂くと共に、放射線線量計を身に着けて、3号機の原子炉建屋とタービン建屋の内部を見学させて頂きました、これらを通じて私が感じたことを以下に述べさせて頂きます。

 

 

 地球物理学者と土木工学者による電力会社の経営層への提言は、869年の貞観地震の文献や記録によると10mをはるかに超える津波がやってくることに備えるべきというものでした。これは、プレートテクトニクス理論に基づき太平洋プレートが日本列島付近で沈み込む時に溜まる歪みエネルギーが約1000年の時を経て、放出されたことになります。

 

 東北電力女川原子力発電所のプレゼンテーションによると、3回にわたって東北電力の経営陣は科学者、技術者の提言に耳を傾け、想定される津波の高さに修正を加えました。設置場所を14.8mとし、最初の想定津波高さは、3mでしたが、次のシミュレーション検討の結果、9.1m、さらなるシミュレーションの結果13.6mと設定することとしたとのことです。そして2011年3月11日14:46東日本大震災が起こりました。

 

 この地震によって、牡鹿半島全体が1m地盤沈下しました。その結果、女川発電所の海抜は13.8mになってしまいました。その後、大津波が襲いましたが、津波高さは、13mだったため、地震で原子炉は停止しましたが、非常用電源は正常に始動し、原子炉の冷却は安定的に実行されました。

 

 一方、当時の東京電力福島第1原子力発電所では、標高0mに発電設備が設置されると共に地震による停電時に作動する安全保護系用の非常用発電機は地下に装備されていました。また、津波に対しては、高さ5.7mの防潮堤で十分だと判断されていました。これは、科学者と技術者の提言が反映されず、1150年前の地震は当分来ないという経営判断に基づくものでした。結果的には、15mの津波に襲われ、地震の揺れには耐えましたが、非常用電源は、水没して稼働しませんでした。地震の揺れで外部系統電源が停電したため、原子炉の緊急停止後、通常運転の再循環系ではなく、安全保護系のポンプを非常用電源によって冷却し続ける必要がありますが、水没のため冷却できずに空焚き状態となりメルトダウン(炉心溶融)が3つの原子炉で発生し、原子炉建屋が水素爆発を起こし、大量の放射性物質が放出される大事故になってしまいました。

 

 また、今回感じたのは、東北電力の姿勢の素晴らしさは、科学技術への敬意だけではなく、地域社会への寄り添う姿勢でした。壊滅的な停電状況から3日で80%の世帯を復旧、3カ月で全エリアを復旧させました。また、前例にとらわれず、発電所内体育館を住民避難所として提供、医療機関の電気系統確保に尽力されたことなどもその姿勢を示すものです。結果として、以下のような地域社会に対する貢献があったと思われます。

 

●世界三大漁場の1つを守ったこと

 女川原子力発電所のある地域は、三陸金華山沖と近く、ここはノルウェー沖、カナダニューファンドランド島沖と並ぶ世界三大漁場のうちの1つなのですが、この世界的な水産業の拠点を汚染させずに守ったことは、極めて重要な意義があります。

 

●東日本大震災の最大被害地域に寄り添ったこと

 東日本大震災における全犠牲者の方々約18000人中、宮城県では10000人超で、岩手約5800人、福島約1800人をはるかに超え、大災害地域でした。その中での女川町は、犠牲者比率が8.68%と県平均の0.46%をはるかに超える大災害地区でした。次に南三陸町4.77%、山元町4.29%、東松島市2.68%、石巻市2.47%となっています。そんな大災害地域にあった原子力発電所が安全に停止し、また、発電所設備を避難所として提供していたのでした。

 

●おわりに

 今回の東北電力女川原子力発電所の見学を通じて、企業の社会的責任を改めて感じました。非常に厳格なルールに基づき、放射線線量計を付けて、3号機の中まで入れて頂いたのですが、何重にも管理され、衣服を着替えての見学を通じて、出会う人々同士が挨拶し、建屋内では、きめ細かい安全標語が、現場で作成して掲示されていました。また、標語の作成者は、記名されており、東北電力の社員の方も当然ありますが、協力会社の人々の作成文が多いことに気づきました。発電所所長にその点を質問したところ、東北電力社員が600人、協力会社の人々は3600人だそうです。現場には電力会社も協力会社も同じ仲間だとおっしゃっていました。

 地域と現場を大切にする姿勢は、特に社会インフラ企業には、重要なことだと再認識したのでした。

 

