Quantcast
Channel: 藤原洋のコラム
Viewing all articles
Browse latest Browse all 103

IoT時代の技術トレンドと当社の企業戦略

$
0
0

 当社はインターネット・テクノロジーを先導する企業として、インターネット技術の発展と共に成長してきました。振り返ると、1997年の日本初の商用IX(インターネット・エクスチェンジ)である、JPIX(日本インターネットエクスチェンジ株式会社)の創設に関わった技術部門をIRI(株式会社インターネット総合研究所)から継承し、2000年に米国企業との合弁で、日本初の専業インターネット・データセンター事業者として創業しました。2002年には、ブロードバンド時代に対応した新たな情報発信拠点として株式会社ブロードバンドタワーに商号変更の上で再出発し、各種ポータル、Eコマース、ネット広告、ネット証券等のサービス事業者のサーバ運用環境の提供を中心に事業展開を行ってきました。当社にとってのこれまでの約15年は「人をつなぐ」インターネット・サービス提供の歴史であったといえます。
 しかしながら、ここへ来てインターネットは「モノをつなぐ」インターネット、すなわちIoT(Internet of Things)へと変化する時代を迎えたといえます。2015年は、正に当社にとっては、IoT元年と位置付けられると思います。
 それでは、ここで、IoT時代へ至る技術の発展の歴史を概観してみたいと思います。

 IoTの技術的起源をあげるなら、坂村健氏(1951年生まれ、東京大学大学院情報学環教授)による、TRONプロジェクト(TRON: The Real-time Operating system Nucleus )であると言えます。何故なら、TRONはリアルタイムOS仕様の策定を中心としたコンピュータ・アーキテクチャ構築プロジェクトで、プロジェクトの目指す最終的到着点のグランドイメージとして「どこでもコンピュータ」すなわちHFDS(Highly Functionally Distributed System、超機能分散システム)を掲げ、1984年6月に始動したからです。以来、実際に超分散型の組込み型OSとして普及し、機器間通信ネットワークの技術基盤を約30年間にわたって形成してきたと言えます。そして今年から始まるIoT時代こそが、TRONで準備された日本発の世界的な技術基盤が花開く時代であると言えます。

 IoT時代の次なる先駆者としては、「ユビキタス・コンピューティング」という概念を提唱したゼロックス パロアルト研究所のマーク・ワイザー(Mark Weiser 、1952年~99年)をあげることができます。同概念は1988年に提唱されたもので、これらは元来「あらゆる所にコンピュータが存在する」という考え方です。この概念を日本でインターネット時代に対応させたのが、野村総合研究所(当時)の村上輝康氏で、総務省が2000年代に提唱した「あらゆる場所であらゆるモノがネットワークにつながる=ユビキタス・ネットワーク」へと発展したのでした。

 実際にIoTという言葉を初めて世に出したのは、ケビン・アシュトン(Kevin Ashton 、1968年英バーミンガム生まれ)です。同氏はマサチューセッツ工科大学のRFIDの研究コンソーシアムである「Auto-IDセンター」の共同創始者で、RFIDや他のセンサー向け標準化作業に尽力し、また、RFID関連企業のThingMagic社、電力監視ソフトウェアのEnerNOC (NASDAQ:ENOC)社を経て、環境関連技術企業のZensi社(Belkin社が買収)を設立した人で、インターネットによるセンサーネットワークを「Internet of Things」と1999年に命名しました。同氏は、P&G社の副ブランド・マネージャーとしてサプライチェーンの管理用にRFIDを使うことに興味を持ち、1997年にMITにコンタクトし、1999年にはサンジェイ・サルマ(Sanjay Sarma)教授らと共同で「Auto-IDセンター」と呼ばれるRFID研究コンソーシアムを始動させました。同プロジェクトは大きな成功を収め、「Auto-ID Labs」へ名称変更し、研究が継続されています。
 
 以上のような歴史的経緯をたどる中で、世界は1990年代のインターネットの商用化、1990年代後半からのモバイル通信インフラの整備とが相まって、ブロードバンドからモバイル・インターネット・インフラの時代へと発展しました。

 インターネットの出現は歴史的な転換点となり、世界をいきなりグローバルな情報空間へと導きました。「Before Internetの時代」は「先進国の成長」の時代であり、「日本が先進国の仲間入り」をした時代であったと言えますが、「After Internetの時代」は、「先進国の成熟」+「新興国の成長」の時代であり、「グローバル空間での資源・エネルギー管理の時代」であると言えます。
 この新たな時代は、移民政策をとらない日本をはじめ、世界の先進国の人口が急激に減少する時代でもあります。特に日本では、1900年の4,300万人から百年で3倍近くに急増した人口が、2006年の1億2,774万人をピークに、今後百年で3分の1に急減するものと考えられています。この新たな時代は、『1人当たりの労働』の質の向上を高めるために多種多様の機器が人に代わって考え働く時代であるとも換言できます。

 IoT時代とは、「あらゆるモノをワイヤレス・インターネットによって相互接続」し、量から質への転化をもたらす時代であると言えます。これを実現するには、半導体、記憶装置、通信帯域の指数関数的な発展傾向を見据えると共に、日本の強みである、TRONの技術基盤の活用、モバイル・ネットワークの活用、安定性の高いデータセンター/クラウド運用技術の活用によって、欧米・アジア等との協調の中で、世界をリードするオープンイノベーションを起こしていく必要があると思われます。
 このような状況の中で、当社は日本の果たすべき役割を中心的に担っていく企業であることを自覚し、IoT時代を担う中核的企業として成長していきたいと考えております。

平成27年2月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

Viewing all articles
Browse latest Browse all 103

Trending Articles