~自動車産業に強いイード、金融都市構想を担う一橋大学、ブロックチェーンのKeychain社と~
来年(2018年)8月に、ブロードバンドタワー(以下「当社」)の5Gデータセンター(新大手町データセンター)のサービスインへ向けて、本年8月に3つの提携を発表させて頂きました。今回は、これら3つの提携の背景と当社の新たな5Gデータセンターを拠点とする成長ビジョンについて述べさせて頂きます。
(1)イードとの5Gデータセンターを拠点としたコネクテッドカーサービスに関する事業提携
8月17日当社と株式会社イード(本社:東京都新宿区、代表取締役:宮川 洋、以下「イード」、証券コード6038東証マザーズ)は、当社が開設予定の5Gデータセンターにおいて共同事業の開始を発表しました。当社は、都市型インターネット・データセンター事業者として2000年の創業以来、このたび新たに、初めての完全自己開発の第5世代(5G)データセンターとして、大手町地区に拠点を確保し、2018年8月に「千代田区新データセンター(仮称)」を開設する予定です。5Gデータセンターは、5Gモバイル通信などIoTに対応したデータセンターで、超高速(10Gbps)・超低遅延(1msec)・超多地点同時接続(100万点/km2)仕様に対応し、日本の情報通信産業の発展を加速するものと期待されています。一方、イードは、日本最大級の自動車情報サイト「レスポンス」や、日産自動車の戦略子会社を源流とするリサーチ事業を擁し、自動車業界と深い繋がりを持ってきました。また、通信キャリアを表彰する「ブロードバンドアワード」やユーザーの通信速度をビッグデータとして提供する「RBB SPEED TEST(アールビービースピードテスト)」を長年提供し、通信業界とも深い繋がりを持ってきました。そこで、自動車業界における自動運転や電気自動車(EV)、通信業界における5Gモバイル通信はいずれも2020年前後に実用化され産業を大きく変革すると予想され、それを後押しするアクセラレーターとしての「iid 5G Mobility」を新たな戦略として掲げています。そこで、当社とイード(以下「両社」)は、自動車産業の3つの進化の方向性としての「コネクテッド・カー」「電動化」と「自動化」に着目し、情報と仕組みを両社で提案していくこととしました。具体的には、両社では「産業を支える情報通信インフラ」と「自動車業界、情報通信業界におけるネットワーク」を活かして、2020年の自動運転技術、電気自動車(EV)、5Gモバイル通信などの実用化を見据えた、自動車特化型アクセラレーター「iid 5G Mobility」の5Gデータセンター上での展開を共同で推進する予定です。
(2)一橋大学大学院国際企業戦略研究科とのFinTechデータセンターに関する共同研究
去る8月22日に、当社は東京都の国際金融都市構想の中枢を担う学術研究機関として、多くの金融界への人材を輩出してきた一橋大学とFinTech分野での共同研究を実施すると発表しました。具体的には、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の金融戦略・経営財務コースを助成し、研究やセミナーに共同で取り組んでまいります。同共同研究により、FinTech分野におけるブロードバンドタワーの企業ブランディングとその事業化の足掛かりとする寄附講座「FinTechとイノベーション」を通じて、野間幹晴准教授、藤田勉客員教授、および私が同研究科の客員教授となり、FinTech分野の研究に加わります。また、共同の取り組みとして、同研究科OBのSBI大学院大学金融研究所藤田勉所長等の協力のもと、様々な企業とビジネスマッチングをはかるため、一橋講堂でFinTech/IoTをテーマにしたカンファレンスを開催するなど、当社の新大手町データセンターを5G時代のFinTechのサービス拠点と位置付ける活動を行ってまいります。
(3)ブロックチェーンの最先端技術のKeychain社と5Gデータセンターを拠点とする事業提携
また、去る8月24日には、当社はブロックチェーンの最先端技術を有するKeychain社とフィンテック、 IoT分野における包括的な戦略提携で合意したことを発表しました。同社は、合同会社Keychain(本社:東京都中央区、代表社員キーチェーン・ピーティーイー・リミテッド 職務執行者&Co-founder CEOホープ ジョナサン、COO三島 一祥)で、「Keychain社」として急成長を始めた企業です。具体的には、以下の3つの事業展開を計画しています。
①当社の3大IX(インターネット・エクスチェンジ)直結型データセンターサービスおよびハイブリッド・クラウド+ストレージサービスと、Keychainのブロックチェーン技術に基づくPaas(Platform as a service)プロダクトの提供を行います。
②フィンテック企業と既存金融機関の双方が利用できるセキュリティ・認証・監査証跡機能、データ保存サービスなどの提供
・Keychain Cloud
・Keychain Secure Financial Network
・Keychain Digital Identity Authentication
・Keychain Consolidated Audit Trial
第一弾として、Keychain Cloud(モバイルやIoTデバイスのEnd to End 暗号化データ通信、クラウドへの暗号化したデータ保存)サービスを、当社のデータセンター上で稼働させたベータプロダクトの提供を計画しています。
以上に述べたように、これら3つの提携の背景には、日本政府が推進する「Society5.0」と東京都が推進する「国際金融都市・東京」構想に則った民間プロジェクトがあります。Society5.0に規定された5大プロジェクトの1つがFinTechであり、東京都の構想では、「アジアの金融ハブ(国内の個人金融資産から、日本を含むアジアに成長資金を供給)」、「人材、資金、情報、技術の集積(金融分野に留まらず、新たな産業やビジネスを創出)」、「資産運用業・フィンテックに焦点(内外の関連事業者を重点的に誘致・育成)」、「社会課題の解決に貢献(投資家・顧客本位、ESG〔環境・社会・ガバナンス〕投資を東京に取り込む)」となっています。このため、金融機関拠点の大手町~証券取引拠点の日本橋を結ぶ「日本版ウォールストリート構想」を実現すべく、大手町データセンターを拠点とした『大手町フィンテックコンソーシアム』の立ち上げを共同で行ってまいります。
さらに、Keychainの技術は、無数のモバイル・IoTデバイスの認証をおこない、暗号化したデータ通信が可能となります。また、Keychainの分散認証プラットフォームのコンセプトでは、いままで一部の機関が集中的におこなっていた認証機能を、複数の企業で分散してブロックチェーン上で運営できることになります。
当社は、今後も、こうした産業構造の変化に戦略的に対応し、ICT業界だけでなく、幅広い産業界とのパートナーシップを推進し、第4次産業革命の中心を担う5Gデータセンター(新大手町データセンター)をコアとし、新たな成長フェーズに入ってまいりますので、ご期待頂ければと存じます。
平成29年8月30日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