2022年5月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

INTEROP TOKYO 2022 幕張メッセ登壇と出展レポート

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 今年で29回目となるインターネット・テクノロジーの最大イベントINTEROP TOKYO 2022(展示会とセミナー)が、去る6月15日(水)から6月17日(金)までの期間で開催されました。私は、日本のインターネットの商用化元年の1994年から開催されている当イベントに、連続29年間登壇しております。

Interop Tokyo 2022

 

●私は、オープニングセレモニーを含む、以下の4つの場面に登壇しました。

 

①    オープニングセレモニー

 INTEROP TOKYO実行委員長の村井純(慶應義塾大学)教授、併設イベント デジタルサイネージジャパン実行委員長の中村伊知哉iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長と、主催者代表として私の3人が挨拶をさせて頂きました。私からは、新型コロナウイルスの感染症拡大でイベントの在り方が問い直されていること、今回はリアルとバーチャルのハイブリッド開催として、リアルならではの熱気を感じる、ホンモノの展示物を観る、開発者と対話する、また、リモートから講演会に参加できるというハイブリッド価値を提供するイベントとなったことについて、お話させて頂きました。

 

 

②    D1-0106.15(水) 10:30-11:10 展示会会場

『デジタル田園都市国家構想応援団の取り組み~デジタルテクノロジーで地方を呼び起こす~』

 私は、単独での講演を行いました。展示会会場では、立見席となる熱気ぶりでした。そこには、岸田政権が標榜する、「新しい資本主義」の新成長戦略の中心をなすということで、同国家構想への高い関心が伺えました。同構想の4つの骨子とは、すなわち、(1)デジタル基盤の整備、(2)デジタル人材の育成・確保、(3)地方の課題を解決するためのデジタル実装、(4)誰一人取り残されないための取組を行う施策があり、補正予算として5.7兆円が準備されており、5Gの早期展開(2023年度までの90%カバー)、10数か所の地域データセンター基盤整備、光ファイバインフラ整備として2030年までに99.9%カバーを実現することを目標としていること。(2)については、地域デジタル推進人材を2026年度までに230万人を育成・確保すること。(3)については、ハブ経営人材を100地域に展開し、2024年度までに1000自治体が取り組むこと。(4)については、スマホの使い方が分からない人などを支援するデジタル推進委員を2022年度1万人確保してスタートするとしていること。この政府方針に従って、私が代表理事を務める一般社団法人デジタル田園都市国家構想応援団は、これら4つのテーマの実現するために実行主体となる自治体向けに支援する団体であると述べました。

 

 

③    KA1-0406.15(水) 12:30-13:10 RoomKA 基調講演

 『モビリティ×インターネットが創る未来~MONET Technologies vs APEV対談~』

 上記テーマで、MONET Technologies株式会社 取締役/ ソフトバンク株式会社 先端技術研究所 所長 湧川隆次氏と対談形式の基調講演を行いました。MONET Technologiesは、ソフトバンク、トヨタ自動車、ホンダ、日野自動車、いすず、スズキの合弁会社です。今回は、私から社会課題解決のためには自動車業界のCASE(Connected:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアリング/サービス、Electric:電動化)が鍵を握っていること、環境問題の解決には私が理事を務める一般社団法人電気自動車普及協会としてEV(電気自動車)の普及が重要であることについて、述べました。続いて、湧川氏から日本全国でMaaS(Mobility as a Service)を展開し、既に40自治体に対して、自動車をはじめとする様々なモビリティの移動情報を統合、新たなサービスを生み出し、利用者に新たな付加価値をもたらし未来のまちづくりにも重要な役割を果たしていることについて説明がありました。最後に私が審査委員長を務めることとなった「APEV国際学生“社会的EV”デザインコンテスト2022」について述べ、湧川氏からコメントをもらいました。

 

④    KA2-0806.16(木) 16:30-17:30 RoomKA,RoomKB 基調講演『デジタル社会実現に向けて』

 登壇協力:デジタル庁

デジタル大臣、行政改革担当大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革)牧島 かれん氏、

慶應義塾大学教授 村井 純氏と鼎談

~デジタル庁の政策・役割を明確化する!〜

 INTEROP TOKYOは今回で29回目ですが、現職大臣が幕張のイベント会場にお越しになられたのは3回目です。1回目は1996年野田聖子郵政大臣、2回目は2018年野田聖子総務大臣、そして今回2022年に牧島かれんデジタル庁担当大臣にお越しいただきました。

 私からは、8つの質問を出させて頂きました。牧島大臣からは、驚くほど完璧な回答が返ってきました。村井純教授も、有識者としてとてもシャープな発言をされていました。

私から聞いた8つの質問スライドをご覧ください。

 

 

●ブロードバンドタワー(BBTower)とジャパンケーブルキャスト(JCC)による出展と講演

 29回目となったINTEROP TOKYOでは、コロナ禍でリアル出展が中止となった2020年を除き、これまで一貫して幕張メッセの展示会場で最新技術の展示が行われてきました。今回は、BBTowerとJCC合同での出展を行いました。BBTowerは、「ワンストップITソリューション」としてオンプレミスとクラウドを組み合わせたプライベートクラウドサービスを出展しました。また、JCCは、地域DXアプリ「JC-Smart」を出展しました。

出展社講演は、タイトルとして『全産業と地域のDXを加速!~企業・自治体の情報発信を支えるブロードバンドタワーとジャパンケーブルキャスト~』と題してBBTower営業本部 第2営業グループ 渡邊 康登氏が、JCC 営業本部 イノベーションセンター 金澤 卓弥氏が登壇しました。

 

●おわりに

 INTEROP TOKYO2022は、インターネット・テクノロジーの最大イベントでインターネット商用化元年の1994年から始まり、インターネットの最先端技術が集う場となってきました。私にとっても、前半は登壇者として、後半は主催者兼登壇者として、この伝統と革新の中に存在することができたことを大変嬉しく思っております。講演コーナーでは、ウクライナの戦地で破壊された地上インフラを補完したSpaceX社による衛星インターネットインフラStarlinkについての基調講演、また、NTTとスカパーJSATの合弁の衛星間光ネットワークを提供するスペースコンパス社による基調講演、牧島かれんデジタル担当大臣による基調講演などが目を引きました。また、展示コーナーでは日本発ルータースイッチベンダーのアラクサラ社を買収した米Fortinet社とアラクサラ社の合同の巨大ブースが目を引きました。また、当社グループもスペースは小さかったのですが、多くの方にご来場いただきました。来年は、もう少し広いスペースの出展も考えていきたいと思います。

 

2022年6月22日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

7月20日の "データセンター「新大手町サイト」が契約率90%超に"発表の背景について

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~インターネット・トラフィックの聖地=大手町で起きていることとは?~
~IXとは?ASとは?インターネットは何故世界中と繋がっているのか?~

 去る7月20日に当社の最新鋭のデータセンターである「新大手町サイトが、契約率90%を超え開設3年10か月で満床に近づく」という発表をさせて頂きました。そこで、今回は、その背景について述べてみたいと思います。

 https://www.bbtower.co.jp/ir/pr/2022/0720_002156/

●7月1日に開催された『JPIX創業25周年』記念シンポジウム

 思い起こせば2022年7月は、ことの外感慨深い月となりました。というのは、7月1日に、日本インターネットエクスチェンジ株式会社(以下、JPIX)の『JPIX創業25周年』記念シンポジウムが開催されたのでした。このJPIXこそ、「新大手町サイト満床に近づく」という発表の起源となるもので、創立が25年前の出来事なのでした。ここでのIXとは、インターネットエクスチェンジの略で、「インターネット・トラフィックの交換を可能とする相互接続ポイント」のことで、AS(後述)を有するISP(Internet Service Provider、通信キャリアなど大手インターネット接続事業者)が伝送されるインターネット・トラフィックの交換を行う拠点です。これによって、各々のISPに加入している人々同士の電子メールが相互に届く訳です。

 JPIXは、日本初の商用IXサービス提供会社として、1997年7月に、KDD(国際電信電話株式会社、現KDDI)とIRI(株式会社インターネット総合研究所)との発起設立で18社の合弁会社として始動しました。現在では、当社はJPIXをIRIから継承し、KDDIに次ぐJPIXの2番目の株主として同IXの運用を受託しています。記念シンポジウムでは、当初設立に関わった産業界を代表して私が、学術界を代表して村井純教授が記念講演を行いました。
 その後のパネルディスカッションには、NTT系のIX=JPNAP(2001年5月~)を運営するインターネットマルチフィード株式会社の外山勝保副社長が参加されました。ここでは、IXの地域展開の可能性や、アジアにおいて、日本、シンガポール、香港において、日本とシンガポールのトラフィックと接続AS数(後の解説参照)が伸びており、香港が落ち込んでいるということが話題となりました。また、ソフトバンク系IX=BBIX(2003年6月~)を運営するBBIX株式会社の池田英俊社長も参加されました。

 当社の新大手町サイトの最大の特長は、これら3つのIXが全て接続点を有しており、日本で最もインターネット接続性に優れたデータセンターであるといえます。さて、感慨深いシンポジウムは、以下のプログラムで行われました。

●当日のプログラム(敬称略)

13:30◆開会◆
13:35-13:45◆ご挨拶~25周年を迎えて~◆
  日本インターネットエクスチェンジ株式会社
   COO 猪澤伸悟
13:45-14:45◆『初の商用IXとしての役割とこれからのJPIXへの期待』
  ~JPIX創業25周年に寄せてSince 1997 ~◆
  株式会社ブロードバンドタワー
   会長兼社長CEO 藤原洋
14:45-15:45◆『大規模広域分散システムの時代』◆
  慶應義塾大学 教授 村井純
15:45-16:00◆休憩◆
16:00-17:00◆トークセッション◆『NEXT IX』
  株式会社ブロードバンドタワー
   会長兼社長CEO 藤原洋
  慶應義塾大学 教授 村井純
  日本インターネットエクスチェンジ株式会社
   代表取締役社長 山添亮介
  インターネットマルチフィード株式会社
   代表取締役副社長 外山勝保
 モデレーター:
  日本ネットワークイネイブラー株式会社
   フェロー 石田慶樹
17:00-17:20 ◆ネットワークと人の集約点をめざして◆
  日本インターネットエクスチェンジ株式会社
   代表取締役社長 山添亮介
17:30◆閉会◆

●私の記念講演の概要

 当日は、77ページのプレゼンテーション資料を用い、以下の目次でお話させて頂きましたが、主なものを示させて頂きます。

目次:
1.自己紹介
2.日本初の商用IX=JPIXの役割
3.インターネットとSDGs
4.これからのJPIXへの期待

●IXとは?ASとは?(ミニ解説)

 IXの前に、インターネットの動作原理を説明します。インターネットとは、各組織が所有するネットワークであるAS(自律システム)が相互に接続された集合体です。ASは「Autonomous System」の略で、統一された運用ポリシーによって管理されたネットワークの集まりを意味し、BGP(Border Gateway Protocol)というドメイン間ルーティング(経路制御)プロトコルにより接続される単位となります。このAS間で経路情報の交換をおこなうことにより、インターネット上での効率的な経路制御を実現します。ASは16ビットの数字を用いたAS番号によってインターネット上で一意に識別され、日本ではJPNIC(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)が割り当てと管理を行っています。
 固有のASを持たない組織がインターネットに接続するには、インターネット回線を経由して、企業や個人向けにインターネットに接続するサービスを提供しているASを有する「ISP(インターネットサービスプロバイダ)」に接続する必要があります。通常、規模の大きいISPのネットワークは固有のASを形成しているため、ISPを窓口にすることによって他の組織と通信できるようになります。
 そこで、インターネットエクスチェンジ(IX)とは、「インターネット・トラフィックの交換を可能とする相互接続ポイント」です。ISPやコンテンツプロバイダー、ホスティング事業者、クラウド事業者など様々な事業者がインターネットエクスチェンジで接続され、トラフィック交換を行っています。  インターネットエクスチェンジを利用しない場合、各事業者はお互いに個別の回線を準備し、相互に通信可能な環境を作り出す必要があります。インターネットエクスチェンジに各事業者の接続点が集約されることで、インターネット上の通信がスムーズかつ安定的に維持されるのです。

●「新大手町サイト」が契約率90%超の意義について

 新大手町サイトは、当社が2020年代のモバイルインフラとなる5G時代のインターネットインフラを支える拠点となることを目指し、5Gモバイルの特徴である、超高速(10Gbps)・超低遅延(1msec)・超多地点同時接続(100万点/k㎡)をコンセプトに開設した、当社の最新鋭の基幹であるデータセンターです。大手町地区において、新世代のビジネス環境・都市モデルの具現化を目指し進められた大規模再開発事業の一翼を担う最新鋭のデータセンターとして、政府入札を経て2018年8月に開設しました。
 大手町地区は、前述の如く、その起源は日米インターネット・トラフィックを運ぶために、旧KDD大手町ビルに開設されたインターネットの相互接続点であるインターネットエクスチェンジ(IX: Internet eXchange Point)が集中する日本のインターネットの中心地です。数多くの金融機関・情報通信・メディア企業などが拠点をおき、また、国内外のクラウド事業者も多数進出するなど、事業者間の接続性に優れているインターネットの聖地なのです。

 当社は、設立以来、大手町地区をデータセンター事業の中核地としてとらえ、設立初年度の2000年7月に「第1サイト」を開設、翌年2001年にはJPIXの拠点を誘致し、インターネットエクスチェンジ(IX)との接続性を確保するなど、その地の利を最大限に活用し、事業を行ってきました。現在では、「第1サイト」・「新大手町サイト」においては、日本を代表する三大IX (JPIX、BBIX、JPNAP) へ構内での接続や、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)などのメガクラウドとの閉域網接続を実現、「ネットワーク接続に強い」データセンターとして、高い評価を受けております。本センターの特徴を評価頂き、多様なインターネットへの接続を必要とするインターネット企業、通信キャリアに加え、製造業など今後のインターネット利用が加速化している顧客との契約が中心となっております。そして、既存顧客の拡張性を残しつつ慎重に顧客獲得を行い、開設から3年10か月で90%超が契約済みとなりました。

 そこで、いよいよ「ポスト新大手町」戦略を立案し実行するフェーズとなりました。今後の市場ニーズに応えるために、当社独自のハイパースケール&リージョナルデータセンター&エッジ・データセンター事業を展開してまいります。このようにデータセンターの大規模化と地域分散化を推進するにあたり、当社ならではの「新大手町モデル」ともいうべきトラフィック集中型データセンターの特長を活かした展開を行ってまいります。具体的には、当社の強みを活かし、当社にはない役割を担うパートナーシップ企業との連携を強化することで、「新大手町モデル」をコアコンピタンスとした事業展開を行っていく所存であります。

2022年7月27日
 代表取締役会長兼社長CEO
 藤原 洋

「ディープテック」のインパクト ~社会を変え企業の成長性に関わる新たなテクノロジートレンド~

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 当社のようなインターネット・テクノロジー企業にとって、これまで、企業の成長性に影響を与える要因は、主として情報通信インフラとコンピューティング環境でした。しかしながら、私自身のこれまでのバックグラウンドから、「ディープテック」に注目しています。

 

 ディープテックとは、科学的な発見や革新的な技術に基づいて、社会にインパクトを与えることができる技術のことですが、企業や研究機関などで長期間にわたり開発されてきた技術「深いところに(ディープ)眠っている技術(テック)」などを指す造語です。

何故、今、ディープテックなのでしょうか?その背景には、インターネットの商用化後約30年を通じて、IT(情報技術)をベースに、既存の技術の活用による新たなサービスが生み出され、ビジネスモデルの刷新が起こってきたことにあります。しかし、今日では、ビジネスモデルの刷新に陰りが見えてきたように思えます。そこで、ビジネスモデルの転換に留まらず、世の中の生活スタイルを大きく変え、社会の大きな課題を解決する技術、Deep Tech(ディープテック)が重要となっていると言えます。

ディープテックの分野には、化合物半導体、AI(人工知能)、バイオテクノロジー、二次電池、量子コンピュータ、ロボティックスなど多岐にわたり、どれも生活を大きく変え、地球環境問題をも解決する可能性を秘めているため、「世の中に深く根ざした問題(ディープ)を解決できる技術(テック)」と解釈することができます。

そこで、去る7月25日に、東京オープンイノベーションカレッジ・イベントとして、当社Beyond5Gに向けたGaN(窒化ガリウム)を用いたワイドギャップ半導体デバイスに関する共同研究先である名古屋大学天野浩教授(2014年ノーベル物理学賞)で、『ディープテックがもたらすリアル空間とサイバー空間へのインパクト』と題した対談を行いました。東京オープンイノベーションカレッジ(東海東京証券主催)は、産業界からはテック担当として私(インターネット協会理事長の立場)が、学術界からは名古屋大学の天野浩教授(物性物理学)と東京大学の松尾豊教授(人工知能、ディープラーニング協会理事長)が中心となって、産学連携でテック系ベンチャー企業に挑戦する若者たちを盛り上げる活動で、今年6月15日に始まりました。今回は、そのイベント第1回でした。

 

 今回、ディープテック(科学的な発見や革新的な技術に基づいて、社会にインパクトを与えることができる技術)をテーマに天野浩教授と対談を行いました。また、対談に先駆けて、天野教授から『ディープテックの社会実装に貢献する人材育成の取り組み』と題した基調講演をされました。対談の概要を以下に要約します。

天野教授から私への質問として、「AIで人間の健康管理を考えた場合、日本やアメリカなどでは個人情報を学習データとして用いる場合、多くの認可プロセスが必要になる。一方で、13億人のデータを個人でなく国の管理で行っているようなところでは、そもそも学習データ量が圧倒的に異なって、まともに勝負したら勝ち目はない。どうすればビックデータ分野で日本の存在感を出せるのか?」というものでした。そこで、私は、以下のように回答しました。

「法律面と技術面で日本の存在感を出せると考えている。【法律面】では、改正個人情報保護法において設けられたビッグデータに関する規律について、個人情報保護法では、目的外利用や第三者提供にあたっての本人の同意(個人情報保護法16条1項、23条1項)は、パーソナルデータの“利活用の壁”がある。ここで、“本人の同意”の趣旨は、個人の権利利益の侵害を未然防止することだが、“本人の同意”がなくてもデータの利活用を可能とする枠組みが改正個人情報保護法では設けられた。“匿名加工情報”(個人情報保護法2条9項)は、個人情報から特定の個人を識別することができないように加工し、その個人情報を復元することができないようにしたもので、個人情報保護法36条から39条に匿名加工情報取扱事業者等の義務が定られているが、第三者提供に本人の同意不要となった。ビッグデータに関する規律は、プライバシー法制の先進国であるEUなどにもないものであり、日本独特のローカルルールといえる。【技術面】データサイエンス分野で取り組むべきは、「データノイズ」の除去技術、S/N値の大きいデータ収集・分析技術の確立が期待される。私自身も(一社)データサイエンティスト協会でも活動しているが、日本が取り組むべきデータサイエンスとしては、データ量とともにデータの質の向上である。」

天野教授から次の質問として、「ヨーロッパでもドイツは英米と違ってディープテックのスタートアップに対する意識が日本と同じように低い。日本がドイツ的なのは、明治時代に日本がドイツから社会制度を学んだことが原因と思われる。何故藤原さんはそれを打ち破って何度も起業できたのか?若い人にアドバイスすると?これからの日本に必要な社会制度は、従来通りドイツ型か、英米型か、それとも独自路線があるか?」がでました。

 私は、以下のように回答しました。

「まず現状認識として、最近の統計では、1年間のテック型スタートアップ数は、1位アメリカ、3位イギリス、6位ドイツ、24位日本。ベンチャーキャピタル投資はGDP比で、アメリカ0.40%、イギリス0.08%、ドイツ0.03%、日本0.03%。ユニコーン企業(時価総額10億ドル以上の未上場企業)はアメリカ151社、イギリス16社、ドイツ6社、日本1社。また、日本とドイツは、アメリカとイギリスと比較して、開業率と廃業率の両方が低い。米英独でもない独自路線が良いと思う。技術を元に起業する際、まず第一にその技術が経済価値を生むまでのディレイタイムを予測する必要がある。私の場合は、B2Cはスタートアップでは難しいため、B2Bに絞ってきた。日本では、スタートアップは弱く、大企業が強いという特徴があるため、大企業が求めるイノベーションのためのソリューションを提供するのがスタートアップの役割だろう。私の場合では、起業前から顧客獲得をし、ユーザー企業のコミットをもらってから起業してきた。そしてテーマごとに大企業との資本業務提携を行ってきた。」

私から天野教授へは、次の質問を行いました。「ディープテックの分野ではどの分野に注目するか?化合物半導体、AI(人工知能)、バイオテクノロジー、二次電池、量子コンピュータ、ロボティックス、データセンター、その他(その場合は具体的に)の中からいくつかあげて下さい。また、その理由は?」

天野教授からの回答は、「私もいつも装着しているが、ウェアラブルによるヘルスケアで、リアルタイムで情報を集めてデータセンターに蓄積してAIで分析すると日本の高齢化社会の医療費削減に通じる。」というものでした。私からは、「その主旨は、健康寿命を延ばすために病気になる前に健康管理する、ヘルスケアサービスを日本に整備するということですね。」と確認させて頂きました。この件については、会場から、「お二人にお聞きします。天野先生は、ウェアラブルとおっしゃいましたが、日本でいくらウェアラブルが普及してもアップルウォッチとかフィットビットとか海外に市場を取られてメイドインジャパンにはならないのでは?」という質問が出ました。天野教授の回答は、「ウェアラブルについては、私はフィットビットですが(笑)、日本には、デバイス技術は優れているので、きっとできると思います。」ということでした。私からは、「ウェアラブルは複合技術なので、必ずしも全部をメイドインジャパンである必要はないと思います。まずは、ウェアラブルで健康データを集めて、データセンターに蓄積してAIで解析して、日本人の健康寿命を延ばすことが先決だと思います。半導体も今は、最終製品は日本のシェアはかつての過半数はなく6%くらいに低迷していますが、半導体製造装置ではトップ15社中7社は日本ですし、シリコンウェアは信越化学とSUMCOで約60%シェアがあります。強みを活かすことが重要かと思います。」と回答しました。

また、私から、2つのディープテックの組み合わせによるブレークスルーを期待することとして、二次電池とデータセンターによる完全再生可能エネルギー・データセンターの実現に取り組みたいと話しました。

 前述の如く、天野浩教授とは、5GとBeyond5GのGaN(窒化ガリウム)を用いた高速・低消費電力モバイル通信デバイスの共同研究を続けています。ブロードバンドタワーが代表研究会社で名古屋大学が代表大学研究機関です。また、2014年のノーベル物理学賞受賞記念スピーチで何を話せばよいか?と事前に質問されたので「窒化ガリウムは青色発光ダイオードに次はインターネットを変える技術になる」とお話されてはとSuggestしたのですが、その通りのフレーズを入れてスピーチされました。良い思い出です。これからも、テクノロジーカンパニーに相応しい最先端のディープテックに深く取り組み、また当社は、既にグループ企業のベンチャーキャピタルのGiTV社がイスラエルのディープテックに集中的に投資をしており、グループ一丸となって、非連続的イノベーションを目指したいと考えております。

 

2022年8月31日
 代表取締役会長兼社長CEO
 藤原 洋

安倍晋三元総理の「国葬」に参列して思うこと

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~「道半ば」の「アベノミクス」への弔意を込めて~

 9月初旬に、安倍晋三元総理(1954年9月21日~2022年7月8日)「国葬」の招待状を受け取りました 。国葬の招待状を受けるのは初めてのことです。 戦後は、一般人の国葬は、吉田茂氏以来ということなので、初めてというのは当然のことかもしれませんが、私なりの弔意*(後述)を込めて参列させて頂きました。また、招待状と国葬儀場の写真も掲載させて頂きます。

 同い年で5日早く生まれた安倍晋三さんが急にこの世を去られたショックは、岸田文雄総理の決断を促し国葬となりました。

 私が、感じたことは、友人代表の菅義偉前総理の言葉に全てが含まれていました。自由・民主主義・人権を重んじるべき日本社会にあって、「無念」という感情だけが残りました。

 意見の違う人当然いるはずです。だからこそ意見をぶつけ合う仕組みが必要です。なのに、意見を封じることにエネルギーを使うこと、法律というルールを無視して反対意見を封じること、あってはならないことだと改めて思いました。

 とにかく、今回は、私と同い年であり、何度か交流もあったことから、まだ若いのにこの世を去ることになってしまった、故安倍晋三元総理の「国葬」に参列させて頂いた際に多くの思うところがありました。

●「国葬」とは?

 国が国家の儀式として、国費で行う葬儀のことです。しかし、明治維新後の大日本帝国憲法(1889年2月11日公布、1890年11月29日施行)下と、日本国憲法(1946年11月3日公布、1947年5月3日施行)下では、「国葬」の概念や対象者は大きく異なっています。

〇第二次世界大戦前の国葬
 1926年(大正15)従来の先例・慣例を法制化して国葬令が制定され、国葬は、法定上行われるものと、特旨によるものの2種とされたとのことです。

【法定上行われる「国葬」】
・主たる国葬対象者:天皇、太皇太后、皇太后、皇后の大喪儀と、皇太子、同妃、皇太孫、同妃、摂政たる親王、内親王、王、女王の喪儀(7歳未満の皇太子、皇太孫の死去は除く)とのことです。

【特旨による対象者】
 国家に大きな功労のあった者と、死に際してとくに勅旨のあった者の葬儀で、皇族も含まれていたそうです。
 国葬当日は廃朝で、官庁と学校は休み、歌舞音曲は停止または遠慮し、全国民は喪に服し、国葬を厳粛に送ることとされたとのことです。
 国葬は神道式で行われ、葬儀の事務は国の機関が担当したそうです。

【特旨により国葬が行われた方々(敬称略)】
 1878年(明治11)の大久保利通の準国葬以後、次の皇族8名、一般人12名だったようです。

岩倉具視(1883)、島津久光(1887)、三条実美(さねとみ)(1891)、有栖川宮熾仁親王(ありすがわのみやたるひとしんのう)(1895)、北白川宮能久(よしひさ)親王(1895)、毛利元徳(1896)、島津忠義(1897)、小松宮彰仁(あきひと)親王(1903)、伊藤博文(ひろぶみ)(1909)、有栖川宮威仁(たけひと)親王(1913)、大山巌(1916)、徳寿宮李太王煕(とくじゅのみやりたいおうき)(1919)、山県有朋(1922)、伏見宮貞愛(ふしみのみやさだなる)親王(1923)、松方正義(まさよし)(1924)、昌徳宮李王 (しょうとくのみやりおうせき)(1926)、東郷平八郎(1934)、西園寺公望(1940)、山本五十六(1943)、閑院宮載仁(かんいんのみやことひと)親王(1945)。

〇第二次大戦後の国葬
 「皇室典範」で天皇の大喪儀を定めている以外は、国葬の明文規定はないようです。

 1967年(昭和42)10月20日、元首相吉田茂の死去に際して、臨時閣議の決定によって、10月31日、日本武道館で戦後最初の国葬が行われました。

 1989年(平成1)2月24日、昭和天皇の大喪の礼が新宿御苑で行われました。

 このたびの安倍晋三元総理の「国葬」は、戦後三度目となります。また、一般人としては二度目となります。

●イギリスの国葬

 ちょうど時を同じくして、エリザベス2世(1926年4月21日~2022年9月8日)のは、原則的に王族だけですが、例外が2つありました。

〇最初の例外:アイザック・ニュートン(1643~1727年、物理学者・数学者:力学の法則、微分積分学の創始、万有引力の発見)
世界に対してイギリスの地位を高めた知の巨匠、1727年の国葬。

〇二つ目の例外:サー・ウィンストン・レナード・スペンサー・チャーチル(1874~1965年、政治家、陸軍軍人、作家)
イギリスを第二次大戦の勝利に導いた首相。1965年の国葬。

●私なりの弔意*~「アベノミクス」との関わり~

 安倍さんと初めてお会いしたのは、小泉純一郎政権の副官房長官の時でした。その際、周りの人々に「必ず総理になる人」と言われ、その通りになりました。いわゆる政界のサラブレッドという雰囲気でした。

 その後、お会いしたのは、「美しい日本」を掲げられた第一次安倍政権が1年を経ないまま、その後も短期政権としての福田康夫政権、麻生太郎政権を経て、失速して下野された直後でした。この頃執筆した、私の著書『科学技術と企業家の精神』(2009年岩波書店)を謹呈したところ、とても丁寧な感想文を頂きました。
この頃の安倍氏の科学技術への関心の強さは、総合科学技術会議(その後、第2次安倍政権で2014年に総合科学技術・イノベーション会議に改名)へと繋がっていったと認識しております。
エピソードをお話すると、私が20代の頃、ご一緒に制御用コンピュータの開発プロジェクトを行った9年先輩の中西宏明氏(当時私は、制御用コンピュータの回路設計、中西さんはOS設計を担当、その後、日立の社長、会長、経団連会長、2021年6月27日逝去)と私とは、私が、ベンチャービジネスに移った後も、よく連絡を取り合っていました。中西さんは、総合科学技術会議の中心メンバーで、安倍さんのブレインでもあり、科学技術政策の中心的役割を担っており、Society5.0の提唱者でもありました。
この間、中西さんを通じて、安倍政権の科学技術政策には、関わりを持つことができたと思っております。 中西さんには、私の著書『日本創生戦略』(2018年PHP研究所)の帯に推薦を頂きましたが、Society5.0にも少し触れて欲しいというリクエストを頂き、あとがきに追記させて頂いた思い出があります。

 その次に、安倍さんとお会いしたのは第2次安倍政権発足後ですが、「アベノミクス」を掲げられて、私もビジネススクールで教えている立場でもあり、かなり熱心に研究しました。

 アベノミクスの3本の矢(異次元の金融緩和〔現在も継続中〕、13兆円の財政出動、成長戦略(民間投資を牽引する規制改革等)ですが、私は、科学技術を基本とした3本目の矢に大変強い関心を持って来ました。しかしながら、2本目までは放たれましたが、3本目の矢は、まだ途上だと思われます。

 結果的に株価は上がりましたが、所得は増えませんでした。その根本要因は、3本目の矢が「道半ば」であることだと思っています。「道半ば」なのは、実は、政府ではなく産業界なのではと思っております。

 成長とは、産業が成長することであって、政府に依存することではありません。ムーアの法則をはじめ技術革新は継続中であるため、古いルール(官の規制よりも業界規制が問題)を変えて、時代にあった新しいルールを創ることも含めて、政府依存から脱却して産業界主導、民主導の成長戦略を立案実行することかと思われます。アベノミクスの「道半ば」でこの世を去られた安倍さんへの弔いは、民による成長戦略の立案実行ではないかという思いで国葬に参列させて頂きました。

●おわりに

 まさかということがあったので、まさかの国葬になったように思えます。まさかというネガティブなことが二度と起こらないように、トップダウンとボトムアップと両面で日本を何とかしなければとポジティブに思い行動することが今の日本に求められていると感じた1日でした。

 国葬参列にあたり、午前10時半集合で終了は午後6時でした。

2022年9月28日
 代表取締役会長兼社長CEO
 藤原 洋

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